上 下
114 / 192

114『いざ出陣!』

しおりを挟む
鳴かぬなら 信長転生記

114『いざ出陣!』信長 




 敵部隊を発見しました! 


 五組の偵察隊の内三組が敵を発見した。

「三組とも発見だと! どれが本当なんだ(;'∀')!?」

 矢継ぎ早に三隊の報告を聞いて桃太郎は焦った。当然部下たちにも動揺が走る。

「落ち着け、三隊とも正しい報告をしておる」

「どうしてだ、偵察隊は一里(4キロ)の間隔をあけて出してある、三組とも敵部隊を発見するのはおかしいじゃないか!?」

「同じなんだ。二番から四番の偵察隊が発見している、それぞれ、同じ軍勢の頭と腹と尻尾を発見したんだ。敵の行軍は、少なく見積もって三里、常識的に考えれば四里ほどになるだろう」

「四里……16キロの行軍か!?」

「敵の行軍は何列だった?」

 二列!   三列です!   四列でした!

「バラバラじゃないか! 役に立たん偵察隊だ!」

 気の短そうな猿が顔を赤くする。

「行軍は道幅によって変化する。中をとって三列と考えればいいだろう」

「三列だとすると……一人1メートル……一里で4000……それが三列で……四里で36000人」

 冷静な犬が即座に計算し、雉と猿と三人で顔を見交わす。

 さすがは桃太郎の幕僚、いきなり声を上げては、動揺をきたすと声を呑む。

「36000だとぉ!」

 そう叫んで桃太郎は馬の鞍に立って自軍の数を、よせばいいのに数える。

「何度数えても3000人しかいないんだぞ!」

 ええ~~~~~~~(;'∀')!!

 一瞬で動揺が走る。



「狼狽えるな!」



 いかん、つい自分の軍勢を率いている気になって一喝してしまう。



 シーーーーーーーン



 く……静まるのはいいが、その目は止めろ、まるでわたしが大将のようではないか(-_-;)。

「頼むよ鶴姫ぇ(^_^;)」

 桃太郎、だらしなすぎ!

 ここはいちばんカマシて、全軍の気を一つにしなければ!

「聞け! この森で足を停めたのも故あってのこと、見よ、そこな桃の木を!」

 桃かどうかは分からんが、桃色じみた五弁の花をワッサカ咲かせている。これをネタにするしかない。

「御大将桃太郎を賞賛する奇瑞の徴! これより、全軍で必勝の祈念をする! 御大将を中心に扇の形に開け!」

 

 おお!!



 戦はノリと勢いだ。敵の位置は掴めた。大将桃太郎のテンションをマックスにあげて、一気に敵の中央を突くにしくはない。

「な、なんて言って祈願したらいい?」

「焦るな、祝詞はあげてやる。お前は、しっかり拝跪して『いざ、出陣!』と叫べばいい」

「わ、分かった鶴ちゃん(#'∀'#)」



「かけまくも、畏き桃の木大神に畏まりて申さく……我ら桃太郎軍団三千余名は、この桃の森に旗を上げ、仇なす鬼どもを平らげんと欲し……」



 我ながらすらすらと祝詞の願文が浮かんでくる。

 大山祇神社の鶴姫の成りをしているからか? 

 いや、これはデジャヴ……桶狭間の出陣において、熱田神宮で願文を捧げた時に似ている。

 カチャカチャ

 腰の草薙の剣が鳴った。そうか、草薙の剣はあっちゃんの本性。

 奮い立っているようにも、笑っているようにも感じられる。

 こういう場合は良い方に受け止めて置けばいい。

「よし! 桃の木大神は我らを嘉したもうたぞ! 御大将、檄をとばされませ!」

「お、おう!…………」

「なんか言え!」

「も、桃栗三年柿八年! 梅は酸い酸い十三年 梨はゆるゆる十五年 柚子の大馬鹿十八年 蜜柑の間抜けは二十年!」

 なんか、無駄に格言を並べてる。

「ここに気は満ちた! いざいざ出陣じゃあ!!!」

「「「「「「「「「「おお!!」」」」」」」」」」



 ゴロゴロゴロ、ピッシャーーン!!



 折から、俄かに雷鳴轟き、稲妻が走った!

 もう完全に桶狭間のノリだ。

 ノリと勢いは十分、敵の大将は桶狭間!

 三千の軍勢は、馬蹄を轟かせ篠突く雨の中を桶狭間的なものに向かって突き進んだ!

 しかし、これは素戔嗚の化身たる桃太郎退治のはず?

 まあいい、乗りかかった戦、設定は桶狭間そのもの。



 ならば勝つしかない!

 

☆彡 主な登場人物

織田 信長       本能寺の変で討ち取られて転生  ニイ(三国志での偽名)
熱田 敦子(熱田大神) 信長担当の尾張の神さま
織田 市        信長の妹  シイ(三国志での偽名)
平手 美姫       信長のクラス担任
武田 信玄       同級生
上杉 謙信       同級生
古田 織部       茶華道部の眼鏡っ子  越後屋(三国志での偽名)
宮本 武蔵       孤高の剣聖
二宮 忠八       市の友だち 紙飛行機の神さま
雑賀 孫一       クラスメート
松平 元康       クラスメート 後の徳川家康
リュドミラ       旧ソ連の女狙撃手 リュドミラ・ミハイロヴナ・パヴリィチェンコ  劉度(三国志での偽名)
今川 義元       学院生徒会長
坂本 乙女       学園生徒会長
曹茶姫         魏の女将軍 部下(備忘録 検品長) 曹操・曹素の妹
諸葛茶孔明       漢の軍師兼丞相
大橋紅茶妃       呉の孫策妃 コウちゃん
孫権          呉王孫策の弟 大橋の義弟
天照大神        御山の御祭神

 

 
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

【完結】前世の不幸は神様のミスでした?異世界転生、条件通りなうえチート能力で幸せです

yun.
ファンタジー
~タイトル変更しました~ 旧タイトルに、もどしました。 日本に生まれ、直後に捨てられた。養護施設に暮らし、中学卒業後働く。 まともな職もなく、日雇いでしのぐ毎日。 劣悪な環境。上司にののしられ、仲のいい友人はいない。 日々の衣食住にも困る。 幸せ?生まれてこのかた一度もない。 ついに、死んだ。現場で鉄パイプの下敷きに・・・ 目覚めると、真っ白な世界。 目の前には神々しい人。 地球の神がサボった?だから幸せが1度もなかったと・・・ 短編→長編に変更しました。 R4.6.20 完結しました。 長らくお読みいただき、ありがとうございました。

称号は神を土下座させた男。

春志乃
ファンタジー
「真尋くん! その人、そんなんだけど一応神様だよ! 偉い人なんだよ!」 「知るか。俺は常識を持ち合わせないクズにかける慈悲を持ち合わせてない。それにどうやら俺は死んだらしいのだから、刑務所も警察も法も無い。今ここでこいつを殺そうが生かそうが俺の自由だ。あいつが居ないなら地獄に落ちても同じだ。なあ、そうだろう? ティーンクトゥス」 「す、す、す、す、す、すみませんでしたあぁあああああああ!」 これは、馬鹿だけど憎み切れない神様ティーンクトゥスの為に剣と魔法、そして魔獣たちの息づくアーテル王国でチートが過ぎる男子高校生・水無月真尋が無自覚チートの親友・鈴木一路と共に神様の為と言いながら好き勝手に生きていく物語。 主人公は一途に幼馴染(女性)を想い続けます。話はゆっくり進んでいきます。 ※教会、神父、などが出てきますが実在するものとは一切関係ありません。 ※対応できない可能性がありますので、誤字脱字報告は不要です。 ※無断転載は厳に禁じます

【完結】伴侶がいるので、溺愛ご遠慮いたします

  *  
BL
3歳のノィユが、カビの生えてないご飯を求めて結ばれることになったのは、北の最果ての領主のおじいちゃん……え、おじいちゃん……!? しあわせの絶頂にいるのを知らない王子たちが吃驚して憐れんで溺愛してくれそうなのですが、結構です! めちゃくちゃかっこよくて可愛い伴侶がいますので! 本編完結しました! 時々おまけを更新しています。

私は家のことにはもう関わりませんから、どうか可愛い妹の面倒を見てあげてください。

木山楽斗
恋愛
侯爵家の令嬢であるアルティアは、家で冷遇されていた。 彼女の父親は、妾とその娘である妹に熱を上げており、アルティアのことは邪魔とさえ思っていたのである。 しかし妾の子である意網を婿に迎える立場にすることは、父親も躊躇っていた。周囲からの体裁を気にした結果、アルティアがその立場となったのだ。 だが、彼女は婚約者から拒絶されることになった。彼曰くアルティアは面白味がなく、多少わがままな妹の方が可愛げがあるそうなのだ。 父親もその判断を支持したことによって、アルティアは家に居場所がないことを悟った。 そこで彼女は、母親が懇意にしている伯爵家を頼り、新たな生活をすることを選んだ。それはアルティアにとって、悪いことという訳ではなかった。家の呪縛から解放された彼女は、伸び伸びと暮らすことにするのだった。 程なくして彼女の元に、婚約者が訪ねて来た。 彼はアルティアの妹のわがままさに辟易としており、さらには社交界において侯爵家が厳しい立場となったことを伝えてきた。妾の子であるということを差し引いても、甘やかされて育ってきた妹の評価というものは、高いものではなかったのだ。 戻って来て欲しいと懇願する婚約者だったが、アルティアはそれを拒絶する。 彼女にとって、婚約者も侯爵家も既に助ける義理はないものだったのだ。

妹はわたくしの物を何でも欲しがる。何でも、わたくしの全てを……そうして妹の元に残るモノはさて、なんでしょう?

ラララキヲ
ファンタジー
 姉と下に2歳離れた妹が居る侯爵家。  両親は可愛く生まれた妹だけを愛し、可愛い妹の為に何でもした。  妹が嫌がることを排除し、妹の好きなものだけを周りに置いた。  その為に『お城のような別邸』を作り、妹はその中でお姫様となった。  姉はそのお城には入れない。  本邸で使用人たちに育てられた姉は『次期侯爵家当主』として恥ずかしくないように育った。  しかしそれをお城の窓から妹は見ていて不満を抱く。  妹は騒いだ。 「お姉さまズルい!!」  そう言って姉の着ていたドレスや宝石を奪う。  しかし…………  末娘のお願いがこのままでは叶えられないと気付いた母親はやっと重い腰を上げた。愛する末娘の為に母親は無い頭を振り絞って素晴らしい方法を見つけた。  それは『悪魔召喚』  悪魔に願い、  妹は『姉の全てを手に入れる』……── ※作中は[姉視点]です。 ※一話が短くブツブツ進みます ◇ふんわり世界観。ゆるふわ設定。 ◇ご都合展開。矛盾もあるかも。 ◇なろうにも上げました。

集団転移した商社マン ネットスキルでスローライフしたいです!

七転び早起き
ファンタジー
「望む3つのスキルを付与してあげる」 その天使の言葉は善意からなのか? 異世界に転移する人達は何を選び、何を求めるのか? そして主人公が○○○が欲しくて望んだスキルの1つがネットスキル。 ただし、その扱いが難しいものだった。 転移者の仲間達、そして新たに出会った仲間達と異世界を駆け巡る物語です。 基本は面白くですが、シリアスも顔を覗かせます。猫ミミ、孤児院、幼女など定番物が登場します。 ○○○「これは私とのラブストーリーなの!」 主人公「いや、それは違うな」

転生墓守は伝説騎士団の後継者

深田くれと
ファンタジー
 歴代最高の墓守のロアが圧倒的な力で無双する物語。

5歳で前世の記憶が混入してきた  --スキルや知識を手に入れましたが、なんで中身入ってるんですか?--

ばふぉりん
ファンタジー
 「啞"?!@#&〆々☆¥$€%????」   〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜  五歳の誕生日を迎えた男の子は家族から捨てられた。理由は 「お前は我が家の恥だ!占星の儀で訳の分からないスキルを貰って、しかも使い方がわからない?これ以上お前を育てる義務も義理もないわ!」    この世界では五歳の誕生日に教会で『占星の儀』というスキルを授かることができ、そのスキルによってその後の人生が決まるといっても過言では無い。  剣聖 聖女 影朧といった上位スキルから、剣士 闘士 弓手といった一般的なスキル、そして家事 農耕 牧畜といったもうそれスキルじゃないよね?といったものまで。  そんな中、この五歳児が得たスキルは  □□□□  もはや文字ですら無かった ~~~~~~~~~~~~~~~~~  本文中に顔文字を使用しますので、できれば横読み推奨します。  本作中のいかなる個人・団体名は実在するものとは一切関係ありません。  

処理中です...