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298『校内探検・図書館ほか』

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せやさかい

298『校内探検・図書館ほか』さくら 




 中学では文芸部やったさかい違いが分かる。


 普通の学校にあるのは『図書室』なんです。そやけど、ここは『図書館』なんです。

『図書室』の『室』いうのは、建物の中の一室のこと。『図書館』いうと独立した一個の建物。

 イメージとしては通い慣れた堺市の中央図書館。

 で、目の前の『真理愛館』は、まさに、この図書館なんですわ!

 神戸の異人館にあってもおかしないクラシックな建物で、屋根はうろこみたいで、真ん中に尖塔が立ってて時計と風見鶏が付いてる。

 入り口のドアには五段の石段。脇にスロープが付いてるのは今風やけど、入り口のドアは重厚な木製でブロンズの看板に『S・MARIA・HOLE』の飾り文字。

 ズイン

 ノブに手を掛けようかと思ったら、自動で開いたんでビックリ。

「うわあ……」

 留美ちゃんが歓声をあげる。

 つられて首を上げると吹き抜けのホール。

 書架は天井まであって、奥に階段を上って二階……にも書架が並んでるみたい。

「今日は見るだけね」

 念を押しておく。留美ちゃんは本の虫やさかい、ほっといたら放課後まで居りかねへん(^_^;)。

「雑誌もラノベも充実してるね!」

「ほんまや」

 中学では、PTAの申し入れで、おもしろいラノベはみんな書架から外されてしもた。

 ラノベにはR15指定のもんなんか、実はほとんどない。

 せやけど、PTAはタイトルとかイラストとかがイカガワシイというだけで禁書目録に入れてしまう。

「あのう、本は、いつから借りられるんですか?」

 こらえきれずにカウンターの係りに質問する留美ちゃん。

「あ、一年生ですね。来週には図書館のガイダンスがあるから、それ以降になります」

 品のよさそうな図書係りの三年生が教えてくれる。

「蔵書数は、いくらくらいなんですか?」

「えと、ちょっと待ってね……」

 図書係りさんは、奥の司書室に聞きに行ってくれる。

「開架図書が15000、閉架図書が20000冊だそうですよ」

「「35000冊(꒪ȏ꒪)!!」」

「あ、声大きいよ」

「「すみません」」

 とりあえずは、驚いたところで図書館を出る。

 用心してたから、昼休みは、まだ五分ほど残ってる。

「あっち行ってみよか?」

「うん」

 足を伸ばしたのは正門入った校舎の脇。

「これは、誰の像?」

 ミッションスクールには似合わへん和服のチョンマゲとロン毛の男女の石像。

「高山右近と細川ガラシャだよ」

「あ、ああ、これがあ!?」

 ビックリしたけど、よう分かってません。大阪に縁のあるキリシタンの人やった……よね?

 奥の方には芝生の丘があって、キリストと、それに額ずくモブキャラさんたちの石像。

「ほかにも、十二使徒とかあるよ、これは……」

 留美ちゃんの目が燃えてくる。

 あやうく十二使徒探しをしそうになるのを我慢して教室に戻りました。


 放課後も見てみたいとこだらけ。

 しかし、不用意に回ると、すごい部活の勧誘に出くわしてしまうので、様子を見ながら探検。

 ひょんなことで、弓道場に入り込んで、生まれて初めて弓を射ったりしたんやけど、また今度話すね。



☆・・主な登場人物・・☆

酒井 さくら    この物語の主人公  聖真理愛女学院高校一年生
酒井 歌      さくらの母 亭主の失踪宣告をして旧姓の酒井に戻って娘と共に実家に戻ってきた。現在行方不明。
酒井 諦観     さくらの祖父 如来寺の隠居
酒井 諦念     さくらの伯父 諦一と詩の父
酒井 諦一     さくらの従兄 如来寺の新米坊主 テイ兄ちゃんと呼ばれる
酒井 詩(ことは) さくらの従姉 聖真理愛学院大学二年生
酒井 美保     さくらの義理の伯母 諦一 詩の母 
榊原 留美     さくらと同居 中一からの同級生 
夕陽丘頼子     さくらと留美の先輩 ヤマセンブルグの王位継承者 聖真理愛女学院高校三年生
ソフィー      頼子のガード

 
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