23 / 95
23『吉川先輩の人物評』
しおりを挟む
はるか ワケあり転校生の7カ月
23『吉川先輩の人物評』
湯船に鼻の下まで漬かって考えた……念のため、自分ちのお風呂です!
吉川先輩も、反応するのに数秒かかった。
で、数秒後「アハハハ」と笑って、結局地下鉄まで二人で笑いながら行って喫茶店に入った。そんでもって、三十分ほど気まずく話して帰ってきた。
問題は、まず、あの数秒間。
吉川先輩は、わたしの反応を伺っていたように感じたんだけど……考えすぎ……?
も一つは、喫茶店での話題。
三十分というのは、二人で面と向かって話した時間としては、今までで一番長かった。
疲れていたせいか、さっきのドギマギのせいか、お芝居の話も七坂の話も、お互いに「あ、そう……」って感じで滑ってしまう。滑るくせに話は尽きない。
話題はいつしか、学校で共通の話題にできる人の話になった。
友だち、先生、Y駅近くのタコ焼き屋のおじさん、そして大橋先生のことなど……吉川先輩は、わたしを退屈させないように気を遣って……と思うんだけど、人物評が辛いってか、シニカル。
乙女先生はHBT「わたしのホンワカビューティーのHBに似てる」と思ったら、ヒステリービックリタヌキ。
たしかに乙女先生は、怒るとおっかない。
授業でも、よくお説教をする。こないだも、部活の無断欠席が多いルリちゃんにカミナリを落としていた。同時に部活の管理ができていないとタロくん先輩も叱っていた。こういうところをヒスととるらしい。
でも、それって、叱って叱られて当然の状況だったと思った。
ビックリは、お目々パッチリで口元は油断がならないチェシャネコだから。見ようによっては、ソーカナァだけども、吉川先輩はこう言う。
「アハハ、あれは二年前、階段を踏み外して転げ落ちたときのビックリがそのまま顔に貼りついてんだよ」
あれで、先生は膝のお皿を割ってしまった。ちょうどお母さんの介護が始まった頃だと、タマちゃん先輩に聞いた。吉川先輩も知ってるはずなのに。
タロくん先輩はHBTジュニア。まあ、見かけはそうだけど……。
タマちゃん先輩はマタちゃん。「タマちゃん」のデングリガエシかと思ったら、口癖の「また……」だということと、熱中すると膝が開いてくる……。
どこ見てんだ……と思いつつ、あのクッタクの無さと、普段の優等生ぶりとのギャップ……短時間なら楽しい先輩だと思えるのに。
まあ、今日三時間ほどの印象だから、保留にしておこう。
「はるか、何やってんのよ?」
母上が動かしていた手を止めた。
「役作りよ、役作り」
「ああ、お芝居の中で、ダルマサンガコロンダをやるんだ……」
「あのね」
「じゃなかったら、風呂上がりのドロボウさん?」
「違うよ。美少女アンドロイドよ、美少女!」
「アンドロイド。で、美少女……ワハハハ」
「そうゲラゲラ笑うことないでしょ!」
役作りを中断してスポーツドリンクを取りに行った。
「そう、ゲラゲラ、ゲラよ……あ、お母さんにもちょうだい」
「なによ、忙しい人ね。笑ったと思ったら、もう落ち込み? ソ-ウツだよソーウツ」
グラスを渡しながら、母上の手許を見るとゲラ刷りの束。
23『吉川先輩の人物評』
湯船に鼻の下まで漬かって考えた……念のため、自分ちのお風呂です!
吉川先輩も、反応するのに数秒かかった。
で、数秒後「アハハハ」と笑って、結局地下鉄まで二人で笑いながら行って喫茶店に入った。そんでもって、三十分ほど気まずく話して帰ってきた。
問題は、まず、あの数秒間。
吉川先輩は、わたしの反応を伺っていたように感じたんだけど……考えすぎ……?
も一つは、喫茶店での話題。
三十分というのは、二人で面と向かって話した時間としては、今までで一番長かった。
疲れていたせいか、さっきのドギマギのせいか、お芝居の話も七坂の話も、お互いに「あ、そう……」って感じで滑ってしまう。滑るくせに話は尽きない。
話題はいつしか、学校で共通の話題にできる人の話になった。
友だち、先生、Y駅近くのタコ焼き屋のおじさん、そして大橋先生のことなど……吉川先輩は、わたしを退屈させないように気を遣って……と思うんだけど、人物評が辛いってか、シニカル。
乙女先生はHBT「わたしのホンワカビューティーのHBに似てる」と思ったら、ヒステリービックリタヌキ。
たしかに乙女先生は、怒るとおっかない。
授業でも、よくお説教をする。こないだも、部活の無断欠席が多いルリちゃんにカミナリを落としていた。同時に部活の管理ができていないとタロくん先輩も叱っていた。こういうところをヒスととるらしい。
でも、それって、叱って叱られて当然の状況だったと思った。
ビックリは、お目々パッチリで口元は油断がならないチェシャネコだから。見ようによっては、ソーカナァだけども、吉川先輩はこう言う。
「アハハ、あれは二年前、階段を踏み外して転げ落ちたときのビックリがそのまま顔に貼りついてんだよ」
あれで、先生は膝のお皿を割ってしまった。ちょうどお母さんの介護が始まった頃だと、タマちゃん先輩に聞いた。吉川先輩も知ってるはずなのに。
タロくん先輩はHBTジュニア。まあ、見かけはそうだけど……。
タマちゃん先輩はマタちゃん。「タマちゃん」のデングリガエシかと思ったら、口癖の「また……」だということと、熱中すると膝が開いてくる……。
どこ見てんだ……と思いつつ、あのクッタクの無さと、普段の優等生ぶりとのギャップ……短時間なら楽しい先輩だと思えるのに。
まあ、今日三時間ほどの印象だから、保留にしておこう。
「はるか、何やってんのよ?」
母上が動かしていた手を止めた。
「役作りよ、役作り」
「ああ、お芝居の中で、ダルマサンガコロンダをやるんだ……」
「あのね」
「じゃなかったら、風呂上がりのドロボウさん?」
「違うよ。美少女アンドロイドよ、美少女!」
「アンドロイド。で、美少女……ワハハハ」
「そうゲラゲラ笑うことないでしょ!」
役作りを中断してスポーツドリンクを取りに行った。
「そう、ゲラゲラ、ゲラよ……あ、お母さんにもちょうだい」
「なによ、忙しい人ね。笑ったと思ったら、もう落ち込み? ソ-ウツだよソーウツ」
グラスを渡しながら、母上の手許を見るとゲラ刷りの束。
0
お気に入りに追加
0
あなたにおすすめの小説
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

女難の男、アメリカを行く
灰色 猫
ライト文芸
本人の気持ちとは裏腹に「女にモテる男」Amato Kashiragiの青春を描く。
幼なじみの佐倉舞美を日本に残して、アメリカに留学した海人は周りの女性に振り回されながら成長していきます。
過激な性表現を含みますので、不快に思われる方は退出下さい。
背景のほとんどをアメリカの大学で描いていますが、留学生から聞いた話がベースとなっています。
取材に基づいておりますが、ご都合主義はご容赦ください。
実際の大学資料を参考にした部分はありますが、描かれている大学は作者の想像物になっております。
大学名に特別な意図は、ございません。
扉絵はAI画像サイトで作成したものです。
ちょっと大人な体験談はこちらです
神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない
ちょっと大人な体験談です。
日常に突然訪れる刺激的な体験。
少し非日常を覗いてみませんか?
あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ?
※本作品ではPixai.artで作成した生成AI画像ならびに
Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。
※不定期更新です。
※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。


セーラー服美人女子高生 ライバル同士の一騎討ち
ヒロワークス
ライト文芸
女子高の2年生まで校内一の美女でスポーツも万能だった立花美帆。しかし、3年生になってすぐ、同じ学年に、美帆と並ぶほどの美女でスポーツも万能な逢沢真凛が転校してきた。
クラスは、隣りだったが、春のスポーツ大会と夏の水泳大会でライバル関係が芽生える。
それに加えて、美帆と真凛は、隣りの男子校の俊介に恋をし、どちらが俊介と付き合えるかを競う恋敵でもあった。
そして、秋の体育祭では、美帆と真凛が走り高跳びや100メートル走、騎馬戦で対決!
その結果、放課後の体育館で一騎討ちをすることに。

とある高校の淫らで背徳的な日常
神谷 愛
恋愛
とある高校に在籍する少女の話。
クラスメイトに手を出し、教師に手を出し、あちこちで好き放題している彼女の日常。
後輩も先輩も、教師も彼女の前では一匹の雌に過ぎなかった。
ノクターンとかにもある
お気に入りをしてくれると喜ぶ。
感想を貰ったら踊り狂って喜ぶ。
してくれたら次の投稿が早くなるかも、しれない。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる