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363『文化祭本番です!』

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せやさかい

363『文化祭本番です!』さくら    




 昼行燈(ひるあんどん)いう言葉があるやんか。


 ボンヤリっちゅうか、ボーっとしてるやつを指して言う言葉で、あんまりええ言葉やない。

「まあ、あの人すてきね! まるで昼行燈みたいに優しそう!」「そのセーター、淡い色合いがステキ! まるで昼行燈!」「このお弁当、昼行燈みたいに優しいお味ねえ!」とか言うて褒めたとしたら、アホかと思われる、場合によっては張り倒される。

 例外は、吉良上野介を討ち取るまでの大石内蔵助。色町で遊びまくったりしてて昼行燈みたいやと言われてて、あれでは討ち入りなんて企んでるはずないと世間を欺いた。

 そういう昼行燈みたいなもんやと思て期待はしてなかった。

 なにかっちゅうと、花火です。

 三年ぶりに行われる聖真理愛学院の大文化祭!

 ほとんどの取り組みが三年生中心、一二年生はサポートとかアシスタントにまわります。

 屋台とかの飲食店の大半は中庭のフードコートにまとめてある。入り口のとこに各店共通の食券売り場があって、各店舗で買ったもんは、どこで食べてもええねんけど、中庭のあちこちに特設のベンチとテーブルが設置されてて、半分以上のお客さんは中庭で食べます。

 中庭の花とか植栽は園芸部と総合授業で園芸をとってる子ぉらで、あちこちに油絵やイラストや彫刻の展示、むろん美術部、漫研の作品。

 中庭の中央には十二畳ほどの特設ステージ。ここでは、音楽部、軽音、筝曲なんかがBG的に演奏。あくまでBGなんで、エレキなんかはありません。

 グラウンドには、それよりも大きな野外ステージ。

 軽音、ブラバン、有志参加のバンドなんかの音の大きい出し物をやってます。

 むろん、体育館やら本館の教室では普通にクラスやらクラブの取り組みも。

 そのいちいちを説明したいねんけど、やっぱり『サクラウメ大戦』です。全部で四チームで四回の公演を体育館の出し物として上演したあと、昼の一番にピロティー前の野外公演。

 頼子先輩の園城寺ゆき、百武真鈴の長船さくら。

 なんちゅうても、百武真鈴は高校生声優で『恋するマネキン』で一躍人気声優のベストスリー入りした期待の新人、いや、中学三年でデビューしてるから、もう中堅、いや、ベテランの貫録。

 頼子先輩も『恋するマネキン』の最後四回は声優として参加(285『「恋するマネキン」を観る』)、この夏には正式にヤマセンブルグ公国の王女になったし、話題性も充分。

 わずか十分ちょっとの芝居やけど、半分近くは園城寺ゆきの「やさぐれ白梅隊」と長船さくらの「はみだし八重桜隊」の戦闘シーン! 双方にソフィーとソニーという現役の諜報部員兼シークレットサービスが入ってて迫力満点!

 そして『サクラウメ大戦』が終わったあとは、そのまま、ブラバンを先頭に参加者全員と希望者がハローウィンの仮装衣装を着てパレード!

 むろん事前に警察への届け出も怠りなく、校門前と駅前には地元警察のお巡りさんが出動してくれてます。



 ドーーーーン パチパチパチ ドーーーーン パチパチパチ ドーーーーン パチパチパチ



「昼行燈って、花火のことだったんだね!」

 メグリンが、空を見上げて感心。うちらも行進しながら空を見上げる。

「少しは前向いた方がいいよ(^_^;)」

 留美ちゃんのチェックが入る。

「せやかて、こんなんやと思わへんかったし……」

「昼間の花火って、煙と音だけになるかと思ってた……」

 その名も真鈴スペシャルという花火は、空中で破裂すると、一発当たり十個ぐらいの落下傘と無数のスパンコールをまき散らす。

 全部で百個ぐらいの落下傘がキラキラ光るスパンコールの中をユラユラと落ちてくるのは、ディズニーランドのパレードかっちゅうくらいのもんで、ほんまにスゴイ!

「キャ!」

 留美ちゃんがけ躓いて、メグリンが受け止める。

「ごめん、わたしも見入っちゃった(^o^;)……でも、あとの掃除大変そう……」

「苦労性だね留美ちゃんは(^_^;)」

「あ、ほら見てみぃ!」

 PTAのお母ちゃんらと先生、それに、学校に残った生徒らで掃除にかかってる。

「あれも、真鈴先輩が手配しておいたんだろうね」

「すごい人だね、頼子先輩も真鈴先輩も」

『こら、さくら隊、遅れてるぞ!』

 骨伝導イヤホンから真鈴先輩の声。

「「「は、はひ!」」」

 グループに一個づつ渡された時は、こんなもんいらんやろと思たんやけど、いやはや……。

「最初で最後の文化祭だから自由にさせてくれって言ってたけど」

「やっぱ、キチンとしてるよね先輩たち」

『ヘックチ!』

 イヤホンを通して、どっちの先輩かわからないクシャミが聞こえてきた。

 
☆・・主な登場人物・・☆

酒井 さくら     この物語の主人公  聖真理愛女学院高校一年生
酒井 歌       さくらの母 亭主の失踪宣告をして旧姓の酒井に戻って娘と共に実家に戻ってきた。現在行方不明。
酒井 諦観      さくらの祖父 如来寺の隠居
酒井 諦念      さくらの伯父 諦一と詩の父
酒井 諦一      さくらの従兄 如来寺の新米坊主 テイ兄ちゃんと呼ばれる
酒井 詩(ことは)  さくらの従姉 聖真理愛学院大学二年生
酒井 美保      さくらの義理の伯母 諦一 詩の母 
榊原 留美      さくらと同居 中一からの同級生 
夕陽丘頼子      さくらと留美の先輩 ヤマセンブルグの王女 聖真理愛女学院高校三年生
ソフィー       ソフィア・ヒギンズ 頼子のガード 英国王室のメイド 陸軍少尉
ソニー        ソニア・ヒギンズ ソフィーの妹 英国王室のメイド 陸軍伍長
月島さやか      さくらの担任の先生
古閑 巡里(めぐり) さくらと留美のクラスメート メグリン
百武真鈴(田中真央) 高校生声優の生徒会長
女王陛下       頼子のお祖母ちゃん ヤマセンブルグの国家元首  

 

 
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