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45『敦子を捕まえる』

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鳴かぬなら 信長転生記

45『敦子を捕まえる』  




 敦子の部屋のドアにお札を貼っておいた。


 敦子って分かるよね? 熱田敦子。

 ここんとこ姿を見せないけど、織田家担当の神さまの熱田大神。

 クソ兄貴の信長を転生させて、ここんとこ知らんぷりを決め込んでいる。

 ちゃっかり家を大きくして、家族同然に住み着いてるけど、なんか無責任。

 敦子の正体って、三種の神器が具現化したもので、神格が高い。

 で、記憶を頼りに探したら荷物の奥から出てきた。伊勢神宮のお札。

 なんてったって、ご神体は皇祖神の天照大神(あまてらすおおかみ)だから、敦子よりもえらい!

 それをドアに貼っておいたから、入れるわけもないから、庭の祠に戻っているはず。

 だから、学校から帰ってから、ずっと祠の前で待っている。

 晩ご飯まだだから、きっと空腹に耐えきれずに出てくる。敦子は、神さまのくせに食い意地は張ってるからね。


 こんな簡単なことで、敦子をおびき出せるかって?


 フフ、舐めるんじゃないわよ。

 わたしは市よ。

 女に生まれたから、力の振るいようもなかったけど、もし、男に生まれていたら、クソ兄貴の信長なんか差し置いて、天下の主になっていたわよ。ま、男になんか生まれかわるつもりはカケラもないけどね。

 ミシミシ……ミシミシ……

 祠が微かに軋んでる……分かってるけど、知らんふり。これも計算のうちだからね。

 シュ

 小さく空気が抜けるような音がしたかと思うと……予想通り!

 ガッシャーーン!  ドスン!

 やった!!

 急いで祠の裏に回ると、塀に頭をぶつけて、敦子が唸ってる。

「痛ったぁぁぁぁぁ……」

「ふふ、裏口があるのは、とっくにお見通しなのよ」

「で、でも、突き当たった塀に伊勢神宮のお札貼るのは反則ぅ……たんこぶができちゃったぁぁぁぁぁ……」

 信長のご飯は、シャクだけど美味しい。

 それを毎日食べてるもんだから、敦子のやつ、ちょっと太ってきた。だから、めったに使わない裏口は通りにくいってことは計算のうち。そこを無理に通ろうとしたら、シャンパンの栓を抜くみたいに勢いがつく。

 で、行き止まりの塀に伊勢神宮のお札。

 普通なら、こんな塀、素通しで抜けられるんだけどね。

 お札のお蔭で、ガラス戸に突っ込んだワンコと同じになって、激突してタンコブができるわけさ。

「ふん、神さまのくせに、コソコソしてるからよ」

「で、なんなのよ、この仕打ちはぁ……」

「それはね……」

 敦子の襟首を掴むと、一世一代の人生相談を持ち掛けるわたしであった……。

 

☆ 主な登場人物

 織田 信長       本能寺の変で討ち取られて転生
 熱田 敦子(熱田大神) 信長担当の尾張の神さま
 織田 市        信長の妹
 平手 美姫       信長のクラス担任
 武田 信玄       同級生
 上杉 謙信       同級生
 古田 織部       茶華道部の眼鏡っこ
 宮本 武蔵       孤高の剣聖
 二宮 忠八       市の友だち 紙飛行機の神さま
 今川 義元       学院生徒会長 
 坂本 乙女       学園生徒会長 
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