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151『豊盃羽沙壽(ほうはいぱさじゅ)の秋』

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鳴かぬなら 信長転生記

151『豊盃羽沙壽(ほうはいぱさじゅ)の秋』孫権 




 春物がショ-ウィンドウに並び始めたと思ったら、もう秋物のクリアランスセールだ。

 こないだまで開けていたアーケードの天井もふたを閉め、お店によっては暖房を入れ始めた。



 豊盃羽沙壽(ほうはいぱさじゅ)は、この半年で豊盃の人気スポットになった。

 パサージュ全体の売り上げは半年で八割増し。コウちゃん(孫策妃大橋)の『グランポット アンティケール』は筋向いの書店を吸収して倍の規模になった。

 書店も善戦していたんだけど、パサージュの中央十字路(パサージュの一等地)の店舗としては見劣りがした。日に二回行われるイベントの時間には書店は空になった。喫茶店、飲茶、アンティケールの三店は、イベントの時間でも店内は一杯。書店の前は見物客で溢れるが、書店は空になることが多くなった。

「いえいえ、不足は無いんです。年寄夫婦の店としては十分商売になります。でも、ここの賑わいには他のお店が入った方が良いかと思います」

 店主はパサージュが出来る前から豊盃楼の一階で書店をやっていて、もともと数年の内には店を畳むつもりでいた。

 お客も半世紀前の創業のころからのお年寄が多く、パサージュの賑わいを面白がっているけど、ちょっと気圧される感じがして、イベントの時間を避けるようになってきたんだ。

 コウちゃんは、この先輩書店とお客に敬意を払って、以前と同じ店賃で中央十字路に、いわば頼み込んで店を出してもらっていた。なんせ、コウちゃんは豊盃楼そのもののオーナーでもあるんだからね。

 けっきょく、老夫婦の権利は残して姉さんが書店を借りる形で引き継いだ。

 オーナーが店子に賃料を払うというおかしな関係だけど、関係者も、パサージュのお客さんたちも粋な計らいだと喜んでくれている。

 書店跡のお店はアンティークというよりはファンシーショップ。

 よそのファンシーショップと違うのは、本業のアンテークショップで人気の有った、もしくは人気の出て欲しい商品のミニチュアグッズ。

 製造は、呉の王立美術学校の生徒にやってもらってる。生徒たちはいい勉強になるし、学費や小遣いの足しになって喜ばれている。例えば秦の時代の刀を模したペーパーナイフやかんざしを1/4にしたヘアピンにしたものなんかが良く売れた。

 そして、この店の店番をしているのがリュドミラ。

 最初は、古田織部、こっちでは越後屋を名乗ってる。そのガードとしてやってきて、ひょんなことで子どもの頃に憶えた胡旋舞をバザールで披露するハメになり、これが大評判になって、古田織部が茶姫とともに扶桑に戻ってからは、このパサージュのイベントで胡旋舞のダンサーとして活躍している。



「ねえ、胡旋舞と店番と、どっちがいい?」

 お客の流れが途切れた時に聞いてみた。

「わたしは狙撃手だ」

「そんな物騒なこと言わないでさ」

「だって、転生前からの天職だ。ここへも、その腕を買われてガードとしてやってきた」

「ボクは、胡旋舞のダンサーが向いてると思うよ。踊ってるとき、リュドミラはとても生き生きしてるし」

「そうか?」

「そうだよ、店番してるときは、めちゃくちゃ仏頂面だし」

「これがデフォルトだ」

「アハハ……せめて、ジト目でお客を睨むのは止めた方がいいと思う」

「……生まれつきだ、なおらん」

「そんなことないよ、ほら、この写真なんか(カメラに保存してある写真を見せる)……ほら、ちゃんと微笑んでるし、ジト目じゃないし」

「しゃ、写真を修正するな(#'∀'#)」

「修正なんかしてないよ」

「うそ(#'・'#)」

「無修正だってば!」

「ちょっとぉ、こっちの店まで聞こえてる」

「あ、コウちゃん」

「写真見ながら無修正って叫ばないでよ、お客さんが誤解するから」

「「え?」」

 女子高生のお客が真っ赤な顔して逃げるし、おっさんの客は変な期待で見てるし(^_^;)。

「週刊誌と新聞、納品きてるわよ、あ、いらっしゃいませ~(^▽^)」

 無修正の注意をすると向かいの店に戻るコウちゃん。

 店の前の納品を取りに行く。

 ファンシーショップだけど、パサージュで新聞を売っている店は無いし、書店の頃からの付き合いもあるので売っている。

「よいしょっと」

「お……」

「読むんだったら運んでからにしてよ」

「あ、ごめん。三蔵法師、大活躍みたいだねえ」

 新聞の一面には『三蔵法師一行大活躍!』の見出しが躍って、仏像に化けた妖怪をやっつけた一行の写真が載っていた。一昨日も牛魔王と羅刹女をやっつけた記事が出ていたし、その前は玉門関の活躍だった。

 ちょっとブームになるかもしれないと思った。

 

☆彡 主な登場人物

織田 信長       本能寺の変で討ち取られて転生  ニイ(三国志での偽名)
熱田 敦子(熱田大神) あっちゃん 信長担当の尾張の神さま
織田 市        信長の妹  シイ(三国志での偽名)
平手 美姫       信長のクラス担任
武田 信玄       同級生
上杉 謙信       同級生
古田 織部       茶華道部の眼鏡っ子  越後屋(三国志での偽名)
宮本 武蔵       孤高の剣聖
二宮 忠八       市の友だち 紙飛行機の神さま
雑賀 孫一       クラスメート
松平 元康       クラスメート 後の徳川家康
リュドミラ       旧ソ連の女狙撃手 リュドミラ・ミハイロヴナ・パヴリィチェンコ  劉度(三国志での偽名)
今川 義元       学院生徒会長
坂本 乙女       学園生徒会長
曹茶姫         魏の女将軍 部下(備忘録 検品長) 曹操・曹素の妹
諸葛茶孔明       漢の軍師兼丞相
大橋紅茶妃       呉の孫策妃 コウちゃん
孫権          呉王孫策の弟 大橋の義弟
天照大神        御山の御祭神  弟に素戔嗚  部下に思金神(オモイカネノカミ) 一言主

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