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399『灌仏会の前日は始業式』
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せやさかい
399『灌仏会の前日は始業式』さくら
昨日は一日中雨やった。
散り始めてた桜は、この雨で一気に花を落として山門の桜は完全に終了。
まあ、雨のお蔭で境内の掃除はやらんで済んだんやけどね。
その雨の中、昨日の七日は始業式やった。
一年の始まりが雨というのは、ちょっと凹む。
制服はクリーニングしたてやのに、堺東まで自転車で行ったらスカートびちゃびちゃに濡れるし。
「よし、わしが連れてったろ」
お祖父ちゃんが車で送ってくれる。帰りはテイ兄ちゃんが迎えに来てくれることになる。
「お祖父ちゃん、ありがとう……ウワ!」
ブゥィーーーーン ベシャ!
車降りたとたんに、原チャがすり抜けて盛大に水しぶき。ドアがガードしてくれて制服は無事やけど、足と頭にけっこうな水しぶき。
まあ、ええねんけど……これは学校に着いてからのさらなる不幸の序曲に過ぎひんかった(-_-;)。
ええ( ゚Д゚)!?
昇降口に貼ってあるクラス表見て目ぇ剥いた!
お仲間が、ほぼ完全にバラバラ。
留美ちゃん・1組 メグリン・2組 さくら&ソニー・3組
「まあ、こういうこともあるよ」
留美ちゃんは冷静に受け止めてる。
「せやかてぇ」
「今までが幸運過ぎたのよ。中学一年からずっと同じクラスなんて、ふつうあり得ないよ。もう高校二年なんだし……」
そこまで言うた留美ちゃんが息を呑んだ。
「え、月島先生いない……」
「あ!?」
8クラスある新二年生の、どのクラスを見てもペコちゃん(月島先生)の名前が無い!
中二の時からの担任で、うちらが真理愛学院に進学すると同時にペコちゃんも真理愛学院に転職してた。
なんと、中二からずっと同じなんで、これは高校出るまでずっとうちらの担任やと思てた!
いつまでもあると思うな親と担任……格言のモジリがシュールに浮かんでくる。
「まさか、学校辞めちゃったんじゃ( ゚Д゚)!」
「え、どないしょ!?」
なんや、地面が無くなってしもたみたいな不安にかられて、思わずラム&レムみたいに手を取り合う。
あんまり気のきかん先生やったけど、うちらには頼子さんと並んで、うちらのオネエチャンいう感じの存在やった。
担任イコールペコちゃん! ペコちゃんイコール担任! そんな存在やった!
「ちょっとぉ……手伝ってくれるぅ(;゚Д゚)」
後ろで声。
「「え?」」
振り返ると、そのペコちゃんがケーブルとかはみ出た段ボールの箱抱えてフーフー言うてるやおまへんか!
「ちょ、せんせ!?」
「担任降りても仕事はあるのよ。まだ時間あるでしょ、体育館までだから運ぶの手伝ってぇ」
「「は、はい!」」
「今年度は視聴覚係りでさぁ、体育館は講堂と違って、放送設備はその都度だからねえ……ヨイショ」
「ウンコラショ、なんで担任辞めたん?」
「中学から、もう三年連続。それに、うちの神社のこともね……」
荷物が重いせいか、ちょっと仕事にも生活にも疲れた「OLのお局様」みたい。
「だれがお局様よ」
「え、なんで!?」
「さくら、口に出てた(^_^;)」
「まあ、バラバラになっても同じフロアだし、担任はみんないい先生だし、がんばんなさい」
「3組のコトリアソビいうのは、どんな先生なんですか?」
「コトリアソビ?」
プ(;゚;ж;゚; )
なんでか、留美ちゃんが吹く。
「小鳥遊(タカナシ)って読むんだよ」
「ええ、ほんまぁ!?」
「再任用だけど、いい先生よ。お歳召してるから、ご迷惑かけるんじゃないわよ」
「そら、もちろん。伊達に十七歳……あ……(n*´ω`*n)」
「ん?」
「そうだ、さくらは明日が誕生日なんですよ。花の17歳」
「そうか……早いものねえ(-_-;)……」
「なんか、死んだ子の歳を数えるみたいにシミジミせんとってくれます」
「ああ、ごめん。あ、ここでいいよ。じゃ、今年もがんばってね」
「「はい」」
「あ、それから、散策部の顧問は辞めてないからね」
「それも辞めてたら殺します!」
「おお、こわ~い(^0^;)」
それから、教室に行って、いつもの学年始め。
「小鳥遊先生は、さくらの祖父君と同じ歳であられるようだぞ」
席が隣になったソニーが、こっそりと教えてくれる。
「え、こ、古希!!?」
「酒井くん」
「すみません」
「謹んで指導第一号の称号をあげよう」
先生は真面目な顔のまま閻魔帳に書いた。みんながクスクス笑う。
今年も人に笑われるとこから始まってしもた。
☆・・主な登場人物・・☆
酒井 さくら この物語の主人公 聖真理愛女学院高校一年生
酒井 歌 さくらの母 亭主の失踪宣告をして旧姓の酒井に戻って娘と共に実家に戻ってきた。現在行方不明。
酒井 諦観 さくらの祖父 如来寺の隠居
酒井 諦念 さくらの伯父 諦一と詩の父
酒井 諦一 さくらの従兄 如来寺の新米坊主 テイ兄ちゃんと呼ばれる
酒井 詩(ことは) さくらの従姉 聖真理愛学院大学二年生
酒井 美保 さくらの義理の伯母 諦一 詩の母
榊原 留美 さくらと同居 中一からの同級生
夕陽丘頼子 さくらと留美の先輩 ヤマセンブルグの王女 聖真理愛女学院高校三年生
ソフィー ソフィア・ヒギンズ 頼子のガード 英国王室のメイド 陸軍少尉
ソニー ソニア・ヒギンズ ソフィーの妹 英国王室のメイド 陸軍伍長
月島さやか 中二~高一までさくらの担任の先生
古閑 巡里(めぐり) さくらと留美のクラスメート メグリン
百武真鈴(田中真央) 高校生声優の生徒会長
女王陛下 頼子のお祖母ちゃん ヤマセンブルグの国家元首
江戸川アニメの関係者 宗武真(監督) 江原(作監) 武者走(脚本) 宮田(制作進行) 花園あやめ(声優)
さくらをとりまく人たち ハンゼイのマスター(昴・あきら) 瑞穂(マスターの奥さん) 小鳥遊先生(2年3組の担任)
399『灌仏会の前日は始業式』さくら
昨日は一日中雨やった。
散り始めてた桜は、この雨で一気に花を落として山門の桜は完全に終了。
まあ、雨のお蔭で境内の掃除はやらんで済んだんやけどね。
その雨の中、昨日の七日は始業式やった。
一年の始まりが雨というのは、ちょっと凹む。
制服はクリーニングしたてやのに、堺東まで自転車で行ったらスカートびちゃびちゃに濡れるし。
「よし、わしが連れてったろ」
お祖父ちゃんが車で送ってくれる。帰りはテイ兄ちゃんが迎えに来てくれることになる。
「お祖父ちゃん、ありがとう……ウワ!」
ブゥィーーーーン ベシャ!
車降りたとたんに、原チャがすり抜けて盛大に水しぶき。ドアがガードしてくれて制服は無事やけど、足と頭にけっこうな水しぶき。
まあ、ええねんけど……これは学校に着いてからのさらなる不幸の序曲に過ぎひんかった(-_-;)。
ええ( ゚Д゚)!?
昇降口に貼ってあるクラス表見て目ぇ剥いた!
お仲間が、ほぼ完全にバラバラ。
留美ちゃん・1組 メグリン・2組 さくら&ソニー・3組
「まあ、こういうこともあるよ」
留美ちゃんは冷静に受け止めてる。
「せやかてぇ」
「今までが幸運過ぎたのよ。中学一年からずっと同じクラスなんて、ふつうあり得ないよ。もう高校二年なんだし……」
そこまで言うた留美ちゃんが息を呑んだ。
「え、月島先生いない……」
「あ!?」
8クラスある新二年生の、どのクラスを見てもペコちゃん(月島先生)の名前が無い!
中二の時からの担任で、うちらが真理愛学院に進学すると同時にペコちゃんも真理愛学院に転職してた。
なんと、中二からずっと同じなんで、これは高校出るまでずっとうちらの担任やと思てた!
いつまでもあると思うな親と担任……格言のモジリがシュールに浮かんでくる。
「まさか、学校辞めちゃったんじゃ( ゚Д゚)!」
「え、どないしょ!?」
なんや、地面が無くなってしもたみたいな不安にかられて、思わずラム&レムみたいに手を取り合う。
あんまり気のきかん先生やったけど、うちらには頼子さんと並んで、うちらのオネエチャンいう感じの存在やった。
担任イコールペコちゃん! ペコちゃんイコール担任! そんな存在やった!
「ちょっとぉ……手伝ってくれるぅ(;゚Д゚)」
後ろで声。
「「え?」」
振り返ると、そのペコちゃんがケーブルとかはみ出た段ボールの箱抱えてフーフー言うてるやおまへんか!
「ちょ、せんせ!?」
「担任降りても仕事はあるのよ。まだ時間あるでしょ、体育館までだから運ぶの手伝ってぇ」
「「は、はい!」」
「今年度は視聴覚係りでさぁ、体育館は講堂と違って、放送設備はその都度だからねえ……ヨイショ」
「ウンコラショ、なんで担任辞めたん?」
「中学から、もう三年連続。それに、うちの神社のこともね……」
荷物が重いせいか、ちょっと仕事にも生活にも疲れた「OLのお局様」みたい。
「だれがお局様よ」
「え、なんで!?」
「さくら、口に出てた(^_^;)」
「まあ、バラバラになっても同じフロアだし、担任はみんないい先生だし、がんばんなさい」
「3組のコトリアソビいうのは、どんな先生なんですか?」
「コトリアソビ?」
プ(;゚;ж;゚; )
なんでか、留美ちゃんが吹く。
「小鳥遊(タカナシ)って読むんだよ」
「ええ、ほんまぁ!?」
「再任用だけど、いい先生よ。お歳召してるから、ご迷惑かけるんじゃないわよ」
「そら、もちろん。伊達に十七歳……あ……(n*´ω`*n)」
「ん?」
「そうだ、さくらは明日が誕生日なんですよ。花の17歳」
「そうか……早いものねえ(-_-;)……」
「なんか、死んだ子の歳を数えるみたいにシミジミせんとってくれます」
「ああ、ごめん。あ、ここでいいよ。じゃ、今年もがんばってね」
「「はい」」
「あ、それから、散策部の顧問は辞めてないからね」
「それも辞めてたら殺します!」
「おお、こわ~い(^0^;)」
それから、教室に行って、いつもの学年始め。
「小鳥遊先生は、さくらの祖父君と同じ歳であられるようだぞ」
席が隣になったソニーが、こっそりと教えてくれる。
「え、こ、古希!!?」
「酒井くん」
「すみません」
「謹んで指導第一号の称号をあげよう」
先生は真面目な顔のまま閻魔帳に書いた。みんながクスクス笑う。
今年も人に笑われるとこから始まってしもた。
☆・・主な登場人物・・☆
酒井 さくら この物語の主人公 聖真理愛女学院高校一年生
酒井 歌 さくらの母 亭主の失踪宣告をして旧姓の酒井に戻って娘と共に実家に戻ってきた。現在行方不明。
酒井 諦観 さくらの祖父 如来寺の隠居
酒井 諦念 さくらの伯父 諦一と詩の父
酒井 諦一 さくらの従兄 如来寺の新米坊主 テイ兄ちゃんと呼ばれる
酒井 詩(ことは) さくらの従姉 聖真理愛学院大学二年生
酒井 美保 さくらの義理の伯母 諦一 詩の母
榊原 留美 さくらと同居 中一からの同級生
夕陽丘頼子 さくらと留美の先輩 ヤマセンブルグの王女 聖真理愛女学院高校三年生
ソフィー ソフィア・ヒギンズ 頼子のガード 英国王室のメイド 陸軍少尉
ソニー ソニア・ヒギンズ ソフィーの妹 英国王室のメイド 陸軍伍長
月島さやか 中二~高一までさくらの担任の先生
古閑 巡里(めぐり) さくらと留美のクラスメート メグリン
百武真鈴(田中真央) 高校生声優の生徒会長
女王陛下 頼子のお祖母ちゃん ヤマセンブルグの国家元首
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