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389『三方さんの引き継ぎ』
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せやさかい
389『三方さんの引き継ぎ』さくら
夜中に目が覚めた。
なんやら、ヒソヒソと話声がする。
ひょっとすると夢?
以前も、夜中に話し声がして、それが夢やったことがある。
十七年も生きてると、五千回ぐらいは夢見てる。
せやさかい、夢やという予想はついた。横を向くと、留美ちゃんが幸せそうに寝息を立ててる。
親友の幸せは、うちの幸せ。
このまま寝てもええねんけど、夢の中のヒソヒソ話というのは、めっちゃ気になる。
ニャゴニャゴ……
耳を澄ますと、話声のひとつはダミアの声。
もっかい薄目を開けると、ちょっとだけ部屋の襖が開いてて、その隙間に向かってブタネコとは思えん甘えた声でニャゴニャゴいうとおる。
誰と喋ってんねん?
お布団は目の下まで被って、心眼を凝らす……見えてきた。
襖を素通しにして見えてきたのは、なんとマリーアントワネット!
「……それじゃあね」
最後の一言だけが聞こえて、マリーアントワネットは口の前に人差し指を立てると、こっちに向かってニッコリ微笑んで消えていってしもた。
ダミアは、うちの顔見て「ニャ」と一言だけいうと、そのまま留美ちゃんのベッドに潜り込んで寝てしまいよった。
ヒソヒソヒソ……
まだヒソヒソ声がする……これは廊下の、まだ向こう……本堂から聞こえてくるんや。
じんべさんを羽織って本堂に向かう……話し声は外陣の真ん中へんから聞こえてくる。
うちは、須弥壇の陰から――すんません、阿弥陀さま――とことわって、外陣の様子を見る。
え……?
なんと、二人の三方さんが向き合ってお話の真っ最中やおまへんか。
「……ということで、まだまだ気ぃの回れへんお方であらっしゃいますが、よろしゅうお頼申します」
「はい、縁あって三方のお役目を引き継ぎましたからには、専心誠意、お役目を務めさせていただきます」
「それでは、これを収めてもろて、引継ぎのしるしといたしましょう」
なんや、旧三方さんが、三方に載せた和綴じのブットイ帳面を新三方さんの前に進めた。
「少し拝見してもよろしいでしょうか?」
「よろしいもなにも、これからは、こなたさんが当家の三方。しっかり目を通しておくりゃれ」
「それでは……」
新三方さんは、捧げ持ってお辞儀をして、ハラリハラリとページをめくる。
「……なるほど、これからもご主人さまは波乱万丈の人生を歩んでいかれるのですねえ」
「うむ、それを、苦労ととらまえては、とても続くものやありまへん。気は持ちようという言葉もおますよって、どうぞ、こなたさんも気を大きゅうお持ちなさりませ。こなたさんに譲ったとは申せ、わたしは、目と鼻の先のごりょうさんにお仕えしとります。宮仕えゆえ、言われて直ぐというわけにはまいりまへんやろが、ごりょうさんも『さくらのことは気にかけてやれ』との仰せにおじゃります。そうそう、番号の交換をいたしておきまひょ」
「おお、先輩もスマホをお持ちなのですか?」
「二台持っておるぞえ。パブリックとプライベートじゃ。構えて公私混同はならぬからのう」
「そうですねえ、そういう分別は大事ですからねえ」
「ついでに、裏情報も送っておくぞ」
「それでは……」「それでは……」
ピ!
無事に番号の交換は終わったみたい。
「あ、これは……」
「いかがいたしゃった?」
「ご主人様は、おねしょの癖がおありなのですか?」
「ああ、それは、くれぐれも内聞にな。さくら殿も十七、人への聞こえもあるというもの、こなたが十分に気をつけておれば事なきを得るでありましょう。くれぐれも頼みましたぞえ」
「ははあ!」
「ほれ、申したしりから……」
二人の三方さんがこっちを向いた!
とたんに催してきて、リアルに目ぇ覚ましてトイレに行きました(^_^;)。
☆・・主な登場人物・・☆
酒井 さくら この物語の主人公 聖真理愛女学院高校一年生
酒井 歌 さくらの母 亭主の失踪宣告をして旧姓の酒井に戻って娘と共に実家に戻ってきた。現在行方不明。
酒井 諦観 さくらの祖父 如来寺の隠居
酒井 諦念 さくらの伯父 諦一と詩の父
酒井 諦一 さくらの従兄 如来寺の新米坊主 テイ兄ちゃんと呼ばれる
酒井 詩(ことは) さくらの従姉 聖真理愛学院大学二年生
酒井 美保 さくらの義理の伯母 諦一 詩の母
榊原 留美 さくらと同居 中一からの同級生
夕陽丘頼子 さくらと留美の先輩 ヤマセンブルグの王女 聖真理愛女学院高校三年生
ソフィー ソフィア・ヒギンズ 頼子のガード 英国王室のメイド 陸軍少尉
ソニー ソニア・ヒギンズ ソフィーの妹 英国王室のメイド 陸軍伍長
月島さやか さくらの担任の先生
古閑 巡里(めぐり) さくらと留美のクラスメート メグリン
百武真鈴(田中真央) 高校生声優の生徒会長
女王陛下 頼子のお祖母ちゃん ヤマセンブルグの国家元首
江戸川アニメの関係者 宗武真(監督) 江原(作監) 武者走(脚本) 宮田(制作進行) 花園あやめ(声優)
さくらをとりまく人たち ハンゼイのマスター(昴・あきら) 瑞穂(マスターの奥さん)
389『三方さんの引き継ぎ』さくら
夜中に目が覚めた。
なんやら、ヒソヒソと話声がする。
ひょっとすると夢?
以前も、夜中に話し声がして、それが夢やったことがある。
十七年も生きてると、五千回ぐらいは夢見てる。
せやさかい、夢やという予想はついた。横を向くと、留美ちゃんが幸せそうに寝息を立ててる。
親友の幸せは、うちの幸せ。
このまま寝てもええねんけど、夢の中のヒソヒソ話というのは、めっちゃ気になる。
ニャゴニャゴ……
耳を澄ますと、話声のひとつはダミアの声。
もっかい薄目を開けると、ちょっとだけ部屋の襖が開いてて、その隙間に向かってブタネコとは思えん甘えた声でニャゴニャゴいうとおる。
誰と喋ってんねん?
お布団は目の下まで被って、心眼を凝らす……見えてきた。
襖を素通しにして見えてきたのは、なんとマリーアントワネット!
「……それじゃあね」
最後の一言だけが聞こえて、マリーアントワネットは口の前に人差し指を立てると、こっちに向かってニッコリ微笑んで消えていってしもた。
ダミアは、うちの顔見て「ニャ」と一言だけいうと、そのまま留美ちゃんのベッドに潜り込んで寝てしまいよった。
ヒソヒソヒソ……
まだヒソヒソ声がする……これは廊下の、まだ向こう……本堂から聞こえてくるんや。
じんべさんを羽織って本堂に向かう……話し声は外陣の真ん中へんから聞こえてくる。
うちは、須弥壇の陰から――すんません、阿弥陀さま――とことわって、外陣の様子を見る。
え……?
なんと、二人の三方さんが向き合ってお話の真っ最中やおまへんか。
「……ということで、まだまだ気ぃの回れへんお方であらっしゃいますが、よろしゅうお頼申します」
「はい、縁あって三方のお役目を引き継ぎましたからには、専心誠意、お役目を務めさせていただきます」
「それでは、これを収めてもろて、引継ぎのしるしといたしましょう」
なんや、旧三方さんが、三方に載せた和綴じのブットイ帳面を新三方さんの前に進めた。
「少し拝見してもよろしいでしょうか?」
「よろしいもなにも、これからは、こなたさんが当家の三方。しっかり目を通しておくりゃれ」
「それでは……」
新三方さんは、捧げ持ってお辞儀をして、ハラリハラリとページをめくる。
「……なるほど、これからもご主人さまは波乱万丈の人生を歩んでいかれるのですねえ」
「うむ、それを、苦労ととらまえては、とても続くものやありまへん。気は持ちようという言葉もおますよって、どうぞ、こなたさんも気を大きゅうお持ちなさりませ。こなたさんに譲ったとは申せ、わたしは、目と鼻の先のごりょうさんにお仕えしとります。宮仕えゆえ、言われて直ぐというわけにはまいりまへんやろが、ごりょうさんも『さくらのことは気にかけてやれ』との仰せにおじゃります。そうそう、番号の交換をいたしておきまひょ」
「おお、先輩もスマホをお持ちなのですか?」
「二台持っておるぞえ。パブリックとプライベートじゃ。構えて公私混同はならぬからのう」
「そうですねえ、そういう分別は大事ですからねえ」
「ついでに、裏情報も送っておくぞ」
「それでは……」「それでは……」
ピ!
無事に番号の交換は終わったみたい。
「あ、これは……」
「いかがいたしゃった?」
「ご主人様は、おねしょの癖がおありなのですか?」
「ああ、それは、くれぐれも内聞にな。さくら殿も十七、人への聞こえもあるというもの、こなたが十分に気をつけておれば事なきを得るでありましょう。くれぐれも頼みましたぞえ」
「ははあ!」
「ほれ、申したしりから……」
二人の三方さんがこっちを向いた!
とたんに催してきて、リアルに目ぇ覚ましてトイレに行きました(^_^;)。
☆・・主な登場人物・・☆
酒井 さくら この物語の主人公 聖真理愛女学院高校一年生
酒井 歌 さくらの母 亭主の失踪宣告をして旧姓の酒井に戻って娘と共に実家に戻ってきた。現在行方不明。
酒井 諦観 さくらの祖父 如来寺の隠居
酒井 諦念 さくらの伯父 諦一と詩の父
酒井 諦一 さくらの従兄 如来寺の新米坊主 テイ兄ちゃんと呼ばれる
酒井 詩(ことは) さくらの従姉 聖真理愛学院大学二年生
酒井 美保 さくらの義理の伯母 諦一 詩の母
榊原 留美 さくらと同居 中一からの同級生
夕陽丘頼子 さくらと留美の先輩 ヤマセンブルグの王女 聖真理愛女学院高校三年生
ソフィー ソフィア・ヒギンズ 頼子のガード 英国王室のメイド 陸軍少尉
ソニー ソニア・ヒギンズ ソフィーの妹 英国王室のメイド 陸軍伍長
月島さやか さくらの担任の先生
古閑 巡里(めぐり) さくらと留美のクラスメート メグリン
百武真鈴(田中真央) 高校生声優の生徒会長
女王陛下 頼子のお祖母ちゃん ヤマセンブルグの国家元首
江戸川アニメの関係者 宗武真(監督) 江原(作監) 武者走(脚本) 宮田(制作進行) 花園あやめ(声優)
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