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27『ぼくは神さまじゃない』
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鳴かぬなら 信長転生記
27『ぼくは神さまじゃない』
ちがうちがう!
手のひらがプロペラなら、そのまま後ろに飛んで行ってしまいそうなくらいに振って否定した。
人に、こういう拒絶をされると、たいていはブチギレる。
しかし、忠八くんのそれには悪意が無い。無いからブチギレない。
「ぼくは神さまなんかじゃないよ」
「でも、敦子が言ってた」
「敦子さんて?」
「ああ、熱田神宮の神さま。古い付き合いだから敦子、普段はあっちゃんて呼んでる」
「そうなんだ、でも、ぼくは神さまじゃないから(^_^;)」
「そうなの?」
「ぼくはね、神社を作っただけで、神さまになったわけじゃない」
「どういうこと?」
「ぼくはね、エンジンを付けた飛行機を飛ばしたわけじゃないけど、飛行機が飛ぶ原理を発見してグライダーみたいなのを作ったんだ。それは、とても小さなことだったけど、ぼくの飛行機の原理に発奮して、いろんな人が努力して、短期間で飛行機を発展させたんだ……ほら」
忠八くんが広げたのはズックのカバンから取り出した、補修の跡が目立つ図録だ。
「これが、ぼくの飛行器だよ」
「あ、なんか懐かしい……」
オモチャみたいなもので、飛行機ではなくて飛行器。
からす型と玉虫型がある。
骨ばっかりが目立って、素人目にもカッコよくは無いけど、その分確実に飛びそうな頼もしさがある。
「懐かしい?」
「うん、兄きの守役やってた平手のジイというのがいたんだけどね、胴長短足、カッコよくはないんだけど、戦の時のかっこうが、これに似てる」
「お侍の戦装束が?」
「うん、幌武者って言ってね、大きな幌を背負ってるんだよ。竹籠みたいな芯の上に色とりどりの幌が掛けてあって、走ると裾の方は風になびいて、本来はカッコいい。だけど、平手のジイなんかがやると、主も馬も短足で、幌が上下にユサユサって、それに長槍なんか構えてるもんだから、なんかおかしくって、兄きがね『まるで血を吸い過ぎて飛べなくなった蚊のようだ』って笑ってた」
「アハハ、想像しただけで可笑しい」
「でしょでしょ」
「あ、でも、ぼくのはちゃんと飛んだから」
「ああ、ごめん。平手のジイも、戦場での働きはピカイチだったわよ」
「そうなんだ、ちゃんと機能するものって、そういうものなんだよ、うん」
「こっちのは?」
「ああ、フライヤー1号。エンジンを付けて飛ぶはずだったんだけどね、ライト兄弟が先にやっちゃって、飛ばすことができなかった」
「そうなんだ……こっちは?」
ページはまだまだ続いている。
「それは、ぼくの後輩たちが作った飛行機だよ、機械の機が付く方の飛行機」
「ゼロ戦とかYS11とか……いろいろあるんだね」
「うん、みんな凄い人たちだよ」
「みんな忠八くんのお弟子さん?」
「ちがうちがう!」
また手をブンブン振って否定する。
「みんな、自分で勉強して日本の飛行機を世界に通用するものにしていったんだ。それが嬉しくってね、こうやって図録にさせてもらってるんだ」
「あの……」
「え?」
「願いが叶ったっていうのは?」
紙飛行機を飛ばすポーズをして話題を向ける。
「うん、飛行機には事故がつきものだからね。飛行機が普通に飛べるようになるまでには……飛んでからも。いっぱい人が亡くなって、それで……神社を作ろうって、視界没をやった時に……」
「閃いたんだ!」
「え、あ、まあ、そうだね」
今度はチガウチガウをやりかけた手を引っ込めて頭を掻いた。
「だからね、ぼくは神社を作ったんであって、神さまになったわけじゃないんだ」
「そう? わたしには、もう神さまって名乗っていいような気がするけど」
「と、とんでもない」
今度は手を振る(^_^;)、照れるから言わないけど、可愛いよ。
「だからね、織田さんだって、視界没やったら、きっと願いが叶うよ」
「うん、ありがとう、師匠!」
「し、師匠!?」
「うん、忠八くんは紙飛行機の師匠だ!」
「やめてよ、照れるから(^_^;)」
「ハハ、ね、もっかい飛ばそう!」
「うん、今度は滞空時間を伸ばすようにがんばってみよう」
さあ飛ばすぞ!
振り仰いだ空は、もう茜に染まっていた、紙飛行機修業の二日目だった。
☆ 主な登場人物
織田 信長 本能寺の変で討ち取られて転生
熱田敦子(熱田大神) 信長担当の尾張の神さま
織田 市 信長の妹(兄を嫌っているので従姉妹の設定になる)
平手 美姫 信長のクラス担任
武田 信玄 同級生
上杉 謙信 同級生
古田 織部 茶華道部の眼鏡っこ
パヴリィチェンコ 転生学園の狙撃手
二宮忠八 紙飛行機の神さま
27『ぼくは神さまじゃない』
ちがうちがう!
手のひらがプロペラなら、そのまま後ろに飛んで行ってしまいそうなくらいに振って否定した。
人に、こういう拒絶をされると、たいていはブチギレる。
しかし、忠八くんのそれには悪意が無い。無いからブチギレない。
「ぼくは神さまなんかじゃないよ」
「でも、敦子が言ってた」
「敦子さんて?」
「ああ、熱田神宮の神さま。古い付き合いだから敦子、普段はあっちゃんて呼んでる」
「そうなんだ、でも、ぼくは神さまじゃないから(^_^;)」
「そうなの?」
「ぼくはね、神社を作っただけで、神さまになったわけじゃない」
「どういうこと?」
「ぼくはね、エンジンを付けた飛行機を飛ばしたわけじゃないけど、飛行機が飛ぶ原理を発見してグライダーみたいなのを作ったんだ。それは、とても小さなことだったけど、ぼくの飛行機の原理に発奮して、いろんな人が努力して、短期間で飛行機を発展させたんだ……ほら」
忠八くんが広げたのはズックのカバンから取り出した、補修の跡が目立つ図録だ。
「これが、ぼくの飛行器だよ」
「あ、なんか懐かしい……」
オモチャみたいなもので、飛行機ではなくて飛行器。
からす型と玉虫型がある。
骨ばっかりが目立って、素人目にもカッコよくは無いけど、その分確実に飛びそうな頼もしさがある。
「懐かしい?」
「うん、兄きの守役やってた平手のジイというのがいたんだけどね、胴長短足、カッコよくはないんだけど、戦の時のかっこうが、これに似てる」
「お侍の戦装束が?」
「うん、幌武者って言ってね、大きな幌を背負ってるんだよ。竹籠みたいな芯の上に色とりどりの幌が掛けてあって、走ると裾の方は風になびいて、本来はカッコいい。だけど、平手のジイなんかがやると、主も馬も短足で、幌が上下にユサユサって、それに長槍なんか構えてるもんだから、なんかおかしくって、兄きがね『まるで血を吸い過ぎて飛べなくなった蚊のようだ』って笑ってた」
「アハハ、想像しただけで可笑しい」
「でしょでしょ」
「あ、でも、ぼくのはちゃんと飛んだから」
「ああ、ごめん。平手のジイも、戦場での働きはピカイチだったわよ」
「そうなんだ、ちゃんと機能するものって、そういうものなんだよ、うん」
「こっちのは?」
「ああ、フライヤー1号。エンジンを付けて飛ぶはずだったんだけどね、ライト兄弟が先にやっちゃって、飛ばすことができなかった」
「そうなんだ……こっちは?」
ページはまだまだ続いている。
「それは、ぼくの後輩たちが作った飛行機だよ、機械の機が付く方の飛行機」
「ゼロ戦とかYS11とか……いろいろあるんだね」
「うん、みんな凄い人たちだよ」
「みんな忠八くんのお弟子さん?」
「ちがうちがう!」
また手をブンブン振って否定する。
「みんな、自分で勉強して日本の飛行機を世界に通用するものにしていったんだ。それが嬉しくってね、こうやって図録にさせてもらってるんだ」
「あの……」
「え?」
「願いが叶ったっていうのは?」
紙飛行機を飛ばすポーズをして話題を向ける。
「うん、飛行機には事故がつきものだからね。飛行機が普通に飛べるようになるまでには……飛んでからも。いっぱい人が亡くなって、それで……神社を作ろうって、視界没をやった時に……」
「閃いたんだ!」
「え、あ、まあ、そうだね」
今度はチガウチガウをやりかけた手を引っ込めて頭を掻いた。
「だからね、ぼくは神社を作ったんであって、神さまになったわけじゃないんだ」
「そう? わたしには、もう神さまって名乗っていいような気がするけど」
「と、とんでもない」
今度は手を振る(^_^;)、照れるから言わないけど、可愛いよ。
「だからね、織田さんだって、視界没やったら、きっと願いが叶うよ」
「うん、ありがとう、師匠!」
「し、師匠!?」
「うん、忠八くんは紙飛行機の師匠だ!」
「やめてよ、照れるから(^_^;)」
「ハハ、ね、もっかい飛ばそう!」
「うん、今度は滞空時間を伸ばすようにがんばってみよう」
さあ飛ばすぞ!
振り仰いだ空は、もう茜に染まっていた、紙飛行機修業の二日目だった。
☆ 主な登場人物
織田 信長 本能寺の変で討ち取られて転生
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上杉 謙信 同級生
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