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020『春たけなわの身体測定』

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巡(めぐり)・型落ち魔法少女の通学日記

020『春たけなわの身体測定』   




 女子の身体測定は午前10時30分から。


 ずいぶんゆっくりみたいだけど、10時までは男子がやっている。

 男女で時間を分けるというのは合理的だよ。

 中学までは、種目っていうのか、メニューを工夫することで男女が被らないようにしていた。被らないと言っても、学校の中に居るというのは同じなので、時どきふざけた男子が覗きとか問題を起こして叱られていた。測定が終わったら普通の授業だったしね。

 それが、女子の開始時間の10時30分になると、男子は検査場になる校舎や体育館には立ち入り禁止。まあ、たいていの男子は10時で帰ってしまう。そう、測定が終わったら、もうその日は学校お終いなのさ。

 でもね、令和の高校はフッてきたから分からないけど、同じなら令和の方がいい。だってさ、女子も昼までには終わって帰れるんだもんね。遊ぶとなると令和の方が数的にも質的にも断然多い。



 うわあ、男くさ~い(^▲^;)



 ほんの30分前まで、男子の時間だった体育館のフロアーは男のニオイでいっぱい。

 でも、口に出して「くっせー!」とか言う子はいない。「あはは、すごいですねえ」とロコが鼻にしわを寄せるくらいのものだった。

 メニューは、身長、体重、胸囲、座高、聴力、視力の六つ。聴力は渡り廊下、視力は他の項目が全部終わって、教室で担任がやってくれる。

 最初に学年全体の説明があって、その後、クラスごとに指定された検査にまとまって移動。そのあとは、空いてるところを見て周っていく。

「保健委員は?」

 最初の身長コーナー。担当の先生が記録係りの保健委員を呼ぶ。

「はい!」

 元気よく手を上げて、記録者席に向かったのは保健委員の吉本さん。

 お喋りじゃないけど、喋る時はハキハキしていて、ヘアバンドで堂々とオデコ出してることと合わせて好印象。

「じゃ、吉田さん最初ね」

 保健委員は最初に済ませて記録に専念するみたい。

「155!」

 先生が叫んで、吉本さんは自分で記録。そして、あとは出席番号順に進んでいく。

 あ、ちなみに服装はジャージ。ロコの話だと、去年までは女子もパンツ一丁にされたとか。

 保健室の先生が主張して、女子はジャージでよくなった。ジャージは上下で400グラムあるんだそうで、その分をあらかじめ引いてあるのかどうかは分からない。



 あ……



 体重計は、なんちゅうか、まるっきりハカリ。

 目の高さに時計みたいなのが付いてて、乗っかるとガチャンと音がして針が遠慮なく体重の目盛りを差す!

 で、目盛りが両面にある! 体重丸出しアナログ丸出しのハカリ!

「50・1!」

 そんな大声で言わなくても……で、人生で初めて50キロを超えてしまった(-_-;)。



 座高なんて保育所以来計ったことない。「昔は計ってたよ」とお祖母ちゃんの言う通り。

「座高のトップは称号があるんだよ」

 移動しながら吉本さん。「え、なになに?」と周囲の人たちが聞く。

「ざこういち!」

 アハハハ( ´艸`)

――ちょっと、そこ!――

 おこられてしまった(^_^;) けど、楽しくなってきた。



 胸囲を済ませて、渡り廊下の聴力。担当はグラマーの妹尾先生。

 グラマーと言っても男の先生。

 昭和の英語はリーダーとグラマーに分かれてる。リーダーはうちの担任で、英文を読んでは訳していく。

 グラマーは、SVとかSVOとか五文型とかややこしい文法をやる。どっちも好きじゃない。

 ヘッドホンの片耳だけみたいなのを耳に当てて、ピーって音が聞こえたところで手を挙げる。

 両耳が終わると、先生は小さく……たぶん「異常なし」って言ってる。体重の先生もこれくらいのデリカシーがあればと思ったよ。

 渡り廊下は両側がガラス張りで、とても明るい。

 古い校舎だけど、設計した人は採光をよく考えていると思う。昭和28年にできたらしい、まだ戦後って言っていい時期で、日本中貧乏だったんだけど、いい仕事している。

 聴力検査だから、みんな静かにしている。静かにしていると眠くなる。

 窓の下は中庭になっていてロダンの『考える人』のブロンズがある。考える人は考えるふりをして寝てるんじゃないかと思うくらい春たけなわの上天気。顔を上げて流れる雲を見ていたら「次!」と怒られた(^_^;)。

 

 教室に戻って、まずは制服に着替える。

 よくできた制服だけど、ベストとスカートを連結させるのが、ちょっとだけ面倒。

 着替え終わってジャージを袋に詰める。自分のジャージだけど生暖かいのが、ちょっと気持ち悪い。

 みんな着替え終わって視力検査。

 黒板横の窓側掲示板に視力検査表が貼ってあって、5メートル離れたとところから片目ずつ。

「手で押さえつけるとボケるからな、出来るだけ、目隠しを使えよ」

 目隠ししゃもじを奨励して検査開始。

「両眼とも2・0」

 先生が宣言すると、みんなから小さく歓声が起こる。

 視力だけは、いつもクラスで一番。でも、良すぎるのは老眼になるのも早いって言うからね。

「羨ましいです……」

 そう呟いたロコは、両眼0・4。

 眼鏡をしないのはこだわりなんだ。コンタクトレンズは、この時代ではまだ無いのかもしれない。



 あんまりいいお天気なので、廊下に出てスマホで検索。



「この時期、宮之森で景色の良いところ教えて」

 と、小声で音声入力。

『宮之森城址の八重桜が見頃です!』

 スマホも音声で返してきた。うっかり音声オフにするのを忘れてた!

「誰かと喋ってました?」

 ロコが出てきて、怪訝な顔。

「あ、ああ、独り言! あ、ねえ、城跡の八重桜観に行かない!?」

「あ、いいですねえ!」

 
 で、けっきょく女子五人でお花見に行くことになってしまった……。

 

☆彡 主な登場人物

時司 巡(ときつかさ めぐり)   高校一年生
時司 応(こたえ)         巡の祖母 定年退職後の再任用も終わった魔法少女
滝川                志忠屋のマスター
ペコさん              志忠屋のバイト
宮田 博子             1年5組 クラスメート
辻本 たみ子            1年5組 副委員長
高峰 秀夫             1年5組 委員長
吉本 佳奈子            1年5組 保健委員
横田 真知子            1年5組 リベラル系女子
加藤 高明             留年してる同級生
藤田 勲              1年5組の担任
先生たち              花園先生:4組担任 妹尾先生:グラマー
須之内写真館            証明写真を撮ってもらった、優しいおねえさんのいる写真館
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