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409『寝返りうって……』
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せやさかい
409『寝返りうって……』詩(ことは)
寝返りを打っても下半身がついてこない。
ゆるく絞った雑巾のようにグニャリ。
上半身は右を下にしているのに腰は斜め上を向き、脚はねじれて交差してしまう。
神経がやられて感覚は無いんだけど、内臓がよじれるような感じがお腹から上に伝わってきて気持ちが悪い。
フレデリック先生も「面倒でも手を使って動かした方がいい」とおっしゃる。褥瘡(じょくそう)と言って、ベッドに接したままのところの血流が悪くなって良くないそうだ。
よっこらしょ……
体を曲げ、やっと膝のところまで手を伸ばして交差した脚を戻す。
普段は意識もしないでやってる寝返り、こんなに大変だとは思わなかった。
「あ、ごめん、気づかなかった」
お母さんがとんできて介助してくれる。
「大丈夫、そろそろ自分でもできるようにしなくっちゃ」
「そうね」
そうねと言いながら介助はやめない。
「きょうは大使館にいくんでしょ?」
「うん、でも午後には帰って来るから」
長期滞在になりそうなので、ビザを申請するために日本大使館で相談するんだ。ビザを出すのはヤマセンブルグなんだけど、大使館が間に入ってくれる。というか、イッチョカミしておきたい外務省だとかの思惑らしい。
「あ……」
「どうかした?」
「もう一回触ってくれる?」
「え……こんな感じ?」
「やっぱり……」
「やっぱり?」
「微かにだけど、お母さんの手の感触……あるかも」
「ほんと!?」
「ちょっと爪を立ててくれる?」
「あ、うん……」
「……錯覚かもしれないけど、感じるような気がする」
「ちょっと、先生呼んでくる!」
先生がやってきて、触診をしてくださる。
「奇跡だ! 感覚が戻って来るかもしれない。ちょっと様子を見て、大学病院で精密検査をやろう、ちょっと連絡してくるよ」
スマホを出しかけ、院内では使えないことを思い出して部屋を出て行った。
『ドクター……』『あ、すまん……』
廊下で走りかけた先生が看護婦さんに叱られてる。
ガチャリ
その看護婦さんが入ってきた……と思ったら、ヨリコさんとソフィー。
「え、二人とも、なんかくたびれてないですか?」
「あ、うん、ちょっと、ソフィーといっしょに運動してたから(^_^;)」
「先生、走ってたけど、なんかあった?」
「それが、頼子さん……」
「「え!?」」
お母さんがバラシて、二人は息を呑んで向き合った。
ドタドタドタ 『殿下!』『あ、ごめ……』
廊下に飛び出して、また看護婦さんに叱れれてる。
お母さんに起こしてもらって外を見ると、テラスに出た三人が、それぞれスマホを構えて電話の最中。
ひょっとしたら希望を持っていいかも……いやいや、もっと様子を見なきゃ。
でも、今日は、ちょっと早めに車いすで日に当ろうと思った。
☆・・主な登場人物・・☆
酒井 さくら この物語の主人公 聖真理愛女学院高校二年生
酒井 歌 さくらの母 亭主の失踪宣告をして旧姓の酒井に戻って娘と共に実家に戻ってきた。現在行方不明。
酒井 諦観 さくらの祖父 如来寺の隠居
酒井 諦念 さくらの伯父 諦一と詩の父
酒井 諦一 さくらの従兄 如来寺の新米坊主 テイ兄ちゃんと呼ばれる
酒井 詩(ことは) さくらの従姉 聖真理愛学院大学三年生 ヤマセンブルグに留学中
酒井 美保 さくらの義理の伯母 諦一 詩の母
榊原 留美 さくらと同居 中一からの同級生
夕陽丘頼子 さくらと留美の先輩 ヤマセンブルグの王女
ソフィー ソフィア・ヒギンズ 頼子のガード 英国王室のメイド 陸軍少尉
ソニー ソニア・ヒギンズ ソフィーの妹 英国王室のメイド 陸軍伍長
月島さやか 中二~高一までさくらの担任の先生
古閑 巡里(めぐり) さくらと留美のクラスメート メグリン
百武真鈴(田中真央) 高校生声優の生徒会長
女王陛下 頼子のお祖母ちゃん ヤマセンブルグの国家元首
江戸川アニメの関係者 宗武真(監督) 江原(作監) 武者走(脚本) 宮田(制作進行) 花園あやめ(声優)
さくらをとりまく人たち ハンゼイのマスター(昴・あきら) 瑞穂(マスターの奥さん) 小鳥遊先生(2年3組の担任) 田中米子(米屋のお婆ちゃん)
409『寝返りうって……』詩(ことは)
寝返りを打っても下半身がついてこない。
ゆるく絞った雑巾のようにグニャリ。
上半身は右を下にしているのに腰は斜め上を向き、脚はねじれて交差してしまう。
神経がやられて感覚は無いんだけど、内臓がよじれるような感じがお腹から上に伝わってきて気持ちが悪い。
フレデリック先生も「面倒でも手を使って動かした方がいい」とおっしゃる。褥瘡(じょくそう)と言って、ベッドに接したままのところの血流が悪くなって良くないそうだ。
よっこらしょ……
体を曲げ、やっと膝のところまで手を伸ばして交差した脚を戻す。
普段は意識もしないでやってる寝返り、こんなに大変だとは思わなかった。
「あ、ごめん、気づかなかった」
お母さんがとんできて介助してくれる。
「大丈夫、そろそろ自分でもできるようにしなくっちゃ」
「そうね」
そうねと言いながら介助はやめない。
「きょうは大使館にいくんでしょ?」
「うん、でも午後には帰って来るから」
長期滞在になりそうなので、ビザを申請するために日本大使館で相談するんだ。ビザを出すのはヤマセンブルグなんだけど、大使館が間に入ってくれる。というか、イッチョカミしておきたい外務省だとかの思惑らしい。
「あ……」
「どうかした?」
「もう一回触ってくれる?」
「え……こんな感じ?」
「やっぱり……」
「やっぱり?」
「微かにだけど、お母さんの手の感触……あるかも」
「ほんと!?」
「ちょっと爪を立ててくれる?」
「あ、うん……」
「……錯覚かもしれないけど、感じるような気がする」
「ちょっと、先生呼んでくる!」
先生がやってきて、触診をしてくださる。
「奇跡だ! 感覚が戻って来るかもしれない。ちょっと様子を見て、大学病院で精密検査をやろう、ちょっと連絡してくるよ」
スマホを出しかけ、院内では使えないことを思い出して部屋を出て行った。
『ドクター……』『あ、すまん……』
廊下で走りかけた先生が看護婦さんに叱られてる。
ガチャリ
その看護婦さんが入ってきた……と思ったら、ヨリコさんとソフィー。
「え、二人とも、なんかくたびれてないですか?」
「あ、うん、ちょっと、ソフィーといっしょに運動してたから(^_^;)」
「先生、走ってたけど、なんかあった?」
「それが、頼子さん……」
「「え!?」」
お母さんがバラシて、二人は息を呑んで向き合った。
ドタドタドタ 『殿下!』『あ、ごめ……』
廊下に飛び出して、また看護婦さんに叱れれてる。
お母さんに起こしてもらって外を見ると、テラスに出た三人が、それぞれスマホを構えて電話の最中。
ひょっとしたら希望を持っていいかも……いやいや、もっと様子を見なきゃ。
でも、今日は、ちょっと早めに車いすで日に当ろうと思った。
☆・・主な登場人物・・☆
酒井 さくら この物語の主人公 聖真理愛女学院高校二年生
酒井 歌 さくらの母 亭主の失踪宣告をして旧姓の酒井に戻って娘と共に実家に戻ってきた。現在行方不明。
酒井 諦観 さくらの祖父 如来寺の隠居
酒井 諦念 さくらの伯父 諦一と詩の父
酒井 諦一 さくらの従兄 如来寺の新米坊主 テイ兄ちゃんと呼ばれる
酒井 詩(ことは) さくらの従姉 聖真理愛学院大学三年生 ヤマセンブルグに留学中
酒井 美保 さくらの義理の伯母 諦一 詩の母
榊原 留美 さくらと同居 中一からの同級生
夕陽丘頼子 さくらと留美の先輩 ヤマセンブルグの王女
ソフィー ソフィア・ヒギンズ 頼子のガード 英国王室のメイド 陸軍少尉
ソニー ソニア・ヒギンズ ソフィーの妹 英国王室のメイド 陸軍伍長
月島さやか 中二~高一までさくらの担任の先生
古閑 巡里(めぐり) さくらと留美のクラスメート メグリン
百武真鈴(田中真央) 高校生声優の生徒会長
女王陛下 頼子のお祖母ちゃん ヤマセンブルグの国家元首
江戸川アニメの関係者 宗武真(監督) 江原(作監) 武者走(脚本) 宮田(制作進行) 花園あやめ(声優)
さくらをとりまく人たち ハンゼイのマスター(昴・あきら) 瑞穂(マスターの奥さん) 小鳥遊先生(2年3組の担任) 田中米子(米屋のお婆ちゃん)
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