39 / 192
39『テニスコートの誓い・1』
しおりを挟む
鳴かぬなら 信長転生記
39『テニスコートの誓い・1』
フィフティーン:フォーティー! マッチ ウォン バイ 信長!
利休の声と手が上がって、俺の勝利が確定した。
「くそ!」
「かたちにこだわり過ぎるんだ、織部は」
両膝に手をついて悔しがる織部に武蔵は容赦がない。
「武蔵、おまえの言う通りだが、押さえてやれ、これ以上挑まれてもかなわんからな」
「う、美しく勝たなければ意味がありません」
もう、それには応えずに、俺はベンチに麦茶を飲みに行く。
カポーーン カポーーン
隣のコートでは、信玄と謙信がスコートを翻しながら、フィフティー:フィフティーから動かない勝負を続けている。
信信コンビのテニスは変則的なルールで、どちらかがハンドレッドになるまで止められない。
「いつか、ラブ:ハンドレッドで下してやる!」
信玄も謙信も同じことを言う。
いわば、テニスのデスマッチで、けして利休は、この二人の審判はやらない。
審判をやらされるのは、対外試合で三回負けの込んだテニス部員が『集中力の鍛錬』という名目でやらされる。
二人が戦うコートはBコートに定まっているのだが、いつの間にか『川中島』の異名で通るようになってきた。
放課後の短い部活の時間で収まるわけもなく、たいていは下校時間を告げるチャイムでドローに終わる。
例外は、学校近くの民家で火事が起こって、逃げ遅れた子供を助けるために中断した時と、事務の連絡ミスで、コートの改良故事にやってきた業者が苦情を言った時という外部要因だけであったそうな。
今日も下校のチャイムが鳴るまで続くのかと思ったが、予想外の外部要因がデスマッチを止めた。
「「決まったか!?」」
同時に外部要因に気が付いて、試合が中断。真ん中の審判席で、デスマッチを覚悟していたテニス部員が胸をなでおろす。
その外部要因は、端正に制服を着こなし『生徒会』の腕章を付けた執行部の石田三成だ。
「部活中すみみせん、お申し出の臨時予算執行についての結論が出ましたので、お知らせに上がりました」
見ようによっては学院一の知性派美少女と言われる三成は、美しいだけに余計に際立つ冷たい表情で切り込んでくる。
「しかたがない、五人ともというのは、こちらも無理な要求だったかもしれん。謙信、人数を絞ろう」
信玄は謙信を促して、三成と利休が顔を突き合わせているベンチに向かう。
さて、今度は人選で揉めることになるか……ここは、先輩である信信コンビに譲らざるをえないかと、二人に倣う。
「みんな、事態は予想の斜め上をいってるみたいよ……石田さん、ここは、あなたから言ってもらえるかしら」
「承知しました」
三成は、俺たちに正対すると、丁寧に頭を下げる。頭を下げてはいるのだが、どことなくイラっとさせるやつだ。
ま、いまは置いておこう。問題は三成が持ってきた結論だ。
「お申し越しの『校外視察』に出せる予算はありません」
「三成、それは、わたしたちも分かっている。三人分、いや、二人分でも手を打とう。校外視察は、この扶桑には緊急的に必要なんだよ」
謙信が、優しく言うが、三成は斟酌することなく、あとを続ける。
「三国志の世界は、扶桑の百倍を超えるとも言われています。たとえ一人分であろうとも、その経費は延べ百人分を超えます」
それはそうだろう、三国志の情勢を見極めるには、守勢に立つにせよ攻勢に出るにしろ、それぐらいの時間はかかる。
しかし、三国志の攻勢を傍観していれば、学院を、いや、扶桑そのものを失うことになるかもしれない。それは、まだ言うわけにはいかないがな。
「なんとかならんか」
「ことは、当学院の範疇を超えております。扶桑全体で対応すべき案件であると思います。信玄さん」
「扶桑全体に広げてしまえば、予期しない混乱と動揺を引き起こしてしまう。うちだけで処理しなければ禍根を残す」
「そう、申されましても、わたしは、本校生徒会の一執行部員に過ぎません。これ以上の返答は、分を超えるばかりではなく、無責任になります」
事の性格から、生徒会には校外視察としか申し出ていない。
三国志の方に侵略意図があって、武装した偵察隊が出ているとか、袁紹のように実力行使に出てくる者がいることは伏せてある。
「申し訳ありませんが、わたしは、通達を申し上げにきたのであって、議論する権限はありません」
「三成」
「では、これにて失礼いたします」
ペコリと頭を下げると、回れ右をしてコートの出口に向かう。
ガチャリ
いつの間にか外に出ていた武蔵が、抜き身を構えて三成の鼻先に突き付けた(;'∀')。
☆ 主な登場人物
織田 信長 本能寺の変で討ち取られて転生
熱田敦子(熱田大神) 信長担当の尾張の神さま
織田 市 信長の妹(兄を嫌っているので従姉妹の設定になる)
平手 美姫 信長のクラス担任
武田 信玄 同級生
上杉 謙信 同級生
古田 織部 茶華道部の眼鏡っこ
宮本武蔵 孤高の剣聖
39『テニスコートの誓い・1』
フィフティーン:フォーティー! マッチ ウォン バイ 信長!
利休の声と手が上がって、俺の勝利が確定した。
「くそ!」
「かたちにこだわり過ぎるんだ、織部は」
両膝に手をついて悔しがる織部に武蔵は容赦がない。
「武蔵、おまえの言う通りだが、押さえてやれ、これ以上挑まれてもかなわんからな」
「う、美しく勝たなければ意味がありません」
もう、それには応えずに、俺はベンチに麦茶を飲みに行く。
カポーーン カポーーン
隣のコートでは、信玄と謙信がスコートを翻しながら、フィフティー:フィフティーから動かない勝負を続けている。
信信コンビのテニスは変則的なルールで、どちらかがハンドレッドになるまで止められない。
「いつか、ラブ:ハンドレッドで下してやる!」
信玄も謙信も同じことを言う。
いわば、テニスのデスマッチで、けして利休は、この二人の審判はやらない。
審判をやらされるのは、対外試合で三回負けの込んだテニス部員が『集中力の鍛錬』という名目でやらされる。
二人が戦うコートはBコートに定まっているのだが、いつの間にか『川中島』の異名で通るようになってきた。
放課後の短い部活の時間で収まるわけもなく、たいていは下校時間を告げるチャイムでドローに終わる。
例外は、学校近くの民家で火事が起こって、逃げ遅れた子供を助けるために中断した時と、事務の連絡ミスで、コートの改良故事にやってきた業者が苦情を言った時という外部要因だけであったそうな。
今日も下校のチャイムが鳴るまで続くのかと思ったが、予想外の外部要因がデスマッチを止めた。
「「決まったか!?」」
同時に外部要因に気が付いて、試合が中断。真ん中の審判席で、デスマッチを覚悟していたテニス部員が胸をなでおろす。
その外部要因は、端正に制服を着こなし『生徒会』の腕章を付けた執行部の石田三成だ。
「部活中すみみせん、お申し出の臨時予算執行についての結論が出ましたので、お知らせに上がりました」
見ようによっては学院一の知性派美少女と言われる三成は、美しいだけに余計に際立つ冷たい表情で切り込んでくる。
「しかたがない、五人ともというのは、こちらも無理な要求だったかもしれん。謙信、人数を絞ろう」
信玄は謙信を促して、三成と利休が顔を突き合わせているベンチに向かう。
さて、今度は人選で揉めることになるか……ここは、先輩である信信コンビに譲らざるをえないかと、二人に倣う。
「みんな、事態は予想の斜め上をいってるみたいよ……石田さん、ここは、あなたから言ってもらえるかしら」
「承知しました」
三成は、俺たちに正対すると、丁寧に頭を下げる。頭を下げてはいるのだが、どことなくイラっとさせるやつだ。
ま、いまは置いておこう。問題は三成が持ってきた結論だ。
「お申し越しの『校外視察』に出せる予算はありません」
「三成、それは、わたしたちも分かっている。三人分、いや、二人分でも手を打とう。校外視察は、この扶桑には緊急的に必要なんだよ」
謙信が、優しく言うが、三成は斟酌することなく、あとを続ける。
「三国志の世界は、扶桑の百倍を超えるとも言われています。たとえ一人分であろうとも、その経費は延べ百人分を超えます」
それはそうだろう、三国志の情勢を見極めるには、守勢に立つにせよ攻勢に出るにしろ、それぐらいの時間はかかる。
しかし、三国志の攻勢を傍観していれば、学院を、いや、扶桑そのものを失うことになるかもしれない。それは、まだ言うわけにはいかないがな。
「なんとかならんか」
「ことは、当学院の範疇を超えております。扶桑全体で対応すべき案件であると思います。信玄さん」
「扶桑全体に広げてしまえば、予期しない混乱と動揺を引き起こしてしまう。うちだけで処理しなければ禍根を残す」
「そう、申されましても、わたしは、本校生徒会の一執行部員に過ぎません。これ以上の返答は、分を超えるばかりではなく、無責任になります」
事の性格から、生徒会には校外視察としか申し出ていない。
三国志の方に侵略意図があって、武装した偵察隊が出ているとか、袁紹のように実力行使に出てくる者がいることは伏せてある。
「申し訳ありませんが、わたしは、通達を申し上げにきたのであって、議論する権限はありません」
「三成」
「では、これにて失礼いたします」
ペコリと頭を下げると、回れ右をしてコートの出口に向かう。
ガチャリ
いつの間にか外に出ていた武蔵が、抜き身を構えて三成の鼻先に突き付けた(;'∀')。
☆ 主な登場人物
織田 信長 本能寺の変で討ち取られて転生
熱田敦子(熱田大神) 信長担当の尾張の神さま
織田 市 信長の妹(兄を嫌っているので従姉妹の設定になる)
平手 美姫 信長のクラス担任
武田 信玄 同級生
上杉 謙信 同級生
古田 織部 茶華道部の眼鏡っこ
宮本武蔵 孤高の剣聖
0
お気に入りに追加
7
あなたにおすすめの小説
クラスメイトの美少女と無人島に流された件
桜井正宗
青春
修学旅行で離島へ向かう最中――悪天候に見舞われ、台風が直撃。船が沈没した。
高校二年の早坂 啓(はやさか てつ)は、気づくと砂浜で寝ていた。周囲を見渡すとクラスメイトで美少女の天音 愛(あまね まな)が隣に倒れていた。
どうやら、漂流して流されていたようだった。
帰ろうにも島は『無人島』。
しばらくは島で生きていくしかなくなった。天音と共に無人島サバイバルをしていくのだが……クラスの女子が次々に見つかり、やがてハーレムに。
男一人と女子十五人で……取り合いに発展!?
小さなことから〜露出〜えみ〜
サイコロ
恋愛
私の露出…
毎日更新していこうと思います
よろしくおねがいします
感想等お待ちしております
取り入れて欲しい内容なども
書いてくださいね
よりみなさんにお近く
考えやすく
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
特殊部隊の俺が転生すると、目の前で絶世の美人母娘が犯されそうで助けたら、とんでもないヤンデレ貴族だった
なるとし
ファンタジー
鷹取晴翔(たかとりはると)は陸上自衛隊のとある特殊部隊に所属している。だが、ある日、訓練の途中、不慮の事故に遭い、異世界に転生することとなる。
特殊部隊で使っていた武器や防具などを召喚できる特殊能力を謎の存在から授かり、目を開けたら、絶世の美女とも呼ばれる母娘が男たちによって犯されそうになっていた。
武装状態の鷹取晴翔は、持ち前の優秀な身体能力と武器を使い、その母娘と敷地にいる使用人たちを救う。
だけど、その母と娘二人は、
とおおおおんでもないヤンデレだった……
第3回次世代ファンタジーカップに出すために一部を修正して投稿したものです。
貴族家三男の成り上がりライフ 生まれてすぐに人外認定された少年は異世界を満喫する
美原風香
ファンタジー
「残念ながらあなたはお亡くなりになりました」
御山聖夜はトラックに轢かれそうになった少女を助け、代わりに死んでしまう。しかし、聖夜の心の内の一言を聴いた女神から気に入られ、多くの能力を貰って異世界へ転生した。
ーけれども、彼は知らなかった。数多の神から愛された彼は生まれた時点で人外の能力を持っていたことを。表では貴族として、裏では神々の使徒として、異世界のヒエラルキーを駆け上っていく!これは生まれてすぐに人外認定された少年の最強に無双していく、そんなお話。
✳︎不定期更新です。
21/12/17 1巻発売!
22/05/25 2巻発売!
コミカライズ決定!
20/11/19 HOTランキング1位
ありがとうございます!
セクスカリバーをヌキました!
桂
ファンタジー
とある世界の森の奥地に真の勇者だけに抜けると言い伝えられている聖剣「セクスカリバー」が岩に刺さって存在していた。
国一番の剣士の少女ステラはセクスカリバーを抜くことに成功するが、セクスカリバーはステラの膣を鞘代わりにして収まってしまう。
ステラはセクスカリバーを抜けないまま武闘会に出場して……
元おっさんの俺、公爵家嫡男に転生~普通にしてるだけなのに、次々と問題が降りかかってくる~
おとら@ 書籍発売中
ファンタジー
アルカディア王国の公爵家嫡男であるアレク(十六歳)はある日突然、前触れもなく前世の記憶を蘇らせる。
どうやら、それまでの自分はグータラ生活を送っていて、ろくでもない評判のようだ。
そんな中、アラフォー社畜だった前世の記憶が蘇り混乱しつつも、今の生活に慣れようとするが……。
その行動は以前とは違く見え、色々と勘違いをされる羽目に。
その結果、様々な女性に迫られることになる。
元婚約者にしてツンデレ王女、専属メイドのお調子者エルフ、決闘を仕掛けてくるクーデレ竜人姫、世話をすることなったドジっ子犬耳娘など……。
「ハーレムは嫌だァァァァ! どうしてこうなった!?」
今日も、そんな彼の悲鳴が響き渡る。
【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。
三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎
長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!?
しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。
ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。
といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。
とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない!
フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる