せやさかい

武者走走九郎or大橋むつお

文字の大きさ
上 下
370 / 432

370『玄関前の大掃除』

しおりを挟む
せやさかい

370『玄関前の大掃除』さくら    




 学校のやることに無駄はおまへん。


 昨日のクリスマスツリーで―― せや、うちはミッションスクールやったんや! ――と感激して、スマホで学校の行事予定を確認。

 ちなみに、去年まではプリントした年次予定表とかが配られてたんやけど、エコとか資源節約とかで、学校のウェブページで確認してくださいとのこと。

 まあ、余計なプリントが無くなるのはええことです。

 中学の頃は、貰ってそのままカバンに突っ込んで忘れてしまって、学年の終りにカバンの中身全部出して「あ、行事予定表!」と叫んで、全部済んでしもたモミクチャの予定表が出てきたりした。

 そこで分かったということもあった(留美ちゃんがちゃんとやってるんで、ズボラかましてるとこもあるんやけどね(^_^;))んやけど、まあ、どっちにしても、テレビの番組表かっちゅうくらい、ごちゃごちゃしてる行事予定表を見よういう気にはなりません。

 で、スマホで確認したら、23日『クリスマスページェント』と書いてある。

「あれ、クリスマスって、24日やんなあ」

「24日は……」

 留美ちゃんがスクロールすると―― 終業式 クリスマスミサ その他 ――と出てる。

「その他ってなんだろう?」

 メグリンが覗き込む。

 さらにスクロールすると―― ここをクリック ――と出てくる。

 このクリックサインは、半分くらいの日程にあるんやけど、メンドイのでほとんど見ません。

 まあ、差し迫って大事なことは担任のペコちゃんが、HRとかで念押ししてくれるさかいにね。 

 で、開いてみると、やっぱり、年末の学校の事務的な(施設点検とか帳簿の提出とか)ことが書いてあって、いろいろムズイ。

「奨学金……留学希望締め切り……他にもいろいろあるんだねえ」



 おい、そこ、さっさといくぞ!



 熱中してたら、ソニーの怖い声が飛んできた。

 そう、今日の午後は授業は無いけど、大掃除。

 堺の中学校でノホホンと過ごしてきた感覚では、どうせやるんやったら前日の23日にやったらと思うんやけど。

「外回りの掃除もあるから……ほら、雨天順延と書いてある」

「それに、先生たちの会議もいろいろあるみたいだよ。これは、先生も責任をもって監督しますってことだね……うん、指揮官先頭の心得だね!」

 お父さんが幹部自衛官のメグリンは、こういうところで感心する。


 こら! 何をしとるかっ!!

 国に帰ったら現役陸軍伍長、ソフィーは気合いの入り方がちゃいます。

 
 うちらの担当は玄関前から正門までの通路というか広場というか……植え込みとか入れたら500坪ぐらいはありそうな、通称玄関前のとこ。

「ああ、あんたらか。そこに道具一式出したあるから、チャッチャとやんなさい。終わったら報告!」

 めちゃ簡単な指示をして、監督の長瀬先生は玄関ホールに行ってしまう。

「先生、忙しいみたいだね」

 留美ちゃんが目を向けた先、事務所の前でIDカードぶら下げた人らとお話しにかかってはる。

 なるほど、うちらへの指示がおざなりやったんは、そういうわけか。

 長瀬先生は体育科の古株で、学年はじめに校内探検に夢中になってて怒られた(297『校内探検・玄関から真理愛館へ』)。怖い先生やけど、きっちりしたとこはさすがやと思てます。

「では、わたしが指揮を執る」

 ソニーが箒を構えてうちらの前に立つ。

「「「はい!」」」

 思わず気を付けしたのは、長瀬先生の余熱か、現役陸軍伍長の迫力か。

 うちらは、シャキンとして玄関前の大掃除にかかったのでありました。




☆・・主な登場人物・・☆

酒井 さくら     この物語の主人公  聖真理愛女学院高校一年生
酒井 歌       さくらの母 亭主の失踪宣告をして旧姓の酒井に戻って娘と共に実家に戻ってきた。現在行方不明。
酒井 諦観      さくらの祖父 如来寺の隠居
酒井 諦念      さくらの伯父 諦一と詩の父
酒井 諦一      さくらの従兄 如来寺の新米坊主 テイ兄ちゃんと呼ばれる
酒井 詩(ことは)  さくらの従姉 聖真理愛学院大学二年生
酒井 美保      さくらの義理の伯母 諦一 詩の母 
榊原 留美      さくらと同居 中一からの同級生 
夕陽丘頼子      さくらと留美の先輩 ヤマセンブルグの王女 聖真理愛女学院高校三年生
ソフィー       ソフィア・ヒギンズ 頼子のガード 英国王室のメイド 陸軍少尉
ソニー        ソニア・ヒギンズ ソフィーの妹 英国王室のメイド 陸軍伍長
月島さやか      さくらの担任の先生
古閑 巡里(めぐり) さくらと留美のクラスメート メグリン
百武真鈴(田中真央) 高校生声優の生徒会長
女王陛下       頼子のお祖母ちゃん ヤマセンブルグの国家元首  

 
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

café R ~料理とワインと、ちょっぴり恋愛~

yolu
ライト文芸
café R のオーナー・莉子と、後輩の誘いから通い始めた盲目サラリーマン・連藤が、料理とワインで距離を縮めます。 連藤の同僚や後輩たちの恋愛模様を絡めながら、ふたりの恋愛はどう進むのか? ※小説家になろうでも連載をしている作品ですが、アルファポリスさんにて、書き直し投稿を行なっております。第1章の内容をより描写を濃く、エピソードを増やして、現在更新しております。

【声劇台本】だから、お前はダメなんだ!

でんでろ3
ライト文芸
職員室で浮きまくってるE崎先生が、生徒たちのために、いろいろと奔走するコメディ声劇台本。 ちなみに、「だから、お前はダメなんだ」というのは、E崎先生がまわりの先生たちから言われている言葉であって、決して、生徒たちのことではありません。

貧乏奨学生の子爵令嬢は、特許で稼ぐ夢を見る 〜レイシアは、今日も我が道つき進む!~

みちのあかり
ファンタジー
同じゼミに通う王子から、ありえないプロポーズを受ける貧乏奨学生のレイシア。 何でこんなことに? レイシアは今までの生き方を振り返り始めた。 第一部(領地でスローライフ) 5歳の誕生日。お父様とお母様にお祝いされ、教会で祝福を受ける。教会で孤児と一緒に勉強をはじめるレイシアは、その才能が開花し非常に優秀に育っていく。お母様が里帰り出産。生まれてくる弟のために、料理やメイド仕事を覚えようと必死に頑張るレイシア。 お母様も戻り、家族で幸せな生活を送るレイシア。 しかし、未曽有の災害が起こり、領地は借金を負うことに。 貧乏でも明るく生きるレイシアの、ハートフルコメディ。 第二部(学園無双) 貧乏なため、奨学生として貴族が通う学園に入学したレイシア。 貴族としての進学は奨学生では無理? 平民に落ちても生きていけるコースを選ぶ。 だが、様々な思惑により貴族のコースも受けなければいけないレイシア。お金持ちの貴族の女子には嫌われ相手にされない。 そんなことは気にもせず、お金儲け、特許取得を目指すレイシア。 ところが、いきなり王子からプロポーズを受け・・・ 学園無双の痛快コメディ カクヨムで240万PV頂いています。

【完結】元お義父様が謝りに来ました。 「婚約破棄にした息子を許して欲しい」って…。

BBやっこ
恋愛
婚約はお父様の親友同士の約束だった。 だから、生まれた時から婚約者だったし。成長を共にしたようなもの。仲もほどほどに良かった。そんな私達も学園に入学して、色んな人と交流する中。彼は変わったわ。 女学生と腕を組んでいたという、噂とか。婚約破棄、婚約者はにないと言っている。噂よね? けど、噂が本当ではなくても、真にうけて行動する人もいる。やり方は選べた筈なのに。

翔君とおさんぽ

桜桃-サクランボ-
ライト文芸
世間一般的に、ブラック企業と呼ばれる会社で、1ヶ月以上も休み無く働かされていた鈴夏静華《りんかしずか》は、パソコンに届いた一通のメールにより、田舎にある実家へと戻る。 そこには、三歳の日向翔《ひなたかける》と、幼なじみである詩想奏多《しそうかなた》がおり、静華は二人によりお散歩へと繰り出される。 その先で出会ったのは、翔くらいの身長である銀髪の少年、弥狐《やこ》。 昔、人間では無いモノ──あやかしを見る方法の一つとして"狐の窓"という噂があった。 静華はその話を思い出し、異様な空気を纏っている弥狐を狐の窓から覗き見ると、そこにはただの少年ではなく、狐のあやかしが映り込む──…… 心疲れた人に送る、ほのぼのだけどちょっと不思議な物語。

人生を共にしてほしい、そう言った最愛の人は不倫をしました。

松茸
恋愛
どうか僕と人生を共にしてほしい。 そう言われてのぼせ上った私は、侯爵令息の彼との結婚に踏み切る。 しかし結婚して一年、彼は私を愛さず、別の女性と不倫をした。

【完結】王太子殿下が幼馴染を溺愛するので、あえて応援することにしました。

かとるり
恋愛
王太子のオースティンが愛するのは婚約者のティファニーではなく、幼馴染のリアンだった。 ティファニーは何度も傷つき、一つの結論に達する。 二人が結ばれるよう、あえて応援する、と。

それ以上近づかないでください。

ぽぽ
BL
「誰がお前のことなんか好きになると思うの?」 地味で冴えない小鳥遊凪は、ある日、憧れの人である蓮見馨に不意に告白をしてしまい、2人は付き合うことになった。 まるで夢のような時間――しかし、その恋はある出来事をきっかけに儚くも終わりを迎える。 転校を機に、馨のことを全てを忘れようと決意した凪。もう二度と彼と会うことはないはずだった。 ところが、あることがきっかけで馨と再会することになる。 「本当に可愛い。」 「凪、俺以外のやつと話していいんだっけ?」 かつてとはまるで別人のような馨の様子に戸惑う凪。 「お願いだから、僕にもう近づかないで」

処理中です...