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145『修学旅行・二日目の残り』
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巡(めぐり)・型落ち魔法少女の通学日記
145『修学旅行・二日目の残り』
奈良は壮大な田舎だ。
四方を山に囲まれてるんだけど、ついさっきまで居た京都よりも広い。
でもね、京都はお寺や神社だけでなく、ビルもけっこうあった。五階建てぐらいのね。駅前ビルやらデパートやら大学やらホテルやら、少しは会社とかも。そういうものの間にはビッシリと平屋や二階建ての瓦屋根が、それこそ甍の波で、その点ではけっこうな大都会。
だけど、奈良は一面の田んぼや畑やら。そういう田畑の中にお寺の大屋根がや塔が覗いている。奈良の主役は田んぼと畑。宮之森や大浜くらいの家並も見えて、ガイドさんの説明だと奈良市の中心らしい。
うちの街をそれほどの田舎とは思わないけど、奈良を田舎と感じてしまうのは、元々は平城京という日本の都だったという知識があるからなのかもしれない。
いや、高校生の気まぐれな印象です。気に障ったらごめんなさい(^_^;)。
「でもさぁ、京都ほど人が多くないのは嬉しいかな」
東大寺近くの駐車場にバスが停まって呟いたら、みんな「うんうん」と頷いた。
その京都でも、令和の半分ほどの混雑でしかないんだけど、それでも京都はくたびれた。令和のインバウンド爆発の京都に行ったら死んじゃうね。
「うわあ、鹿ですよ、鹿の団体ですよ!」
駐車場を出ると、もう鹿が列をなして歩いていて、感動!
「鹿と遊ぶのは明日、今日はこのまま宿舎だからね!」
花園先生に叱られて、そのまま興福寺近くのホテル。
「おお、奈良盆地が一望できるよぉ!」
真知子が声を上げ、みんなで窓辺に寄ってみた。
「ああ、ほんの三階なのにねえ」
「でも、宮之森も三階の教室から街の向こうまで見えますよぉ」
「そうだけど、なんだか落ち着くわねえ……」
「あ、佳奈子、なに食べてんのぉ!?」
「あ、お茶うけ置いてあるよ」
「あ、お茶淹れます!」
京都のホテルにお茶うけは無かった。ここもホテル形式だけど旅館の雰囲気がある。
「落雁だねぇ」
ラクガン?
イミフだけど、下手に聞いたら昭和人間でないことを疑われるような気がして止しておく。
ラクガンをポリっとかじる、口の中に栗の味わいと控えめな甘さが広がって、ほうじ茶によく合う。
「ねえ、五重塔も雰囲気だけど、興福寺って全体としては取り留めないねえ」
「うん、京都のお寺って塀で囲まれててまとまりがあったのにね。興福寺は町との境目が分かりにくいねえ」
真知子とたみ子は高尚だ。
「それはですね、廃仏毀釈の影響ですよ」
「え」「ああ」
ロコが入るとさらに高尚になる。
「明治の初めに神仏分離令が出て、お寺や仏像がずいぶん壊されたんです。京都はそれほどじゃなかったみたいですけど、奈良は、けっこうやっちゃったみたいで、興福寺はあれこればら売りされましてね。あの五重塔も町の風呂屋さんが焚きつけ用に買ったんですけど、大きすぎて壊せないんで、しばらく放っておいたら神仏分離令が撤回されて、ああやって無事に立ってるんですよ」
「「「「ほお」」」」」
ロコの取材能力はますます冴えてきてる。
「あ、なんか香ばしい……」
たみ子がほうじ茶のことを言ったのかと思ったら、わら焼きの匂いがほのかにしてくる。
「なんだかうっすらと霞が漂って来ましたよぉ」
若草山や、その向こうの山々がシルエットになって、興福寺の伽藍もこころなし霞んできたような気がする。
どこかで、稲刈りの後の藁を焼いてるんだ。
「なんだか万葉の昔から漂ってきたみたいねぇ」
「雰囲気ですねえ」
ラクガンとほうじ茶にわら焼きが加わって、五人揃って時空を超えそうと思ったら、館内放送。
『ええ、夕食の準備が整いましたので、宮之森高校の生徒さんは一階の大宴会場までお集まりください』
万葉の昔から引き戻されて、なんだかおかしくなってクスクス笑いながら、みんなで大宴会場に向かった。
その夜は、布団を☆形に並べ、いろいろ来し方行く末について話したんだけど、長くなるから、またいずれ。
明くる三日目は、地図とスタンプカードをもらってグループ単位で周る。それぞれのポイントには先生が立っていて、スタンプを押してくれる。
移動手段は歩くかバスかタクシー、場所によっては電車という手もある。
うちのグループは話題になった興福寺から始めて、東大寺、春日大社、志賀直哉旧居とかを周る。
☆彡 主な登場人物
時司 巡(ときつかさ めぐり) 高校2年生 友だちにはグッチと呼ばれる
時司 応(こたえ) 巡の祖母 定年退職後の再任用も終わった魔法少女 時々姉の選(すぐり)になる
滝川 志忠屋のマスター
ペコさん 志忠屋のバイト
猫又たち アイ(MS銀行) マイ(つくも屋) ミー(寿書房)
宮田 博子(ロコ) 2年3組 クラスメート
辻本 たみ子 2年3組 副委員長
高峰 秀夫 2年3組 委員長
吉本 佳奈子 2年3組 保健委員 バレー部
横田 真知子 2年3組 リベラル系女子
加藤 高明(10円男) 留年してる同級生
安倍晴天 陰陽師、安倍晴明の50代目
藤田 勲 2年学年主任
先生たち 花園先生:3組担任 グラマー:妹尾 現国:杉野 若杉:生指部長 体育:伊藤 水泳:宇賀 音楽:峰岸 世界史:吉村先生 教頭先生 倉田(生徒会顧問) 藤野先生(大浜高校)
須之内直美 証明写真を撮ってもらった写真館のおねえさん。
御神楽采女 結婚式場の巫女 正体は須世理姫 キタマの面倒を見ている
早乙女のお婆ちゃん 三軒隣りのお婆ちゃん
時司 徒 (いたる) お祖母ちゃんの妹
妖・魔物 アキラ
その他の生徒たち 滝沢(4組) 栗原(4組) 牧内千秋(演劇部 8組) 明智玉子(生徒会長)
灯台守の夫婦 平賀勲 平賀恵 二人とも直美の友人
145『修学旅行・二日目の残り』
奈良は壮大な田舎だ。
四方を山に囲まれてるんだけど、ついさっきまで居た京都よりも広い。
でもね、京都はお寺や神社だけでなく、ビルもけっこうあった。五階建てぐらいのね。駅前ビルやらデパートやら大学やらホテルやら、少しは会社とかも。そういうものの間にはビッシリと平屋や二階建ての瓦屋根が、それこそ甍の波で、その点ではけっこうな大都会。
だけど、奈良は一面の田んぼや畑やら。そういう田畑の中にお寺の大屋根がや塔が覗いている。奈良の主役は田んぼと畑。宮之森や大浜くらいの家並も見えて、ガイドさんの説明だと奈良市の中心らしい。
うちの街をそれほどの田舎とは思わないけど、奈良を田舎と感じてしまうのは、元々は平城京という日本の都だったという知識があるからなのかもしれない。
いや、高校生の気まぐれな印象です。気に障ったらごめんなさい(^_^;)。
「でもさぁ、京都ほど人が多くないのは嬉しいかな」
東大寺近くの駐車場にバスが停まって呟いたら、みんな「うんうん」と頷いた。
その京都でも、令和の半分ほどの混雑でしかないんだけど、それでも京都はくたびれた。令和のインバウンド爆発の京都に行ったら死んじゃうね。
「うわあ、鹿ですよ、鹿の団体ですよ!」
駐車場を出ると、もう鹿が列をなして歩いていて、感動!
「鹿と遊ぶのは明日、今日はこのまま宿舎だからね!」
花園先生に叱られて、そのまま興福寺近くのホテル。
「おお、奈良盆地が一望できるよぉ!」
真知子が声を上げ、みんなで窓辺に寄ってみた。
「ああ、ほんの三階なのにねえ」
「でも、宮之森も三階の教室から街の向こうまで見えますよぉ」
「そうだけど、なんだか落ち着くわねえ……」
「あ、佳奈子、なに食べてんのぉ!?」
「あ、お茶うけ置いてあるよ」
「あ、お茶淹れます!」
京都のホテルにお茶うけは無かった。ここもホテル形式だけど旅館の雰囲気がある。
「落雁だねぇ」
ラクガン?
イミフだけど、下手に聞いたら昭和人間でないことを疑われるような気がして止しておく。
ラクガンをポリっとかじる、口の中に栗の味わいと控えめな甘さが広がって、ほうじ茶によく合う。
「ねえ、五重塔も雰囲気だけど、興福寺って全体としては取り留めないねえ」
「うん、京都のお寺って塀で囲まれててまとまりがあったのにね。興福寺は町との境目が分かりにくいねえ」
真知子とたみ子は高尚だ。
「それはですね、廃仏毀釈の影響ですよ」
「え」「ああ」
ロコが入るとさらに高尚になる。
「明治の初めに神仏分離令が出て、お寺や仏像がずいぶん壊されたんです。京都はそれほどじゃなかったみたいですけど、奈良は、けっこうやっちゃったみたいで、興福寺はあれこればら売りされましてね。あの五重塔も町の風呂屋さんが焚きつけ用に買ったんですけど、大きすぎて壊せないんで、しばらく放っておいたら神仏分離令が撤回されて、ああやって無事に立ってるんですよ」
「「「「ほお」」」」」
ロコの取材能力はますます冴えてきてる。
「あ、なんか香ばしい……」
たみ子がほうじ茶のことを言ったのかと思ったら、わら焼きの匂いがほのかにしてくる。
「なんだかうっすらと霞が漂って来ましたよぉ」
若草山や、その向こうの山々がシルエットになって、興福寺の伽藍もこころなし霞んできたような気がする。
どこかで、稲刈りの後の藁を焼いてるんだ。
「なんだか万葉の昔から漂ってきたみたいねぇ」
「雰囲気ですねえ」
ラクガンとほうじ茶にわら焼きが加わって、五人揃って時空を超えそうと思ったら、館内放送。
『ええ、夕食の準備が整いましたので、宮之森高校の生徒さんは一階の大宴会場までお集まりください』
万葉の昔から引き戻されて、なんだかおかしくなってクスクス笑いながら、みんなで大宴会場に向かった。
その夜は、布団を☆形に並べ、いろいろ来し方行く末について話したんだけど、長くなるから、またいずれ。
明くる三日目は、地図とスタンプカードをもらってグループ単位で周る。それぞれのポイントには先生が立っていて、スタンプを押してくれる。
移動手段は歩くかバスかタクシー、場所によっては電車という手もある。
うちのグループは話題になった興福寺から始めて、東大寺、春日大社、志賀直哉旧居とかを周る。
☆彡 主な登場人物
時司 巡(ときつかさ めぐり) 高校2年生 友だちにはグッチと呼ばれる
時司 応(こたえ) 巡の祖母 定年退職後の再任用も終わった魔法少女 時々姉の選(すぐり)になる
滝川 志忠屋のマスター
ペコさん 志忠屋のバイト
猫又たち アイ(MS銀行) マイ(つくも屋) ミー(寿書房)
宮田 博子(ロコ) 2年3組 クラスメート
辻本 たみ子 2年3組 副委員長
高峰 秀夫 2年3組 委員長
吉本 佳奈子 2年3組 保健委員 バレー部
横田 真知子 2年3組 リベラル系女子
加藤 高明(10円男) 留年してる同級生
安倍晴天 陰陽師、安倍晴明の50代目
藤田 勲 2年学年主任
先生たち 花園先生:3組担任 グラマー:妹尾 現国:杉野 若杉:生指部長 体育:伊藤 水泳:宇賀 音楽:峰岸 世界史:吉村先生 教頭先生 倉田(生徒会顧問) 藤野先生(大浜高校)
須之内直美 証明写真を撮ってもらった写真館のおねえさん。
御神楽采女 結婚式場の巫女 正体は須世理姫 キタマの面倒を見ている
早乙女のお婆ちゃん 三軒隣りのお婆ちゃん
時司 徒 (いたる) お祖母ちゃんの妹
妖・魔物 アキラ
その他の生徒たち 滝沢(4組) 栗原(4組) 牧内千秋(演劇部 8組) 明智玉子(生徒会長)
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