鳴かぬなら 信長転生記

武者走走九郎or大橋むつお

文字の大きさ
上 下
104 / 192

104『茶姫の制服』

しおりを挟む
鳴かぬなら 信長転生記

104『茶姫の制服』市 




 突然の茶姫の亡命に扶桑は大慌てだった!


 そういう印象が扶桑国内にも、三国志の国々にも広まった。

 双ヶ岡に軍勢を並べたのも、扶桑が大慌てしたための非常呼集だと思われた。その上で、扶桑の緊急動員の凄さも三国志に見せつけてもいる。

 念の入ったことに、茶姫の歓迎会も、ドタバタと二転三転して、未だに行われていない。

 大々的な歓迎晩さん会であっても、一見質素な茶席のそれであっても、段取りよくやってしまえば―― 扶桑はかねてから茶姫の亡命を計っていた ――ということになって、いたずらに三国志を刺激してしまう。さすがだよね。



「そんな風にお見通しというのは可愛くないかもよ~(^_^;)」



 あっちゃんが頭を掻く。

「あんたが、鎧を選ぶのに手間をとらせたのも、そういうことだったんでしょ!」

「いやいや、いくら神さまといっても、ファッションのことは本人次第だからさぁ。わたしとしては、選択肢を並べてあげるしかできないわけでぇ……あ、いっけな~い、もう寝る時間だわ」

「え?」

 たしかに時計は十時を回っている。

「さっき晩御飯食べたとこなのに」

「楽しいお喋りだったから、時間のたつのも忘れてたのよ。じゃね~」

 そう言うと、あっちゃんは一筋の光になって自分の祠に戻って行った。



「ああ、いいお湯だったぁ」

 後ろで声がしたかと思うと、茶姫が髪を拭きながらリビングに入ってきた。

「そうだ、茶姫、お風呂に入ってたんだ!」

「え、ああ、一緒に入るつもりなら待ってたのに」

「いえいえ、ちょっと、ボンヤリしてて忘れてた」

 どうも、あっちゃんに化かされていたみたい。

「忘れてくれるぐらいがいい、居候としては気楽でいいぞ……ん、誰かいたのか?」

 さすがは茶姫、ソファーの微妙な窪みで人が居たのを読み取ってしまう。

 読まれたからには正直に言う。ついこないだまでは、魏の女将軍と近衛の士官という間柄だったんだからね。

「ああ……うん。本人が居るところで紹介しようと思ってたんだけどね、熱田大神って神さまがいたの」

「え、狼の神さま!?」

「いや、大いなる神さまと書いて大神。いちおう兄貴の守り神なんだけどね」

「あ、それでは、一度挨拶しておかねばならないだろう。ちょうど風呂にも入ったところだ、正装してくるぞ」

「いやいや、うちでは『あっちゃん』て呼んでるくらい軽い……いや、気さくな神さまだから、またでいいわよ」

「そうかぁ、シイがそう言うなら言葉に甘えておくが」

「それよりも、ほんとうに生徒の扱いでいいの? 茶姫なら先生どころか、校長だって務まりそうなのに」

「ここは扶桑だ。学ぶことの方が多い。こちらこそ、学院と学園の両属にしてもらって嬉しい限りなんだ。気にしないでくれ」

「そっか、じゃあ、うちの制服は出来てるから、着てみる?」

「ああ、喜んで!」



「学院の制服も仕上がってるぞ」



「あ、帰ってたんだ」

「茶姫の制服が出来たというので、街まで取りに行っていた」

「いや、すまんなニイも」

「気にすることはない、俺も早く見てみたかったからな。起きていてくれてよかった」

「それでは、着替えてくるぞ!」

「「うん!」」



 その夜は遅くまで茶姫のファッションショーになった。

 大人びた茶姫に制服は幼すぎるのではと、ちょっとだけ心配したけど、いやはや、このわたしよりもよく似合っている。

 いつの間にか、ガラス戸の向こうからあっちゃんも覗いていたけど、知らないふりをしておいた。

 

☆彡 主な登場人物

織田 信長       本能寺の変で討ち取られて転生  ニイ(三国志での偽名)
熱田 敦子(熱田大神) 信長担当の尾張の神さま
織田 市        信長の妹  シイ(三国志での偽名)
平手 美姫       信長のクラス担任
武田 信玄       同級生
上杉 謙信       同級生
古田 織部       茶華道部の眼鏡っ子  越後屋(三国志での偽名)
宮本 武蔵       孤高の剣聖
二宮 忠八       市の友だち 紙飛行機の神さま
リュドミラ       旧ソ連の女狙撃手 リュドミラ・ミハイロヴナ・パヴリィチェンコ  劉度(三国志での偽名)
今川 義元       学院生徒会長
坂本 乙女       学園生徒会長
曹茶姫         魏の女将軍 部下(劉備忘録 検品長) 曹操・曹素の妹
諸葛茶孔明       漢の軍師兼丞相
大橋紅茶妃       呉の孫策妃 コウちゃん
孫権          呉王孫策の弟 大橋の義弟
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

【完結】あなたに知られたくなかった

ここ
ファンタジー
セレナの幸せな生活はあっという間に消え去った。新しい継母と異母妹によって。 5歳まで令嬢として生きてきたセレナは6歳の今は、小さな手足で必死に下女見習いをしている。もう自分が令嬢だということは忘れていた。 そんなセレナに起きた奇跡とは?

父が再婚しました

Ruhuna
ファンタジー
母が亡くなって1ヶ月後に 父が再婚しました

(完結)醜くなった花嫁の末路「どうぞ、お笑いください。元旦那様」

音爽(ネソウ)
ファンタジー
容姿が気に入らないと白い結婚を強いられた妻。 本邸から追い出されはしなかったが、夫は離れに愛人を囲い顔さえ見せない。 しかし、3年と待たず離縁が決定する事態に。そして元夫の家は……。 *6月18日HOTランキング入りしました、ありがとうございます。

婚約破棄?一体何のお話ですか?

リヴァルナ
ファンタジー
なんだかざまぁ(?)系が書きたかったので書いてみました。 エルバルド学園卒業記念パーティー。 それも終わりに近付いた頃、ある事件が起こる… ※エブリスタさんでも投稿しています

家庭菜園物語

コンビニ
ファンタジー
お人好しで動物好きな最上 悠(さいじょう ゆう)は肉親であった祖父が亡くなり、最後の家族であり姉のような存在でもある黒猫の杏(あんず)も静かに息を引き取ろうとする中で、助けたいなら異世界に来てくれないかと、少し残念な神様に提案される。 その転移先で秋田犬の大福を助けたことで、能力を失いそのままスローライフをおくることとなってしまう。 異世界で新しい家族や友人を作り、本人としてはほのぼのと家庭菜園を営んでいるが、小さな畑が世界には大きな影響を与えることになっていく。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

「不細工なお前とは婚約破棄したい」と言ってみたら、秒で破棄されました。

桜乃
ファンタジー
ロイ王子の婚約者は、不細工と言われているテレーゼ・ハイウォール公爵令嬢。彼女からの愛を確かめたくて、思ってもいない事を言ってしまう。 「不細工なお前とは婚約破棄したい」 この一言が重要な言葉だなんて思いもよらずに。 ※約4000文字のショートショートです。11/21に完結いたします。 ※1回の投稿文字数は少な目です。 ※前半と後半はストーリーの雰囲気が変わります。 表紙は「かんたん表紙メーカー2」にて作成いたしました。 ❇❇❇❇❇❇❇❇❇ 2024年10月追記 お読みいただき、ありがとうございます。 こちらの作品は完結しておりますが、10月20日より「番外編 バストリー・アルマンの事情」を追加投稿致しますので、一旦、表記が連載中になります。ご了承ください。 1ページの文字数は少な目です。 約4500文字程度の番外編です。 バストリー・アルマンって誰やねん……という読者様のお声が聞こえてきそう……(;´∀`) ロイ王子の側近です。(←言っちゃう作者 笑) ※番外編投稿後は完結表記に致します。再び、番外編等を投稿する際には連載表記となりますこと、ご容赦いただけますと幸いです。

クラスメイトの美少女と無人島に流された件

桜井正宗
青春
 修学旅行で離島へ向かう最中――悪天候に見舞われ、台風が直撃。船が沈没した。  高校二年の早坂 啓(はやさか てつ)は、気づくと砂浜で寝ていた。周囲を見渡すとクラスメイトで美少女の天音 愛(あまね まな)が隣に倒れていた。  どうやら、漂流して流されていたようだった。  帰ろうにも島は『無人島』。  しばらくは島で生きていくしかなくなった。天音と共に無人島サバイバルをしていくのだが……クラスの女子が次々に見つかり、やがてハーレムに。  男一人と女子十五人で……取り合いに発展!?

処理中です...