せやさかい

武者走走九郎or大橋むつお

文字の大きさ
上 下
427 / 432

427『みんながんばってる!』

しおりを挟む
せやさかい

427『みんながんばってる!』さくら   




 宇宙戦艦三笠には四人(四匹?)の猫が出てくる。


 もともとは横須賀のドブ板通りに住んでた街ねこ。

 それがネコミミメイドになって三笠に乗り組んで、乗組員の世話をしてくれるという設定。

 他のメインキャラはプロの声優さん(うちは、ちょっと中途半端)やねんけど、ネコメイド四人は現役の中学生。

 養成所を出てないということでは、うちと一緒やねんけど、四人とも児童劇団所属。うちよりも、よっぽどプロ。

「あ、わたくしは養成所も児童劇団にも所属しておりませんの(^_^;)」

 手をワイパーみたいにして否定するのはミケメ役の高瀬川薫子さん。

「え、せやったん?」

「はい、宗武監督がうちのお店の御常連さんでして、お声をかけていただきましたの」

「え、お店?」

「はい、飲食店を営んでおりまして、監督はお祖父様の代からご贔屓にしてくださっています」

 この子は、めちゃ言葉遣いがていねい。

「ええ、せやけど、高瀬川さんめっちゃうまいやんか」

「アハハ、小さいころからアニメ観て、そんな気になっていただけですぅ」

「え、そんな気てぇ?」

「え、あ、その……(#^_^#)」

「カオルンはね、画面見ていっしょに台詞喋るんですよぉ(^▽^)」

「すごく上手いんです!」

 シロメの浅田さんとクロメの前田さんが加わった。

「あ、いやだあ、二人ともぉ(#^o^#)」

「作品の中に入ったみたいに、すごいんですよ」

「ああ、もうやめてぇ、そんなお話じゃないんですからぁ(#'∀'#)」

「そうそう、カオルン、どうぞぉ」

「あ、はい。実は、わたしたちテレビのお仕事頂戴しまして。榊原留美さんとご一緒させていただくことになったんです」

「え、留美ちゃん、テレビに出るのん!?」

「はい、お正月の単発ドラマなんです。大正時代のお話で、榊原さんは華族のお嬢様で、わたしたちはお屋敷のメイドなんです」

「え、そうなんや!」

「お噂で、酒井さんは……その、ご一緒にお暮らしとお伺いしましたので、榊原さんの人となりをお伺いできればと思いまして、お願いする次第なのです」

「そ、そうなんや」

「あ、今でなくて結構なんです。お仕事が明けた時に、わたくしのお店ででも」

「はい、さくら先輩ぃ、どうでしょうか?」

 高瀬川さんの後ろでお願いポーズする浅田さんも、めっちゃ可愛い。

「ちょっと、あんたたち」

 後ろからチャメの竹内さんが声をかけて、二人は、ちょっとアセアセになって「「すみませんでした(;'∀')!」」と、休憩室の向こうに行ってしまう。

 竹内さんが、深々と頭を下げて、他の三人も、もう一回頭を下げる。

「おもしろいねぇ」

 真鈴先輩がミネラルウォーターの蓋をあけながら横に座ってきた。

「吐夢(かなむ)は甘えん坊の役が多いのに、リアルじゃ委員長タイプなんだ」

「そうですねえ、タイプはちゃうけど、みんなしっかりしてますねえ」

「さくら、留美ちゃんのことは聞いてなかったの?」

「あ、うん。家では、そういう話ぜんぜんしませんからね」

「さくらは、喋るタイプだろ?」

「え、あ、いや、そうなんですけどねえ」

 応えながら思た。

 夏休みに入って、わたしも留美ちゃんも外に出てることが多い。

 うちは、むろん『宇宙戦艦三笠』の収録やねんけど、留美ちゃんは……言わへん子ぉやさかい、気ぃつかへんかったけど、なんや世界が広がってる様子。

 よし、人形焼きと東京バナナ買うて帰って、久々にゆっくり話しょうか。



 帰りの新幹線でスマホを開くと、詩ちゃんからのお便り。



――お母さんが、またこっちに狂って。もういいのにね。留美ちゃんのこと女王陛下もご存知だったよ、二人ともがんばってるんだね。あ、そうそう、ソフィーが中尉に昇進したよ。仕事も増えるみたいだけど、生き生きしてます。わたしもがんばるね、ボチボチだけど(笑)――

『狂って』は変換ミスやねんやろけど、あえて、そのままにしてる感じ。

 閉じようと思たら、頼子さんからメール。

――今度ね、お祖母ちゃんの一存で『王立民俗学学校』ってのができたんだけどね。その開校式に出ろって言われて出て見たら、学校の総裁ってのに任命された! ぜんぜん聞いてないし、いきなり総裁ってひどくない!? この夏は、留美ちゃんもさくらも、こっちには来れないんだよね。六日は、お祖母ちゃんの発案で広島の原爆忌に合わせて黙とうした。女王の黙とうだから国が黙とうしたのと同じ。うちは小さな国だけど小さいナリにやること出来ることはあるんだと感心した。写真は中尉に昇進したソフィーとツーショット。じゃ、またね――

 髪をアップにして正装のドレスに勲章付けまくりの頼子さんは、めっちゃ貫録! 王女どころか女王さまでも通りそう。ビシッと儀式用の軍服に身を固めたソフィーは攻▢機動隊の少佐みたいにかっこええ!

 ため息ついて窓の外見ると富士さん。

 雪の積もってない富士山はスッピン。

 スッピンでも富士山はかっこええ!




☆・・主な登場人物・・☆

酒井 さくら      この物語の主人公  聖真理愛女学院高校二年生
酒井 歌        さくらの母 亭主の失踪宣告をして旧姓の酒井に戻って娘と共に実家に戻ってきた。現在行方不明。
酒井 諦観       さくらの祖父 如来寺の隠居
酒井 諦念       さくらの伯父 諦一と詩の父
酒井 諦一       さくらの従兄 如来寺の新米坊主 テイ兄ちゃんと呼ばれる
酒井 詩(ことは)   さくらの従姉 聖真理愛学院大学三年生 ヤマセンブルグに留学中 妖精のバンシー、リャナンシーが友だち 愛称コットン
酒井 美保       さくらの義理の伯母 諦一 詩の母 
榊原 留美       さくらと同居 中一からの同級生 
夕陽丘頼子       さくらと留美の先輩 ヤマセンブルグの王女 愛称リッチ
ソフィー        ソフィア・ヒギンズ 頼子のガード 英国王室のメイド 陸軍中尉
ソニー         ソニア・ヒギンズ ソフィーの妹 英国王室のメイド 陸軍伍長
月島さやか       中二~高一までさくらの担任の先生
古閑 巡里(めぐり)  さくらと留美のクラスメート メグリン
百武真鈴(田中真央)  高校生声優の生徒会長
女王陛下        頼子のお祖母ちゃん ヤマセンブルグの国家元首
江戸川アニメの関係者  宗武真(監督) 江原(作監) 武者走(脚本) 宮田(制作進行) 
声優の人たち      花園あやめ 吉永百合子 小早川凜太郎  
さくらの周辺の人たち  ハンゼイのマスター(昴・あきら) 瑞穂(マスターの奥さん) 小鳥遊先生(2年3組の担任) 田中米子(米屋のお婆ちゃん) 瀬川(女性警官)
  

 

 
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

悪役令息の伴侶(予定)に転生しました

  *  
BL
攻略対象しか見えてない悪役令息の伴侶(予定)なんか、こっちからお断りだ! って思ったのに……! 前世の記憶がよみがえり、自らを反省しました。BLゲームの世界で推しに逢うために頑張りはじめた、名前も顔も身長もないモブの快進撃が始まる──! といいな!(笑)

君への気持ちが冷めたと夫から言われたので家出をしたら、知らぬ間に懸賞金が掛けられていました

結城芙由奈@コミカライズ発売中
恋愛
【え? これってまさか私のこと?】 ソフィア・ヴァイロンは貧しい子爵家の令嬢だった。町の小さな雑貨店で働き、常連の男性客に密かに恋心を抱いていたある日のこと。父親から借金返済の為に結婚話を持ち掛けられる。断ることが出来ず、諦めて見合いをしようとした矢先、別の相手から結婚を申し込まれた。その相手こそ彼女が密かに思いを寄せていた青年だった。そこでソフィアは喜んで受け入れたのだが、望んでいたような結婚生活では無かった。そんなある日、「君への気持ちが冷めたと」と夫から告げられる。ショックを受けたソフィアは家出をして行方をくらませたのだが、夫から懸賞金を掛けられていたことを知る―― ※他サイトでも投稿中

人生負け組のスローライフ

雪那 由多
青春
バアちゃんが体調を悪くした! 俺は長男だからバアちゃんの面倒みなくては!! ある日オヤジの叫びと共に突如引越しが決まって隣の家まで車で十分以上、ライフラインはあれどメインは湧水、ぼっとん便所に鍵のない家。 じゃあバアちゃんを頼むなと言って一人単身赴任で東京に帰るオヤジと新しいパート見つけたから実家から通うけど高校受験をすててまで来た俺に高校生なら一人でも大丈夫よね?と言って育児拒否をするオフクロ。  ほぼ病院生活となったバアちゃんが他界してから築百年以上の古民家で一人引きこもる俺の日常。 ―――――――――――――――――――――― 第12回ドリーム小説大賞 読者賞を頂きました! 皆様の応援ありがとうございます! ――――――――――――――――――――――

契りの桜~君が目覚めた約束の春

臣桜
ライト文芸
「泥に咲く花」を書き直した、「輪廻の果てに咲く桜」など一連のお話がとても思い入れのあるものなので、さらに書き直したものです(笑)。 現代を生きる吸血鬼・時人と、彼と恋に落ち普通の人ならざる運命に落ちていった人間の女性・葵の恋愛物語です。今回は葵が死なないパターンのお話です。けれど二人の間には山あり谷あり……。一筋縄ではいかない運命ですが、必ずハッピーエンドになるのでご興味がありましたら最後までお付き合い頂けたらと思います。 ※小説家になろう様でも連載しております

百物語 厄災

嵐山ノキ
ホラー
怪談の百物語です。一話一話は長くありませんのでお好きなときにお読みください。渾身の仕掛けも盛り込んでおり、最後まで読むと驚くべき何かが提示されます。 小説家になろう、エブリスタにも投稿しています。

大正ロマン恋物語 ~将校様とサトリな私のお試し婚~

菱沼あゆ
キャラ文芸
華族の三条家の跡取り息子、三条行正と見合い結婚することになった咲子。 だが、軍人の行正は、整いすぎた美形な上に、あまりしゃべらない。 蝋人形みたいだ……と見合いの席で怯える咲子だったが。 実は、咲子には、人の心を読めるチカラがあって――。

光のもとで1

葉野りるは
青春
一年間の療養期間を経て、新たに高校へ通いだした翠葉。 小さいころから学校を休みがちだった翠葉は人と話すことが苦手。 自分の身体にコンプレックスを抱え、人に迷惑をかけることを恐れ、人の中に踏み込んでいくことができない。 そんな翠葉が、一歩一歩ゆっくりと歩きだす。 初めて心から信頼できる友達に出逢い、初めての恋をする―― (全15章の長編小説(挿絵あり)。恋愛風味は第三章から出てきます) 10万文字を1冊として、文庫本40冊ほどの長さです。

だんだんおかしくなった姉の話

暗黒神ゼブラ
ホラー
弟が死んだことでおかしくなった姉の話

処理中です...