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388『おお、これが雛人形か!』
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せやさかい
388『おお、これが雛人形か!』さくら
来週から学年末試験。せやさかい、こんなことしてる場合やないねんけど。
「おお、これが雛人形か!」
本堂に入るなり、ソニーが感嘆の声を上げた。
「やっぱり、昔の人がやると飾りつけも違うわねえ!」
留美ちゃんもカバンを下ろすのを忘れて感動。
「こんな間近で見るのは初めて!」
先週ペコちゃんとこで巫女服着でお神楽やった時と同じくらい感動のメグリン。
今年は、檀家のお婆ちゃんらが飾りつけをやってくれた。
なんでかいうと、一昨年飾りつけをやったとき、実は、いろいろミスしてたらしい。
それでも婦人部のお婆ちゃんらは、今どきの子ぉらがお雛さんを大事にしてるいうことだけで感動してくれた。
去年は流行り病でお雛さんどころやなかったしね。
うちには、詩(ことは)ちゃんのと、お母さんのと二組のお雛さんがある。
二年前は、本堂と部室(本堂裏の座敷)に分けて飾ったんやけど、田中のお婆ちゃんの提案で二組とも本堂で飾って大勢の人に見てもらうことになった。
「婦人部で見本やったげるさかい、もう一つをあんたらでやってみい」
ということで、テスト前や言うのに、お仲間そろって本堂に集合!
「うちは、雛祭りは、お内裏様の色紙を出すだけだった」
「軍人の家は転勤が多いから、大げさなことはできないんだろう」
「うん。でも端午の節句は鎧を出してた」
「鎧! 本物か!?」
「あ、たぶん。お祖父ちゃんが送ってきたの」
「メグリンは武士の家系か!?」
「どうだろ、熊本の農家だよ」
「熊本といえば肥後の国、肥後の国と言えば加藤清正ではないか!」
「あはは、清正公とは関係ないよ」
「謙遜するな、清正に公の尊称を付けるのは、武門の血筋であるからだろ!」
「あ、熊本じゃ誰でも清正公って云うし(^_^;)」
なんか、マニアックなノリやけど、あっという間に雛壇を完成させるソニーとメグリン。
「うん、野戦のテント張りみたいで感嘆だったぞ」
「問題は、これからだよね……」
箱から出したお雛さんたちと、出来あがっている雛飾りを見比べる留美ちゃん。
「キングとクィーンの並べ方は欧米と変わらんのだなあ」
なるほど、お内裏さんはキングとクィーンか。
「明治のころまでは逆やってんでぇ、大正天皇が結婚式で西洋風にしはったんで変わったいう話やで」
「へえ、そうなんだ」
「あ、なに、その『さくらにしては』的な驚きの顔は(^_^;)」
「ん……この侍女、変だぞ?」
「さすがソニー、気ぃついたんや」
「眉毛が無いし、口の中が真っ黒だぞ……あ、こっちは侍女が一人足りんぞ」
「ああ、それは三方さんて云うて……」
三人官女と、それにまつわる我が家の事情(125~127『お雛さん』)を説明する。
「そうか、それぞれの家にドラマがあるんだなあ」
いや、ソニーの家ほどやないと思うよ。ソニーの家は魔法使いの家系やし。
「やあ、あんたら、もう来てたんやなあ(^▽^)」
田中のお婆ちゃんがテイ兄ちゃんを従えてやってきた。
「あ、お婆ちゃん」
「田中さんがネットオークションで競り落としてくれはったんや、ほら、開けてみい」
「え、どれどれぇ?」
テイ兄ちゃんが持ってきた桐の箱には三方さんが入ってた!
「ちょうど、この三方さん一人だけ云うのんが出ててなあ。焼き芋焼きながらポチったら、他に入札してる人もおらんでなあ、まんまとゲットしたんや。まあ、教えてくれたのはテイぼんやけどなあ」
「あ、それナイショですがなあ(^0^;)」
「戦前の優月の品物らしいわ、歌おばちゃんのも優月やさかい、ピッタリやろ」
「さっそく、並べたげぇ」
「ありがとう、お婆ちゃん!」
「……おお、留美とさくらを従えたメグリンみたいだぞ!」
ソニーが感動。
「あ、そんな、わたし……」
三方は、他の官女よりもワンサイズ大きいみたいで、ちょっと面白い。真っ赤に照れるメグリンも可愛い。
「田中さん、忘れ物、忘れ物」
鈴木のお婆ちゃんがレジ袋ぶら下げてやってくる。
「あ、せや。お雛さんで気ぃせいてしもて、肝心なもん忘れてた!」
お婆ちゃんが忘れてたのは焼き芋。
お婆ちゃんは米屋さんやけど、夏以外は焼き芋もやってて、時どきご馳走になってた。
高校に入って、お店の前通らんようになってご無沙汰やったし。
懐かしく、みんなで焼き芋頂きながらテイ兄ちゃんがカメラで撮って、たちまちのうちにヤマセンブルグとスカイプ。
テイ兄ちゃんは、ハナから、その狙いでお婆ちゃんを焚きつけてたみたい。
まあ、ええけどね。
☆・・主な登場人物・・☆
酒井 さくら この物語の主人公 聖真理愛女学院高校一年生
酒井 歌 さくらの母 亭主の失踪宣告をして旧姓の酒井に戻って娘と共に実家に戻ってきた。現在行方不明。
酒井 諦観 さくらの祖父 如来寺の隠居
酒井 諦念 さくらの伯父 諦一と詩の父
酒井 諦一 さくらの従兄 如来寺の新米坊主 テイ兄ちゃんと呼ばれる
酒井 詩(ことは) さくらの従姉 聖真理愛学院大学二年生
酒井 美保 さくらの義理の伯母 諦一 詩の母
榊原 留美 さくらと同居 中一からの同級生
夕陽丘頼子 さくらと留美の先輩 ヤマセンブルグの王女 聖真理愛女学院高校三年生
ソフィー ソフィア・ヒギンズ 頼子のガード 英国王室のメイド 陸軍少尉
ソニー ソニア・ヒギンズ ソフィーの妹 英国王室のメイド 陸軍伍長
月島さやか さくらの担任の先生
古閑 巡里(めぐり) さくらと留美のクラスメート メグリン
百武真鈴(田中真央) 高校生声優の生徒会長
女王陛下 頼子のお祖母ちゃん ヤマセンブルグの国家元首
江戸川アニメの関係者 宗武真(監督) 江原(作監) 武者走(脚本) 宮田(制作進行) 花園あやめ(声優)
さくらをとりまく人たち ハンゼイのマスター(昴・あきら) 瑞穂(マスターの奥さん)
388『おお、これが雛人形か!』さくら
来週から学年末試験。せやさかい、こんなことしてる場合やないねんけど。
「おお、これが雛人形か!」
本堂に入るなり、ソニーが感嘆の声を上げた。
「やっぱり、昔の人がやると飾りつけも違うわねえ!」
留美ちゃんもカバンを下ろすのを忘れて感動。
「こんな間近で見るのは初めて!」
先週ペコちゃんとこで巫女服着でお神楽やった時と同じくらい感動のメグリン。
今年は、檀家のお婆ちゃんらが飾りつけをやってくれた。
なんでかいうと、一昨年飾りつけをやったとき、実は、いろいろミスしてたらしい。
それでも婦人部のお婆ちゃんらは、今どきの子ぉらがお雛さんを大事にしてるいうことだけで感動してくれた。
去年は流行り病でお雛さんどころやなかったしね。
うちには、詩(ことは)ちゃんのと、お母さんのと二組のお雛さんがある。
二年前は、本堂と部室(本堂裏の座敷)に分けて飾ったんやけど、田中のお婆ちゃんの提案で二組とも本堂で飾って大勢の人に見てもらうことになった。
「婦人部で見本やったげるさかい、もう一つをあんたらでやってみい」
ということで、テスト前や言うのに、お仲間そろって本堂に集合!
「うちは、雛祭りは、お内裏様の色紙を出すだけだった」
「軍人の家は転勤が多いから、大げさなことはできないんだろう」
「うん。でも端午の節句は鎧を出してた」
「鎧! 本物か!?」
「あ、たぶん。お祖父ちゃんが送ってきたの」
「メグリンは武士の家系か!?」
「どうだろ、熊本の農家だよ」
「熊本といえば肥後の国、肥後の国と言えば加藤清正ではないか!」
「あはは、清正公とは関係ないよ」
「謙遜するな、清正に公の尊称を付けるのは、武門の血筋であるからだろ!」
「あ、熊本じゃ誰でも清正公って云うし(^_^;)」
なんか、マニアックなノリやけど、あっという間に雛壇を完成させるソニーとメグリン。
「うん、野戦のテント張りみたいで感嘆だったぞ」
「問題は、これからだよね……」
箱から出したお雛さんたちと、出来あがっている雛飾りを見比べる留美ちゃん。
「キングとクィーンの並べ方は欧米と変わらんのだなあ」
なるほど、お内裏さんはキングとクィーンか。
「明治のころまでは逆やってんでぇ、大正天皇が結婚式で西洋風にしはったんで変わったいう話やで」
「へえ、そうなんだ」
「あ、なに、その『さくらにしては』的な驚きの顔は(^_^;)」
「ん……この侍女、変だぞ?」
「さすがソニー、気ぃついたんや」
「眉毛が無いし、口の中が真っ黒だぞ……あ、こっちは侍女が一人足りんぞ」
「ああ、それは三方さんて云うて……」
三人官女と、それにまつわる我が家の事情(125~127『お雛さん』)を説明する。
「そうか、それぞれの家にドラマがあるんだなあ」
いや、ソニーの家ほどやないと思うよ。ソニーの家は魔法使いの家系やし。
「やあ、あんたら、もう来てたんやなあ(^▽^)」
田中のお婆ちゃんがテイ兄ちゃんを従えてやってきた。
「あ、お婆ちゃん」
「田中さんがネットオークションで競り落としてくれはったんや、ほら、開けてみい」
「え、どれどれぇ?」
テイ兄ちゃんが持ってきた桐の箱には三方さんが入ってた!
「ちょうど、この三方さん一人だけ云うのんが出ててなあ。焼き芋焼きながらポチったら、他に入札してる人もおらんでなあ、まんまとゲットしたんや。まあ、教えてくれたのはテイぼんやけどなあ」
「あ、それナイショですがなあ(^0^;)」
「戦前の優月の品物らしいわ、歌おばちゃんのも優月やさかい、ピッタリやろ」
「さっそく、並べたげぇ」
「ありがとう、お婆ちゃん!」
「……おお、留美とさくらを従えたメグリンみたいだぞ!」
ソニーが感動。
「あ、そんな、わたし……」
三方は、他の官女よりもワンサイズ大きいみたいで、ちょっと面白い。真っ赤に照れるメグリンも可愛い。
「田中さん、忘れ物、忘れ物」
鈴木のお婆ちゃんがレジ袋ぶら下げてやってくる。
「あ、せや。お雛さんで気ぃせいてしもて、肝心なもん忘れてた!」
お婆ちゃんが忘れてたのは焼き芋。
お婆ちゃんは米屋さんやけど、夏以外は焼き芋もやってて、時どきご馳走になってた。
高校に入って、お店の前通らんようになってご無沙汰やったし。
懐かしく、みんなで焼き芋頂きながらテイ兄ちゃんがカメラで撮って、たちまちのうちにヤマセンブルグとスカイプ。
テイ兄ちゃんは、ハナから、その狙いでお婆ちゃんを焚きつけてたみたい。
まあ、ええけどね。
☆・・主な登場人物・・☆
酒井 さくら この物語の主人公 聖真理愛女学院高校一年生
酒井 歌 さくらの母 亭主の失踪宣告をして旧姓の酒井に戻って娘と共に実家に戻ってきた。現在行方不明。
酒井 諦観 さくらの祖父 如来寺の隠居
酒井 諦念 さくらの伯父 諦一と詩の父
酒井 諦一 さくらの従兄 如来寺の新米坊主 テイ兄ちゃんと呼ばれる
酒井 詩(ことは) さくらの従姉 聖真理愛学院大学二年生
酒井 美保 さくらの義理の伯母 諦一 詩の母
榊原 留美 さくらと同居 中一からの同級生
夕陽丘頼子 さくらと留美の先輩 ヤマセンブルグの王女 聖真理愛女学院高校三年生
ソフィー ソフィア・ヒギンズ 頼子のガード 英国王室のメイド 陸軍少尉
ソニー ソニア・ヒギンズ ソフィーの妹 英国王室のメイド 陸軍伍長
月島さやか さくらの担任の先生
古閑 巡里(めぐり) さくらと留美のクラスメート メグリン
百武真鈴(田中真央) 高校生声優の生徒会長
女王陛下 頼子のお祖母ちゃん ヤマセンブルグの国家元首
江戸川アニメの関係者 宗武真(監督) 江原(作監) 武者走(脚本) 宮田(制作進行) 花園あやめ(声優)
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