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326『空中給油』
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せやさかい
326『空中給油』さくら
三年前はユーラシア大陸を横断する航路やった。
それも、自家用とはいえジェット機やったんで13時間ちょっとでエディンバラに着けた。
せやけど、今度はユーラシア大陸の横断がでけへんらしいんです(;'∀')。
ロシアと中国の上空が飛ばれへんて、メグさんが説明してくれる。
「ヤマセンブルグはNATOに加盟しているので、ロシアの上空は飛びません。中国は、この二三日の動向次第では危険になるので通過は避けます。でも、その分、あちこち寄って行けますから楽しんでくださいね」
にっこり微笑むメグさん。うちらも、旅は始まったばっかりなんで「「「「ハーイ(^▽^)/」」」」と元気にお返事する。
「まずは、コクピットの様子を見てみましょう」
メグさんがリモコンを押すと、正面のディスプレーにジョン・スミスとソフィーの後姿。画面の両脇には別画面が映っていて、斜め正面からのふたりの姿。
二人とも操縦かんを握ってるんで、どっちが操縦してんのかよう分からへん。
「すごい、ソフィー先輩が操縦してるよ!」
メグリンが感動。お父さんが自衛隊やさかい、どっちが操縦してるとかは一目瞭然やねんやろなあ。
「なにをやらしても、上達が早いのよ。まあ、レシプロの操縦なんてお茶の子さいさいなんでしょうね」
ちょっと不満げな頼子さん。
「そう言えば、日本語マスターするのも早かったですよね。三年前は翻訳機使って、一生懸命エディンバラの街を案内してくれて……」
「そうよね、あのころのソフィーって留美ちゃんに似てたわよね」
頼子さんがウィンクする。
「え、そうですか(;'∀')」
「うん、せやせや、言葉喋るのがいちいち重大事件みたいな、一生懸命なとことか!」
「そ、そんなことないよ! さくらったら!」
「そんなだったんですか?」
「えと、どうでもええけど、頭の上から言わんとってくれる(^_^;)」
「あ、ごめん」
180超のメグリンは座ってても大きい。
「うちなんか、考える前に喋ってしまうさかいに、あとで『しまったぁ!』て思うこと多いしね」
「「「うん」」」
「ちょ、そんなとこで声揃えんといてくれますぅ」
アハハハハ
「でもね、子どもの頃は、わたしの方がお喋りだったんですよ」
「え、そうなんですか詩(ことは)さん!?」
「うん、ほら『外郎売』ってあるでしょ」
「ういろううり?」
メグリンは分からへんみたい。
「歌舞伎の演目でね、めちゃくちゃ長い口上なのよ」
「いや、最初はね『寿限無(じゅげむ)』やったんよ」
「あ、それは知ってる、日本で一番長い名前!」
「「じゅげむじゅげむ、ごこうのすりきれ、かいじゃり、すいぎょうまつの……」」
うちと詩ちゃんで寿限無のデュエット。
「「「すごいすごい!」」
ちょっと盛り上がる。
「お盆で、うちに来た時ドヤ顔で自慢するのよ、チビさくらが」
「へえ」
「紙に書いたら、調子がいいんで、わたしも半日で憶えてしまって。面白がったお祖父ちゃんが『じゃあ、外郎売をやってみろ』って」
「そうそう、お盆が過ぎるころには詩ちゃん憶えてしもて」
「でも、わたしがいっしょに住むようになったときは、断然お喋りはさくらですけど」
「さくらは中学に入ってタガが外れたのよね」
「あ、それは、お寺に住むようになったからやと思う!」
「「「なんで?」」」
「それまでは、お母さんと2Kのアパートやったし、あんまり喋ったら……」
「だよね、あっという間に部屋の空気吸いつくしちゃう。お寺だったら広いから、少々喋っても吸いつくせない!」
「あ、もう、あたしはバケモンとちゃいます!」
「「「アハハハ」」」
うちらがキャビンでアホな話してる間も、ソフィーは黙々と飛行機を操縦。
さすがのうちらも喋りつかれたころに、ソフィーがキャビンにやってきた。
「あら、やっと休憩?」
「これから空中給油するんです。これは大佐でなければやれません」
「あ、その間は休めるんや!」
うちは、ソフィーと喋れるんが、ちょっと嬉しい。
「横で、サポートしなくちゃならない。10分だけ仮眠」
そう言うと、キャビンの一番後ろまで行ってアイマスクして寝るソフィー。
「やっぱり、きついんだろうね……」
薄く口を開いて、速攻で寝てしまうソフィー。考えたら、ソフィーが人前で寝てるとこ見るのは初めてや。
みんな、自然に静かになる。
「そこまで静かにしなくても大丈夫ですよ」
メグさんが解してくれる。
「空中給油の予定は無かったんです。給油予定の台湾をとばすことになって、それを空中給油で済ませるんです」
そう言えば、ペロシさんが台湾に来るとか言うてた。中国とアメリカがドンパチの寸前やとか。
「どこの国に空中給油してもらうんですか?」
メグリンは、そっちに興味があるみたい。
「見れば分かりますけど、内緒です。これは、大佐の個人的なコネでやるそうですから」
空中給油をさせてもらえる個人的なコネて……ジョン・スミスもすごいねんわ(^_^;)
「よし!」
10分きっかりで起きると、すっかり疲れのとれた顔でコクピットに戻るソフィー。
ソフィーが戻ったコクピットを見ると、窓の向こうに四つもエンジン付けた大きな飛行機のお尻が迫ってる。
「「「「ウワア……」」」」
お尻から羽付きのホースがスルスルと伸びてきて、こっちからもでっかい槍みたいなんがスルスルと伸びて、お互いを探り合う。
ちょっと失敗したら、ホースがプロペラに絡みついて大惨事!?
「さくら、ちょっとヤバイこと想像したでしょ」
頼子さんに怒られる。
なんと、ジョン・スミスは一発でドッキングさせて、そのまま二分ほど。
ホースをパージさせると、給油機は翼を振って行ってしもた。
翼には、日本ではない国のマークが付いてたけど、ナイショです。
そのまま飛行機はインドシナ半島の方角へ飛んでいく。
八時間かけて着陸したのは、タイのスワンナプーム国際空港。
初日は、駐タイ・ヤマセンブルグ大使館で泊ることになりました。
大使館では、面白いものをもらったんやけど、それは、また明日にね。
☆・・主な登場人物・・☆
酒井 さくら この物語の主人公 聖真理愛女学院高校一年生
酒井 歌 さくらの母 亭主の失踪宣告をして旧姓の酒井に戻って娘と共に実家に戻ってきた。現在行方不明。
酒井 諦観 さくらの祖父 如来寺の隠居
酒井 諦念 さくらの伯父 諦一と詩の父
酒井 諦一 さくらの従兄 如来寺の新米坊主 テイ兄ちゃんと呼ばれる
酒井 詩(ことは) さくらの従姉 聖真理愛学院大学二年生
酒井 美保 さくらの義理の伯母 諦一 詩の母
榊原 留美 さくらと同居 中一からの同級生
夕陽丘頼子 さくらと留美の先輩 ヤマセンブルグの王位継承者 聖真理愛女学院高校三年生
ソフィー 頼子のガード
月島さやか さくらの担任の先生
古閑 巡里(めぐり) さくらと留美のクラスメート メグリン
326『空中給油』さくら
三年前はユーラシア大陸を横断する航路やった。
それも、自家用とはいえジェット機やったんで13時間ちょっとでエディンバラに着けた。
せやけど、今度はユーラシア大陸の横断がでけへんらしいんです(;'∀')。
ロシアと中国の上空が飛ばれへんて、メグさんが説明してくれる。
「ヤマセンブルグはNATOに加盟しているので、ロシアの上空は飛びません。中国は、この二三日の動向次第では危険になるので通過は避けます。でも、その分、あちこち寄って行けますから楽しんでくださいね」
にっこり微笑むメグさん。うちらも、旅は始まったばっかりなんで「「「「ハーイ(^▽^)/」」」」と元気にお返事する。
「まずは、コクピットの様子を見てみましょう」
メグさんがリモコンを押すと、正面のディスプレーにジョン・スミスとソフィーの後姿。画面の両脇には別画面が映っていて、斜め正面からのふたりの姿。
二人とも操縦かんを握ってるんで、どっちが操縦してんのかよう分からへん。
「すごい、ソフィー先輩が操縦してるよ!」
メグリンが感動。お父さんが自衛隊やさかい、どっちが操縦してるとかは一目瞭然やねんやろなあ。
「なにをやらしても、上達が早いのよ。まあ、レシプロの操縦なんてお茶の子さいさいなんでしょうね」
ちょっと不満げな頼子さん。
「そう言えば、日本語マスターするのも早かったですよね。三年前は翻訳機使って、一生懸命エディンバラの街を案内してくれて……」
「そうよね、あのころのソフィーって留美ちゃんに似てたわよね」
頼子さんがウィンクする。
「え、そうですか(;'∀')」
「うん、せやせや、言葉喋るのがいちいち重大事件みたいな、一生懸命なとことか!」
「そ、そんなことないよ! さくらったら!」
「そんなだったんですか?」
「えと、どうでもええけど、頭の上から言わんとってくれる(^_^;)」
「あ、ごめん」
180超のメグリンは座ってても大きい。
「うちなんか、考える前に喋ってしまうさかいに、あとで『しまったぁ!』て思うこと多いしね」
「「「うん」」」
「ちょ、そんなとこで声揃えんといてくれますぅ」
アハハハハ
「でもね、子どもの頃は、わたしの方がお喋りだったんですよ」
「え、そうなんですか詩(ことは)さん!?」
「うん、ほら『外郎売』ってあるでしょ」
「ういろううり?」
メグリンは分からへんみたい。
「歌舞伎の演目でね、めちゃくちゃ長い口上なのよ」
「いや、最初はね『寿限無(じゅげむ)』やったんよ」
「あ、それは知ってる、日本で一番長い名前!」
「「じゅげむじゅげむ、ごこうのすりきれ、かいじゃり、すいぎょうまつの……」」
うちと詩ちゃんで寿限無のデュエット。
「「「すごいすごい!」」
ちょっと盛り上がる。
「お盆で、うちに来た時ドヤ顔で自慢するのよ、チビさくらが」
「へえ」
「紙に書いたら、調子がいいんで、わたしも半日で憶えてしまって。面白がったお祖父ちゃんが『じゃあ、外郎売をやってみろ』って」
「そうそう、お盆が過ぎるころには詩ちゃん憶えてしもて」
「でも、わたしがいっしょに住むようになったときは、断然お喋りはさくらですけど」
「さくらは中学に入ってタガが外れたのよね」
「あ、それは、お寺に住むようになったからやと思う!」
「「「なんで?」」」
「それまでは、お母さんと2Kのアパートやったし、あんまり喋ったら……」
「だよね、あっという間に部屋の空気吸いつくしちゃう。お寺だったら広いから、少々喋っても吸いつくせない!」
「あ、もう、あたしはバケモンとちゃいます!」
「「「アハハハ」」」
うちらがキャビンでアホな話してる間も、ソフィーは黙々と飛行機を操縦。
さすがのうちらも喋りつかれたころに、ソフィーがキャビンにやってきた。
「あら、やっと休憩?」
「これから空中給油するんです。これは大佐でなければやれません」
「あ、その間は休めるんや!」
うちは、ソフィーと喋れるんが、ちょっと嬉しい。
「横で、サポートしなくちゃならない。10分だけ仮眠」
そう言うと、キャビンの一番後ろまで行ってアイマスクして寝るソフィー。
「やっぱり、きついんだろうね……」
薄く口を開いて、速攻で寝てしまうソフィー。考えたら、ソフィーが人前で寝てるとこ見るのは初めてや。
みんな、自然に静かになる。
「そこまで静かにしなくても大丈夫ですよ」
メグさんが解してくれる。
「空中給油の予定は無かったんです。給油予定の台湾をとばすことになって、それを空中給油で済ませるんです」
そう言えば、ペロシさんが台湾に来るとか言うてた。中国とアメリカがドンパチの寸前やとか。
「どこの国に空中給油してもらうんですか?」
メグリンは、そっちに興味があるみたい。
「見れば分かりますけど、内緒です。これは、大佐の個人的なコネでやるそうですから」
空中給油をさせてもらえる個人的なコネて……ジョン・スミスもすごいねんわ(^_^;)
「よし!」
10分きっかりで起きると、すっかり疲れのとれた顔でコクピットに戻るソフィー。
ソフィーが戻ったコクピットを見ると、窓の向こうに四つもエンジン付けた大きな飛行機のお尻が迫ってる。
「「「「ウワア……」」」」
お尻から羽付きのホースがスルスルと伸びてきて、こっちからもでっかい槍みたいなんがスルスルと伸びて、お互いを探り合う。
ちょっと失敗したら、ホースがプロペラに絡みついて大惨事!?
「さくら、ちょっとヤバイこと想像したでしょ」
頼子さんに怒られる。
なんと、ジョン・スミスは一発でドッキングさせて、そのまま二分ほど。
ホースをパージさせると、給油機は翼を振って行ってしもた。
翼には、日本ではない国のマークが付いてたけど、ナイショです。
そのまま飛行機はインドシナ半島の方角へ飛んでいく。
八時間かけて着陸したのは、タイのスワンナプーム国際空港。
初日は、駐タイ・ヤマセンブルグ大使館で泊ることになりました。
大使館では、面白いものをもらったんやけど、それは、また明日にね。
☆・・主な登場人物・・☆
酒井 さくら この物語の主人公 聖真理愛女学院高校一年生
酒井 歌 さくらの母 亭主の失踪宣告をして旧姓の酒井に戻って娘と共に実家に戻ってきた。現在行方不明。
酒井 諦観 さくらの祖父 如来寺の隠居
酒井 諦念 さくらの伯父 諦一と詩の父
酒井 諦一 さくらの従兄 如来寺の新米坊主 テイ兄ちゃんと呼ばれる
酒井 詩(ことは) さくらの従姉 聖真理愛学院大学二年生
酒井 美保 さくらの義理の伯母 諦一 詩の母
榊原 留美 さくらと同居 中一からの同級生
夕陽丘頼子 さくらと留美の先輩 ヤマセンブルグの王位継承者 聖真理愛女学院高校三年生
ソフィー 頼子のガード
月島さやか さくらの担任の先生
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