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074『メイソンが一番の男友達になる』
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やくもあやかし物語 2
074『メイソンが一番の男友達になる』
黒雲はみるみるうちに広がって、見上げる空のほとんどを覆いつくしていく!
覆いつくすにしたがって伸びていくためか、厚みが薄くなって、微妙に血の色を含んだ灰色に変わっていく。端っこの方は山や草原の彼方で見えないんだけど、大地そのものを覆うところまではいかないみたい。四方の空の底からは光が入って来て、チョー巨大なドーム球場の中にいるみたい。
「サーカスのテント小屋みたいだ」「夕焼け空を映したプラネタリウム」「巨大なクラゲの下に潜ったみたい」「火星の空みたいだ」
みんな口々に感想を言う。出身がバラバラだから、みんなイメージが違うんだけどね。
ギャーギャー ギャーギャー ギャーギャー
どこに居たのか鳥たちが怯えて、てんでに飛び始める。
ピシ ピシ ピシピシ ピシ ピシピシ
高く飛んだ鳥たちが雲の底まで来ると、電気みたいなのに撃たれ、しゅんかん光を放って消えていく。
ピシ ピシ ピシピシ ピシ ピシピシ ピシ ピシ ピシピシ ピシ
それでも鳥たちは、パニックみたいになって電撃を喰らっては蒸発していく!
「ちょっと、下がって来ていないか?」
ヒューゴが指摘して、みんな空を見渡す。
「うん」「やっぱり下がって来てる」
ベラ・グリフィスとアイネ・シュタインベルグが怯えた声を上げ、アンナ・ハーマスティンは口に手を当てたまま声も出せない。
「あれが下りきったら、ちょっとまずいかもね」
ロージーは冷静だけど、ではどうするかというところまでは言えないみたい。メイソンとヒューゴは叶わぬまでも、近衛の剣を抜いて空に突きつけている。
『みなのもの! 空の端っこで雲の裾を掴んで引っ張ってる魔物がいるぞよ!』
御息所がお局言葉で状況を報告というか叫ぶ!
『ひい ふう みい よぉ……全部で八匹! やつらをやっつけたら、この怪しの雲は消えていきそうじゃぞ! みんなレベル30のゴブリン程度じゃ! わらわが指し示す、みなで退治せよ!』
「よし、じっとしていても始まらない。みんなでやっつけよう!」
おお!!
ロージーが声を上げると、全員が雄たけびを上げ、近衛の剣を振るって、四方に散っていった。むろん、御息所も飛んで行ったよ。
だ、だいじょうぶかなあ。
ひとり心配になっていると、横の薮がガサッと音がして、メイソンが戻ってきた。
「メイソン!?」
「八人で間に合うからね。ぼくたちは十人。ヒューゴはアンナのサポートに回って、このメイソン・ヒルはヤクモのガードにまわることにした」
「あ、ありがとう。でも大丈夫?」
「ああ、キミの使い魔が力を貸してくれている。きっと大丈夫さ」
ああ、まだキチンと紹介してないから、御息所は使い魔の認識なんだ(^_^;)
ゾワゾワゾワ……
気配に振り仰ぐと、雲はさらに下がって来て、鳥たちが焼き殺される音は間遠になってきた。
「鳥たちは、ほとんどやっつけられたみたいね」
「だいじょうぶ、きっと間に合うさ」
「う、うん」
「ぼくの先祖はアーサー王に仕えていたんだ」
「あ、それでナイトの称号を」
「アーサー王の城の補修をする石工だったんだ。メイソンというのは元来石工という意味だからね」
「そうなんだ」
「ある日、騎士たちの大半が戦に出ていた時、城の隙をついて攻めて来た敵を留守番の騎士たちといっしょにやっつけて、その功績でナイトに叙せられたんだ」
「あ、わたしをガードしてもあげられる称号がないわ」
「きみの第一の友だちの称号でいいさ」
「あ、その席にはネルとハイジが……」
あ、わたしって、なんて気の利かないことを言うんだ(;'∀')。
「残念」
「あ、いや、それはちがくて……」
「なら、一番の男友達の称号だ!」
「あ、それなら」
「よかった」
え、あ、一番の男友達ってぇ(#'∀'#)!?
プッツン!!
その時、四方でブチギレる音がしたかと思うと血灰色の雲はみるみる縮んでいって、ほとんど真上で広げた傘ほどに縮んでしまった。
「「やったあ!」」
傘は、あちこち穴が開いている。能力いっぱいに広げたんで支えを失って綻びが出てしまったんだ。
「「あれ?」」
ゆっくり傘が下りてくると、傘の真ん中から二本の脚が生えてきて、地面に近くなって表の方も見えてくると胴体が付いている。
胴体の上には首と腕も生えてきて、地上二メートルぐらいの高さにおりてくると、ひどく憎そげなお姫さまになった!
☆彡主な登場人物
やくも 斎藤やくも ヤマセンブルグ王立民俗学校一年生 ミチビキ鉛筆、おもいやり等が武器
ネル コーネリア・ナサニエル やくものルームメイト エルフ
ヨリコ王女 ヤマセンブルグ王立民俗学学校総裁
ソフィー ソフィア・ヒギンズ 魔法学講師
メグ・キャリバーン 教頭先生
カーナボン卿 校長先生
酒井 詩 コトハ 聴講生
同級生たち アーデルハイド メイソン・ヒル オリビア・トンプソン ロージー・エドワーズ ヒトビッチ・アルカード ヒューゴ・プライス ベラ・グリフィス アイネ・シュタインベルグ アンナ・ハーマスティン
先生たち マッコイ(言語学) ソミア(変換魔法) フローレンス(保健室)
あやかしたち デラシネ 六条御息所 ティターニア オーベロン 三方 少彦名 朝飯前のラビリンス くわせもの ブラウニー(家事妖精) プロセス(プロセスティック=義手・義足の妖) 額田王 織姫 間人皇女 マーフォーク(半魚人) 魔王子 魔王女
074『メイソンが一番の男友達になる』
黒雲はみるみるうちに広がって、見上げる空のほとんどを覆いつくしていく!
覆いつくすにしたがって伸びていくためか、厚みが薄くなって、微妙に血の色を含んだ灰色に変わっていく。端っこの方は山や草原の彼方で見えないんだけど、大地そのものを覆うところまではいかないみたい。四方の空の底からは光が入って来て、チョー巨大なドーム球場の中にいるみたい。
「サーカスのテント小屋みたいだ」「夕焼け空を映したプラネタリウム」「巨大なクラゲの下に潜ったみたい」「火星の空みたいだ」
みんな口々に感想を言う。出身がバラバラだから、みんなイメージが違うんだけどね。
ギャーギャー ギャーギャー ギャーギャー
どこに居たのか鳥たちが怯えて、てんでに飛び始める。
ピシ ピシ ピシピシ ピシ ピシピシ
高く飛んだ鳥たちが雲の底まで来ると、電気みたいなのに撃たれ、しゅんかん光を放って消えていく。
ピシ ピシ ピシピシ ピシ ピシピシ ピシ ピシ ピシピシ ピシ
それでも鳥たちは、パニックみたいになって電撃を喰らっては蒸発していく!
「ちょっと、下がって来ていないか?」
ヒューゴが指摘して、みんな空を見渡す。
「うん」「やっぱり下がって来てる」
ベラ・グリフィスとアイネ・シュタインベルグが怯えた声を上げ、アンナ・ハーマスティンは口に手を当てたまま声も出せない。
「あれが下りきったら、ちょっとまずいかもね」
ロージーは冷静だけど、ではどうするかというところまでは言えないみたい。メイソンとヒューゴは叶わぬまでも、近衛の剣を抜いて空に突きつけている。
『みなのもの! 空の端っこで雲の裾を掴んで引っ張ってる魔物がいるぞよ!』
御息所がお局言葉で状況を報告というか叫ぶ!
『ひい ふう みい よぉ……全部で八匹! やつらをやっつけたら、この怪しの雲は消えていきそうじゃぞ! みんなレベル30のゴブリン程度じゃ! わらわが指し示す、みなで退治せよ!』
「よし、じっとしていても始まらない。みんなでやっつけよう!」
おお!!
ロージーが声を上げると、全員が雄たけびを上げ、近衛の剣を振るって、四方に散っていった。むろん、御息所も飛んで行ったよ。
だ、だいじょうぶかなあ。
ひとり心配になっていると、横の薮がガサッと音がして、メイソンが戻ってきた。
「メイソン!?」
「八人で間に合うからね。ぼくたちは十人。ヒューゴはアンナのサポートに回って、このメイソン・ヒルはヤクモのガードにまわることにした」
「あ、ありがとう。でも大丈夫?」
「ああ、キミの使い魔が力を貸してくれている。きっと大丈夫さ」
ああ、まだキチンと紹介してないから、御息所は使い魔の認識なんだ(^_^;)
ゾワゾワゾワ……
気配に振り仰ぐと、雲はさらに下がって来て、鳥たちが焼き殺される音は間遠になってきた。
「鳥たちは、ほとんどやっつけられたみたいね」
「だいじょうぶ、きっと間に合うさ」
「う、うん」
「ぼくの先祖はアーサー王に仕えていたんだ」
「あ、それでナイトの称号を」
「アーサー王の城の補修をする石工だったんだ。メイソンというのは元来石工という意味だからね」
「そうなんだ」
「ある日、騎士たちの大半が戦に出ていた時、城の隙をついて攻めて来た敵を留守番の騎士たちといっしょにやっつけて、その功績でナイトに叙せられたんだ」
「あ、わたしをガードしてもあげられる称号がないわ」
「きみの第一の友だちの称号でいいさ」
「あ、その席にはネルとハイジが……」
あ、わたしって、なんて気の利かないことを言うんだ(;'∀')。
「残念」
「あ、いや、それはちがくて……」
「なら、一番の男友達の称号だ!」
「あ、それなら」
「よかった」
え、あ、一番の男友達ってぇ(#'∀'#)!?
プッツン!!
その時、四方でブチギレる音がしたかと思うと血灰色の雲はみるみる縮んでいって、ほとんど真上で広げた傘ほどに縮んでしまった。
「「やったあ!」」
傘は、あちこち穴が開いている。能力いっぱいに広げたんで支えを失って綻びが出てしまったんだ。
「「あれ?」」
ゆっくり傘が下りてくると、傘の真ん中から二本の脚が生えてきて、地面に近くなって表の方も見えてくると胴体が付いている。
胴体の上には首と腕も生えてきて、地上二メートルぐらいの高さにおりてくると、ひどく憎そげなお姫さまになった!
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やくも 斎藤やくも ヤマセンブルグ王立民俗学校一年生 ミチビキ鉛筆、おもいやり等が武器
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先生たち マッコイ(言語学) ソミア(変換魔法) フローレンス(保健室)
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