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046『みんなで万博・1・船場センタービル』
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巡(めぐり)・型落ち魔法少女の通学日記
046『みんなで万博・1・船場センタービル』
無理をして新幹線にした。
1970年、新大阪までの新幹線の特急料金は片道2000円。
学食のランチが100円だからね、高校生としては贅沢をした。
先月、直美さんと来た時は、機材が多いので車だった。身銭をきってみると大阪までの距離がよく分かる。
座席に付いたら窓の下と座席のひじ掛けに吸い殻入れが付いているのには驚いた。
発車すると、二つ前のオッサンが、さっそく喫いはじめたんだけど、煙は広がる前にダクトに吸い込まれて、すぐ横にでも座っていなければ被害は無いんだけど、列車の中で喫煙するという行為そのものが犯罪的に感じる。
でも、三島を過ぎて富士山が見え始めて「キャー、富士山!!」「うわあ!」「待ってました!」とJK五人がキャピキャピ騒ぐと、タバコのオッサンは腰を浮かせて横顔で睨んできて、そのままシートに沈んでしまった。
まあ、お互いさま。
五人ともバイトに精を出したので、高校生の旅行としては余裕。
チケットは真知子のお母さんが尽力してくださって二日分を確保できている。
万博といっても、高校生は600円だから、二日分ゲットしても新幹線の特急料金よりも安いよ。
令和の再来年、2025年万博は8000円だとか。物価の上昇を考えても8000円はクレージーだ。パビリオンの建築も遅れに遅れて、着工どころか建築契約も出来ていない国が多い。ひょっとしたら、年内には第三次世界大戦になってパリオリンピックも大阪万博も吹っ飛んでしまうという噂まである。半世紀以上経っているのに人類の進歩と調和は退化してる。
「「「「「お世話になりまーーす!」」」」」
五人揃って元気に挨拶したのは、朝ドラのオープンセットかという感じの古いお店。いや、元お店。
大阪に船場センタービルというのが出来て、船場の繊維関係のお店が大挙して移転したのが、この三月。
たいていは移転と同時に元のお店は区画整理とかで取り壊されたり売りに出されたり。
その中で、権利関係やら保存問題やらで宙ぶらりんになったお店があって、ちょうどお盆の時期で人も居なくなるので、光熱費の負担だけで泊まらせてもらえることになった。
これも真知子のお母さんのお蔭。
ロコ:「うわあ、これ三和土(たたき)って言うんじゃないですか!?」
ロコが、入ったところのコンクリートに感激する。
たみ子:「なに、タタキって?」
佳奈子:「カツオか?」
ロコ:「土に消石灰とニガリを混ぜて叩き固めた舗装なんです。コンクリートよりも吸湿性に優れていて風合いがちがうんです(^▽^)」
真知子:「玄関で泊まってちゃダメでしょ、奥に行くわよ」
功労者は、ツカツカト奥に進んで行く。
三和土の横は板の間で、先生の机みたいなのが並んでいて、お店が現役だったころは、ここが事務所だったみたい。
真知子に続いて奥に行くと長細いお台所のようになっていて、天井は吹き抜けで梁や柱がむき出しで、その間に天窓が覗いている。
ロコ:「昔はオクドサンとかがあって、薪でご飯炊いてたんでしょうねえ」
わたし:「ほんとだ、梁も柱も黒光りしてるよぉ」
佳奈子:「ここから上がるみたい」
上がり框の前に真知子の靴がある、それに倣って隣接する板敷と畳敷きに上がる。
ロコ:「昔は、ここでご飯食べたんですね。畳のところが旦那さんと家族、板敷が番頭さん手代さん、三和土のところは丁稚さんたちですね」
佳奈子:「え、身分別だったの?」
ロコ:「ですよ。っていうか、空間的には同じ場所で食べてるんで、大阪はすごいんです。宮之森もそうですけど、関東とかじゃ、主人一家は奥の別室ですからね。商売に対する姿勢が違うんです。主人や番頭は、食事の場でもみんなの健康状態やモチベーションを見て、なんというか、一体感がすごいんですよ!」
わたし:「いや、ロコのモチベーションこそすごいよ(^_^;)」
ロコ:「いいえ、せっかく大阪の町家づくりに泊まるんで、下調べしてきたんです。このお家、基本的に適塾と同じ作りのようです」
社員さん:「いやあ、お嬢ちゃんら、すごいねぇ。これだけ感心してもろたら、値打ちあるわあ。適塾は、ちょっと行ったとこにあるねんけど、今は老朽化して公開はしてへんさかい。ここで間に合うんやったら、よう見といてください」
みんな:「「「「「はい」」」」」
それから、奥の部屋やら坪庭、寝具の在りか、お風呂の沸かし方から戸締りの仕方を教えてくれて、社員さんは船場センタービルの方に帰って行った。
佳奈子:「さて、ちょっと早いけどお昼食べて、どっか行こうか?」
万博は二日目からと決めているので、初日は余裕だ。
真知子:「社員さんが、センタービルの地下にいろいろ食べ物屋さんがあるって言ってたよ」
佳奈子:「よし、じゃあ、センタービルに直行だ!」
みんな:「「「「おお!」」」」
徒歩5分ほどで船場センタービルに到着。またまた感動した。
みんな:「「「「「うわあ……」」」」」
感嘆の声を上げて、五人で見上げた。
ビルとして見ると、三階建とか四階建で、驚くほどのものじゃないんだけど、めっちゃ長い。
首を左右に振っても端っこが見えない!
ロコ:「幅42メートル、全長は1000メートルあるんです!」
みんな:「「「「「1000メートル」」」」」
ロコ:「地下鉄の駅を二つ跨いで、まだ東の方に続いていますからね」
たみ子:「ということは、これを縦にしたら、世界で一番のノッポビルになるよね!」
ロコ:「はい、エンパイアステートビルを三つ重ねて、まだ足りません!」
わたしたちの驚きは、それだけじゃなかった。
シュイーーン シュ シュ シュイーーン……
ビルの上には高速道路が走っていて、耳を澄ますと、ひっきりなしに車が走っていく音がする。
ロコ:「最初に、高速道路の計画が出来て、移転するお店や会社がいっぱい出てきたんですです。引っ越し用のビルの計画があったんですが、床面積がぜんぜん足りなくて、高層化すると上の方は人が来なくて条件悪いです。そこで、考えたんです『いっそ、高速道路の真下をビルにしたら全部入ってお釣りが出るやろ!』って」
みんな:「「「「なるほどぉ」」」」
ロコ:「それに、地下二階まであって、食べ物屋やら呑屋がいっぱいあります!」
みんな:「「「「おお!」」」」
宮之森の図書館で調べてきたという図面に目を剥いて、とりあえず現場に急行、30分近く目移りして、夜は呑屋、昼間はランチというお店で美味しくお昼を頂く。
午後は、大阪城と難波と心斎橋を堪能して、いよいよ明日の万博突撃に備えて英気を養った。
☆彡 主な登場人物
時司 巡(ときつかさ めぐり) 高校一年生
時司 応(こたえ) 巡の祖母 定年退職後の再任用も終わった魔法少女
滝川 志忠屋のマスター
ペコさん 志忠屋のバイト
猫又たち アイ(MS銀行) マイ(つくも屋) ミー(寿書房)
宮田 博子(ロコ) 1年5組 クラスメート
辻本 たみ子 1年5組 副委員長
高峰 秀夫 1年5組 委員長
吉本 佳奈子 1年5組 保健委員 バレー部
横田 真知子 1年5組 リベラル系女子
加藤 高明(10円男) 留年してる同級生
藤田 勲 1年5組の担任
先生たち 花園先生:4組担任 グラマー:妹尾 現国:杉野 若杉:生指部長 体育:伊藤 水泳:宇賀
須之内直美 証明写真を撮ってもらった写真館のおねえさん。
046『みんなで万博・1・船場センタービル』
無理をして新幹線にした。
1970年、新大阪までの新幹線の特急料金は片道2000円。
学食のランチが100円だからね、高校生としては贅沢をした。
先月、直美さんと来た時は、機材が多いので車だった。身銭をきってみると大阪までの距離がよく分かる。
座席に付いたら窓の下と座席のひじ掛けに吸い殻入れが付いているのには驚いた。
発車すると、二つ前のオッサンが、さっそく喫いはじめたんだけど、煙は広がる前にダクトに吸い込まれて、すぐ横にでも座っていなければ被害は無いんだけど、列車の中で喫煙するという行為そのものが犯罪的に感じる。
でも、三島を過ぎて富士山が見え始めて「キャー、富士山!!」「うわあ!」「待ってました!」とJK五人がキャピキャピ騒ぐと、タバコのオッサンは腰を浮かせて横顔で睨んできて、そのままシートに沈んでしまった。
まあ、お互いさま。
五人ともバイトに精を出したので、高校生の旅行としては余裕。
チケットは真知子のお母さんが尽力してくださって二日分を確保できている。
万博といっても、高校生は600円だから、二日分ゲットしても新幹線の特急料金よりも安いよ。
令和の再来年、2025年万博は8000円だとか。物価の上昇を考えても8000円はクレージーだ。パビリオンの建築も遅れに遅れて、着工どころか建築契約も出来ていない国が多い。ひょっとしたら、年内には第三次世界大戦になってパリオリンピックも大阪万博も吹っ飛んでしまうという噂まである。半世紀以上経っているのに人類の進歩と調和は退化してる。
「「「「「お世話になりまーーす!」」」」」
五人揃って元気に挨拶したのは、朝ドラのオープンセットかという感じの古いお店。いや、元お店。
大阪に船場センタービルというのが出来て、船場の繊維関係のお店が大挙して移転したのが、この三月。
たいていは移転と同時に元のお店は区画整理とかで取り壊されたり売りに出されたり。
その中で、権利関係やら保存問題やらで宙ぶらりんになったお店があって、ちょうどお盆の時期で人も居なくなるので、光熱費の負担だけで泊まらせてもらえることになった。
これも真知子のお母さんのお蔭。
ロコ:「うわあ、これ三和土(たたき)って言うんじゃないですか!?」
ロコが、入ったところのコンクリートに感激する。
たみ子:「なに、タタキって?」
佳奈子:「カツオか?」
ロコ:「土に消石灰とニガリを混ぜて叩き固めた舗装なんです。コンクリートよりも吸湿性に優れていて風合いがちがうんです(^▽^)」
真知子:「玄関で泊まってちゃダメでしょ、奥に行くわよ」
功労者は、ツカツカト奥に進んで行く。
三和土の横は板の間で、先生の机みたいなのが並んでいて、お店が現役だったころは、ここが事務所だったみたい。
真知子に続いて奥に行くと長細いお台所のようになっていて、天井は吹き抜けで梁や柱がむき出しで、その間に天窓が覗いている。
ロコ:「昔はオクドサンとかがあって、薪でご飯炊いてたんでしょうねえ」
わたし:「ほんとだ、梁も柱も黒光りしてるよぉ」
佳奈子:「ここから上がるみたい」
上がり框の前に真知子の靴がある、それに倣って隣接する板敷と畳敷きに上がる。
ロコ:「昔は、ここでご飯食べたんですね。畳のところが旦那さんと家族、板敷が番頭さん手代さん、三和土のところは丁稚さんたちですね」
佳奈子:「え、身分別だったの?」
ロコ:「ですよ。っていうか、空間的には同じ場所で食べてるんで、大阪はすごいんです。宮之森もそうですけど、関東とかじゃ、主人一家は奥の別室ですからね。商売に対する姿勢が違うんです。主人や番頭は、食事の場でもみんなの健康状態やモチベーションを見て、なんというか、一体感がすごいんですよ!」
わたし:「いや、ロコのモチベーションこそすごいよ(^_^;)」
ロコ:「いいえ、せっかく大阪の町家づくりに泊まるんで、下調べしてきたんです。このお家、基本的に適塾と同じ作りのようです」
社員さん:「いやあ、お嬢ちゃんら、すごいねぇ。これだけ感心してもろたら、値打ちあるわあ。適塾は、ちょっと行ったとこにあるねんけど、今は老朽化して公開はしてへんさかい。ここで間に合うんやったら、よう見といてください」
みんな:「「「「「はい」」」」」
それから、奥の部屋やら坪庭、寝具の在りか、お風呂の沸かし方から戸締りの仕方を教えてくれて、社員さんは船場センタービルの方に帰って行った。
佳奈子:「さて、ちょっと早いけどお昼食べて、どっか行こうか?」
万博は二日目からと決めているので、初日は余裕だ。
真知子:「社員さんが、センタービルの地下にいろいろ食べ物屋さんがあるって言ってたよ」
佳奈子:「よし、じゃあ、センタービルに直行だ!」
みんな:「「「「おお!」」」」
徒歩5分ほどで船場センタービルに到着。またまた感動した。
みんな:「「「「「うわあ……」」」」」
感嘆の声を上げて、五人で見上げた。
ビルとして見ると、三階建とか四階建で、驚くほどのものじゃないんだけど、めっちゃ長い。
首を左右に振っても端っこが見えない!
ロコ:「幅42メートル、全長は1000メートルあるんです!」
みんな:「「「「「1000メートル」」」」」
ロコ:「地下鉄の駅を二つ跨いで、まだ東の方に続いていますからね」
たみ子:「ということは、これを縦にしたら、世界で一番のノッポビルになるよね!」
ロコ:「はい、エンパイアステートビルを三つ重ねて、まだ足りません!」
わたしたちの驚きは、それだけじゃなかった。
シュイーーン シュ シュ シュイーーン……
ビルの上には高速道路が走っていて、耳を澄ますと、ひっきりなしに車が走っていく音がする。
ロコ:「最初に、高速道路の計画が出来て、移転するお店や会社がいっぱい出てきたんですです。引っ越し用のビルの計画があったんですが、床面積がぜんぜん足りなくて、高層化すると上の方は人が来なくて条件悪いです。そこで、考えたんです『いっそ、高速道路の真下をビルにしたら全部入ってお釣りが出るやろ!』って」
みんな:「「「「なるほどぉ」」」」
ロコ:「それに、地下二階まであって、食べ物屋やら呑屋がいっぱいあります!」
みんな:「「「「おお!」」」」
宮之森の図書館で調べてきたという図面に目を剥いて、とりあえず現場に急行、30分近く目移りして、夜は呑屋、昼間はランチというお店で美味しくお昼を頂く。
午後は、大阪城と難波と心斎橋を堪能して、いよいよ明日の万博突撃に備えて英気を養った。
☆彡 主な登場人物
時司 巡(ときつかさ めぐり) 高校一年生
時司 応(こたえ) 巡の祖母 定年退職後の再任用も終わった魔法少女
滝川 志忠屋のマスター
ペコさん 志忠屋のバイト
猫又たち アイ(MS銀行) マイ(つくも屋) ミー(寿書房)
宮田 博子(ロコ) 1年5組 クラスメート
辻本 たみ子 1年5組 副委員長
高峰 秀夫 1年5組 委員長
吉本 佳奈子 1年5組 保健委員 バレー部
横田 真知子 1年5組 リベラル系女子
加藤 高明(10円男) 留年してる同級生
藤田 勲 1年5組の担任
先生たち 花園先生:4組担任 グラマー:妹尾 現国:杉野 若杉:生指部長 体育:伊藤 水泳:宇賀
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