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104『茶姫の制服』
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鳴かぬなら 信長転生記
104『茶姫の制服』市
突然の茶姫の亡命に扶桑は大慌てだった!
そういう印象が扶桑国内にも、三国志の国々にも広まった。
双ヶ岡に軍勢を並べたのも、扶桑が大慌てしたための非常呼集だと思われた。その上で、扶桑の緊急動員の凄さも三国志に見せつけてもいる。
念の入ったことに、茶姫の歓迎会も、ドタバタと二転三転して、未だに行われていない。
大々的な歓迎晩さん会であっても、一見質素な茶席のそれであっても、段取りよくやってしまえば―― 扶桑はかねてから茶姫の亡命を計っていた ――ということになって、いたずらに三国志を刺激してしまう。さすがだよね。
「そんな風にお見通しというのは可愛くないかもよ~(^_^;)」
あっちゃんが頭を掻く。
「あんたが、鎧を選ぶのに手間をとらせたのも、そういうことだったんでしょ!」
「いやいや、いくら神さまといっても、ファッションのことは本人次第だからさぁ。わたしとしては、選択肢を並べてあげるしかできないわけでぇ……あ、いっけな~い、もう寝る時間だわ」
「え?」
たしかに時計は十時を回っている。
「さっき晩御飯食べたとこなのに」
「楽しいお喋りだったから、時間のたつのも忘れてたのよ。じゃね~」
そう言うと、あっちゃんは一筋の光になって自分の祠に戻って行った。
「ああ、いいお湯だったぁ」
後ろで声がしたかと思うと、茶姫が髪を拭きながらリビングに入ってきた。
「そうだ、茶姫、お風呂に入ってたんだ!」
「え、ああ、一緒に入るつもりなら待ってたのに」
「いえいえ、ちょっと、ボンヤリしてて忘れてた」
どうも、あっちゃんに化かされていたみたい。
「忘れてくれるぐらいがいい、居候としては気楽でいいぞ……ん、誰かいたのか?」
さすがは茶姫、ソファーの微妙な窪みで人が居たのを読み取ってしまう。
読まれたからには正直に言う。ついこないだまでは、魏の女将軍と近衛の士官という間柄だったんだからね。
「ああ……うん。本人が居るところで紹介しようと思ってたんだけどね、熱田大神って神さまがいたの」
「え、狼の神さま!?」
「いや、大いなる神さまと書いて大神。いちおう兄貴の守り神なんだけどね」
「あ、それでは、一度挨拶しておかねばならないだろう。ちょうど風呂にも入ったところだ、正装してくるぞ」
「いやいや、うちでは『あっちゃん』て呼んでるくらい軽い……いや、気さくな神さまだから、またでいいわよ」
「そうかぁ、シイがそう言うなら言葉に甘えておくが」
「それよりも、ほんとうに生徒の扱いでいいの? 茶姫なら先生どころか、校長だって務まりそうなのに」
「ここは扶桑だ。学ぶことの方が多い。こちらこそ、学院と学園の両属にしてもらって嬉しい限りなんだ。気にしないでくれ」
「そっか、じゃあ、うちの制服は出来てるから、着てみる?」
「ああ、喜んで!」
「学院の制服も仕上がってるぞ」
「あ、帰ってたんだ」
「茶姫の制服が出来たというので、街まで取りに行っていた」
「いや、すまんなニイも」
「気にすることはない、俺も早く見てみたかったからな。起きていてくれてよかった」
「それでは、着替えてくるぞ!」
「「うん!」」
その夜は遅くまで茶姫のファッションショーになった。
大人びた茶姫に制服は幼すぎるのではと、ちょっとだけ心配したけど、いやはや、このわたしよりもよく似合っている。
いつの間にか、ガラス戸の向こうからあっちゃんも覗いていたけど、知らないふりをしておいた。
☆彡 主な登場人物
織田 信長 本能寺の変で討ち取られて転生 ニイ(三国志での偽名)
熱田 敦子(熱田大神) 信長担当の尾張の神さま
織田 市 信長の妹 シイ(三国志での偽名)
平手 美姫 信長のクラス担任
武田 信玄 同級生
上杉 謙信 同級生
古田 織部 茶華道部の眼鏡っ子 越後屋(三国志での偽名)
宮本 武蔵 孤高の剣聖
二宮 忠八 市の友だち 紙飛行機の神さま
リュドミラ 旧ソ連の女狙撃手 リュドミラ・ミハイロヴナ・パヴリィチェンコ 劉度(三国志での偽名)
今川 義元 学院生徒会長
坂本 乙女 学園生徒会長
曹茶姫 魏の女将軍 部下(劉備忘録 検品長) 曹操・曹素の妹
諸葛茶孔明 漢の軍師兼丞相
大橋紅茶妃 呉の孫策妃 コウちゃん
孫権 呉王孫策の弟 大橋の義弟
104『茶姫の制服』市
突然の茶姫の亡命に扶桑は大慌てだった!
そういう印象が扶桑国内にも、三国志の国々にも広まった。
双ヶ岡に軍勢を並べたのも、扶桑が大慌てしたための非常呼集だと思われた。その上で、扶桑の緊急動員の凄さも三国志に見せつけてもいる。
念の入ったことに、茶姫の歓迎会も、ドタバタと二転三転して、未だに行われていない。
大々的な歓迎晩さん会であっても、一見質素な茶席のそれであっても、段取りよくやってしまえば―― 扶桑はかねてから茶姫の亡命を計っていた ――ということになって、いたずらに三国志を刺激してしまう。さすがだよね。
「そんな風にお見通しというのは可愛くないかもよ~(^_^;)」
あっちゃんが頭を掻く。
「あんたが、鎧を選ぶのに手間をとらせたのも、そういうことだったんでしょ!」
「いやいや、いくら神さまといっても、ファッションのことは本人次第だからさぁ。わたしとしては、選択肢を並べてあげるしかできないわけでぇ……あ、いっけな~い、もう寝る時間だわ」
「え?」
たしかに時計は十時を回っている。
「さっき晩御飯食べたとこなのに」
「楽しいお喋りだったから、時間のたつのも忘れてたのよ。じゃね~」
そう言うと、あっちゃんは一筋の光になって自分の祠に戻って行った。
「ああ、いいお湯だったぁ」
後ろで声がしたかと思うと、茶姫が髪を拭きながらリビングに入ってきた。
「そうだ、茶姫、お風呂に入ってたんだ!」
「え、ああ、一緒に入るつもりなら待ってたのに」
「いえいえ、ちょっと、ボンヤリしてて忘れてた」
どうも、あっちゃんに化かされていたみたい。
「忘れてくれるぐらいがいい、居候としては気楽でいいぞ……ん、誰かいたのか?」
さすがは茶姫、ソファーの微妙な窪みで人が居たのを読み取ってしまう。
読まれたからには正直に言う。ついこないだまでは、魏の女将軍と近衛の士官という間柄だったんだからね。
「ああ……うん。本人が居るところで紹介しようと思ってたんだけどね、熱田大神って神さまがいたの」
「え、狼の神さま!?」
「いや、大いなる神さまと書いて大神。いちおう兄貴の守り神なんだけどね」
「あ、それでは、一度挨拶しておかねばならないだろう。ちょうど風呂にも入ったところだ、正装してくるぞ」
「いやいや、うちでは『あっちゃん』て呼んでるくらい軽い……いや、気さくな神さまだから、またでいいわよ」
「そうかぁ、シイがそう言うなら言葉に甘えておくが」
「それよりも、ほんとうに生徒の扱いでいいの? 茶姫なら先生どころか、校長だって務まりそうなのに」
「ここは扶桑だ。学ぶことの方が多い。こちらこそ、学院と学園の両属にしてもらって嬉しい限りなんだ。気にしないでくれ」
「そっか、じゃあ、うちの制服は出来てるから、着てみる?」
「ああ、喜んで!」
「学院の制服も仕上がってるぞ」
「あ、帰ってたんだ」
「茶姫の制服が出来たというので、街まで取りに行っていた」
「いや、すまんなニイも」
「気にすることはない、俺も早く見てみたかったからな。起きていてくれてよかった」
「それでは、着替えてくるぞ!」
「「うん!」」
その夜は遅くまで茶姫のファッションショーになった。
大人びた茶姫に制服は幼すぎるのではと、ちょっとだけ心配したけど、いやはや、このわたしよりもよく似合っている。
いつの間にか、ガラス戸の向こうからあっちゃんも覗いていたけど、知らないふりをしておいた。
☆彡 主な登場人物
織田 信長 本能寺の変で討ち取られて転生 ニイ(三国志での偽名)
熱田 敦子(熱田大神) 信長担当の尾張の神さま
織田 市 信長の妹 シイ(三国志での偽名)
平手 美姫 信長のクラス担任
武田 信玄 同級生
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古田 織部 茶華道部の眼鏡っ子 越後屋(三国志での偽名)
宮本 武蔵 孤高の剣聖
二宮 忠八 市の友だち 紙飛行機の神さま
リュドミラ 旧ソ連の女狙撃手 リュドミラ・ミハイロヴナ・パヴリィチェンコ 劉度(三国志での偽名)
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坂本 乙女 学園生徒会長
曹茶姫 魏の女将軍 部下(劉備忘録 検品長) 曹操・曹素の妹
諸葛茶孔明 漢の軍師兼丞相
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