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47『天六商店街を通って帰った』
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はるか ワケあり転校生の7カ月
47『天六商店街を通って帰った』
かっこいい……。
わたしの網膜には、しばらくトコさんの残像が残った。
「あいつも、損な性分や」
「トコさん、なにしてはるんですか?」
「理学療法士……のエキスパート」
「ああ、リハビリの介助やったりするんですよね?」
「あいつは、訪問で、リハビリもやって、病院勤務もやって、非常勤で理学療法の講師までこなしとる。今日も休みやねんけどな、ああやって言われると、救急車みたいにすっ飛んで行きよる。で、月に二度ほど、ここに来て毒を吐いていくいうわけや」
「今日は、あなたたちが毒消しになったわね」と、毒が言った。
帰りは一駅分逆向きに天六商店街を通って帰った。堺筋はもう暑い。
「昨日、あんた、ラブラブシートやってんてな」
由香が左のお下げをひっぱった。
「え……?」
一瞬なんのことだか分かんなかった。
「ああ、あれか」思い出した。
「あれかて、あんた……」
「そんな怖い顔しないでよ」
「なんかもろたやろ。吉川先輩が、えらい真剣な顔で渡してたて、評判やで」
「もらったんじゃないよ、見せてもらったの。『ジュニア文芸』よ」
「ふーん……」
「言っとくけど、ただのワンノブゼムだからね」
「そやけど……」
「わたしは、吉川先輩の心に住民登録した覚えはないからね。あそこはまだ空き地。強引に住んじゃえばいいよ。犬も三日も居着けば情が移るっていうよ」
「あたしは犬か!」
「そういう意味じゃなくって」
「分かってるよ、はるかの気持ちは。そやけどなあ……あ、今度先輩のライブあるねん。知ってるやろ。先輩がサックスやってんのん?」
「ライブのことは知らないよ。サックスやってんのは知ってるけど」
「え、うそ!?」
「なんにも聞いてないよ」
「ほんま……うーん……」
由香の乙女心に火がついた。
わたしは、なんとなく分かった。わたしにライブを知らせなかった理由。
わたしだって、あの佳作、あんまり進んで見せたくはなかった。
でも、ライブのチケットにはノルマがあるんだろう。
言われないかぎり、知らんぷりしておこう。
あの洋品店が見えてきた。
あ、あのポロシャツまだ残ってる。
プライスダウンされている。
偶然だろうけど、オレンジ色の自転車と同じ値段。
47『天六商店街を通って帰った』
かっこいい……。
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「今日は、あなたたちが毒消しになったわね」と、毒が言った。
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「え……?」
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「そんな怖い顔しないでよ」
「なんかもろたやろ。吉川先輩が、えらい真剣な顔で渡してたて、評判やで」
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「ふーん……」
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「ライブのことは知らないよ。サックスやってんのは知ってるけど」
「え、うそ!?」
「なんにも聞いてないよ」
「ほんま……うーん……」
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わたしだって、あの佳作、あんまり進んで見せたくはなかった。
でも、ライブのチケットにはノルマがあるんだろう。
言われないかぎり、知らんぷりしておこう。
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