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057『ウィッチカモミール』
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巡(めぐり)・型落ち魔法少女の通学日記
057『ウィッチカモミール』
「活性化して来てるねえ……」
「活性化ぁ?」
腕を組んだお祖母ちゃんに、ボケた応えをする。
チョボチョボチョボ……
「まあ、お茶でも飲んで……」
学校でのあれこれ、おもに栗原さんのことにまつわる不思議のあれこれを話している。
話し始めると「お茶でも淹れよう」と言ってお湯を注いでいたのが、ようやく飲み頃になった。
「離れたところの話が聞こえるのはテレパシーの一種でクレアオーディエンスって言うの。一瞬で場所を移動するのはテレポート……どっちも魔法少女の潜在能力」
「ええ(-_-;)……」
魔法少女の家系だけども、お祖母ちゃんは、とっくに現役引退してるし、お母さんは、そういうのに関心なくてNASAで火星行きの訓練中。
わたしは、1970年の高校に通っている以外は普通の高校生をやってる。このまま二十歳になって、魔法少女の能力なんか芽生えないで普通の人生歩みたい。
「たぶん、栗原さんのことで芽生えたんだと思う……」
ああ……そんな能力欲しくも無いよ。
「それと、1970年に行くにあたって、ちょっとだけ巡の力解放しちゃったしね……」
「関係あるの?」
「ほんの入り口の力、空を飛ぶのが魔法少女の力だとしたら、やっと家の二階から飛び降りるくらいの力。とてもテレポートに結びつくような力じゃないよ」
「そうなんだ」
「他になんか無かったかい?」
「他には……」
一つ思い浮かんだ。
体育祭の開会式で、とつぜん先生のではないホイッスルが鳴った。
ピイイイイイイイ!
なんだと思って、ホイッスルのした校舎の端っこを見ると、ゲバ棒にヘルメット被った二十人くらいの集団が「体育祭粉砕!」とか叫びながらグラウンドに入ってきた。みんなタオルや手拭いをメットのストラップにひっかけて顔が見えないようにしてる。手には軍手嵌めて、五人一組でスクラム組んで蛇行しながら行進してんの。
「あ、あれ、加藤高明!」
ロコが気づいて指を指したのは、先頭でホイッスル吹いてリードしてる奴。三度目ぐらいのシュプレヒコールでタオルがずれて横顔がばっちり。わたし一人が密かに10円男と呼んでいる留年生のクラスメート。
学園紛争なんて、前の年の1969年で終わってるのに、こいつらはバカかと思った。
ほんの二十人ほどだし、今朝まで練習してたムカデ競争ほどにも統制取れてないし。シュプレヒコールとかうるさいし。
――もう、こけちゃえ!――
そう思ったら、一列目が脚を絡ませて、ほんとうにこけた!
後の三列も続いてコケまくって、グラウンドのみんなから笑いが起こった。
どうも、二人ほど脚をグネったみたいで起き上がれずにいると、見かねた保健の先生が救護の生徒を呼んで救助に行った。
さっきまで威勢のよかったヘルメットたちがペコペコお礼をいって、みんなで校舎裏に戻って行った。
「あはは、ドリフターズのコントみたい(^▽^)」
だれかが言って、グラウンドは爆笑の渦になった。
「ほう、そんなことがあったんだぁ」
「え?」
思い浮かんだだけで、まだ喋ってないんだけど。
「これって、クレアオーディエンス?」
「クレアエンパシー、言葉を使わずに意志や気持ちを伝える能力さ」
「どっちの?」
「両方、わたしが四分で、巡が六分ってとこかなあ」
「そ、そうなんだ」
「もう一度ゲバ坊主たちがコケたところ思い出して」
「う、うん…………プ(`艸´)」
今度は十円男の心底情けない顔がアリアリと浮かんで笑ってしまう。
「わかった」
「え?」
「列をコケさせたのは、巡、おまえだよ」
「ええ!?」
「テレキネシスの一種だよ」
「ええ、どうしよう!?」
「いま飲んだお茶、ウィッチカモミールって言うんだ。抑制効果があるから、しばらく飲み続けるんだね」
「ええ……」
正直、おいしいお茶じゃなかった。
あくる日からは水筒に入れてもっていかされることになってしまった。
☆彡 主な登場人物
時司 巡(ときつかさ めぐり) 高校一年生
時司 応(こたえ) 巡の祖母 定年退職後の再任用も終わった魔法少女
滝川 志忠屋のマスター
ペコさん 志忠屋のバイト
猫又たち アイ(MS銀行) マイ(つくも屋) ミー(寿書房)
宮田 博子(ロコ) 1年5組 クラスメート
辻本 たみ子 1年5組 副委員長
高峰 秀夫 1年5組 委員長
吉本 佳奈子 1年5組 保健委員 バレー部
横田 真知子 1年5組 リベラル系女子
加藤 高明(10円男) 留年してる同級生
藤田 勲 1年5組の担任
先生たち 花園先生:4組担任 グラマー:妹尾 現国:杉野 若杉:生指部長 体育:伊藤 水泳:宇賀
須之内直美 証明写真を撮ってもらった写真館のおねえさん。
その他の生徒たち 滝沢(4組) 栗原(4組)
057『ウィッチカモミール』
「活性化して来てるねえ……」
「活性化ぁ?」
腕を組んだお祖母ちゃんに、ボケた応えをする。
チョボチョボチョボ……
「まあ、お茶でも飲んで……」
学校でのあれこれ、おもに栗原さんのことにまつわる不思議のあれこれを話している。
話し始めると「お茶でも淹れよう」と言ってお湯を注いでいたのが、ようやく飲み頃になった。
「離れたところの話が聞こえるのはテレパシーの一種でクレアオーディエンスって言うの。一瞬で場所を移動するのはテレポート……どっちも魔法少女の潜在能力」
「ええ(-_-;)……」
魔法少女の家系だけども、お祖母ちゃんは、とっくに現役引退してるし、お母さんは、そういうのに関心なくてNASAで火星行きの訓練中。
わたしは、1970年の高校に通っている以外は普通の高校生をやってる。このまま二十歳になって、魔法少女の能力なんか芽生えないで普通の人生歩みたい。
「たぶん、栗原さんのことで芽生えたんだと思う……」
ああ……そんな能力欲しくも無いよ。
「それと、1970年に行くにあたって、ちょっとだけ巡の力解放しちゃったしね……」
「関係あるの?」
「ほんの入り口の力、空を飛ぶのが魔法少女の力だとしたら、やっと家の二階から飛び降りるくらいの力。とてもテレポートに結びつくような力じゃないよ」
「そうなんだ」
「他になんか無かったかい?」
「他には……」
一つ思い浮かんだ。
体育祭の開会式で、とつぜん先生のではないホイッスルが鳴った。
ピイイイイイイイ!
なんだと思って、ホイッスルのした校舎の端っこを見ると、ゲバ棒にヘルメット被った二十人くらいの集団が「体育祭粉砕!」とか叫びながらグラウンドに入ってきた。みんなタオルや手拭いをメットのストラップにひっかけて顔が見えないようにしてる。手には軍手嵌めて、五人一組でスクラム組んで蛇行しながら行進してんの。
「あ、あれ、加藤高明!」
ロコが気づいて指を指したのは、先頭でホイッスル吹いてリードしてる奴。三度目ぐらいのシュプレヒコールでタオルがずれて横顔がばっちり。わたし一人が密かに10円男と呼んでいる留年生のクラスメート。
学園紛争なんて、前の年の1969年で終わってるのに、こいつらはバカかと思った。
ほんの二十人ほどだし、今朝まで練習してたムカデ競争ほどにも統制取れてないし。シュプレヒコールとかうるさいし。
――もう、こけちゃえ!――
そう思ったら、一列目が脚を絡ませて、ほんとうにこけた!
後の三列も続いてコケまくって、グラウンドのみんなから笑いが起こった。
どうも、二人ほど脚をグネったみたいで起き上がれずにいると、見かねた保健の先生が救護の生徒を呼んで救助に行った。
さっきまで威勢のよかったヘルメットたちがペコペコお礼をいって、みんなで校舎裏に戻って行った。
「あはは、ドリフターズのコントみたい(^▽^)」
だれかが言って、グラウンドは爆笑の渦になった。
「ほう、そんなことがあったんだぁ」
「え?」
思い浮かんだだけで、まだ喋ってないんだけど。
「これって、クレアオーディエンス?」
「クレアエンパシー、言葉を使わずに意志や気持ちを伝える能力さ」
「どっちの?」
「両方、わたしが四分で、巡が六分ってとこかなあ」
「そ、そうなんだ」
「もう一度ゲバ坊主たちがコケたところ思い出して」
「う、うん…………プ(`艸´)」
今度は十円男の心底情けない顔がアリアリと浮かんで笑ってしまう。
「わかった」
「え?」
「列をコケさせたのは、巡、おまえだよ」
「ええ!?」
「テレキネシスの一種だよ」
「ええ、どうしよう!?」
「いま飲んだお茶、ウィッチカモミールって言うんだ。抑制効果があるから、しばらく飲み続けるんだね」
「ええ……」
正直、おいしいお茶じゃなかった。
あくる日からは水筒に入れてもっていかされることになってしまった。
☆彡 主な登場人物
時司 巡(ときつかさ めぐり) 高校一年生
時司 応(こたえ) 巡の祖母 定年退職後の再任用も終わった魔法少女
滝川 志忠屋のマスター
ペコさん 志忠屋のバイト
猫又たち アイ(MS銀行) マイ(つくも屋) ミー(寿書房)
宮田 博子(ロコ) 1年5組 クラスメート
辻本 たみ子 1年5組 副委員長
高峰 秀夫 1年5組 委員長
吉本 佳奈子 1年5組 保健委員 バレー部
横田 真知子 1年5組 リベラル系女子
加藤 高明(10円男) 留年してる同級生
藤田 勲 1年5組の担任
先生たち 花園先生:4組担任 グラマー:妹尾 現国:杉野 若杉:生指部長 体育:伊藤 水泳:宇賀
須之内直美 証明写真を撮ってもらった写真館のおねえさん。
その他の生徒たち 滝沢(4組) 栗原(4組)
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