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033『階段で怪我をした』
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やくもあやかし物語 2
033『階段で怪我をした』
もう一段あると思って脚を下ろしたら一階の床だった。
グニュ
みごとに足をグネってしまって立ち上がれなくなってしまった(;'∀')
で、今日は授業も休んで、部屋で大人しくしている(^_^;)。
月が改まると、出番を思い出した役者が勢いつけて舞台に現れたみたいに、急に春めいてきた。
森の木々たちも、心なしフワフワして見えるし、植えて間もないヒメシャラも幼木ながらツヤツヤしくて、うっかり蝶々が留まったら、ツルンと滑ってしまいそう。
昼休には、お仲間の生徒たちも外に出てノビをしたり大あくびをしたり。
ああ、外に出たいなあ……
出窓に腰掛けて独り言を言ってみたりする。
プルルルル
黒電話が優しく鳴って、松葉杖を軸に振り返って受話器を取る。
「もしもし」
『あ、交換手です。退屈しているようなので、ちょっと話しかけてみました』
「あ、どうもありがとう(^_^;)」
『もう少し暖かくなったら、故郷の真岡とかご紹介しますよ』
「え、真岡って、樺太の?」
『はい、真岡の春は遅いですけど、流氷がバリバリ流れ始めて、ちょっと男性的で素敵ですよ』
「わあ、そうなんだ。流氷なんて見たことないしぃ……でも、どうやって行くの? 日本も樺太も地球の裏側だよ」
『大丈夫ですよ、やくもの胸にはタマノオが巡り始めてますから、ソウルだけでなら行けるようになりますよ』
「そうなんだ!」
『それに……あ、御来客です』
トントン
「あ、はいどうぞ」
「「失礼しますねぇ……」」
え、二人?
なんと、王女さまが詩(ことは)さんの車いすを押して入ってきた!
詩:「階段から落ちたって聞いて」
王女:「だいじょうぶ?」
やくも:「だいじょうぶです! わ、わざわざお越しいただいて!」
詩:「わたしも階段から落ちたから、ちょっと心配で」
そうだった、詩さんは階段でよろめいた女王陛下を助けようとして転げ落ちたんだ(せやさかい402『王宮某重大事件・1・詩の災難』)。
やくも:「グネっただけですから、腫れがひいたら大丈夫ってお医者さんも言ってましたし」
詩:「そう、それは良かったぁ」
王女:「わたしも、学校の総裁だからね、ちょっと気になって」
やくも:「ああ、ボーっとしてたからです。急に春めいてきましたしぃ」
王女:「うん、それならいいんだけど、施設面で不具合があったら遠慮なく言ってちょうだい。ここのところ、行事やら福の湯のことに気を取られていて、校舎や寄宿舎の事に気が回らなかったかもしれないから」
やくも:「だいじょうぶですだいじょうぶです。それに、ほら、出窓からみんなの様子見てるの楽しいです。さっきから、ずっと見てるんですよ」
王女:「わ、ほんとう……よかったぁ、少し心配だったけど、みんな仲良くやっているわねえ」
ちょっとだけ王女さまの視線が気になった。
みんなから少し離れたところでデラシネがポツンと立っている。どうやったらみんなの中に入れるか困っている転校生みたい。
自信が無いせいか、そういう魔法をかけているのかかかっているのか、他の子には見えていない。王女さまにも見えてはいないみたい。
王女:「あ、ハイジが木登りしてる」
やくも:「あはは、おサルさんみたい(^_^;)」
王女:「男の子たちも」
やくも:「男はヘタみたいです」
王女:「元気そうでなにより……コットンも見てみる?」
詩:「いえ、わたしは」
王女:「わたしが支える。大丈夫よ」
やくも:「出窓のところに体重をあずければ……」
詩:「あ、すみません」
詩さんを出窓に座らせようとした時に異変が起こった。
後から上ってきた男子をからかって、ハイジがより高いところに上った。
そして、サルみたいに隣の木にジャンプ!
ジャンプした先の木の枝がポッキリ折れた!
キャ!
ハイジは掴まった枝もろとも地面に落ちて、わたしの怪我どころじゃないと目をつぶって……そして、目を開くと、ハイジは地上五十センチのところで宙に浮いている……ように見えているはず。
デラシネが、お姫様ダッコでハイジを受け止めていた!
そして、もうひとつ。
詩さんが自分の脚で立っていた( ゚Д゚)!
☆彡主な登場人物
やくも 斎藤やくも ヤマセンブルグ王立民俗学校一年生
ネル コーネリア・ナサニエル やくものルームメイト エルフ
ヨリコ王女 ヤマセンブルグ王立民俗学学校総裁
ソフィー ソフィア・ヒギンズ 魔法学講師
メグ・キャリバーン 教頭先生
カーナボン卿 校長先生
酒井 詩 コトハ 聴講生
同級生たち アーデルハイド メイソン・ヒル オリビア・トンプソン ロージー・エドワーズ
先生たち マッコイ(言語学) ソミア(変換魔法)
あやかしたち デラシネ 六条御息所 ティターニア オーベロン 三方
033『階段で怪我をした』
もう一段あると思って脚を下ろしたら一階の床だった。
グニュ
みごとに足をグネってしまって立ち上がれなくなってしまった(;'∀')
で、今日は授業も休んで、部屋で大人しくしている(^_^;)。
月が改まると、出番を思い出した役者が勢いつけて舞台に現れたみたいに、急に春めいてきた。
森の木々たちも、心なしフワフワして見えるし、植えて間もないヒメシャラも幼木ながらツヤツヤしくて、うっかり蝶々が留まったら、ツルンと滑ってしまいそう。
昼休には、お仲間の生徒たちも外に出てノビをしたり大あくびをしたり。
ああ、外に出たいなあ……
出窓に腰掛けて独り言を言ってみたりする。
プルルルル
黒電話が優しく鳴って、松葉杖を軸に振り返って受話器を取る。
「もしもし」
『あ、交換手です。退屈しているようなので、ちょっと話しかけてみました』
「あ、どうもありがとう(^_^;)」
『もう少し暖かくなったら、故郷の真岡とかご紹介しますよ』
「え、真岡って、樺太の?」
『はい、真岡の春は遅いですけど、流氷がバリバリ流れ始めて、ちょっと男性的で素敵ですよ』
「わあ、そうなんだ。流氷なんて見たことないしぃ……でも、どうやって行くの? 日本も樺太も地球の裏側だよ」
『大丈夫ですよ、やくもの胸にはタマノオが巡り始めてますから、ソウルだけでなら行けるようになりますよ』
「そうなんだ!」
『それに……あ、御来客です』
トントン
「あ、はいどうぞ」
「「失礼しますねぇ……」」
え、二人?
なんと、王女さまが詩(ことは)さんの車いすを押して入ってきた!
詩:「階段から落ちたって聞いて」
王女:「だいじょうぶ?」
やくも:「だいじょうぶです! わ、わざわざお越しいただいて!」
詩:「わたしも階段から落ちたから、ちょっと心配で」
そうだった、詩さんは階段でよろめいた女王陛下を助けようとして転げ落ちたんだ(せやさかい402『王宮某重大事件・1・詩の災難』)。
やくも:「グネっただけですから、腫れがひいたら大丈夫ってお医者さんも言ってましたし」
詩:「そう、それは良かったぁ」
王女:「わたしも、学校の総裁だからね、ちょっと気になって」
やくも:「ああ、ボーっとしてたからです。急に春めいてきましたしぃ」
王女:「うん、それならいいんだけど、施設面で不具合があったら遠慮なく言ってちょうだい。ここのところ、行事やら福の湯のことに気を取られていて、校舎や寄宿舎の事に気が回らなかったかもしれないから」
やくも:「だいじょうぶですだいじょうぶです。それに、ほら、出窓からみんなの様子見てるの楽しいです。さっきから、ずっと見てるんですよ」
王女:「わ、ほんとう……よかったぁ、少し心配だったけど、みんな仲良くやっているわねえ」
ちょっとだけ王女さまの視線が気になった。
みんなから少し離れたところでデラシネがポツンと立っている。どうやったらみんなの中に入れるか困っている転校生みたい。
自信が無いせいか、そういう魔法をかけているのかかかっているのか、他の子には見えていない。王女さまにも見えてはいないみたい。
王女:「あ、ハイジが木登りしてる」
やくも:「あはは、おサルさんみたい(^_^;)」
王女:「男の子たちも」
やくも:「男はヘタみたいです」
王女:「元気そうでなにより……コットンも見てみる?」
詩:「いえ、わたしは」
王女:「わたしが支える。大丈夫よ」
やくも:「出窓のところに体重をあずければ……」
詩:「あ、すみません」
詩さんを出窓に座らせようとした時に異変が起こった。
後から上ってきた男子をからかって、ハイジがより高いところに上った。
そして、サルみたいに隣の木にジャンプ!
ジャンプした先の木の枝がポッキリ折れた!
キャ!
ハイジは掴まった枝もろとも地面に落ちて、わたしの怪我どころじゃないと目をつぶって……そして、目を開くと、ハイジは地上五十センチのところで宙に浮いている……ように見えているはず。
デラシネが、お姫様ダッコでハイジを受け止めていた!
そして、もうひとつ。
詩さんが自分の脚で立っていた( ゚Д゚)!
☆彡主な登場人物
やくも 斎藤やくも ヤマセンブルグ王立民俗学校一年生
ネル コーネリア・ナサニエル やくものルームメイト エルフ
ヨリコ王女 ヤマセンブルグ王立民俗学学校総裁
ソフィー ソフィア・ヒギンズ 魔法学講師
メグ・キャリバーン 教頭先生
カーナボン卿 校長先生
酒井 詩 コトハ 聴講生
同級生たち アーデルハイド メイソン・ヒル オリビア・トンプソン ロージー・エドワーズ
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