113 / 192
113『なんでこうなるんだ?』
しおりを挟む
鳴かぬなら 信長転生記
113『なんでこうなるんだ?』信長
ヒヒーーーン!!
なに奴!?
俺の登場に馬が棹立ちになり危うく振り落とされそうになっているが、さすがに素戔嗚の化身たる桃太郎。
カツカツと輪乗り(その場で丸く回って、馬の勢いを鎮める乗り方)し『待ったなし!』をかけられた関取のような目で睨んできた。
はてさて、どうやっていなしてやろうか。
すると、奴の方が恋人を発見したように瞳孔と口を全開にして意外な反応を示す。
「や! やややや! 大三島の鶴姫ではないか!」
え? あ!?
そうか、俺が身に着けているのは、大三島は大山祇神社に伝わる重要文化財の鶴姫の胴丸鎧。
鶴姫は全国区的なヒロインではないが、大山祇神社は厳島神社と並ぶ瀬戸内の伝統ある大神社。桃太郎にしろ素戔嗚にしろ面識があっても不思議ではない。
それに、うかつに飛び出したが、こいつの後ろには三千の軍勢。やっつけるのは、ちょっと厄介。
それに、間近で見ると天照が言うほどの悪党ではない。
探ってからでも遅くはあるまい。
「鶴姫と呼ばれて覚えはないが、この迂闊な軍勢、放ってはおけん」
「え、あ…………迂闊かなあ?」
桃太郎が首を後ろに回すと、三千の家来共も『え、そうなのか?』と互いに顔を見交わす。
「ああ、隘路(隠れた狭い道)を選んで密かに進軍しているつもりだろうが、おびただしい砂煙を上げて正体バレバレだぞ。それに、大将が先頭に居てどうする。今のわたしのように襲い掛かられては、軍勢の後ろが気づく前に討ち取られてしまうぞ。大将たる者は中軍でどっしり構えているものだ」
「ダメなのか? 先頭の方がカッコよくね? いや、カッコよさって、すごく士気に影響するもんだしね。オレって小柄だからさ、先頭で旗振ってなきゃ目立たないっしょ(^_^;)」
「いや、そうじゃなくてだな……」
「うん?」
「だから」
「いや、鶴ちゃんの、そういうとこいいなあ( ´艸`)。越智安成が惚れたのよく分かるわあ……いや、ごめん。人の彼女をそんな目で見ちゃいけないよね、メ!」
パチン
ワハハハハハハ
桃太郎が自分のオデコを叩くと、三千の軍勢がいっせいに笑う。こいつ、意外と人たらしか?
「いや、こうなったら実践あるのみ。わたしが軍師を務めてやるから、下知に従え」
「望むところだ!」
おお!!
「じゃあ、鶴ちゃん先頭を走ってよ、僕は中軍とかにいるからさ。声かけてくれたら、いつでも先頭に並んで、いっしょに戦うからさ」
「いや、それはいい。まずは、あの森の中に入って姿を消すぞ」
「ええ、そうなの? ま、いいや、みんなあの森の中に進んでえ!」
「音を立てるな! 砂煙をあげるな!」
五分ほどで軍勢を森に隠し、馬の口には枚(バイ)を噛ませ、具足の草摺は紐で縛らせた。
「偵察隊を出す、臆病な兵を十人呼んでくれ」
「臆病なやつ? 勇敢なやつじゃなくて?」
「ああ、勇敢な奴は深入りしすぎる。発見されて、かえってこちらの居所を知られてしまう。程よい距離から、おおよその敵の場所、規模と配置が分かればいい。二人一組として五組放ち、共通の兆候が見えれば、それが敵の姿だ」
「分かった。じゃあ、雉、適当なの十人選んで偵察に行かせて」
「ケーーーン」
「それから部隊編成だ。おまえの部隊はバラバラ過ぎる」
「ええ、そう? 行軍練習はけっこうやったんだよ。ここまで走って来て、軍列は伸びてないし脱落者もいないし」
「いや、そういうことではなくてな。軍というのは装備ごとにまとめなきゃダメだ。先頭は鉄砲、二番が弓隊、三番が槍隊、そして騎兵と歩兵だ。鉄砲と弓は一撃を加えたら後ろに回し、状況の変化に応じて必要なところに手当てする。その采配を振るうのが大将の役割だ」
「そうなのか! なんか、話聞いてるだけで強くなったような気がするよ(^▽^)」
「じゃあ、さっさとやってくれ。並べ変えたら、組頭以上を集めて徹底しろ」
「よし、猿と犬で全部隊に下知しろ」
「ウキキ」「ワンワン」
森の中で、静かに確実に編成替えが行われる。やればできる部隊だ。
しかし、なんでこうなるんだ?
☆彡 主な登場人物
織田 信長 本能寺の変で討ち取られて転生 ニイ(三国志での偽名)
熱田 敦子(熱田大神) 信長担当の尾張の神さま
織田 市 信長の妹 シイ(三国志での偽名)
平手 美姫 信長のクラス担任
武田 信玄 同級生
上杉 謙信 同級生
古田 織部 茶華道部の眼鏡っ子 越後屋(三国志での偽名)
宮本 武蔵 孤高の剣聖
二宮 忠八 市の友だち 紙飛行機の神さま
雑賀 孫一 クラスメート
松平 元康 クラスメート 後の徳川家康
リュドミラ 旧ソ連の女狙撃手 リュドミラ・ミハイロヴナ・パヴリィチェンコ 劉度(三国志での偽名)
今川 義元 学院生徒会長
坂本 乙女 学園生徒会長
曹茶姫 魏の女将軍 部下(備忘録 検品長) 曹操・曹素の妹
諸葛茶孔明 漢の軍師兼丞相
大橋紅茶妃 呉の孫策妃 コウちゃん
孫権 呉王孫策の弟 大橋の義弟
天照大神 御山の御祭神
113『なんでこうなるんだ?』信長
ヒヒーーーン!!
なに奴!?
俺の登場に馬が棹立ちになり危うく振り落とされそうになっているが、さすがに素戔嗚の化身たる桃太郎。
カツカツと輪乗り(その場で丸く回って、馬の勢いを鎮める乗り方)し『待ったなし!』をかけられた関取のような目で睨んできた。
はてさて、どうやっていなしてやろうか。
すると、奴の方が恋人を発見したように瞳孔と口を全開にして意外な反応を示す。
「や! やややや! 大三島の鶴姫ではないか!」
え? あ!?
そうか、俺が身に着けているのは、大三島は大山祇神社に伝わる重要文化財の鶴姫の胴丸鎧。
鶴姫は全国区的なヒロインではないが、大山祇神社は厳島神社と並ぶ瀬戸内の伝統ある大神社。桃太郎にしろ素戔嗚にしろ面識があっても不思議ではない。
それに、うかつに飛び出したが、こいつの後ろには三千の軍勢。やっつけるのは、ちょっと厄介。
それに、間近で見ると天照が言うほどの悪党ではない。
探ってからでも遅くはあるまい。
「鶴姫と呼ばれて覚えはないが、この迂闊な軍勢、放ってはおけん」
「え、あ…………迂闊かなあ?」
桃太郎が首を後ろに回すと、三千の家来共も『え、そうなのか?』と互いに顔を見交わす。
「ああ、隘路(隠れた狭い道)を選んで密かに進軍しているつもりだろうが、おびただしい砂煙を上げて正体バレバレだぞ。それに、大将が先頭に居てどうする。今のわたしのように襲い掛かられては、軍勢の後ろが気づく前に討ち取られてしまうぞ。大将たる者は中軍でどっしり構えているものだ」
「ダメなのか? 先頭の方がカッコよくね? いや、カッコよさって、すごく士気に影響するもんだしね。オレって小柄だからさ、先頭で旗振ってなきゃ目立たないっしょ(^_^;)」
「いや、そうじゃなくてだな……」
「うん?」
「だから」
「いや、鶴ちゃんの、そういうとこいいなあ( ´艸`)。越智安成が惚れたのよく分かるわあ……いや、ごめん。人の彼女をそんな目で見ちゃいけないよね、メ!」
パチン
ワハハハハハハ
桃太郎が自分のオデコを叩くと、三千の軍勢がいっせいに笑う。こいつ、意外と人たらしか?
「いや、こうなったら実践あるのみ。わたしが軍師を務めてやるから、下知に従え」
「望むところだ!」
おお!!
「じゃあ、鶴ちゃん先頭を走ってよ、僕は中軍とかにいるからさ。声かけてくれたら、いつでも先頭に並んで、いっしょに戦うからさ」
「いや、それはいい。まずは、あの森の中に入って姿を消すぞ」
「ええ、そうなの? ま、いいや、みんなあの森の中に進んでえ!」
「音を立てるな! 砂煙をあげるな!」
五分ほどで軍勢を森に隠し、馬の口には枚(バイ)を噛ませ、具足の草摺は紐で縛らせた。
「偵察隊を出す、臆病な兵を十人呼んでくれ」
「臆病なやつ? 勇敢なやつじゃなくて?」
「ああ、勇敢な奴は深入りしすぎる。発見されて、かえってこちらの居所を知られてしまう。程よい距離から、おおよその敵の場所、規模と配置が分かればいい。二人一組として五組放ち、共通の兆候が見えれば、それが敵の姿だ」
「分かった。じゃあ、雉、適当なの十人選んで偵察に行かせて」
「ケーーーン」
「それから部隊編成だ。おまえの部隊はバラバラ過ぎる」
「ええ、そう? 行軍練習はけっこうやったんだよ。ここまで走って来て、軍列は伸びてないし脱落者もいないし」
「いや、そういうことではなくてな。軍というのは装備ごとにまとめなきゃダメだ。先頭は鉄砲、二番が弓隊、三番が槍隊、そして騎兵と歩兵だ。鉄砲と弓は一撃を加えたら後ろに回し、状況の変化に応じて必要なところに手当てする。その采配を振るうのが大将の役割だ」
「そうなのか! なんか、話聞いてるだけで強くなったような気がするよ(^▽^)」
「じゃあ、さっさとやってくれ。並べ変えたら、組頭以上を集めて徹底しろ」
「よし、猿と犬で全部隊に下知しろ」
「ウキキ」「ワンワン」
森の中で、静かに確実に編成替えが行われる。やればできる部隊だ。
しかし、なんでこうなるんだ?
☆彡 主な登場人物
織田 信長 本能寺の変で討ち取られて転生 ニイ(三国志での偽名)
熱田 敦子(熱田大神) 信長担当の尾張の神さま
織田 市 信長の妹 シイ(三国志での偽名)
平手 美姫 信長のクラス担任
武田 信玄 同級生
上杉 謙信 同級生
古田 織部 茶華道部の眼鏡っ子 越後屋(三国志での偽名)
宮本 武蔵 孤高の剣聖
二宮 忠八 市の友だち 紙飛行機の神さま
雑賀 孫一 クラスメート
松平 元康 クラスメート 後の徳川家康
リュドミラ 旧ソ連の女狙撃手 リュドミラ・ミハイロヴナ・パヴリィチェンコ 劉度(三国志での偽名)
今川 義元 学院生徒会長
坂本 乙女 学園生徒会長
曹茶姫 魏の女将軍 部下(備忘録 検品長) 曹操・曹素の妹
諸葛茶孔明 漢の軍師兼丞相
大橋紅茶妃 呉の孫策妃 コウちゃん
孫権 呉王孫策の弟 大橋の義弟
天照大神 御山の御祭神
0
お気に入りに追加
8
あなたにおすすめの小説
フェンリルさんちの末っ子は人間でした ~神獣に転生した少年の雪原を駆ける狼スローライフ~
空色蜻蛉
ファンタジー
真白山脈に棲むフェンリル三兄弟、末っ子ゼフィリアは元人間である。
どうでもいいことで山が消し飛ぶ大喧嘩を始める兄二匹を「兄たん大好き!」幼児メロメロ作戦で仲裁したり、たまに襲撃してくる神獣ハンターは、人間時代につちかった得意の剣舞で撃退したり。
そう、最強は末っ子ゼフィなのであった。知らないのは本狼ばかりなり。
ブラコンの兄に溺愛され、自由気ままに雪原を駆ける日々を過ごす中、ゼフィは人間時代に負った心の傷を少しずつ癒していく。
スノードームを覗きこむような輝く氷雪の物語をお届けします。
※今回はバトル成分やシリアスは少なめ。ほのぼの明るい話で、主人公がひたすら可愛いです!
追い出された万能職に新しい人生が始まりました
東堂大稀(旧:To-do)
ファンタジー
「お前、クビな」
その一言で『万能職』の青年ロアは勇者パーティーから追い出された。
『万能職』は冒険者の最底辺職だ。
冒険者ギルドの区分では『万能職』と耳触りのいい呼び方をされているが、めったにそんな呼び方をしてもらえない職業だった。
『雑用係』『運び屋』『なんでも屋』『小間使い』『見習い』。
口汚い者たちなど『寄生虫」と呼んだり、あえて『万能様』と皮肉を効かせて呼んでいた。
要するにパーティーの戦闘以外の仕事をなんでもこなす、雑用専門の最下級職だった。
その底辺職を7年も勤めた彼は、追い出されたことによって新しい人生を始める……。
【一時完結】スキル調味料は最強⁉︎ 外れスキルと笑われた少年は、スキル調味料で無双します‼︎
アノマロカリス
ファンタジー
調味料…それは、料理の味付けに使う為のスパイスである。
この世界では、10歳の子供達には神殿に行き…神託の儀を受ける義務がある。
ただし、特別な理由があれば、断る事も出来る。
少年テッドが神託の儀を受けると、神から与えられたスキルは【調味料】だった。
更にどんなに料理の練習をしても上達しないという追加の神託も授かったのだ。
そんな話を聞いた周りの子供達からは大爆笑され…一緒に付き添っていた大人達も一緒に笑っていた。
少年テッドには、両親を亡くしていて妹達の面倒を見なければならない。
どんな仕事に着きたくて、頭を下げて頼んでいるのに「調味料には必要ない!」と言って断られる始末。
少年テッドの最後に取った行動は、冒険者になる事だった。
冒険者になってから、薬草採取の仕事をこなしていってったある時、魔物に襲われて咄嗟に調味料を魔物に放った。
すると、意外な効果があり…その後テッドはスキル調味料の可能性に気付く…
果たして、その可能性とは⁉
HOTランキングは、最高は2位でした。
皆様、ありがとうございます.°(ಗдಗ。)°.
でも、欲を言えば、1位になりたかった(⌒-⌒; )
クラスメイトの美少女と無人島に流された件
桜井正宗
青春
修学旅行で離島へ向かう最中――悪天候に見舞われ、台風が直撃。船が沈没した。
高校二年の早坂 啓(はやさか てつ)は、気づくと砂浜で寝ていた。周囲を見渡すとクラスメイトで美少女の天音 愛(あまね まな)が隣に倒れていた。
どうやら、漂流して流されていたようだった。
帰ろうにも島は『無人島』。
しばらくは島で生きていくしかなくなった。天音と共に無人島サバイバルをしていくのだが……クラスの女子が次々に見つかり、やがてハーレムに。
男一人と女子十五人で……取り合いに発展!?
本物の聖女じゃないと追放されたので、隣国で竜の巫女をします。私は聖女の上位存在、神巫だったようですがそちらは大丈夫ですか?
今川幸乃
ファンタジー
ネクスタ王国の聖女だったシンシアは突然、バルク王子に「お前は本物の聖女じゃない」と言われ追放されてしまう。
バルクはアリエラという聖女の加護を受けた女を聖女にしたが、シンシアの加護である神巫(かんなぎ)は聖女の上位存在であった。
追放されたシンシアはたまたま隣国エルドラン王国で竜の巫女を探していたハリス王子にその力を見抜かれ、巫女候補として招かれる。そこでシンシアは神巫の力は神や竜など人外の存在の意志をほぼ全て理解するという恐るべきものだということを知るのだった。
シンシアがいなくなったバルクはアリエラとやりたい放題するが、すぐに神の怒りに触れてしまう。
転生しても実家を追い出されたので、今度は自分の意志で生きていきます
藤なごみ
ファンタジー
※コミカライズスタートしました!
2024年10月下旬にコミック第一巻刊行予定です
2023年9月21日に第一巻、2024年3月21日に第二巻が発売されました
2024年8月中旬第三巻刊行予定です
ある少年は、母親よりネグレクトを受けていた上に住んでいたアパートを追い出されてしまった。
高校進学も出来ずにいたとあるバイト帰りに、酔っ払いに駅のホームから突き飛ばされてしまい、電車にひかれて死んでしまった。
しかしながら再び目を覚ました少年は、見た事もない異世界で赤子として新たに生をうけていた。
だが、赤子ながらに周囲の話を聞く内に、この世界の自分も幼い内に追い出されてしまう事に気づいてしまった。
そんな中、突然見知らぬ金髪の幼女が連れてこられ、一緒に部屋で育てられる事に。
幼女の事を妹として接しながら、この子も一緒に追い出されてしまうことが分かった。
幼い二人で来たる追い出される日に備えます。
基本はお兄ちゃんと妹ちゃんを中心としたストーリーです
カクヨム様と小説家になろう様にも投稿しています
2023/08/30
題名を以下に変更しました
「転生しても実家を追い出されたので、今度は自分の意志で生きていきたいと思います」→「転生しても実家を追い出されたので、今度は自分の意志で生きていきます」
書籍化が決定しました
2023/09/01
アルファポリス社様より9月中旬に刊行予定となります
2023/09/06
アルファポリス様より、9月19日に出荷されます
呱々唄七つ先生の素晴らしいイラストとなっております
2024/3/21
アルファポリス様より第二巻が発売されました
2024/4/24
コミカライズスタートしました
2024/8/12
アルファポリス様から第三巻が八月中旬に刊行予定です
チートがちと強すぎるが、異世界を満喫できればそれでいい
616號
ファンタジー
不慮の事故に遭い異世界に転移した主人公アキトは、強さや魔法を思い通り設定できるチートを手に入れた。ダンジョンや迷宮などが数多く存在し、それに加えて異世界からの侵略も日常的にある世界でチートすぎる魔法を次々と編み出して、自由にそして気ままに生きていく冒険物語。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる