57 / 95
57『伝法のオネエサン』
しおりを挟む
はるか ワケあり転校生の7カ月
57『伝法のオネエサン』
東京駅に着いてさらにびっくりした!
ホームに、伝法のオネエサンが立っていた。
「坂東はるかちゃんね?」
「は、はい」
張り込みの刑事に発見された犯人て、こんな気持ち……。
「で、あなたは?」
伝法さんは先生を見とがめた。
「あ、自分は……」
先生も気圧され気味のご返答。
「ちょっと確認させていただきます」
伝法さんはスマホを手にした。
「もしもし、タキさん。仕込みの最中にごめん。いま東京駅。うん、はるかちゃんはメッケ。でも、それにさ……」
話の最後に大爆笑して、伝法さんはスマホを切った。
「さ、行きましょうか、大橋先生、はるかちゃん」
伝法さんは、さっさと歩き出した。
五分後、スマホの番号を交換して、わたしたちは伝法さんの車の中。
「大橋先生も、新幹線、タキさんに頼んだんでしょ?」
「ええ、昨日電話がありまして『明日、東京の出版社行く予定あったよなあ』て……」
「さすがに、となりの席ってわけにはいかなかったようですけど、同じ車両にしたんですね」
「あいつ……」
同感です、はい。でも、このおかげで楽になったんだけどもね。
「まあ、半分お遊びの賭け。半分は……フフ、そういうタキさんてかわいいですね」
大人の関係ってムズイよ。
「申し遅れました、わたし渡辺真由って言います。編集の仕事やってます。トモ……はるかちゃんのお母さんとも古いつき合いです」
アクセルを踏み込んだ。うしろの車の追い越しを阻止。二十キロオーバー、負けん気つよそー……。
「荒川についたら、お任せしていいんですよね」
「そのつもりです。故郷とはいえ事情が事情ですから」
「よかった。わたし午後から編集会議だから……先生、今夜はお泊まりなんですよね?」
「ええ、そのつもりですが」
「じゃ、はるかちゃんと同じホテルにしときますね」
「でも、予約してありますから」
「キャンセルしときます。同じ系列だから」
「え……?」
タイヤをきしませて交差点を曲がった。
「あ、父が経営してるんです。大橋先生、こういうのって苦手だから、いつも人任せでしょ」
……でしょうね、今時ガラケーすら持たない原始人だから。
「はるかちゃん、どのへんに着けようか。いきなり家の前ってのもなんでしょう?」
「わがまま言ってすみません。南千住の図書館に行ってもらえます」
「あら、返し忘れた本でもあるの?」
「いいえ、借りにいくんです。南千住の空気を」
「ハハ、さすがトモちゃんの子ね。表現が文学的だ」
「いえ、文字通りなんです。荒川の子に戻るには、新幹線速すぎましたから」
57『伝法のオネエサン』
東京駅に着いてさらにびっくりした!
ホームに、伝法のオネエサンが立っていた。
「坂東はるかちゃんね?」
「は、はい」
張り込みの刑事に発見された犯人て、こんな気持ち……。
「で、あなたは?」
伝法さんは先生を見とがめた。
「あ、自分は……」
先生も気圧され気味のご返答。
「ちょっと確認させていただきます」
伝法さんはスマホを手にした。
「もしもし、タキさん。仕込みの最中にごめん。いま東京駅。うん、はるかちゃんはメッケ。でも、それにさ……」
話の最後に大爆笑して、伝法さんはスマホを切った。
「さ、行きましょうか、大橋先生、はるかちゃん」
伝法さんは、さっさと歩き出した。
五分後、スマホの番号を交換して、わたしたちは伝法さんの車の中。
「大橋先生も、新幹線、タキさんに頼んだんでしょ?」
「ええ、昨日電話がありまして『明日、東京の出版社行く予定あったよなあ』て……」
「さすがに、となりの席ってわけにはいかなかったようですけど、同じ車両にしたんですね」
「あいつ……」
同感です、はい。でも、このおかげで楽になったんだけどもね。
「まあ、半分お遊びの賭け。半分は……フフ、そういうタキさんてかわいいですね」
大人の関係ってムズイよ。
「申し遅れました、わたし渡辺真由って言います。編集の仕事やってます。トモ……はるかちゃんのお母さんとも古いつき合いです」
アクセルを踏み込んだ。うしろの車の追い越しを阻止。二十キロオーバー、負けん気つよそー……。
「荒川についたら、お任せしていいんですよね」
「そのつもりです。故郷とはいえ事情が事情ですから」
「よかった。わたし午後から編集会議だから……先生、今夜はお泊まりなんですよね?」
「ええ、そのつもりですが」
「じゃ、はるかちゃんと同じホテルにしときますね」
「でも、予約してありますから」
「キャンセルしときます。同じ系列だから」
「え……?」
タイヤをきしませて交差点を曲がった。
「あ、父が経営してるんです。大橋先生、こういうのって苦手だから、いつも人任せでしょ」
……でしょうね、今時ガラケーすら持たない原始人だから。
「はるかちゃん、どのへんに着けようか。いきなり家の前ってのもなんでしょう?」
「わがまま言ってすみません。南千住の図書館に行ってもらえます」
「あら、返し忘れた本でもあるの?」
「いいえ、借りにいくんです。南千住の空気を」
「ハハ、さすがトモちゃんの子ね。表現が文学的だ」
「いえ、文字通りなんです。荒川の子に戻るには、新幹線速すぎましたから」
0
お気に入りに追加
0
あなたにおすすめの小説
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

女難の男、アメリカを行く
灰色 猫
ライト文芸
本人の気持ちとは裏腹に「女にモテる男」Amato Kashiragiの青春を描く。
幼なじみの佐倉舞美を日本に残して、アメリカに留学した海人は周りの女性に振り回されながら成長していきます。
過激な性表現を含みますので、不快に思われる方は退出下さい。
背景のほとんどをアメリカの大学で描いていますが、留学生から聞いた話がベースとなっています。
取材に基づいておりますが、ご都合主義はご容赦ください。
実際の大学資料を参考にした部分はありますが、描かれている大学は作者の想像物になっております。
大学名に特別な意図は、ございません。
扉絵はAI画像サイトで作成したものです。
ちょっと大人な体験談はこちらです
神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない
ちょっと大人な体験談です。
日常に突然訪れる刺激的な体験。
少し非日常を覗いてみませんか?
あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ?
※本作品ではPixai.artで作成した生成AI画像ならびに
Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。
※不定期更新です。
※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。


セーラー服美人女子高生 ライバル同士の一騎討ち
ヒロワークス
ライト文芸
女子高の2年生まで校内一の美女でスポーツも万能だった立花美帆。しかし、3年生になってすぐ、同じ学年に、美帆と並ぶほどの美女でスポーツも万能な逢沢真凛が転校してきた。
クラスは、隣りだったが、春のスポーツ大会と夏の水泳大会でライバル関係が芽生える。
それに加えて、美帆と真凛は、隣りの男子校の俊介に恋をし、どちらが俊介と付き合えるかを競う恋敵でもあった。
そして、秋の体育祭では、美帆と真凛が走り高跳びや100メートル走、騎馬戦で対決!
その結果、放課後の体育館で一騎討ちをすることに。

とある高校の淫らで背徳的な日常
神谷 愛
恋愛
とある高校に在籍する少女の話。
クラスメイトに手を出し、教師に手を出し、あちこちで好き放題している彼女の日常。
後輩も先輩も、教師も彼女の前では一匹の雌に過ぎなかった。
ノクターンとかにもある
お気に入りをしてくれると喜ぶ。
感想を貰ったら踊り狂って喜ぶ。
してくれたら次の投稿が早くなるかも、しれない。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる