はるか ワケあり転校生の7カ月 (まどか 乃木坂学院高校演劇部物語 姉妹作)

武者走走九郎or大橋むつお

文字の大きさ
上 下
20 / 95

20『ポッカーン!』

しおりを挟む
「では次に『魔法師』についてお話いたしますわね」

アリーチェさんが改めて黒板に単語を書いていく。

「『魔法師』とは魔法のスペシャリストとして認められた資格取得者のことですわ。
 この世界における殆どの国がこの制度を採用しておりますの。
 この超大陸『ヴァール』においてはこの数年で『勇者』という新たな称号が生まれましたが、それまでは各国がこぞってこの『魔法師』を輩出することに躍起になっておりましたわ。
 優れた『魔法師』の数こそが国の戦力保有数を、ひいては国力そのものを表しているとされていたのですから。
 まぁ、『ヴァール』以外ではそれは今でもほぼ変わっておりませんがね」

その話なら僕も少し知っている。
この学園に来る時に荷馬車のおじさんとそんな話をしたこともあったっけ。

「『魔法師』にもまた3つのクラス分けが存在しており『下級魔法師』、『中級魔法師』、『上級魔法師』がありますの」

例によって、アリーチェさんが黒板にその3つの単語を板書していく。

「あの、僕の『魔法師』ってものに対する認識は単純に魔法を使える人、ぐらいのイメージだったんですけど、この前の模擬戦を見た限り今この学園に居る生徒の人達って割と普通に魔法を使えてますよね?
 あの人達は『魔法師』とは呼ばないんですか?」
「まあ、魔法に詳しくなければ貴方と同じような認識の者が大半でしょうね。
 ですが『魔法師』を名乗るには国から正式に施行されている国家試験に合格しなければなりませんわ。
 そしてただ魔法が使える、というだけでは『魔法師』にはなれませんの。
 他にも条件がありますわ」
「条件?」

アリーチェさんは黒板の3つの単語に説明文を載せた。

「まず、『下級魔法師』について。
 基本的にただ『魔法師』と呼ばれている人は殆どがこのクラスのものになりますわ。
 この『魔法師』になる為の条件は、『2種類以上の系統の中等魔法が使用可能である』というものですの」
「2種類以上の系統?」

「そう、例えば炎魔法、《ファイアー・ジャベリン》と氷魔法、《アイス・ブレード》を発動出来る、といった具合でございますわ。
 そして、これだけでも相当に困難な条件でありましてよ。
 何故なら、自身の得意系統以外の魔法の発動というものはとても難易度が高いからですわ」
「そうなんですか?」

「ええ、まだ初等魔法程度なら他系統の魔法を使うことは比較的容易な方ではありますわ。
 しかし中等魔法からはそうはいきません。
 10年以上もの歳月をかけて鍛錬し、ようやく下位中等魔法を使えるかどうか、といわれておりますわ。
 ですので、若い年齢のうちで『魔法師』になれる方は非常に稀ですわね」

そういえば『魔法師』候補と言われていたレディシュさんも確かに爆発魔法の他に魔力と体力を吸収する魔法も使えてたんだっけ。
あの人本当に凄い実力者だったんだなぁ……

「『中級魔法師』は『3種類以上の系統の中等魔法が使用可能である』こと、そして『『準』高等魔法を使用可能である』こと、この2つの条件を満たす必要がありますわ」
「3種類以上の魔法……!」

「ええ、ちなみに『準』高等魔法の習得も同じくらい難しいと言われておりますわ。
 単純に『下級魔法師』の2倍困難と言えますわね」
「………………」

改めて僕とそう変わらない歳で『中級魔法師』の資格を持つというキャリーさんの規格外ぶりがよく分かる……
そして、そんな人相手に有利な試合形式とはいえ、完勝してしまったアリーチェさんも……

「そして『上級魔法師』。
 お察しかと思いますが、条件は『4種類以上の中等魔法が使用可能である』こと、そして『高等魔法を使用可能である』こと、ですわ。
 貴方もご存知の『上級魔法師』といえば……」
「アリエス先生……ですよね」

高等治癒魔法、そのうえ解析魔法まで使えるコーディス先生曰く補助魔法を極めた世界最高峰の『魔法師』の1人。
僕も模擬戦の時やレディシュさんとの戦いの時の怪我の治療でお世話になったっけ。

「アリエス先生の母君であるリブラ先生もまた治癒魔法を極めた『上級魔法師』ですわね。
 あの方々スターリィ家は代々強力な治癒魔法を得意系統としておりますのよ。
 得意系統が血筋を通して遺伝するのは珍しくないですからね」

ふむ、そういうものなのか。

「あと、これは余談なのですがこの学園の講師陣は殆どが『魔法師』の資格持ちでしてよ。
 これだけの数の『魔法師』が一堂に会する場所など、世界でもここぐらいしかありませんでしょうね」
「ほえぇ……」

いやはやもう何と言うか……
勇者学園恐るべし、の一言だ……

 ◆ ◆ ◆ ◆ ◆

「さて、基本的なお話はこんな所でしょうかね。
 という訳で、アリスリーチェ先生の特別魔法講座はとりあえずここまでと致しますわ」
「はい!今日は本当にありがとうございます!
 おかげで魔法について詳しくなれました!」
「んあ……?
 ふわぁー……
 話終わったのー?」

「今回の内容は本当に基礎的な部分だけでして、まだまだ知っていただきたいことはあったのですが……
 まあそれはまた次の機会でお話いたしますわ」
「はい!よろしくお願いします!」
「サラッと次の予定を確約してるけどやるべきことが沢山あるんじゃなかったのか巻貝」

「アリスリーチェ様!
 次の講義での衣装はこのファーティラ渾身の一作!
 『バニーティーチャー ~ 魅惑の補習授業 ~』をどうかご着用ください!
 女教師とバニーガール、方向性の違う2つのエロスをとことんつき詰めてみました!!」
「もうこの際ハッキリ言わせて貰いますね。
 アナタもしかして色々とダメなのでは?」

そんなこんなで今回の特別講義は終了したのだった。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

友達の母親が俺の目の前で下着姿に…

じゅ〜ん
エッセイ・ノンフィクション
とあるオッサンの青春実話です

女難の男、アメリカを行く

灰色 猫
ライト文芸
本人の気持ちとは裏腹に「女にモテる男」Amato Kashiragiの青春を描く。 幼なじみの佐倉舞美を日本に残して、アメリカに留学した海人は周りの女性に振り回されながら成長していきます。 過激な性表現を含みますので、不快に思われる方は退出下さい。 背景のほとんどをアメリカの大学で描いていますが、留学生から聞いた話がベースとなっています。 取材に基づいておりますが、ご都合主義はご容赦ください。 実際の大学資料を参考にした部分はありますが、描かれている大学は作者の想像物になっております。 大学名に特別な意図は、ございません。 扉絵はAI画像サイトで作成したものです。

ちょっと大人な体験談はこちらです

神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない ちょっと大人な体験談です。 日常に突然訪れる刺激的な体験。 少し非日常を覗いてみませんか? あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ? ※本作品ではPixai.artで作成した生成AI画像ならびに  Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。 ※不定期更新です。 ※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

一夏の性体験

風のように
恋愛
性に興味を持ち始めた頃に訪れた憧れの年上の女性との一夜の経験

セーラー服美人女子高生 ライバル同士の一騎討ち

ヒロワークス
ライト文芸
女子高の2年生まで校内一の美女でスポーツも万能だった立花美帆。しかし、3年生になってすぐ、同じ学年に、美帆と並ぶほどの美女でスポーツも万能な逢沢真凛が転校してきた。 クラスは、隣りだったが、春のスポーツ大会と夏の水泳大会でライバル関係が芽生える。 それに加えて、美帆と真凛は、隣りの男子校の俊介に恋をし、どちらが俊介と付き合えるかを競う恋敵でもあった。 そして、秋の体育祭では、美帆と真凛が走り高跳びや100メートル走、騎馬戦で対決! その結果、放課後の体育館で一騎討ちをすることに。

とある高校の淫らで背徳的な日常

神谷 愛
恋愛
とある高校に在籍する少女の話。 クラスメイトに手を出し、教師に手を出し、あちこちで好き放題している彼女の日常。 後輩も先輩も、教師も彼女の前では一匹の雌に過ぎなかった。 ノクターンとかにもある お気に入りをしてくれると喜ぶ。 感想を貰ったら踊り狂って喜ぶ。 してくれたら次の投稿が早くなるかも、しれない。

処理中です...