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142『修学旅行・一日目』

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巡(めぐり)・型落ち魔法少女の通学日記

142『修学旅行・一日目』   




 毎朝、戻り橋を渡って昭和の宮之森に通っている。もう慣れっこになったけど、十秒ちょっとで五十年以上の時間を超えてしまうのはすごいことだ。

 京都駅で新幹線を下りて、二年生全員で改札に向かっているのは、ちょっとそれに似ている。

 乗ってきたのは0系で、テッチャンとかマニアが見たら大感激なんだろうけど、鉄道趣味じゃないわたしには普通の新幹線。ちゃんとホームドアもあるし、素っ気ないけど普通の新幹線ホーム。

 ところが階段を下りて跨道橋を中央改札に向かうと、あたりまえだけど昭和だよ。

 去年、万博で行った新大阪駅はあまり違和感は無かった。

 でも、京都駅は違う。

 ホームから駅ビルまでの跨道橋を渡る。床はコンクリ、壁と屋根は木造で鉄骨が剥き出しだし、幅が宮之森の三倍ほどあるところを除けば同じコンセプト。

「あ、みんな、あれですよ、日本一長いプラットホーム!」

 ロコが窓の外を指さす。

「おお、果てしないねえ!」「うわあ!」「あれがぁ!」「すごいぃ!」

 富士山が雲に隠れて見えなかった反動なのか、みんな跨道橋の窓から見える日本一のプラットホームに感嘆の声を上げる。

「全長は558メートルもあって、列車が二編成並ぶことができるんです」

「「「「ホーー」」」」

「それで、あのホームは京の都を取り巻いた城壁の上にできてるんですよぉ」

「え?」「平安京に城壁?」

 たみ子と真知子が振り返る。歴史とか社会とかにかけては、この二人は姉妹みたいに反応する。

「ええ、文禄の駅で中国から来た使いに『なんだ、日本の都は羅城もないのか』って言われて、羅城っていうのは城壁のことなんですけど、それで、秀吉が一念発起して、都に羅城を作らせたんです『御土居』って言うんですけど、その名残です」

「へえ、昔のバレーに9人制があったぐらい不思議な話ねぇ」

「ええ、バレーって9人でやってたんですか!?」

「え、知らないの?」

「アハハ、スポーツの方は(^_^;)」

 佳奈子とロコは住んでる世界が違うんだけど、違っていても友だちでいられる。きっと、入学以来の付き合いだからだ。

『ちょっとぉ、あんたたちぃ!』

 花園先生が、いつになくおっかない声で注意する。

「いけない、みんな集合してる!」

 慌てて改札を出て集合場所へ。

 
 つつがなく点呼が終わると、とりあえずホテルに入ってお昼ご飯をいただいた。わたしたち前半組はホテルだったけど、後半組は少し離れた旅館。旅館組の方はバスの駐車場からけっこう歩かされたとか。

 お昼ご飯は、京都らしいものが食べられるかと思ったけど、ふつうのランチだった。


 昼からはバスを連ねて東山。


「あれですよ、石川五右衛門が『絶景かな絶景かなぁ~』ってやったのぉ」

 南禅寺の山門で、またもハイテンションのロコ。

「ええ、あれって創作じゃなかったんだ」

「いやあ、創作だと思いますけど、実在の南禅寺にしたところが観光誘致もかねていたというか、昔の歌舞伎もなかなかなんですよねえ」

「ええと、ごっつい煙管持ちながら言うんだよね、……世に盗人のネタはつきまじぃ。だったっけ?」

 う、佳奈子でも知ってるっぽい。つまり、わたしは知らん。

「石川やぁ、浜の真砂は尽きるともぉ~」

「世に盗人の種は尽きまじぃ~」

 アハハハハ(((´∀`)))

 歌舞伎風にやるので、他のクラスの子にも笑われる。

「ああ、これこれ、水路閣っていうんでしょぉ!?」

「え、お寺の中でしょ?」

 たみ子が指差したのは、レンガ造りのローマの水道橋みたいなの。

 苔むして時代がかっているんだけど、お寺にはちょっと似つかわしくはない。

「これは、明治になって、琵琶湖の水を京都市内に取り入れるために作られた水道橋なんですよ。雰囲気があるんで『ザ ガードマン』とか『忍者部隊月光』とか、映画やらテレビのロケでも使われるんですよ」

「そういや、タイガーズのレコードジャケットにもあったみたいな」

「エメロンシャンプーのCMでも使ってた!」

 うう、令和のJKはついていけん。


 こっそりスマホで『水路閣』を検索……なるほどぉ、令和の時代でもいろんな映画やアニメに使われている。大好きな京アニの『けいおん!』とかにも使われてるけど、さすがに言えない。

 でも、スクロールすると、さらにいろいろと……。


「ね、すごいでしょ!」

「「「「うわぁぁぁぁぁぁぁ!」」」」


 みんなに「もっといいところがあるよ!」と、水路閣の奥、水が送られてくる水路にみんなを案内。

 そこは、うっそうとした森の小道で、小道の中央をレンガ造りの水路が走っていて、なんだか、ドイツかイギリスの油絵の中の景色みたい。

 スマホには、逢坂山を抜けた京都疎水の分水と出ていて、インクラインという。船を市内の水路の高さまで引き上げるごっついレールや、日本最古の発電所とかがある。すごく雰囲気なんだけど、許された行動半径を超えるので行かなかった。

「すごいよ、グッチ、来たことあるの!?」

 みんなに感心されたけど、さすがに「まあね(^_^;)」としか言えない。

 どうやら、このコースは、この時代では、あまり紹介はされてないみたいだ。あまり見栄を張って墓穴を掘らないようにしないと。

 

 
☆彡 主な登場人物

時司 巡(ときつかさ めぐり)   高校2年生 友だちにはグッチと呼ばれる
時司 応(こたえ)         巡の祖母 定年退職後の再任用も終わった魔法少女 時々姉の選(すぐり)になる
滝川                志忠屋のマスター
ペコさん              志忠屋のバイト
猫又たち              アイ(MS銀行) マイ(つくも屋) ミー(寿書房)
宮田 博子(ロコ)         2年3組 クラスメート
辻本 たみ子            2年3組 副委員長
高峰 秀夫             2年3組 委員長
吉本 佳奈子            2年3組 保健委員 バレー部
横田 真知子            2年3組 リベラル系女子
加藤 高明(10円男)       留年してる同級生
安倍晴天              陰陽師、安倍晴明の50代目
藤田 勲              2年学年主任
先生たち              花園先生:3組担任 グラマー:妹尾 現国:杉野 若杉:生指部長 体育:伊藤 水泳:宇賀  音楽:峰岸  世界史:吉村先生  教頭先生  倉田(生徒会顧問)  藤野先生(大浜高校)
須之内直美             証明写真を撮ってもらった写真館のおねえさん。
御神楽采女             結婚式場の巫女 正体は須世理姫 キタマの面倒を見ている
早乙女のお婆ちゃん         三軒隣りのお婆ちゃん
時司 徒 (いたる)         お祖母ちゃんの妹  
妖・魔物              アキラ      
その他の生徒たち          滝沢(4組) 栗原(4組) 牧内千秋(演劇部 8組) 明智玉子(生徒会長)
灯台守の夫婦            平賀勲 平賀恵  二人とも直美の友人  
 
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