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79『停学の初日』
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はるか ワケあり転校生の7カ月
79『停学の初日』
停学の初日、学校に母子共に呼び出されて、校長先生から申し渡された。
「……ということで、坂東はるか。本日より三日間の停学を申し渡す。具体的な指導は学年生指と担任の先生から受けるように」
わたしは、教育勅語並の最敬礼で拝聴した。お母さんはただただ恐縮。先生達の反応は、校長室を出てから様々だった。竹内先生はニッコリ。乙女先生はホッと。
細川先生は、不足顔。
「これ、停学課題。しっかりやらんと延長やからな」
ぶっといA4の封筒を叩きつけるように渡していった。
その後ろ姿に、由香がアッカンベーをした。
「由香ちゃん、いつも仲良くしてもらってんのに、ほんとうにごめんなさいね、お顔とか傷になってない?」
「大丈夫ですよ、お母さん。こんな傷、子どもの頃からしょっちょうやったさかい」
「でも……」
「腫れがひいたら元通りですから」
「蕎麦に入れるビックリ水みたいなもんですよ、これで由香も少しは可愛くなりますよ」
と、吉川先輩のフォロー。
「約束、忘れんように……」
由香が耳元で、またささやいた。母子であちこち頭をを下げて玄関に。
事務室の前に大橋先生が演劇部のみんなと一緒に待っていた。お母さんはここでも平身低頭。
「大丈夫ですよお母さん、金曜日には停学が明けます。稽古は十分間に合いますから」
他のみんなも、異口同音に「大丈夫」と言ってくれ、お母さんは、その一人一人に頭を下げた。
栄恵ちゃんは、なにを勘違いしたんだろう、小さな花束をくれた。オレンジ色のハイビスカスが真ん中にドーンと鎮座。いささかバランスを欠いていたが。由香がささやいた。
「オレンジ色のハイビスカスの花言葉は『信頼』やさかいにね」
思わず涙目になってしまった。
先生や、仲間達が校門を出るまで見送ってくれた。
お母さんは、校門を出るまで何度も振り返っては頭を下げていた。
それから、黒門市場の由香の家に行った。
この事件を知ってから、お母さんは寡黙だった。事件の大きな原因が自分だって思っている。
そんなことはない、事件を起こしたのはわたしだ。わたしの洞察力のないタクラミとコラエ性の無さ。いわば、未熟で、欺瞞的でさえあったわたしのホンワカ。
でも、それを口にすると母子で傷つけ合ってしまう。
だから、わたしも必要以上にはしゃべらない。
「いやあ、これは事故ですよってに。うちの由香も、ちゃんと状況つかんでたら、あんなアホな身ぃの出し方はせんかったでっしゃろ。まあ、エエカッコシイの結果や思てます。はるかちゃんも、これに懲りんと、ええ友だちでいといたってくださいな」
魚をさばく手を休めて、由香のお母さんは言った。
その奥で、お父さんが、魚を生け簀に移しながら、微笑んでいた。
お辞儀をして、黒門市場の雑踏の中に紛れると、急にお魚を焼くいい匂い。
グ~~~~
母子のお腹が同時に鳴った。
今朝は、申し渡しが早かったことや、緊張やらで、二人とも、朝食をとっていなかった。市場の喫茶店に入ってモーニングセットをかっこんだ。
79『停学の初日』
停学の初日、学校に母子共に呼び出されて、校長先生から申し渡された。
「……ということで、坂東はるか。本日より三日間の停学を申し渡す。具体的な指導は学年生指と担任の先生から受けるように」
わたしは、教育勅語並の最敬礼で拝聴した。お母さんはただただ恐縮。先生達の反応は、校長室を出てから様々だった。竹内先生はニッコリ。乙女先生はホッと。
細川先生は、不足顔。
「これ、停学課題。しっかりやらんと延長やからな」
ぶっといA4の封筒を叩きつけるように渡していった。
その後ろ姿に、由香がアッカンベーをした。
「由香ちゃん、いつも仲良くしてもらってんのに、ほんとうにごめんなさいね、お顔とか傷になってない?」
「大丈夫ですよ、お母さん。こんな傷、子どもの頃からしょっちょうやったさかい」
「でも……」
「腫れがひいたら元通りですから」
「蕎麦に入れるビックリ水みたいなもんですよ、これで由香も少しは可愛くなりますよ」
と、吉川先輩のフォロー。
「約束、忘れんように……」
由香が耳元で、またささやいた。母子であちこち頭をを下げて玄関に。
事務室の前に大橋先生が演劇部のみんなと一緒に待っていた。お母さんはここでも平身低頭。
「大丈夫ですよお母さん、金曜日には停学が明けます。稽古は十分間に合いますから」
他のみんなも、異口同音に「大丈夫」と言ってくれ、お母さんは、その一人一人に頭を下げた。
栄恵ちゃんは、なにを勘違いしたんだろう、小さな花束をくれた。オレンジ色のハイビスカスが真ん中にドーンと鎮座。いささかバランスを欠いていたが。由香がささやいた。
「オレンジ色のハイビスカスの花言葉は『信頼』やさかいにね」
思わず涙目になってしまった。
先生や、仲間達が校門を出るまで見送ってくれた。
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それから、黒門市場の由香の家に行った。
この事件を知ってから、お母さんは寡黙だった。事件の大きな原因が自分だって思っている。
そんなことはない、事件を起こしたのはわたしだ。わたしの洞察力のないタクラミとコラエ性の無さ。いわば、未熟で、欺瞞的でさえあったわたしのホンワカ。
でも、それを口にすると母子で傷つけ合ってしまう。
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「いやあ、これは事故ですよってに。うちの由香も、ちゃんと状況つかんでたら、あんなアホな身ぃの出し方はせんかったでっしゃろ。まあ、エエカッコシイの結果や思てます。はるかちゃんも、これに懲りんと、ええ友だちでいといたってくださいな」
魚をさばく手を休めて、由香のお母さんは言った。
その奥で、お父さんが、魚を生け簀に移しながら、微笑んでいた。
お辞儀をして、黒門市場の雑踏の中に紛れると、急にお魚を焼くいい匂い。
グ~~~~
母子のお腹が同時に鳴った。
今朝は、申し渡しが早かったことや、緊張やらで、二人とも、朝食をとっていなかった。市場の喫茶店に入ってモーニングセットをかっこんだ。
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