上 下
164 / 192

164『大橋、曹操の指示書を代読』

しおりを挟む
鳴かぬなら 信長転生記

164『大橋、曹操の指示書を代読』信長 




 騎兵部隊の軍旗には『曹』の一字が染め出されている。

 蹲踞した部隊長の顔は兜の眉庇(まびさし)に隠れて判然としなかったが、伏せたままの口上で分かった(-_-;)。

 こいつは、曹茶姫の兄にして三国志三傑の一人である魏王曹操の弟、あのろくでなしの曹素ではないか!

曹素:「御説法大行進の脚をお停めして申し訳ございません。わたくしは魏王曹操の愚弟にして義軍騎兵総司令の曹素にございます。こたびは、玄奘三蔵大師猊下のお噂を、我が賢兄曹操が聞き及び、是非にも魏の都洛陽にご来駕賜り、御説法を賜りますよう申しつかってまいりました!」

三蔵:「待たれよ曹素殿。わたしはただの僧侶に過ぎません。愚禿三蔵でございます。身に余る大師や猊下などの尊称、謙譲は当惑するばかりです。どうぞご無用になさってくださらぬか。それに、あまりに畏まられては意通ぜぬこともありましょう、どうか、友と語らうようにお気楽に申されよ」

曹素:「ハハァ、もとより兄曹操に及ぶも無き愚弟、いささかの礼に欠くやもしれませぬが、ご容赦のほどを……」

 それから曹素は、要領よく曹操の意思を伝えた。

 俺たちを付け回し、一時とはいえ茶姫に自害を決心させた、力で押し潰すような無法さ、野蛮さ、押しの強さが影を潜めている。
 それに、以前は騎兵ではなく、輜重隊の司令であったに過ぎない。それが魏軍騎兵総司令と名乗るとは。

 少しは苦労して人が変わったか、使えると曹操が判断したか。

 さて、三蔵法師を招いて仏の道を聞法したいとは、どんな下心あってのことなのか?

三蔵:「愚僧の法話をお聞きくださるとあれば、いずこへとも喜んで向かわせていただきます」

曹素:「それは有難き仰せ、洛陽より駆けて参った甲斐があります」

大橋:「割り込むようで申し訳ありません。曹素どの、わたしとしては三蔵法師さまのお気持ちとあれば、申し上げることも無いのですが、この豊盃での御説法も始まったばかりです。いま少し、こちらでの御説法を済ませてからではいけませんか?」

猪八戒(茶姫):「それに、説法をお願いするのに五十騎とは言え、騎兵を引き連れての申し入れ、ちょっと剣呑ではないかブヒ!」

曹素:「これは、お弟子の申されよう、もっともでござる。騎兵を引き連れたことに他意はございません。この五十騎は、騎兵総司令としての通常の供揃えでございます。三日前、役宅から参内の途中兄の使いより命を受け、そのままの供揃えで参上したまでで、御懸念とあれば五十騎を先に帰しても構いません」

三蔵:「いやいや、仮にも魏王曹操殿のお使い、ましてその身は王弟であられる。御体面もございましょう。お気持ちは分かりました。一つだけお聞きしてもよろしいか?」

曹素:「ハハ、なんなりと」

 曹素が畏まると、三蔵は馬を下りて、散歩の途中に友だちに会ったような気楽さで曹素に近寄って、腰を下ろして曹素に向き合った。
 突然の距離の詰め方に、みんなは驚き、沙悟浄など思わず本性の茶姫に戻りそうになった。

三蔵:「説法とあれば、たとえ地の果てでも足を向けます。ただ、ただねぇ曹素さん」

曹素:「はい?」

三蔵:「どうせやるなら、魏の国境を開いて、三国志のどこからでも人が参加できるようにしませんか。この豊盃だけでも、万余の人が集まったんです。せっかくだから、途中成都にも寄って蜀のみなさんや、余裕があれば他の町や村にも声をかけたいのですが、どうでしょう?」

曹素:「はい、それについても兄曹操から指示を受けております……」

 そう言うと、曹素は鎧の懐に手を突っ込み、護衛の俺たちは、いっしゅんギクリとした(;'∀')。

曹素:「兄は、こう述べております……」


 曹素はトツトツと兄曹操の指示書を読むが、根が不勉強なせいか、曹操が難しい字や言葉を使いすぎるのか、詰まってばかりなので大橋が「お嫌でなかったら、わたしが読みましょうかぁ?」と微笑みを向ける。

曹素:「あ、これはどうも畏れ入る(#*´△`*# )」

 ことのほか照れまくった曹素から指示書を受け取り、大橋が読み上げた内容に俺たちは息を呑んでしまったぞ。

 

☆彡 主な登場人物

織田 信長       本能寺の変で討ち取られて転生  ニイ(三国志での偽名)
熱田 敦子(熱田大神) あっちゃん 信長担当の尾張の神さま
織田 市        信長の妹  シイ(三国志での偽名)
平手 美姫       信長のクラス担任
武田 信玄       同級生
上杉 謙信       同級生 配下に上杉四天王(直江兼続・柿崎景家・宇佐美定満・甘粕景持 )
古田 織部       茶華道部の眼鏡っ子  越後屋(三国志での偽名)
宮本 武蔵       孤高の剣聖
二宮 忠八       市の友だち 紙飛行機の神さま
雑賀 孫一       クラスメート
松平 元康       クラスメート 後の徳川家康
リュドミラ       旧ソ連の女狙撃手 リュドミラ・ミハイロヴナ・パヴリィチェンコ  劉度(三国志での偽名)
今川 義元       学院生徒会長
坂本 乙女       学園生徒会長
曹茶姫         魏の女将軍 部下(備忘録 検品長) 曹操・曹素の妹
諸葛茶孔明       漢の軍師兼丞相
大橋紅茶妃       呉の孫策妃 コウちゃん
孫権          呉王孫策の弟 大橋の義弟
天照大神        御山の御祭神  弟に素戔嗚  部下に思金神(オモイカネノカミ) 一言主
 
 

 
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

元おっさんの俺、公爵家嫡男に転生~普通にしてるだけなのに、次々と問題が降りかかってくる~

おとら@ 書籍発売中
ファンタジー
アルカディア王国の公爵家嫡男であるアレク(十六歳)はある日突然、前触れもなく前世の記憶を蘇らせる。 どうやら、それまでの自分はグータラ生活を送っていて、ろくでもない評判のようだ。 そんな中、アラフォー社畜だった前世の記憶が蘇り混乱しつつも、今の生活に慣れようとするが……。 その行動は以前とは違く見え、色々と勘違いをされる羽目に。 その結果、様々な女性に迫られることになる。 元婚約者にしてツンデレ王女、専属メイドのお調子者エルフ、決闘を仕掛けてくるクーデレ竜人姫、世話をすることなったドジっ子犬耳娘など……。 「ハーレムは嫌だァァァァ! どうしてこうなった!?」 今日も、そんな彼の悲鳴が響き渡る。

辺境に住む元Cランク冒険者である俺の義理の娘達は、剣聖、大魔導師、聖女という特別な称号を持っているのに何歳になっても甘えてくる

マーラッシュ
ファンタジー
俺はユクト29歳元Cランクの冒険者だ。 魔物によって滅ぼされた村から拾い育てた娘達は15歳になり女神様から剣聖、大魔導師、聖女という特別な称号を頂いたが⋯⋯しかしどこを間違えたのか皆父親の俺を溺愛するようになり好きあらばスキンシップを取ってくる。 どうしてこうなった? 朝食時三女トアの場合 「今日もパパの為に愛情を込めてご飯を作ったから⋯⋯ダメダメ自分で食べないで。トアが食べさせてあげるね⋯⋯あ~ん」 浴室にて次女ミリアの場合 「今日もお仕事お疲れ様。 別に娘なんだから一緒にお風呂に入るのおかしくないよね? ボクがパパの背中を流してあげるよ」 就寝時ベットにて長女セレナの場合 「パパ⋯⋯今日一緒に寝てもいい? 嫌だなんて言わないですよね⋯⋯パパと寝るのは娘の特権ですから。これからもよろしくお願いします」 何故こうなってしまったのか!?  これは15歳のユクトが3人の乳幼児を拾い育て、大きくなっても娘達から甘えられ、戸惑いながらも暮らしていく物語です。 ☆第15回ファンタジー小説大賞に参加しています!【投票する】から応援いただけると更新の励みになります。 *他サイトにも掲載しています。

転生しても実家を追い出されたので、今度は自分の意志で生きていきます

藤なごみ
ファンタジー
※コミカライズスタートしました!  2024年10月下旬にコミック第一巻刊行予定です 2023年9月21日に第一巻、2024年3月21日に第二巻が発売されました 2024年8月中旬第三巻刊行予定です ある少年は、母親よりネグレクトを受けていた上に住んでいたアパートを追い出されてしまった。 高校進学も出来ずにいたとあるバイト帰りに、酔っ払いに駅のホームから突き飛ばされてしまい、電車にひかれて死んでしまった。 しかしながら再び目を覚ました少年は、見た事もない異世界で赤子として新たに生をうけていた。 だが、赤子ながらに周囲の話を聞く内に、この世界の自分も幼い内に追い出されてしまう事に気づいてしまった。 そんな中、突然見知らぬ金髪の幼女が連れてこられ、一緒に部屋で育てられる事に。 幼女の事を妹として接しながら、この子も一緒に追い出されてしまうことが分かった。 幼い二人で来たる追い出される日に備えます。 基本はお兄ちゃんと妹ちゃんを中心としたストーリーです カクヨム様と小説家になろう様にも投稿しています 2023/08/30 題名を以下に変更しました 「転生しても実家を追い出されたので、今度は自分の意志で生きていきたいと思います」→「転生しても実家を追い出されたので、今度は自分の意志で生きていきます」 書籍化が決定しました 2023/09/01 アルファポリス社様より9月中旬に刊行予定となります 2023/09/06 アルファポリス様より、9月19日に出荷されます 呱々唄七つ先生の素晴らしいイラストとなっております 2024/3/21 アルファポリス様より第二巻が発売されました 2024/4/24 コミカライズスタートしました 2024/8/12 アルファポリス様から第三巻が八月中旬に刊行予定です

RISING 〜夜明けの唄〜

Takaya
ファンタジー
戦争・紛争の収まらぬ戦乱の世で 平和への夜明けを導く者は誰だ? 其々の正義が織り成す長編ファンタジー。 〜本編あらすじ〜 広く豊かな海に囲まれ、大陸に属さず 島国として永きに渡り歴史を紡いできた 独立国家《プレジア》 此の国が、世界に其の名を馳せる事となった 背景には、世界で只一国のみ、そう此の プレジアのみが執り行った政策がある。 其れは《鎖国政策》 外界との繋がりを遮断し自国を守るべく 百年も昔に制定された国家政策である。 そんな国もかつて繋がりを育んで来た 近隣国《バルモア》との戦争は回避出来ず。 百年の間戦争によって生まれた傷跡は 近年の自国内紛争を呼ぶ事態へと発展。 その紛争の中心となったのは紛れも無く 新しく掲げられた双つの旗と王家守護の 象徴ともされる一つの旗であった。 鎖国政策を打ち破り外界との繋がりを 再度育み、此の国の衰退を止めるべく 立ち上がった《独立師団革命軍》 異国との戦争で生まれた傷跡を活力に 革命軍の考えを異と唱え、自国の文化や 歴史を護ると決めた《護国師団反乱軍》 三百年の歴史を誇るケーニッヒ王家に仕え 毅然と正義を掲げ、自国最高の防衛戦力と 評され此れを迎え討つ《国王直下帝国軍》 乱立した隊旗を起点に止まらぬ紛争。 今プレジアは変革の時を期せずして迎える。 此の歴史の中で起こる大きな戦いは後に 《日の出戦争》と呼ばれるが此の物語は 此のどれにも属さず、己の運命に翻弄され 巻き込まれて行く一人の流浪人の物語ーー。 

スライムと異世界冒険〜追い出されたが実は強かった

Miiya
ファンタジー
学校に一人で残ってた時、突然光りだし、目を開けたら、王宮にいた。どうやら異世界召喚されたらしい。けど鑑定結果で俺は『成長』 『テイム』しかなく、弱いと追い出されたが、実はこれが神クラスだった。そんな彼、多田真司が森で出会ったスライムと旅するお話。 *ちょっとネタばれ 水が大好きなスライム、シンジの世話好きなスライム、建築もしてしまうスライム、小さいけど鉱石仕分けたり探索もするスライム、寝るのが大好きな白いスライム等多種多様で個性的なスライム達も登場!! *11月にHOTランキング一位獲得しました。 *なるべく毎日投稿ですが日によって変わってきますのでご了承ください。一話2000~2500で投稿しています。 *パソコンからの投稿をメインに切り替えました。ですので字体が違ったり点が変わったりしてますがご了承ください。

転生したら貴族の息子の友人A(庶民)になりました。

ファンタジー
〈あらすじ〉 信号無視で突っ込んできたトラックに轢かれそうになった子どもを助けて代わりに轢かれた俺。 目が覚めると、そこは異世界!? あぁ、よくあるやつか。 食堂兼居酒屋を営む両親の元に転生した俺は、庶民なのに、領主の息子、つまりは貴族の坊ちゃんと関わることに…… 面倒ごとは御免なんだが。 魔力量“だけ”チートな主人公が、店を手伝いながら、学校で学びながら、冒険もしながら、領主の息子をからかいつつ(オイ)、のんびり(できたらいいな)ライフを満喫するお話。 誤字脱字の訂正、感想、などなど、お待ちしております。 やんわり決まってるけど、大体行き当たりばったりです。

【完結】転生少女は異世界でお店を始めたい

梅丸
ファンタジー
せっかく40代目前にして夢だった喫茶店オープンに漕ぎ着けたと言うのに事故に遭い呆気なく命を落としてしまった私。女神様が管理する異世界に転生させてもらい夢を実現するために奮闘するのだが、この世界には無いものが多すぎる! 創造魔法と言う女神様から授かった恩寵と前世の料理レシピを駆使して色々作りながら頑張る私だった。

異世界に来ちゃったよ!?

いがむり
ファンタジー
235番……それが彼女の名前。記憶喪失の17歳で沢山の子どもたちと共にファクトリーと呼ばれるところで楽しく暮らしていた。 しかし、現在森の中。 「とにきゃく、こころこぉ?」 から始まる異世界ストーリー 。 主人公は可愛いです! もふもふだってあります!! 語彙力は………………無いかもしれない…。 とにかく、異世界ファンタジー開幕です! ※不定期投稿です…本当に。 ※誤字・脱字があればお知らせ下さい (※印は鬱表現ありです)

処理中です...