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328『飛んでイスタンブール』
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せやさかい
328『飛んでイスタンブール』さくら
イスタンブールの在トルコヤマセンブルグ大使館の朝です。
ダイニングの窓から入って来る日差しはレースのカーテンでろ過されているとは言え、あっぱれ真夏の日差しです。
せやけど、日本製のエアコンが効いてるので三日目になる旅行で痺れてる脳みそを、ほどよくアイドリングにしてくれてます。
昨日は、タイのバンコクからインドのニューデリーはインディラ・ガンジー空港まで飛んで給油。
インディラ・ガンジー空港では飛行機から下りることも無く、そのままイスタンブール向けて飛び立った。
インドを真ん中に据えたアジア大陸の南を一気に飛び越えるというか、かすめるというか。
プロペラ機はジェット機と違って低いとこを飛んでることもあって、地上の事がよう見える。
「バングラディシュ、インド、パキスタン……別々の国だけど、ほんとは一つの国になるはずだったんだよ」
右の窓から見えるインド亜大陸を見ながら頼子さん。
「みんなイギリスの植民地だったけど、ガンジーはまとめて一つの国として独立させようと思ったんだけどね……」
「ガンジーって、暗殺されたんですよね」
メグリンが食いついてくる。
「うん、そのせいもあって、まとまって独立はできなかった」
「宗教が違うのよね、ヒンズー教とイスラム教。スリランカは仏教だし」
詩(ことは)ちゃんの補足で、うちの脳みそでも、ぼんやりとイメージが湧いてくる。
「ヒンズーのインド、イスラムのパキスタンとバングラディシュ、仏教のスリランカに分かれたんですよね」
留美ちゃんの理解は、うちの二歩先をいってるし(^_^;)
「バングラディシュは東パキスタンと言って、パキスタンの一部だったんですよ」
メグさんがモニターに地図を出して、ダメ押しの説明。
「西パキスタンとの格差が大きすぎたんで、五十何年か前に独立したんです」
「かくも、国とか国境とかは移ろいやすいものだ……って、締めくくりになるのよね」
なんか、頼子さんがまとめに入った。
「そうです、国家というものは、実は不確かで頼りないところがあるものなのです」
まとめた紐を、また解いていくメグさん。
「国家には求心力が必要なのです。求心力の無い国は容易くバラバラになって、バラバラになると国民は割を食って、大変な苦労をします。周辺の国にも大変な迷惑がかかります」
「それゆえに、国際社会の一員としての国家と、求心力である王室の重要性に思いをいたし、王族であることの自覚を持たなければならない」
「そうです、殿下」
「なんか、メグさん、サッチャーさんに見えてきたわよ」
「え……!?」
さすがのメグさんもサッチャーさんみたいと言われると息を呑まはります。
サッチャーさんの元祖は鉄の女と言われた、イギリスの女性総理大臣。
アルゼンチンの軍事政権に売られたケンカを正面から買って出て、フォークランド紛争の勝利を勝ち取ったオバチャン。
以来、イギリスにケンカを売る国は、21世紀の今日になってもありません。
勉強からきしのうちが、なんでサッチャーさんについては詳しいかというと、サッチャーいうあだ名のメイド長で女王陛下の秘書も兼ねてるという、すごいオバハンが居てるというか、今度の旅行でも、ぜったい絡んでくるからやさかいです。
コクピットで攻〇機動隊の草〇素子みたいにかっこよく副操縦士をやってるソフィーでも頭の上がらんオバハン。
本名は……あかん、思い出したら、ぜったい祟られる(;'∀')。
「でも、バングラディシュって、国旗が日の丸なんですよね」
メグリンが指を立てる。
モニターの地図には、すかさず各国の国旗が現れる。メグさんも行き届いてる。
「そうです、建国に当っては日本をリスペクトして、緑地の日の丸にしたんです。それも敬意を払って、日の丸の位置を少しだけ左にずらしてあります。他にもパラオ共和国が独立に当って国旗をライトブルーにイエローの日の丸にしました……」
ええと……ご節ごもっともやねんけど、頼子さん寝たフリしてるし。
頼子さんは、なにかにつけて、こういうレクチャーされてるんやろねえ。
まあ、その後は、そういう通過する国の食べ物の話になって、機内食にもインドのナンとかカレーとかが出てきて旅の雰囲気は盛り上がった。
バタン
そんなことを思い出してると、ダイニングのドアが、ちょっと乱暴に開いて軍服のソフィーが入ってきて、頼子さんに耳打ち。
いっしゅんビックリした頼子さんやったけど、一言二言やりとりすると、中学の時にイタズラ思いついた時みたいな顔して、うちらに宣告した。
「みんな聞いて、イスタンブールからはオリエント急行で行くわよ!」
有無を言わせんドヤ顔で、その貫録は王女を通り越して女王陛下の貫録やった!
☆・・主な登場人物・・☆
酒井 さくら この物語の主人公 聖真理愛女学院高校一年生
酒井 歌 さくらの母 亭主の失踪宣告をして旧姓の酒井に戻って娘と共に実家に戻ってきた。現在行方不明。
酒井 諦観 さくらの祖父 如来寺の隠居
酒井 諦念 さくらの伯父 諦一と詩の父
酒井 諦一 さくらの従兄 如来寺の新米坊主 テイ兄ちゃんと呼ばれる
酒井 詩(ことは) さくらの従姉 聖真理愛学院大学二年生
酒井 美保 さくらの義理の伯母 諦一 詩の母
榊原 留美 さくらと同居 中一からの同級生
夕陽丘頼子 さくらと留美の先輩 ヤマセンブルグの王位継承者 聖真理愛女学院高校三年生
ソフィー 頼子のガード
月島さやか さくらの担任の先生
古閑 巡里(めぐり) さくらと留美のクラスメート メグリン
328『飛んでイスタンブール』さくら
イスタンブールの在トルコヤマセンブルグ大使館の朝です。
ダイニングの窓から入って来る日差しはレースのカーテンでろ過されているとは言え、あっぱれ真夏の日差しです。
せやけど、日本製のエアコンが効いてるので三日目になる旅行で痺れてる脳みそを、ほどよくアイドリングにしてくれてます。
昨日は、タイのバンコクからインドのニューデリーはインディラ・ガンジー空港まで飛んで給油。
インディラ・ガンジー空港では飛行機から下りることも無く、そのままイスタンブール向けて飛び立った。
インドを真ん中に据えたアジア大陸の南を一気に飛び越えるというか、かすめるというか。
プロペラ機はジェット機と違って低いとこを飛んでることもあって、地上の事がよう見える。
「バングラディシュ、インド、パキスタン……別々の国だけど、ほんとは一つの国になるはずだったんだよ」
右の窓から見えるインド亜大陸を見ながら頼子さん。
「みんなイギリスの植民地だったけど、ガンジーはまとめて一つの国として独立させようと思ったんだけどね……」
「ガンジーって、暗殺されたんですよね」
メグリンが食いついてくる。
「うん、そのせいもあって、まとまって独立はできなかった」
「宗教が違うのよね、ヒンズー教とイスラム教。スリランカは仏教だし」
詩(ことは)ちゃんの補足で、うちの脳みそでも、ぼんやりとイメージが湧いてくる。
「ヒンズーのインド、イスラムのパキスタンとバングラディシュ、仏教のスリランカに分かれたんですよね」
留美ちゃんの理解は、うちの二歩先をいってるし(^_^;)
「バングラディシュは東パキスタンと言って、パキスタンの一部だったんですよ」
メグさんがモニターに地図を出して、ダメ押しの説明。
「西パキスタンとの格差が大きすぎたんで、五十何年か前に独立したんです」
「かくも、国とか国境とかは移ろいやすいものだ……って、締めくくりになるのよね」
なんか、頼子さんがまとめに入った。
「そうです、国家というものは、実は不確かで頼りないところがあるものなのです」
まとめた紐を、また解いていくメグさん。
「国家には求心力が必要なのです。求心力の無い国は容易くバラバラになって、バラバラになると国民は割を食って、大変な苦労をします。周辺の国にも大変な迷惑がかかります」
「それゆえに、国際社会の一員としての国家と、求心力である王室の重要性に思いをいたし、王族であることの自覚を持たなければならない」
「そうです、殿下」
「なんか、メグさん、サッチャーさんに見えてきたわよ」
「え……!?」
さすがのメグさんもサッチャーさんみたいと言われると息を呑まはります。
サッチャーさんの元祖は鉄の女と言われた、イギリスの女性総理大臣。
アルゼンチンの軍事政権に売られたケンカを正面から買って出て、フォークランド紛争の勝利を勝ち取ったオバチャン。
以来、イギリスにケンカを売る国は、21世紀の今日になってもありません。
勉強からきしのうちが、なんでサッチャーさんについては詳しいかというと、サッチャーいうあだ名のメイド長で女王陛下の秘書も兼ねてるという、すごいオバハンが居てるというか、今度の旅行でも、ぜったい絡んでくるからやさかいです。
コクピットで攻〇機動隊の草〇素子みたいにかっこよく副操縦士をやってるソフィーでも頭の上がらんオバハン。
本名は……あかん、思い出したら、ぜったい祟られる(;'∀')。
「でも、バングラディシュって、国旗が日の丸なんですよね」
メグリンが指を立てる。
モニターの地図には、すかさず各国の国旗が現れる。メグさんも行き届いてる。
「そうです、建国に当っては日本をリスペクトして、緑地の日の丸にしたんです。それも敬意を払って、日の丸の位置を少しだけ左にずらしてあります。他にもパラオ共和国が独立に当って国旗をライトブルーにイエローの日の丸にしました……」
ええと……ご節ごもっともやねんけど、頼子さん寝たフリしてるし。
頼子さんは、なにかにつけて、こういうレクチャーされてるんやろねえ。
まあ、その後は、そういう通過する国の食べ物の話になって、機内食にもインドのナンとかカレーとかが出てきて旅の雰囲気は盛り上がった。
バタン
そんなことを思い出してると、ダイニングのドアが、ちょっと乱暴に開いて軍服のソフィーが入ってきて、頼子さんに耳打ち。
いっしゅんビックリした頼子さんやったけど、一言二言やりとりすると、中学の時にイタズラ思いついた時みたいな顔して、うちらに宣告した。
「みんな聞いて、イスタンブールからはオリエント急行で行くわよ!」
有無を言わせんドヤ顔で、その貫録は王女を通り越して女王陛下の貫録やった!
☆・・主な登場人物・・☆
酒井 さくら この物語の主人公 聖真理愛女学院高校一年生
酒井 歌 さくらの母 亭主の失踪宣告をして旧姓の酒井に戻って娘と共に実家に戻ってきた。現在行方不明。
酒井 諦観 さくらの祖父 如来寺の隠居
酒井 諦念 さくらの伯父 諦一と詩の父
酒井 諦一 さくらの従兄 如来寺の新米坊主 テイ兄ちゃんと呼ばれる
酒井 詩(ことは) さくらの従姉 聖真理愛学院大学二年生
酒井 美保 さくらの義理の伯母 諦一 詩の母
榊原 留美 さくらと同居 中一からの同級生
夕陽丘頼子 さくらと留美の先輩 ヤマセンブルグの王位継承者 聖真理愛女学院高校三年生
ソフィー 頼子のガード
月島さやか さくらの担任の先生
古閑 巡里(めぐり) さくらと留美のクラスメート メグリン
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