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059『マイナカードから転移魔法へ』

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やくもあやかし物語 2

059『マイナカードから転移魔法へ』 




 フフフフフ(*`艸´)


 御息所が嫌味な含み笑いをしたかと思うと、みるみるうちに1/12サイズからリアルサイズに変わった!

「役人どもよ、わらわたちを勉強不足のJKやら1/12サイズのフィギュアと見くびるではないぞよ」

「あ、あなたさまは!?」

「源氏物語『夕顔の巻』に燦然とその名を輝かす六条の御息所とは妾の事じゃ。畏れ多くも先の東宮の妃であるぞよ」

 ヘヘーーー(-_-;)!!

 さすが御息所、居並ぶ役人たちは、みんな平伏したよ(^_^;)

「古事記ではカササギが彦星を渡すとある。舟が現れるという説もあれば、牽牛の牛が背中に乗せて渡ると言う中華の説、月が渡し船になったり、川の中に島ができるとか、様々な方法が有るはずじゃ。いずれの方法でも良い、疾く妾たちを向こう岸に渡すが良いぞ」

 おお、いつもと違う! 

 なんか自信たっぷりで、普段のアニメ風じゃない!

「お、お言葉ではありますが、それは七月七日の夜限定でありまして……」

「ならぬと申すか?」

「ハ、畏れながら……」

「わ、妾は先の東宮妃、六条の御息所なるぞ!」

「そう仰せられても……なあ」

 役人が部下たちに目配せをすると、若い役人がおずおずと手を上げる。

「なんじゃ、良い考えがあるなら申せ、直答を許すぞよ」

「はい、マイナンバーカードをお作りいただき、そのマイナカードでクレジットをお作りになってヘリコプターをチャーターなされば」

「おお、それは良い。疾くマイナカードを作るぞよ!」

 さっそく役人はデジカメで写真を撮って書類に貼って御息所に差し出したよ。

「では、必要事項をお書きくださいませ」

「容易き事よ……サラサラサラ……これでよいであろう」

 一分足らずで書き終え、鼻の穴を膨らませて役人に下げ渡す御息所。

「ハハア、お預かりいたし……あ……あの……」

「なんじゃ、なにか故障があるのか?」

「はい、御芳名をお書き頂きたいのですが」

「名なら書いておろうが」

「はい、六条の御息所とはございますが」

「そうじゃ、それでは不都合があると申すのかや?」

「ここは、戸籍名と申しますか、住民票などに書かれているお名を頂戴いたしたいのですが」

「ま、真名とな……(;'∀')」

 ちょっとまずいよ、御息所は『六条の御息所』とあるだけで、名前なんか無かったはずだよ。

 役人どもは恐れ入りながらも――勝った――って顔をしている。

「そこ、通名でもいけるはずですよぉ」

 旅人の一人が発言する。

 余計なことをという顔をする役人もいるが、年かさの役人が顔を上げる。

「ハイ、通名でもむろん構いませんが、住民票に届けられたものと同一である必要がございます」

 それは無理だよ。御息所に住民票なんて無いし。

「本の目次や登場人物相関図とかではダメなのかや?」

「はい、申しわけございませんが……」

「そ、そうか……」

 御息所は、たちまち1/12サイズになってポケットに戻ってきてしまった。


「転移魔法を使おう!」


 それまで黙っていたネルが手を挙げたよ。

「転移魔法って、最上級魔法だよ!」

「あたしもエルフだ、やってやれないことはないだろう!」

『そうか、なら、それで行こう!』

 御息所が元のアニメ声で賛成する。

「全知全能なるエルフの神よ。わが名はコーネリア・ナサニエル、わが身は芽ぐむまじき言の葉の種。 御身に比すれば鴻毛より芥子粒よりも軽ろき身なれば、我とその友、小泉やくもと六条の御息所を天の川の彼岸に渡らせ賜えぇぇぇ!」

 ネルが念を籠めると目の前がゆっくりと白くなっていったよ。



☆彡主な登場人物 

やくも        ヤマセンブルグ王立民俗学校一年生 ミチビキ鉛筆、おもいやり等が武器
ネル         コーネリア・ナサニエル やくものルームメイト エルフ
ヨリコ王女      ヤマセンブルグ王立民俗学学校総裁
ソフィー       ソフィア・ヒギンズ 魔法学講師
メグ・キャリバーン  教頭先生
カーナボン卿     校長先生
酒井 詩       コトハ 聴講生
同級生たち      アーデルハイド メイソン・ヒル オリビア・トンプソン ロージー・エドワーズ
先生たち       マッコイ(言語学) ソミア(変換魔法) フローレンス(保健室)
あやかしたち     デラシネ 六条御息所 ティターニア オーベロン 三方 少彦名 朝飯前のラビリンス くわせもの  ブラウニー(家事妖精) プロセス(プロセスティック=義手・義足の妖) 額田王
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