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048『みんなで万博・3・ソ連館』
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巡(めぐり)・型落ち魔法少女の通学日記
048『みんなで万博・3・ソ連館』
今朝も始発電車……とはいかなかったけど、7時には船場の町家を出て8時半にはゲート前に並んだ。
真知子:「いっそ、ソ連館はパスかなあ」
ロコ:「そうですねえ、マイナーなパビリオンなら待ち時間だけで10個は周れますよぉ」
佳奈子:「うん、ロスタイム長すぎ」
たみ子:「日本館は行ってみたいかなあ」
真知子:「グッチは?」
わたし:「あ……ううん……」
実は、ゆうべスマホで調べてみた。
わたしのスマホはMS仕様(魔法少女仕様)だから、1970年でも使える。
正直、どれもこれもショボい。
話題のソ連館は、ドッキングに成功したソユーズの実物大を見せてくれる。令和の時代ではすでにポンコツになっている国際宇宙ステーションは、ソユーズの数十倍の大きさがある。でもね、その国際宇宙ステーションが展示されてるといって観には行かないと思う。
本当を言うと、ぼんやりと人を眺めているのがいい。
直美さんと仕事でやってきて、直美さんはパビリオンなんかそっちのけで人ばかり撮っていた。
明治や大正生まれのおじさんやおばさんが目をキラキラさせて、待ち時間もお連れさんたちと子どもみたいにお喋りしていて、そういうのを横で見ている方が楽しかった。
でも「じゃあ、人を見ていよう!」なんて言えないよ。
わたし:「じゃあ、一応ソ連館目指して、待ち時間長いようなら、近場のパビリオンを観るってのでどうかなあ」
真知子:「そうね、やっぱ、初志貫徹。それでいこう!」
佳奈子:「よし、じゃあ、ロコ選手、いっぱい調べといてよ!」
ロコ:「了解!」
それで、いざ開場になってみると、意外にソ連館が空いているというほどじゃないけど、30分も待っていたら入れそうな雰囲気!
ロコ:「やっぱり、ソ連館です!」
ボールペンで指さしたロコの手元にはメモ帳がひらめいている。ビッシリと文字やら図やら計算式やら……ロコって、やっぱすごい子なんだ。いっそ、スマホを貸してやったら……ウソウソ(^_^;)
たみ子:「あ、やっぱり人が戻って来る!」
他人より首一つ高いたみ子は列の後ろを見て感心。
真知子:「みんな同じなんだぁ」
佳奈子:「そうね、試合も中盤になって、敵も味方も対策は似てくるんだ」
なるほど、早朝から並んでるのはリピーターが多くて、みんな初回でアメリカ館やソ連館は観ていて、微妙に敬遠してたんだ。で、少し落ち着いたら、意外に空いてる(それでも、30分とか1時間待ちとかなんだけどね)ってんで、戻って来るんだ。
ソ連館は、なんか赤旗押し立てて行進してますってイメージ。正面のトップには共産主義共通のシンボル、鎌とトンカチ。まだまだ元気なころのソ連。
「「「「おお!」」」」
昨日と同じリアクション。
確かにソユーズの実物は迫力。ドッキングしてるのはレプリカだけど、実物大だからね。
ソユーズの横にはガガーリン少佐の写真。最初に人工衛星に乗って「地球は青かった」とか言った人。
真知子:「いい男ね、ガガーリンて」
真知子が感心して、みんなで見上げる。
わたし:「チャーミング……」
ガガーリンの笑顔はアメリカ的だ。屈託のない100%の笑顔。ソ連人には珍しいタイプ。
ロコ:「まあ、ヒーローだし、ソ連の広告塔ですからねえ」
真知子:「死んじゃったしね」
わたし:「え、死んじゃったの!?」
みんな:「「「「は?」」」」
声が大きかったので、他の人たちも何人か見てるし、ちょっと恥ずかしい。
ロコ:「グッチ、知らなかったんですか!?」
佳奈子:「飛行機事故で死んだんだよ」
たみ子:「うん、二年前。ケネディー暗殺ぐらいにショックだった」
真知子:「グッチ……」
わたし:「え、ああ……ど……(;゚Д゚)」
ど忘れ……と言おうとして動揺した。
ガガーリンなんて歴史上の人物、それも教科書の欄外の参考程度。令和のJKとしては名前知ってるだけでも上出来。死んだ年までは知らないし。
ヤバイ、展開によっては未来人だってバレてしまうかも。
ど忘れの『ど』は、どうしようの『ど』になってきて、涙が滲んできた。
ロコ:「グッチ……」
と、わたしの横に人の気配。
「オジョウサン、ガガーリンを好いてくださってたんですね」
赤いユニホーム、ソ連館のコンパニオンのロシア美人が立っていた。
「え、あ、あの……」
「わたし、ユリアといいます。ガガーリンと同じスモレンスクの人です、わたし。日本、情報覆多い。知らないこともあります。でも、いま知って悲しんでくれました。うれしいです。記念に、これもらってください」
ガガーリンバッチをもらった。
「仕事あるので、これでね。ほんとにありがとうオジョウサン」
ハ、ハグされた(#^_^#)。
ロコ:「これ、売店で売ってるやつじゃないですよ!」
真知子:「特別製!?」
たみ子:「うわあ、いいなあ」
佳奈子:「ガガーリンを愛していたのねぇ」
わたし:「ユリアさん?」
ロコ:「グッチのことですよ!」
わたし:「え、あ、それは……」
なんだか周囲の人も感動してるっぽいし、そそくさと……いきたかったんだけど、みんなに付き合ってじっくり見て、ソ連館を出ようとしたら、ちょうどユリアさんがお見送り係り。親しみのこもった笑顔を返されて、顔が真っ赤になってしまった。
☆彡 主な登場人物
時司 巡(ときつかさ めぐり) 高校一年生
時司 応(こたえ) 巡の祖母 定年退職後の再任用も終わった魔法少女
滝川 志忠屋のマスター
ペコさん 志忠屋のバイト
猫又たち アイ(MS銀行) マイ(つくも屋) ミー(寿書房)
宮田 博子(ロコ) 1年5組 クラスメート
辻本 たみ子 1年5組 副委員長
高峰 秀夫 1年5組 委員長
吉本 佳奈子 1年5組 保健委員 バレー部
横田 真知子 1年5組 リベラル系女子
加藤 高明(10円男) 留年してる同級生
藤田 勲 1年5組の担任
先生たち 花園先生:4組担任 グラマー:妹尾 現国:杉野 若杉:生指部長 体育:伊藤 水泳:宇賀
須之内直美 証明写真を撮ってもらった写真館のおねえさん。
048『みんなで万博・3・ソ連館』
今朝も始発電車……とはいかなかったけど、7時には船場の町家を出て8時半にはゲート前に並んだ。
真知子:「いっそ、ソ連館はパスかなあ」
ロコ:「そうですねえ、マイナーなパビリオンなら待ち時間だけで10個は周れますよぉ」
佳奈子:「うん、ロスタイム長すぎ」
たみ子:「日本館は行ってみたいかなあ」
真知子:「グッチは?」
わたし:「あ……ううん……」
実は、ゆうべスマホで調べてみた。
わたしのスマホはMS仕様(魔法少女仕様)だから、1970年でも使える。
正直、どれもこれもショボい。
話題のソ連館は、ドッキングに成功したソユーズの実物大を見せてくれる。令和の時代ではすでにポンコツになっている国際宇宙ステーションは、ソユーズの数十倍の大きさがある。でもね、その国際宇宙ステーションが展示されてるといって観には行かないと思う。
本当を言うと、ぼんやりと人を眺めているのがいい。
直美さんと仕事でやってきて、直美さんはパビリオンなんかそっちのけで人ばかり撮っていた。
明治や大正生まれのおじさんやおばさんが目をキラキラさせて、待ち時間もお連れさんたちと子どもみたいにお喋りしていて、そういうのを横で見ている方が楽しかった。
でも「じゃあ、人を見ていよう!」なんて言えないよ。
わたし:「じゃあ、一応ソ連館目指して、待ち時間長いようなら、近場のパビリオンを観るってのでどうかなあ」
真知子:「そうね、やっぱ、初志貫徹。それでいこう!」
佳奈子:「よし、じゃあ、ロコ選手、いっぱい調べといてよ!」
ロコ:「了解!」
それで、いざ開場になってみると、意外にソ連館が空いているというほどじゃないけど、30分も待っていたら入れそうな雰囲気!
ロコ:「やっぱり、ソ連館です!」
ボールペンで指さしたロコの手元にはメモ帳がひらめいている。ビッシリと文字やら図やら計算式やら……ロコって、やっぱすごい子なんだ。いっそ、スマホを貸してやったら……ウソウソ(^_^;)
たみ子:「あ、やっぱり人が戻って来る!」
他人より首一つ高いたみ子は列の後ろを見て感心。
真知子:「みんな同じなんだぁ」
佳奈子:「そうね、試合も中盤になって、敵も味方も対策は似てくるんだ」
なるほど、早朝から並んでるのはリピーターが多くて、みんな初回でアメリカ館やソ連館は観ていて、微妙に敬遠してたんだ。で、少し落ち着いたら、意外に空いてる(それでも、30分とか1時間待ちとかなんだけどね)ってんで、戻って来るんだ。
ソ連館は、なんか赤旗押し立てて行進してますってイメージ。正面のトップには共産主義共通のシンボル、鎌とトンカチ。まだまだ元気なころのソ連。
「「「「おお!」」」」
昨日と同じリアクション。
確かにソユーズの実物は迫力。ドッキングしてるのはレプリカだけど、実物大だからね。
ソユーズの横にはガガーリン少佐の写真。最初に人工衛星に乗って「地球は青かった」とか言った人。
真知子:「いい男ね、ガガーリンて」
真知子が感心して、みんなで見上げる。
わたし:「チャーミング……」
ガガーリンの笑顔はアメリカ的だ。屈託のない100%の笑顔。ソ連人には珍しいタイプ。
ロコ:「まあ、ヒーローだし、ソ連の広告塔ですからねえ」
真知子:「死んじゃったしね」
わたし:「え、死んじゃったの!?」
みんな:「「「「は?」」」」
声が大きかったので、他の人たちも何人か見てるし、ちょっと恥ずかしい。
ロコ:「グッチ、知らなかったんですか!?」
佳奈子:「飛行機事故で死んだんだよ」
たみ子:「うん、二年前。ケネディー暗殺ぐらいにショックだった」
真知子:「グッチ……」
わたし:「え、ああ……ど……(;゚Д゚)」
ど忘れ……と言おうとして動揺した。
ガガーリンなんて歴史上の人物、それも教科書の欄外の参考程度。令和のJKとしては名前知ってるだけでも上出来。死んだ年までは知らないし。
ヤバイ、展開によっては未来人だってバレてしまうかも。
ど忘れの『ど』は、どうしようの『ど』になってきて、涙が滲んできた。
ロコ:「グッチ……」
と、わたしの横に人の気配。
「オジョウサン、ガガーリンを好いてくださってたんですね」
赤いユニホーム、ソ連館のコンパニオンのロシア美人が立っていた。
「え、あ、あの……」
「わたし、ユリアといいます。ガガーリンと同じスモレンスクの人です、わたし。日本、情報覆多い。知らないこともあります。でも、いま知って悲しんでくれました。うれしいです。記念に、これもらってください」
ガガーリンバッチをもらった。
「仕事あるので、これでね。ほんとにありがとうオジョウサン」
ハ、ハグされた(#^_^#)。
ロコ:「これ、売店で売ってるやつじゃないですよ!」
真知子:「特別製!?」
たみ子:「うわあ、いいなあ」
佳奈子:「ガガーリンを愛していたのねぇ」
わたし:「ユリアさん?」
ロコ:「グッチのことですよ!」
わたし:「え、あ、それは……」
なんだか周囲の人も感動してるっぽいし、そそくさと……いきたかったんだけど、みんなに付き合ってじっくり見て、ソ連館を出ようとしたら、ちょうどユリアさんがお見送り係り。親しみのこもった笑顔を返されて、顔が真っ赤になってしまった。
☆彡 主な登場人物
時司 巡(ときつかさ めぐり) 高校一年生
時司 応(こたえ) 巡の祖母 定年退職後の再任用も終わった魔法少女
滝川 志忠屋のマスター
ペコさん 志忠屋のバイト
猫又たち アイ(MS銀行) マイ(つくも屋) ミー(寿書房)
宮田 博子(ロコ) 1年5組 クラスメート
辻本 たみ子 1年5組 副委員長
高峰 秀夫 1年5組 委員長
吉本 佳奈子 1年5組 保健委員 バレー部
横田 真知子 1年5組 リベラル系女子
加藤 高明(10円男) 留年してる同級生
藤田 勲 1年5組の担任
先生たち 花園先生:4組担任 グラマー:妹尾 現国:杉野 若杉:生指部長 体育:伊藤 水泳:宇賀
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