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116『妖退治・2 晴天のネックファン』
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巡(めぐり)・型落ち魔法少女の通学日記
116『妖退治・2 晴天のネックファン』
逃げ水ってあるでしょ。
夏の盛りに道を歩いていると、道の向こうにユラユラと水たまりがあるように見えて、近づくと、近づいた分だけ逃げてしまう。
あの逃げ水みたいなのが、大屋根の上にいくつも現れる。
逃げ水と違って、近づいても逃げないで、大屋根の上をチョロチョロ動いている。中には、向こうから近づいてくるものもあるんだけど、だいたい10メートルぐらい近づくと消えてしまう。
消えてしまうのは、わたしの魔力が退治している証拠だと安倍晴天は言う。
晴天が妖気の膜を補強してくれているので暑くはないし、一周2.2キロの大屋根の上で見晴らしもいい。少しづつ仕上がっていくパビリオンや会場の施設を眺めているのも楽しい。
三日ほどたって気が付いた。
逃げ水の一つが消える寸前に人の形になったんだ。
注意して見ていると、別の逃げ水は、はっきりと小さな男の子の姿になった後に消えていった。
え、あれって、人なの?
動けなくなった。
わたしが動けば、逃げ水が消えるわけで、それは大阪に巣くう妖を退治していることだったはず?
「さすが応(こたえ)さんの孫だ、見えてしまうんだね」
晴天が麦わら帽にグラサンのナリで横に立った。
「あれって、人じゃないの?」
「人ではない、人が残した負の感情が地中のメタンガスなんかに反応して形になったものだ」
「え、えと……」
「足下にグッチの影があるだろう」
「あ、うん」
午前九時の影は黒々と足もとに伸び、当然だけどわたしの形をしている。
「生きてるみたいだけど、その影を生き物だと思う?」
「ううん、ただの影だよ」
「恐怖とか怒りとかの負の感情も同じ、一種の影なんだ。だから気にすることは無い」
「そ、そうなんだ(^_^;)」
ブ~~~~~~ン
少しだけ安心すると小さなモーターが回っているような音が耳につく。
「あ、分かってしまったか(¬_¬) ?」
晴天がジト目でこっちを見ると、首筋に輪っかみたいなのが現れた。
「ネックファン?」
「AMATONで買ったんだ」
「へえ、安倍晴明の子孫でもAMAZONで買うんだ」
ちょっと親近感。
「似たようなもんだけどね、吹きだす風が並みじゃないんだぞ」
「どれどれ……ヒエエエエエ!」
指先がドライアイスに触ったみたいになって、慌てて引っ込める。
「黄泉の国の冷気だからね、波の冷風じゃないさ」
「でも、汗かいてないみたいだけど」
「ああ、舞妓さんと同じでね、目につくところは汗をかかないようにしてるんだ。妖どもに弱みは見せられないからね」
「そ、そうなんだ(^_^;)」
「よし、グッチと喋って元気が出て来た、もうひと頑張りしてくるぞ!」
ジュ!
勢いをつけて行ったせいか、寸前まで晴天が居たところの水分が瞬間に蒸発した。
まだまだ妖退治は続きそうだ。
☆彡 主な登場人物
時司 巡(ときつかさ めぐり) 高校2年生 友だちにはグッチと呼ばれる
時司 応(こたえ) 巡の祖母 定年退職後の再任用も終わった魔法少女 時々姉の選(すぐり)になる
滝川 志忠屋のマスター
ペコさん 志忠屋のバイト
猫又たち アイ(MS銀行) マイ(つくも屋) ミー(寿書房)
宮田 博子(ロコ) 2年3組 クラスメート
辻本 たみ子 2年3組 副委員長
高峰 秀夫 2年3組 委員長
吉本 佳奈子 2年3組 保健委員 バレー部
横田 真知子 2年3組 リベラル系女子
加藤 高明(10円男) 留年してる同級生
安倍晴天 陰陽師、安倍晴明の50代目
藤田 勲 2年学年主任
先生たち 花園先生:3組担任 グラマー:妹尾 現国:杉野 若杉:生指部長 体育:伊藤 水泳:宇賀 音楽:峰岸 教頭先生 倉田(生徒会顧問) 藤野先生(大浜高校)
須之内直美 証明写真を撮ってもらった写真館のおねえさん。
御神楽采女 結婚式場の巫女 正体は須世理姫
早乙女のお婆ちゃん 三軒隣りのお婆ちゃん
時司 徒 (いたる) お祖母ちゃんの妹
その他の生徒たち 滝沢(4組) 栗原(4組) 牧内千秋(演劇部 8組) 明智玉子(生徒会長)
灯台守の夫婦 平賀勲 平賀恵 二人とも直美の友人
116『妖退治・2 晴天のネックファン』
逃げ水ってあるでしょ。
夏の盛りに道を歩いていると、道の向こうにユラユラと水たまりがあるように見えて、近づくと、近づいた分だけ逃げてしまう。
あの逃げ水みたいなのが、大屋根の上にいくつも現れる。
逃げ水と違って、近づいても逃げないで、大屋根の上をチョロチョロ動いている。中には、向こうから近づいてくるものもあるんだけど、だいたい10メートルぐらい近づくと消えてしまう。
消えてしまうのは、わたしの魔力が退治している証拠だと安倍晴天は言う。
晴天が妖気の膜を補強してくれているので暑くはないし、一周2.2キロの大屋根の上で見晴らしもいい。少しづつ仕上がっていくパビリオンや会場の施設を眺めているのも楽しい。
三日ほどたって気が付いた。
逃げ水の一つが消える寸前に人の形になったんだ。
注意して見ていると、別の逃げ水は、はっきりと小さな男の子の姿になった後に消えていった。
え、あれって、人なの?
動けなくなった。
わたしが動けば、逃げ水が消えるわけで、それは大阪に巣くう妖を退治していることだったはず?
「さすが応(こたえ)さんの孫だ、見えてしまうんだね」
晴天が麦わら帽にグラサンのナリで横に立った。
「あれって、人じゃないの?」
「人ではない、人が残した負の感情が地中のメタンガスなんかに反応して形になったものだ」
「え、えと……」
「足下にグッチの影があるだろう」
「あ、うん」
午前九時の影は黒々と足もとに伸び、当然だけどわたしの形をしている。
「生きてるみたいだけど、その影を生き物だと思う?」
「ううん、ただの影だよ」
「恐怖とか怒りとかの負の感情も同じ、一種の影なんだ。だから気にすることは無い」
「そ、そうなんだ(^_^;)」
ブ~~~~~~ン
少しだけ安心すると小さなモーターが回っているような音が耳につく。
「あ、分かってしまったか(¬_¬) ?」
晴天がジト目でこっちを見ると、首筋に輪っかみたいなのが現れた。
「ネックファン?」
「AMATONで買ったんだ」
「へえ、安倍晴明の子孫でもAMAZONで買うんだ」
ちょっと親近感。
「似たようなもんだけどね、吹きだす風が並みじゃないんだぞ」
「どれどれ……ヒエエエエエ!」
指先がドライアイスに触ったみたいになって、慌てて引っ込める。
「黄泉の国の冷気だからね、波の冷風じゃないさ」
「でも、汗かいてないみたいだけど」
「ああ、舞妓さんと同じでね、目につくところは汗をかかないようにしてるんだ。妖どもに弱みは見せられないからね」
「そ、そうなんだ(^_^;)」
「よし、グッチと喋って元気が出て来た、もうひと頑張りしてくるぞ!」
ジュ!
勢いをつけて行ったせいか、寸前まで晴天が居たところの水分が瞬間に蒸発した。
まだまだ妖退治は続きそうだ。
☆彡 主な登場人物
時司 巡(ときつかさ めぐり) 高校2年生 友だちにはグッチと呼ばれる
時司 応(こたえ) 巡の祖母 定年退職後の再任用も終わった魔法少女 時々姉の選(すぐり)になる
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ペコさん 志忠屋のバイト
猫又たち アイ(MS銀行) マイ(つくも屋) ミー(寿書房)
宮田 博子(ロコ) 2年3組 クラスメート
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高峰 秀夫 2年3組 委員長
吉本 佳奈子 2年3組 保健委員 バレー部
横田 真知子 2年3組 リベラル系女子
加藤 高明(10円男) 留年してる同級生
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藤田 勲 2年学年主任
先生たち 花園先生:3組担任 グラマー:妹尾 現国:杉野 若杉:生指部長 体育:伊藤 水泳:宇賀 音楽:峰岸 教頭先生 倉田(生徒会顧問) 藤野先生(大浜高校)
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御神楽采女 結婚式場の巫女 正体は須世理姫
早乙女のお婆ちゃん 三軒隣りのお婆ちゃん
時司 徒 (いたる) お祖母ちゃんの妹
その他の生徒たち 滝沢(4組) 栗原(4組) 牧内千秋(演劇部 8組) 明智玉子(生徒会長)
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