上 下
13 / 79

013『魔法の杖が配られて防御魔法を習う』

しおりを挟む
やくもあやかし物語・2

013『魔法の杖が配られて防御魔法を習う』 




 いつも閻魔帳しか持って来ないソフィー先生がカステラの三本詰めくらいの木箱を持ってやってきた。


「他の先生たちとも話し合ったんだが、諸君にも魔法の杖を持ってもらうことにした」

 二種類の「え?」が湧き上がる。

 一つは、思っても見なかった「え?」、もう一つは嬉しい「え?」だよ。

 ここ(ヤマセンブルグ王立民俗学学校)が魔法学校だったことは入学式でも説明されて、みんな知っている。

 いずれは、魔法の「魔」の字くらいはやるもんだとも思っている。

 現に、教壇に立っているソフィー先生は先祖代々王室に仕える魔法使いの家系だし。

「ついては、各自、魔法の杖をもってもらう。すでに、自分の杖を持っている者は見せてくれ、呪力・魔力を計測して適当であれば使用を認める。持っていない者は学校の杖を貸与する。持っている者は見せに来い。持っている者は手を挙げろ」

 他人の様子を伺いながら、1/3ほどの子たちが手を挙げる。

「ヤクモ、おまえも持っているんだろう」

「え、あ……」

 あれって魔法の杖なんだろうか?

「え、じゃあ、とりに戻っていいですか?」

 日本に居た時と同じく、あれは机の一番下の引き出しにしまい込んである。

「念じて見ろ、魔法の杖なら、五秒もかからずに手の中に現れる」

「え、そうなんですか!?」

 それまで湯せんしなければ食べられないと思っていたレトルトカレーがレンチンでもいけると分かったときみたいに驚いた。

「やってみろ」

「はい」

 …………ボン!

 ガスが突然点いたみたいな音がして、握った手の中に鬼の手が現れた。



 おお( ゚Д゚)!



 教室のみんなが驚いた。持ち主のわたしはもっと驚いた。

 他の魔法の杖は菜箸くらいの大きさなのに、鬼の手は孫の手ほどの大きさがあるし、先っぽはまさに手の形してるし。

「見せろ」

 ちょっと厳しい声で先生が言うので、教壇までの5メートルほどを走ってしまった。

「…………これは……一級呪物だな」

 一級呪物?

「並みの杖が自転車だとしたら、これはレオパルドⅡかM1エイブラムスほどの力があるぞ」

 ええ!?

 わたしも、みんなも驚いた。

 戦車なんかにはウトイんだけど、ウクライナ戦争のおかげで憶えてしまった。両方とも世界最高の戦車だよ!

「しゅっげ~(´º﹃º♡)」

 ハイジなんか、なにを間違えたかよだれを垂らしてるしぃ。

「ヤクモ、おまえ、これを三輪車程度にしか使ってないな」

 三輪車ぁ(^_^;)

 アハハハハ(>▽<*)

 わたしは驚いて、教室のみんなは笑った。

「本来なら学校で預からねばならないほどのものだが、よく馴れている。注意して使え」

「は、はひ」

 それから、先生は五人の杖を鑑定して、ルームメイトのネルに目を向けた。

「コーネリア、おまえも魔法を使うんだろ、見せろ」

「あ、あたしは魔法の杖は使いません。インスピレーションですから」

「ほう……では、魔法を使う時は無詠唱なのか?」

「は、はい」

「……そういえば、コーネリアとヤクモは同室だったなあ」

「「はい」」

 (* ´艸`)クスクス

 なぜか、みんながクスクス笑う。

 残りのみんなに杖を配り終えて、先生は居住まいを正した。



「実は、学校の周囲で不穏な動きがある」



 不穏な動き……



「森が騒めき、湖はさざ波だっている。まだまだ精霊のレベルだが用心にこしたことはない。王宮と学校には結界が張られたが、お前たちも用心してもらいたい」

 なるほど、そのために魔法の杖なんだ。

「では、初歩的な防御魔法を教える。見本を見せるから、あとに続け」

 そう言うと、先生は、年季の入った杖を出すと頭上に構えて詠唱したよ。

「ディフェンシブ!」

 先生の頭上にアニメに出てくるような亀甲模様が数十個連結したシールドが現れた。

「やってみろ」

 ディフェンシブ!

 無詠唱のわたしとネルは即座に、みんなは一二秒遅れてシールドが現れる。

「そのままで居ろ」

 先生は机間巡視しながら、みんなのシールドをトンカチで叩いて周る。

 トントン  タンタン  ボコボコ  ベシャベシャ  カンカン  コンコン

 いろんな音がする。

 カチンカチン

 ネルのは鋼鉄を叩いたような音がした。

 キィーーーーーン

 わたしのは、もっと高い音がした。

 先生は、手がしびれて手をフルフルと振ったよ(^_^;)。

「頭上に作った時は前も左右もがら空きだが、慣れれば、同時に前方にもシールドが張れる。もっと慣れれば全身を覆うシールドも可能だ。しかし、結界もシールドも過信は禁物、危ないと思ったら、一目散に逃げろ」



 うんうん



 ネルとわたしは実感を込めて頷いたよ(^_^;)。

 

☆彡主な登場人物 

やくも        斎藤やくも ヤマセンブルグ王立民俗学校一年生
ネル         コーネリア・ナサニエル やくものルームメイト エルフ
ヨリコ王女      ヤマセンブルグ王立民俗学学校総裁
ソフィー       ソフィア・ヒギンズ 魔法学講師
メグ・キャリバーン  教頭先生
カーナボン卿     校長先生
酒井 詩       コトハ 聴講生
同級生たち      アーデルハイド メイソン・ヒル オリビア・トンプソン ロージー・エドワーズ
先生たち       マッコイ(言語学)
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

妻がヌードモデルになる日

矢木羽研
大衆娯楽
男性画家のヌードモデルになりたい。妻にそう切り出された夫の動揺と受容を書いてみました。

13歳女子は男友達のためヌードモデルになる

矢木羽研
青春
写真が趣味の男の子への「プレゼント」として、自らを被写体にする女の子の決意。「脱ぐ」までの過程の描写に力を入れました。裸体描写を含むのでR15にしましたが、性的な接触はありません。

[R18] 激しめエロつめあわせ♡

ねねこ
恋愛
短編のエロを色々と。 激しくて濃厚なの多め♡ 苦手な人はお気をつけくださいませ♡

[恥辱]りみの強制おむつ生活

rei
大衆娯楽
中学三年生になる主人公倉持りみが集会中にお漏らしをしてしまい、おむつを当てられる。 保健室の先生におむつを当ててもらうようにお願い、クラスメイトの前でおむつ着用宣言、お漏らしで小学一年生へ落第など恥辱にあふれた作品です。

【R-18】クリしつけ

蛙鳴蝉噪
恋愛
男尊女卑な社会で女の子がクリトリスを使って淫らに教育されていく日常の一コマ。クリ責め。クリリード。なんでもありでアブノーマルな内容なので、精神ともに18歳以上でなんでも許せる方のみどうぞ。

小学生最後の夏休みに近所に住む2つ上のお姉さんとお風呂に入った話

矢木羽研
青春
「……もしよかったら先輩もご一緒に、どうですか?」 「あら、いいのかしら」 夕食を作りに来てくれた近所のお姉さんを冗談のつもりでお風呂に誘ったら……? 微笑ましくも甘酸っぱい、ひと夏の思い出。 ※性的なシーンはありませんが裸体描写があるのでR15にしています。 ※小説家になろうでも同内容で投稿しています。 ※2022年8月の「第5回ほっこり・じんわり大賞」にエントリーしていました。

マッサージ師にそれっぽい理由をつけられて、乳首とクリトリスをいっぱい弄られた後、ちゃっかり手マンされていっぱい潮吹きしながらイッちゃう女の子

ちひろ
恋愛
マッサージ師にそれっぽい理由をつけられて、乳首とクリトリスをいっぱい弄られた後、ちゃっかり手マンされていっぱい潮吹きしながらイッちゃう女の子の話。 Fantiaでは他にもえっちなお話を書いてます。よかったら遊びに来てね。

性転換マッサージ2

廣瀬純一
ファンタジー
性転換マッサージに通う夫婦の話

処理中です...