やくもあやかし物語・2

武者走走九郎or大橋むつお

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048『再びのみちびき鉛筆』

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やくもあやかし物語 2

048『再びのみちびき鉛筆』 




 さあ、朝ごはん!


『朝飯前のラビリンス』の成敗に時間を取られ、ただでも出遅れていた朝ごはん!

 プルルル プルルル

 部屋を出ようとしたら黒電話が鳴る。

「もしもし、なにかなあ交換手さん?」

 黒電話は交換手さんの棲家なので、電話の主は交換手さんに決まっている。

『あやかしが出たでしょ?』

「あ、うん。でも、やっつけたから大丈夫だよ」

『机の引き出しにミチビキ鉛筆が入ってます』

「え?」

 戸惑ったよ、二重の意味で。

 ミチビキ鉛筆は五角形のお尻に1~5の数字が書いてあり、試験の時に転がしたら正解の番号を示してくれる(『やくもあやかし物語・20・ミチビキ鉛筆』)優れモノだけど、選択肢が6個以上になると役に立たない。それに、夢の中に出てきた魔道具で、現実には存在しない。

「あ……えと、これは?」

『たまにこういうことが起こるんです。だって、八十年も昔の交換手が電話の中に住んで居たり、源氏物語のヒールキャラが1/12サイズになって引き出しに居たりするんですから』

 ヘクチ!

『さっきは間に合いませんでしたけど、今度は、きっと役に立ちます』

「他ならぬ交換手さんが言うんだ、ありがたく使わせてもらうね」

『はい、お誘いしておきながら真岡では十分なことができませんでしたし』

「ううん、デラシネも楽しんでくれたみたいだし、良かったと思ってるわよ」

『ありがとうございます。ま、わたしのささやかな、お……』

「お……?」

『お、応援です』

「ありがとう。じゃ、行ってくるね。御息所も風邪とかひかないでねぇ」

『さっさと行きなさいよ!』

「じゃね」

 ドアを閉めて一階の食堂を目指す。

 タタタタタタタ

 正直お腹もすいていたので、軽やかに階段を下りて一階の食堂に。

 もう、20分は遅れてるから、ほとんどの子は食べ終わって食堂から出てくるころだ。残って食べているのは食いしん坊のハイジぐらいのもの。

 あれ?

 ダイニングには、まだ寮生全員が残っていて朝食の真っ最中。

 ガツガツガツ! ムシャムシャムシャ! ハグハグハグ!

 ちょっと、みんなの食べっぷりがおかしかった(;'∀')!?



☆彡主な登場人物 

やくも        斎藤やくも ヤマセンブルグ王立民俗学校一年生
ネル         コーネリア・ナサニエル やくものルームメイト エルフ
ヨリコ王女      ヤマセンブルグ王立民俗学学校総裁
ソフィー       ソフィア・ヒギンズ 魔法学講師
メグ・キャリバーン  教頭先生
カーナボン卿     校長先生
酒井 詩       コトハ 聴講生
同級生たち      アーデルハイド メイソン・ヒル オリビア・トンプソン ロージー・エドワーズ
先生たち       マッコイ(言語学) ソミア(変換魔法)
あやかしたち     デラシネ 六条御息所 ティターニア オーベロン 三方 少彦名 朝飯前のラビリンス
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