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112『桃太郎おおおおおおお!!』
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鳴かぬなら 信長転生記
112『桃太郎おおおおおおお!!』信長
ガチャリ
尾張の田園風景のようだ……体を捻ってロケーションを確認すると草摺の鳴る音がした。
甲冑を身に着けているのだ。
桃太郎(素戔嗚)の鬼退治に付き合うのだから武装はオモイカネ(思金神)のサービスか……しかし、これは、またしても鶴姫の嫌味なくらいに細身の女鎧。
胸と脇の防御はゆとりもあって完ぺきなんだが、ウエストが細すぎる(-_-;)。
先だっての陣触れアラートの時は茶姫の迎えだけで短時間で済んだが、今度は鬼退治、何日かかるか分からん。それをこんなに締め上げては長時間は無理だぞ。
背中には桃形(ももなり)の兜を掛けて、馬手(右)の腕(かいな)には種子島……で、腰の左側が軽いと思ったら、太刀が無い!
種子島は火縄銃、一発撃ったら、次の弾込めには三十秒はかかるぞ! 水に濡れたりとか、汗とか血がついたりしても使い物にならない代物だぞ! 馬防柵を並べて三千丁を三段構えとかにしないと効果のない原始的な銃なんだぞ! やっぱり、刀がいるだろ!
ズチャ!
いきなり腰が重くなる……見ると、小汚い、それも思い切り古いタイプの直刀の太刀が腰のところに具現した。
―― いやあ、この姿は見かけ以上に精緻でね、リアルになるのに時間かかるのよ(^_^;) ――
「あっちゃんか!?」
―― うん、本性っていうか最終形態の草薙の剣、第一形態の敦子の姿よりは役に立つから辛抱してね ――
「で、あるか……」
さて、肝心の桃太郎は?
見渡すと、東の林の向こうに土煙、千を超える部隊が移動している証拠だ。
あぜ道を拾い、小川を飛び越えて林の中へ。
下草をかき分けかき分け、林の反対側に出ると、そこからは緩い崖になっていて、向かいの崖との間に道が伸びている。
ガチャガチャガチャ
派手に武具やら鎧の音をさせながら行軍の真っ最中。
二列になった軍勢の装備はバラバラだ。イッチョマエの具足に身を固めた者もいるが、野良着に二枚胴の前だけを付けた者、貧相な小具足に兜だけは利剣の前立てを打った立派な奴。中には毛皮を胴に巻いて竹やりを担いだだけという者もいて、まあ、数だけは揃えた野伏りの集まりだ。
で、肝心の大将はどこかと伸びた軍勢の後ろへと視線を伸ばす。
しかし、大将らしい騎馬武者の姿は最後尾が見えてきても窺えない。
大将というものは、馬印を掲げさせ、馬周りの護衛騎馬武者を引き具して凛々しく中軍にあるのが定石だ。
……さては軍の主力とは別に動き、本軍そのものを囮としたか? 少し覚えのある大将なら、それぐらいのことはやる。
谷間を走らせては居るが、派手に土煙を上げて、速度だけは速いところなど、ホドホドに『見つけてくれ!』という風に見えなくもない。なんせ、相手の本性は天照でも手を焼く日本の武神の総本家、素戔嗚だ。
―― あまり尊敬しない方がいい ――
え、そうなのか?
あっちゃんの言葉に閃いた俺は、崖の上を軍勢の流れに沿って遡った。
そして見つけた!
白地錦の陣羽織の背中には双葉を添えた桃の実があしらわれ、背中の旗指物は、その速さの為に中ほどで折れ、ヨレてしまった文字は「本」の字が潰れて「1日」あるいは「旧」としか見えない。
前にまわると、こいつは着ぐるみかと思うほどに顔がデカい!
赤地錦の直垂に赤糸縅の胴丸。コンセプトは赤と白。
軍扇の日の丸に似た清々しさ……と言ってやりたいが、中二病の特攻服を思わせて痛々しい。
これは、頭から食って掛かるしかない。
待てぇいっ! 桃太郎おおおおおおお!!
大音声で制止しながら、一気に崖を飛び降りた!
☆彡 主な登場人物
織田 信長 本能寺の変で討ち取られて転生 ニイ(三国志での偽名)
熱田 敦子(熱田大神) 信長担当の尾張の神さま
織田 市 信長の妹 シイ(三国志での偽名)
平手 美姫 信長のクラス担任
武田 信玄 同級生
上杉 謙信 同級生
古田 織部 茶華道部の眼鏡っ子 越後屋(三国志での偽名)
宮本 武蔵 孤高の剣聖
二宮 忠八 市の友だち 紙飛行機の神さま
雑賀 孫一 クラスメート
松平 元康 クラスメート 後の徳川家康
リュドミラ 旧ソ連の女狙撃手 リュドミラ・ミハイロヴナ・パヴリィチェンコ 劉度(三国志での偽名)
今川 義元 学院生徒会長
坂本 乙女 学園生徒会長
曹茶姫 魏の女将軍 部下(備忘録 検品長) 曹操・曹素の妹
諸葛茶孔明 漢の軍師兼丞相
大橋紅茶妃 呉の孫策妃 コウちゃん
孫権 呉王孫策の弟 大橋の義弟
天照大神 御山の御祭神
112『桃太郎おおおおおおお!!』信長
ガチャリ
尾張の田園風景のようだ……体を捻ってロケーションを確認すると草摺の鳴る音がした。
甲冑を身に着けているのだ。
桃太郎(素戔嗚)の鬼退治に付き合うのだから武装はオモイカネ(思金神)のサービスか……しかし、これは、またしても鶴姫の嫌味なくらいに細身の女鎧。
胸と脇の防御はゆとりもあって完ぺきなんだが、ウエストが細すぎる(-_-;)。
先だっての陣触れアラートの時は茶姫の迎えだけで短時間で済んだが、今度は鬼退治、何日かかるか分からん。それをこんなに締め上げては長時間は無理だぞ。
背中には桃形(ももなり)の兜を掛けて、馬手(右)の腕(かいな)には種子島……で、腰の左側が軽いと思ったら、太刀が無い!
種子島は火縄銃、一発撃ったら、次の弾込めには三十秒はかかるぞ! 水に濡れたりとか、汗とか血がついたりしても使い物にならない代物だぞ! 馬防柵を並べて三千丁を三段構えとかにしないと効果のない原始的な銃なんだぞ! やっぱり、刀がいるだろ!
ズチャ!
いきなり腰が重くなる……見ると、小汚い、それも思い切り古いタイプの直刀の太刀が腰のところに具現した。
―― いやあ、この姿は見かけ以上に精緻でね、リアルになるのに時間かかるのよ(^_^;) ――
「あっちゃんか!?」
―― うん、本性っていうか最終形態の草薙の剣、第一形態の敦子の姿よりは役に立つから辛抱してね ――
「で、あるか……」
さて、肝心の桃太郎は?
見渡すと、東の林の向こうに土煙、千を超える部隊が移動している証拠だ。
あぜ道を拾い、小川を飛び越えて林の中へ。
下草をかき分けかき分け、林の反対側に出ると、そこからは緩い崖になっていて、向かいの崖との間に道が伸びている。
ガチャガチャガチャ
派手に武具やら鎧の音をさせながら行軍の真っ最中。
二列になった軍勢の装備はバラバラだ。イッチョマエの具足に身を固めた者もいるが、野良着に二枚胴の前だけを付けた者、貧相な小具足に兜だけは利剣の前立てを打った立派な奴。中には毛皮を胴に巻いて竹やりを担いだだけという者もいて、まあ、数だけは揃えた野伏りの集まりだ。
で、肝心の大将はどこかと伸びた軍勢の後ろへと視線を伸ばす。
しかし、大将らしい騎馬武者の姿は最後尾が見えてきても窺えない。
大将というものは、馬印を掲げさせ、馬周りの護衛騎馬武者を引き具して凛々しく中軍にあるのが定石だ。
……さては軍の主力とは別に動き、本軍そのものを囮としたか? 少し覚えのある大将なら、それぐらいのことはやる。
谷間を走らせては居るが、派手に土煙を上げて、速度だけは速いところなど、ホドホドに『見つけてくれ!』という風に見えなくもない。なんせ、相手の本性は天照でも手を焼く日本の武神の総本家、素戔嗚だ。
―― あまり尊敬しない方がいい ――
え、そうなのか?
あっちゃんの言葉に閃いた俺は、崖の上を軍勢の流れに沿って遡った。
そして見つけた!
白地錦の陣羽織の背中には双葉を添えた桃の実があしらわれ、背中の旗指物は、その速さの為に中ほどで折れ、ヨレてしまった文字は「本」の字が潰れて「1日」あるいは「旧」としか見えない。
前にまわると、こいつは着ぐるみかと思うほどに顔がデカい!
赤地錦の直垂に赤糸縅の胴丸。コンセプトは赤と白。
軍扇の日の丸に似た清々しさ……と言ってやりたいが、中二病の特攻服を思わせて痛々しい。
これは、頭から食って掛かるしかない。
待てぇいっ! 桃太郎おおおおおおお!!
大音声で制止しながら、一気に崖を飛び降りた!
☆彡 主な登場人物
織田 信長 本能寺の変で討ち取られて転生 ニイ(三国志での偽名)
熱田 敦子(熱田大神) 信長担当の尾張の神さま
織田 市 信長の妹 シイ(三国志での偽名)
平手 美姫 信長のクラス担任
武田 信玄 同級生
上杉 謙信 同級生
古田 織部 茶華道部の眼鏡っ子 越後屋(三国志での偽名)
宮本 武蔵 孤高の剣聖
二宮 忠八 市の友だち 紙飛行機の神さま
雑賀 孫一 クラスメート
松平 元康 クラスメート 後の徳川家康
リュドミラ 旧ソ連の女狙撃手 リュドミラ・ミハイロヴナ・パヴリィチェンコ 劉度(三国志での偽名)
今川 義元 学院生徒会長
坂本 乙女 学園生徒会長
曹茶姫 魏の女将軍 部下(備忘録 検品長) 曹操・曹素の妹
諸葛茶孔明 漢の軍師兼丞相
大橋紅茶妃 呉の孫策妃 コウちゃん
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