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060『新車と灯台・1』
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巡(めぐり)・型落ち魔法少女の通学日記
060『新車と灯台・1』
どーーーーよ( ー̀ωー́ )!
車のCMみたいに直美さんはドヤ顔で手を広げた。
ポニテに細身のジーパンもキリリときまり、このまま映画のニューフェイスとかに応募したら写真だけで合格しそう。
令和の条件反射でスマホをとり出しそうになるのをグッと堪える。
――新しい車が来たよ!――
今月のバイト日程の確認で電話したら、子どもが新しいおもちゃを手に入れたみたいに興奮してた(^_^;)
それで、バイトの確認も兼ねてお店に行ったら、裏の空き地に連れていかれ、直美さんがキャンペーンガールみたいになって新車を見せびらかしてくださっているところ。
「どう、新車だよ! ホンダZって言うんだ、なんか未来からやってきましたって感じでしょ!」
「す、すごいです(# ゚Д゚#)!」
令和のわたしが、ほんとうにビックリした。
車も直美さんに負けずにイケまくってる。
今までの車はホンダN360っていう、あまりぱっとしない軽自動車で、もうガタがきてるんで「買いなおすんだけど、ちょっと辛抱してるの」と四月から言っていた。理由は、秋に新車が出るという情報を掴んでいたから。
それが、いよいよ発売になって、めでたく納車されたんだ。
フゥーーン……フゥーーン……
とても五十年以上も昔の車とは思えないほどイカシテル。
面構えはスポーツカーかと思うくらいシャープだし、一見二人乗り(クーペというらしい)に見えるんだけど、ちゃんと四人乗り。
「うしろ、すごくイカシテますねえ!」
「でしょでしょ! ごっつい縁取りでさ、ファンの間では水中眼鏡って呼ばれてるんだよぉ」
「アハ、覗いたら未来が見えるかもですね!」
「ちゃんとハッチバックだしぃ」
バムバム(意味も無く開け閉めする直美さん)
「機材の出し入れ楽そうですね」
「うんうん、スタイリッシュなだけじゃなくて、すごく機能的でもあるんだよぉ」
「ドア開けていいですか?」
「うんうん、見てやってくれたまえ~」
カチャ
「おおーー!」
ダッシュボードが飛行機のイメージ、シフトレバーを前に倒しハンドルをひけば、そのまま空を飛びそうだ!
「よし、ドライブに行こう!」
「おお! やったー!」
ブィーーン
駅前まで出ると線路沿いに海へ。
高校生集会の時にも言ったけど、宮之森線は大浜市を抱き込むように『し』の字に伸びている。
『し』の字の底のあたりが海辺で、その海辺の道を新車で走ると、めちゃくちゃ気持ちがいい!
グコ グコ
アナログ車なので、シフトチェンジの度に、直美さんは左手でシフトレバーを操作する。
目は生き生きしてるし、エヴァ弐号機に乗り込んで「いっけえ!」って時のアスカ・ラングレーみたい。
いや、碇シンジを迎えに行った時のミサトさん!
「よし、岬の灯台まで行くよぉ!」
『し』の字が大浜市を抱くように周った先に灯台がある。小学校の遠足で行ったし、小さいころにお祖母ちゃんに連れて行ってもらったこともあるから知っている。
誰も居ない岬の先にポツンと真っ白な灯台が見えてきて、なんだか神々しい感じがしたのを思い出す。
子どもの頃って、なんでも擬人化して考えるものだから、ポツンと立って毎夜海を照らしている灯台が偉く思えて、その白く孤独なこけしのような姿に感動した。
ブチブチブチ……
岬に入ると舗装道路は終わって、タイヤが地面を噛んで陽気な音を立てる。
この地面を噛む音が陽気なものだから、逆に灯台の孤独な偉さが際立ってくる。
岬~めぐりの~バスは~走る♪
お祖母ちゃんが好きな『岬めぐり』がうかんでくる。
「お、なんかいい感じの歌だねぇ」
「え、あ……なんとなくの即興です」
「ふふ、グッチは、作詞とか作曲の才能があるのかも」
「ないですないです(^_^;)」
やばい、この時代にはまだ発表されてない歌だよ、たぶん。
でも、あの岬めぐりのバスが走っているのは、きっとこんな土の道だったんだよね。
見えてきた。
孤独に見えるかと思った灯台は、岬に佇むウェディングドレスの花嫁のようだった。
☆彡 主な登場人物
時司 巡(ときつかさ めぐり) 高校一年生
時司 応(こたえ) 巡の祖母 定年退職後の再任用も終わった魔法少女
滝川 志忠屋のマスター
ペコさん 志忠屋のバイト
猫又たち アイ(MS銀行) マイ(つくも屋) ミー(寿書房)
宮田 博子(ロコ) 1年5組 クラスメート
辻本 たみ子 1年5組 副委員長
高峰 秀夫 1年5組 委員長
吉本 佳奈子 1年5組 保健委員 バレー部
横田 真知子 1年5組 リベラル系女子
加藤 高明(10円男) 留年してる同級生
藤田 勲 1年5組の担任
先生たち 花園先生:4組担任 グラマー:妹尾 現国:杉野 若杉:生指部長 体育:伊藤 水泳:宇賀
須之内直美 証明写真を撮ってもらった写真館のおねえさん。
その他の生徒たち 滝沢(4組) 栗原(4組)
060『新車と灯台・1』
どーーーーよ( ー̀ωー́ )!
車のCMみたいに直美さんはドヤ顔で手を広げた。
ポニテに細身のジーパンもキリリときまり、このまま映画のニューフェイスとかに応募したら写真だけで合格しそう。
令和の条件反射でスマホをとり出しそうになるのをグッと堪える。
――新しい車が来たよ!――
今月のバイト日程の確認で電話したら、子どもが新しいおもちゃを手に入れたみたいに興奮してた(^_^;)
それで、バイトの確認も兼ねてお店に行ったら、裏の空き地に連れていかれ、直美さんがキャンペーンガールみたいになって新車を見せびらかしてくださっているところ。
「どう、新車だよ! ホンダZって言うんだ、なんか未来からやってきましたって感じでしょ!」
「す、すごいです(# ゚Д゚#)!」
令和のわたしが、ほんとうにビックリした。
車も直美さんに負けずにイケまくってる。
今までの車はホンダN360っていう、あまりぱっとしない軽自動車で、もうガタがきてるんで「買いなおすんだけど、ちょっと辛抱してるの」と四月から言っていた。理由は、秋に新車が出るという情報を掴んでいたから。
それが、いよいよ発売になって、めでたく納車されたんだ。
フゥーーン……フゥーーン……
とても五十年以上も昔の車とは思えないほどイカシテル。
面構えはスポーツカーかと思うくらいシャープだし、一見二人乗り(クーペというらしい)に見えるんだけど、ちゃんと四人乗り。
「うしろ、すごくイカシテますねえ!」
「でしょでしょ! ごっつい縁取りでさ、ファンの間では水中眼鏡って呼ばれてるんだよぉ」
「アハ、覗いたら未来が見えるかもですね!」
「ちゃんとハッチバックだしぃ」
バムバム(意味も無く開け閉めする直美さん)
「機材の出し入れ楽そうですね」
「うんうん、スタイリッシュなだけじゃなくて、すごく機能的でもあるんだよぉ」
「ドア開けていいですか?」
「うんうん、見てやってくれたまえ~」
カチャ
「おおーー!」
ダッシュボードが飛行機のイメージ、シフトレバーを前に倒しハンドルをひけば、そのまま空を飛びそうだ!
「よし、ドライブに行こう!」
「おお! やったー!」
ブィーーン
駅前まで出ると線路沿いに海へ。
高校生集会の時にも言ったけど、宮之森線は大浜市を抱き込むように『し』の字に伸びている。
『し』の字の底のあたりが海辺で、その海辺の道を新車で走ると、めちゃくちゃ気持ちがいい!
グコ グコ
アナログ車なので、シフトチェンジの度に、直美さんは左手でシフトレバーを操作する。
目は生き生きしてるし、エヴァ弐号機に乗り込んで「いっけえ!」って時のアスカ・ラングレーみたい。
いや、碇シンジを迎えに行った時のミサトさん!
「よし、岬の灯台まで行くよぉ!」
『し』の字が大浜市を抱くように周った先に灯台がある。小学校の遠足で行ったし、小さいころにお祖母ちゃんに連れて行ってもらったこともあるから知っている。
誰も居ない岬の先にポツンと真っ白な灯台が見えてきて、なんだか神々しい感じがしたのを思い出す。
子どもの頃って、なんでも擬人化して考えるものだから、ポツンと立って毎夜海を照らしている灯台が偉く思えて、その白く孤独なこけしのような姿に感動した。
ブチブチブチ……
岬に入ると舗装道路は終わって、タイヤが地面を噛んで陽気な音を立てる。
この地面を噛む音が陽気なものだから、逆に灯台の孤独な偉さが際立ってくる。
岬~めぐりの~バスは~走る♪
お祖母ちゃんが好きな『岬めぐり』がうかんでくる。
「お、なんかいい感じの歌だねぇ」
「え、あ……なんとなくの即興です」
「ふふ、グッチは、作詞とか作曲の才能があるのかも」
「ないですないです(^_^;)」
やばい、この時代にはまだ発表されてない歌だよ、たぶん。
でも、あの岬めぐりのバスが走っているのは、きっとこんな土の道だったんだよね。
見えてきた。
孤独に見えるかと思った灯台は、岬に佇むウェディングドレスの花嫁のようだった。
☆彡 主な登場人物
時司 巡(ときつかさ めぐり) 高校一年生
時司 応(こたえ) 巡の祖母 定年退職後の再任用も終わった魔法少女
滝川 志忠屋のマスター
ペコさん 志忠屋のバイト
猫又たち アイ(MS銀行) マイ(つくも屋) ミー(寿書房)
宮田 博子(ロコ) 1年5組 クラスメート
辻本 たみ子 1年5組 副委員長
高峰 秀夫 1年5組 委員長
吉本 佳奈子 1年5組 保健委員 バレー部
横田 真知子 1年5組 リベラル系女子
加藤 高明(10円男) 留年してる同級生
藤田 勲 1年5組の担任
先生たち 花園先生:4組担任 グラマー:妹尾 現国:杉野 若杉:生指部長 体育:伊藤 水泳:宇賀
須之内直美 証明写真を撮ってもらった写真館のおねえさん。
その他の生徒たち 滝沢(4組) 栗原(4組)
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