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70『卯盃の城門』

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鳴かぬなら 信長転生記

70『卯盃の城門』市   




 サル(秀吉)に似ていると思った。


 見かけじゃないわよ、曹茶姫はわたしの次くらいの美人よ。

 もし、ミス転生コンテストとかがあったら、茶姫は間違いなくミス三国志。わたしはミス扶桑よ。

 そして、三国志・扶桑の決勝戦で、あの子は一票差ぐらいで準ミス転生。

「あなたもなかなかだったわ、もし、審査基準に権謀術数とかがあったら、わたしに勝ち目はなかったかも」

 と讃えてあげる。

 そうなのよ、豊盃で出会って以来、茶姫には意表を突かれてばかり。

 皆虎の街では南進すると見せかけて、まさかのUターン、閉ざされていた出征門を爆破すると同時に北進。

 一瞬騙されたと思った。

 信長と妹のわたしを取り込んで、実は人質にして扶桑の国(転生の美称)を攻めるのかと思った。

 悔しいけど、兄の信長は見抜いていて、出征門を出る時もニヤニヤして――オレと並ぶほどかも――とか思ってやがる。

 このどんでん返しが、サルの中国大返しに似てる。

 ほら、兄貴の一生一代の大ポカ。本能寺で光秀にぶち殺されて、その知らせを受けたサルが、毛利と和睦して、たった三日で姫路に駆け戻って、山崎で光秀ぶちのめしたあれよ。あの決断力と敏捷さ。

 転生のみんなに見せびらかすように国境の森の前を東に進む。

 途中、丘の上に信信コンビと武蔵が望遠鏡でこっち見てた。

 斥候なんだろうから、もっと身を隠しなさいよって思うんだけど、堂々と身を晒して、それがまたカッコいいからムカつく。謙信なんか、馬の背中に立って双眼鏡構えて、あれって……大坂城落城の時の木村君のパクリじゃん。

 木村君、木村重成よ。大坂方随一のイケメン。

 最後の出撃じゃ、覚悟して兜に香を焚き締めて、討ち取られてからも家康に「天晴れなイケメン!」と惜しまれた木村君よ。

 わたしに尽くしてくれた男子は、みんな幸薄のイケメン。

 旦那の浅井長政、大野治長・治胤兄弟、無骨だけど柴田勝家、そして木村重成。

 木村君は、戦国時代のキムタクなのよ。そうよ、キムタクよ。

 平和が続いたら、朝廷に働きかけて内匠頭(たくみのかみ)に叙任させてあげるつもりだった。

 そしたら、名実ともにキムタクだもんね!

 馬の背中に乗って、燃える大坂城に手を合わせるって、とってもクールでしょ! 泣かせるでしょ!

 男って、ルックスだけじゃダメだと思う。

 悲劇的な局面でも、クールに振舞えてこその男子よ!

 一ノ谷の合戦で熊谷直実に首を盗られた平敦盛、最年少で赤穂浪士に加わった矢頭右衛門七、そして木村君。

 この三人は、日本史上の三大イケメンなのよ!

「オレなんか、馬の背に立って立小便してたぞ」

 兄貴が馬を寄せてきたかと思うと馬鹿を言う。

「うっさい!」

「サルは、馬の尻で逆立ちして笑わせてくれた」

「うっさいうっさい、あっち行け!」

「尖がってないで、あっちを見ろ。あれは卯盃(ぼうはい)の城門だ」

「ボウハイ?」

「三国志、東の果てだ」

「あそこに入るの?」

「ああ、三国志と扶桑の境を一気に駆け抜けて、敵味方に存在感を誇示して……さて、茶姫は、この先をどうするつもりだぁ?」

「ちょっと、ニヤニヤしないでよね」

「見ろ、城門を」

「え……うさ耳!?」

 なんと、接近するにつれて、城門の屋根に大きなうさ耳が立ち上がってきた。

 

☆ 主な登場人物

 織田 信長       本能寺の変で討ち取られて転生
 熱田 敦子(熱田大神) 信長担当の尾張の神さま
 織田 市        信長の妹
 平手 美姫       信長のクラス担任
 武田 信玄       同級生
 上杉 謙信       同級生
 古田 織部       茶華道部の眼鏡っこ
 宮本 武蔵       孤高の剣聖
 二宮 忠八       市の友だち 紙飛行機の神さま
 今川 義元       学院生徒会長 
 坂本 乙女       学園生徒会長 
 曹茶姫         魏の女将軍 部下(劉備忘録 検品長)弟(曹素)
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