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14『今度は茶道部』

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鳴かぬなら 信長転生記

14『今度は茶道部』   




 今日の昼飯は『エビフライ定食』だ。


 信玄は安定の『ほうとうランチ』、謙信は求道的『越後蕎麦定食』と変わり映えがしない。

 食い物なんて所詮は嗜好だ。他人がとやかく言うものではないがな。

「信長、おまえが食っているのはなんだ?」

 箸でエビフライを挟むと、信玄が聞いてきた。信玄は生涯海を見たことのないオッサンなのでエビフライを見たことが無いのかもしれん。

「エビフライだが。文句あるのか?」

「あるぞ」

「なんだ?」

「そいつは『エビフリャー』であろうが。尾張の住人なら、そう発音するぞ」

「いつの話だ」

「あはは、信長、これは信玄なりの親愛の情の表現よ。受け流してやって」

「信玄こそ、毎日ほうとうを食っていたら塩分取り過ぎであろうが」

「取り過ぎたら謙信にくれてやる」

「ん?」

「今のは『敵に塩を送る』に引っかけた洒落でしょ。笑ってやって」

「ふん」

「いま、鼻で笑ったな」

「俺の笑い方は、こうなんだ」

「いや、信長の笑い方はちがうだろ」

「どう違う?」

「キャハ キャハハハハハ……鳥が鳴くように甲高い。フロイスが書いておっただろ」

「知らん」

「二人とも、お互いをイジリながら食べられるようになったんだ(⌒∇⌒)」

 ワハハハ キャハハハ

「ところで、今日の部活なんだけど」

「お茶の次なら、お花であろうが」

「是非に及ばず」

「それは、俺のキャッチコピーだぞ」


 というわけで、今日の天下布部の活動は華道部に向かった。


『 華道部』

 上1/4が無駄に空いた看板の和室に入る。

「いらっしゃいませ、体験入部ですね」

 時節柄か、大きなマスクをした一年生部員が迎えてくれる。

「ああ、連絡しておいた天下布部だが、よろしく頼む」

「では、どうぞ奥にお進みください。お履き物は、わたしが整えますので……」

 上履きを揃えてくれる一年生の横を通る。

 こいつ……どこかで見たような?

「邪魔をする」

 他の者なら、ひどく厚かましく無作法に見えるのだが、信玄がやると、権威八分に二分の可笑しみで通ってしまう。

 信玄が元来持っている英雄の磊落さと、女子高生になった柔らかさか。

 女子高生らしさというものも一口では言えない。

 謙信は、二分の鋭さ、一分の厳しさ、五分の清楚さ、残りの二分は得体のしれない何かが薄い妖気の膜のようになって、独特の美しさを発散している。

「どうぞ、そのお花机の周囲にお座りください」

 花を活ける手を休めて、ボブカットの三年生がにじるようにして、こちらを向く。

「部長の池坊専慶です」

「天下布部部長の武田信玄。こちらの二人は部員の上杉謙信と織田信長だ」

 紹介を受け、軽く頭を下げて池坊と正対する。


 え、千利休?


 それは、先日、足を向けたばかりの茶道部部長の千利休であったぞ。




☆ 主な登場人物

 織田 信長       本能寺の変で打ち取られて転生してきた
 熱田敦子(熱田大神)  信長担当の尾張の神さま
 織田 市        信長の妹(兄を嫌っているので従姉妹の設定になる)
 平手 美姫       信長のクラス担任
 武田 信玄       同級生
 上杉 謙信       同級生




 
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