295 / 432
295『花まつりを忘れてた!』
しおりを挟む
せやさかい
295『花まつりを忘れてた!』さくら
学校いくついでにゴミほり。
いつもより多いゴミ袋に気が付いて、留美ちゃんといっしょに「「あっ!」」と息を飲む。
「花まつりだったんだよ!」
「忘れてた(;'∀')」
四月八日は花まつり。お寺的には『灌仏会(かんぶつえ)』というのは、前に言うたよね。
お釈迦さんの誕生日で、甘茶こさえたり、お花で飾ったり、檀家の婦人部のお婆ちゃんらが大活躍して、お寺の行事としては珍しく華やかな行事。
月始めは憶えてたし、手伝いもしたんやけどね。
「誕生日は祝ってもらったのにね……」
ゴミ袋ぶら下げながら、自分の失敗のように落ち込む瑠璃ちゃん。
「いやいや、うちも完全に抜けてたし……」
「おじさんたちにお詫びしなくっちゃ……」
留美ちゃんが立ち止まる。
「帰ってからでええよ、学校遅れるし」
「う、うん、そうだね……」
お寺というのは段取りのええもんで、ごっついお葬式とかやっても、三十分ほどで全部片付いてしまう。
せやから、片付いてから戻ってくると、お寺はふつうの日常に戻ってるわけで、ボーっとしてると気ぃ付けへんこともある。
はい、今回はボーっとしておりました(^_^;)。
で、なんでボーっとしてたかというと、高校の登校初日。持ち物やら服装、予定のチェックに気ぃとられてて、全然忘れてた。晩御飯のあとに「16歳の誕生日おめでとう!」も言うてもろたんやけど、檀家さんに御不幸があって、あんまりお祝いという風にはいけへんし、おっちゃんとテイ兄ちゃんはお通夜に行ってるし。それで抜けてしもた。
ちゃんと誕生日プレゼントももろたのにねえ、ちょっと自己嫌悪やねんけども、うちが気にしたら留美ちゃんはもっと気にするし。
ドンマイドンマイ!
帰ったら、ふたりで「ごめんなさい」言うことで自転車に跨る。
あ、そうそう、誕生日のプレゼントいうのが、この自転車。
「留美ちゃんの誕生日には早いねんけど、通学の必須アイテムやし、今年はいっしょに言うことで(^_^;)」
詩(ことは)ちゃんがテイ兄ちゃんの代わりに、お祖父ちゃん、おばちゃんといっしょに祝ってくれました。
出資はおっちゃんとお祖父ちゃん、買いに行ってくれたのが詩ちゃんとテイ兄ちゃんということでした。
むろん、二人で「ありがとう!」を十回ぐらい言うたんやけど、花まつり忘れてたら話になりません。
で、自転車で学校まで行くわけやありません。
堺東に、みなさんもご存知『スナックハンゼイ』の敷地に停めさせてもらいます。
これも、テイ兄ちゃんの人脈のお蔭。
堺市の駐輪場もあるねんけど、こっちの方が近いし、駐輪代いらんしね(^_^;)。
「今日からお世話になります!」
お店のマスターに挨拶して、予備の鍵を渡しておく。
お店の都合で動かさならあかんときあるし、うちらがポカして鍵失くした時の用心にね。
駅に着くと電車もすぐに来るし、なんと始業三十分前に学校に着いてしまいました(^_^;)。
☆・・主な登場人物・・☆
酒井 さくら この物語の主人公 聖真理愛女学院高校一年生
酒井 歌 さくらの母 亭主の失踪宣告をして旧姓の酒井に戻って娘と共に実家に戻ってきた。現在行方不明。
酒井 諦観 さくらの祖父 如来寺の隠居
酒井 諦念 さくらの伯父 諦一と詩の父
酒井 諦一 さくらの従兄 如来寺の新米坊主 テイ兄ちゃんと呼ばれる
酒井 詩 さくらの従姉 聖真理愛学院大学二年生
酒井 美保 さくらの義理の伯母 諦一 詩の母
榊原 留美 さくらと同居 中一からの同級生
夕陽丘頼子 さくらと留美の先輩 ヤマセンブルグの王位継承者 聖真理愛女学院高校三年生
ソフィー 頼子のガード
295『花まつりを忘れてた!』さくら
学校いくついでにゴミほり。
いつもより多いゴミ袋に気が付いて、留美ちゃんといっしょに「「あっ!」」と息を飲む。
「花まつりだったんだよ!」
「忘れてた(;'∀')」
四月八日は花まつり。お寺的には『灌仏会(かんぶつえ)』というのは、前に言うたよね。
お釈迦さんの誕生日で、甘茶こさえたり、お花で飾ったり、檀家の婦人部のお婆ちゃんらが大活躍して、お寺の行事としては珍しく華やかな行事。
月始めは憶えてたし、手伝いもしたんやけどね。
「誕生日は祝ってもらったのにね……」
ゴミ袋ぶら下げながら、自分の失敗のように落ち込む瑠璃ちゃん。
「いやいや、うちも完全に抜けてたし……」
「おじさんたちにお詫びしなくっちゃ……」
留美ちゃんが立ち止まる。
「帰ってからでええよ、学校遅れるし」
「う、うん、そうだね……」
お寺というのは段取りのええもんで、ごっついお葬式とかやっても、三十分ほどで全部片付いてしまう。
せやから、片付いてから戻ってくると、お寺はふつうの日常に戻ってるわけで、ボーっとしてると気ぃ付けへんこともある。
はい、今回はボーっとしておりました(^_^;)。
で、なんでボーっとしてたかというと、高校の登校初日。持ち物やら服装、予定のチェックに気ぃとられてて、全然忘れてた。晩御飯のあとに「16歳の誕生日おめでとう!」も言うてもろたんやけど、檀家さんに御不幸があって、あんまりお祝いという風にはいけへんし、おっちゃんとテイ兄ちゃんはお通夜に行ってるし。それで抜けてしもた。
ちゃんと誕生日プレゼントももろたのにねえ、ちょっと自己嫌悪やねんけども、うちが気にしたら留美ちゃんはもっと気にするし。
ドンマイドンマイ!
帰ったら、ふたりで「ごめんなさい」言うことで自転車に跨る。
あ、そうそう、誕生日のプレゼントいうのが、この自転車。
「留美ちゃんの誕生日には早いねんけど、通学の必須アイテムやし、今年はいっしょに言うことで(^_^;)」
詩(ことは)ちゃんがテイ兄ちゃんの代わりに、お祖父ちゃん、おばちゃんといっしょに祝ってくれました。
出資はおっちゃんとお祖父ちゃん、買いに行ってくれたのが詩ちゃんとテイ兄ちゃんということでした。
むろん、二人で「ありがとう!」を十回ぐらい言うたんやけど、花まつり忘れてたら話になりません。
で、自転車で学校まで行くわけやありません。
堺東に、みなさんもご存知『スナックハンゼイ』の敷地に停めさせてもらいます。
これも、テイ兄ちゃんの人脈のお蔭。
堺市の駐輪場もあるねんけど、こっちの方が近いし、駐輪代いらんしね(^_^;)。
「今日からお世話になります!」
お店のマスターに挨拶して、予備の鍵を渡しておく。
お店の都合で動かさならあかんときあるし、うちらがポカして鍵失くした時の用心にね。
駅に着くと電車もすぐに来るし、なんと始業三十分前に学校に着いてしまいました(^_^;)。
☆・・主な登場人物・・☆
酒井 さくら この物語の主人公 聖真理愛女学院高校一年生
酒井 歌 さくらの母 亭主の失踪宣告をして旧姓の酒井に戻って娘と共に実家に戻ってきた。現在行方不明。
酒井 諦観 さくらの祖父 如来寺の隠居
酒井 諦念 さくらの伯父 諦一と詩の父
酒井 諦一 さくらの従兄 如来寺の新米坊主 テイ兄ちゃんと呼ばれる
酒井 詩 さくらの従姉 聖真理愛学院大学二年生
酒井 美保 さくらの義理の伯母 諦一 詩の母
榊原 留美 さくらと同居 中一からの同級生
夕陽丘頼子 さくらと留美の先輩 ヤマセンブルグの王位継承者 聖真理愛女学院高校三年生
ソフィー 頼子のガード
0
お気に入りに追加
2
あなたにおすすめの小説
チェスがしたいだけなのに!
奏穏朔良
ライト文芸
「……なんでこうなった??」
チェスがしたかっただけなのに、いつの間にか反社会勢力のボスに祀りあげられ、暴力団やテロ組織と対決することになる男子高校生の話。
戦犯は上手く動かない表情筋と口である。
****
2023/07/17本編完結しました。
ちまちま番外編あげる予定です。
【注意】勘違いの関係で視点がよく変わります。
見直していますが誤字脱字やりがちです。
ライト文芸大賞にて最高順位が32位でした。投票して下さった読者の皆様本当にありがとうございます!(2023/06/01)
紡ぐ言の葉
千里
ライト文芸
あるところにひとりぼっちの少女が二人いました。
一人の少女は幼い頃に親を悲惨な事故に遭い、搬送先の病院からの裏切り、引き取られた先での酷い扱い。様々なことがあって、彼女からは心因性のもので表情と感情が消えてしまった。しかし、一人のヒーローのような人に会ってから生きていく上で必要最低限必要な感情と、ほんの少しだけ、表情が戻った。それでも又、失うのが怖くてどこか心を閉ざしていた。
そんな中無理矢理にでも扉をこじ開けて心の中にすとんと入ってきた2人の人がいた。少女はそんな2人のことを好きになった。
一人は幼い頃からの産みの家族からの酷い扱い、そんな事情があって暖かく迎えてくれた、新しい家族の母親の早すぎる死。心が壊れるには十分すぎたのだった。人に固執せず、浅い付き合いでなるべく自分か消えても何も残らないように生きていようとしていた。
そんな中、何度も何度も手を伸ばして救い出してくれたのは一人の少年の存在で、死のうとしているといつも怒る一人の少女の姿があった。
これはそんな2人が紡いでいく一つの波乱万丈な人生のお話────。
三年で人ができること
桃青
ライト文芸
もし三年後に死ぬとしたら。占いで自分にもう三年しか生きられないと告げられた男は、死を感じながら、平凡な日常を行き尽くそうとする。壮大でもなく、特別でもなく、ささやかに生きることを、残された時間で模索する、ささやかな話です。
ベスティエン ――強面巨漢×美少女の〝美女と野獣〟な青春恋愛物語
花閂
ライト文芸
人間の女に恋をしたモンスターのお話がハッピーエンドだったことはない。
鬼と怖れられモンスターだと自覚しながらも、恋して焦がれて愛さずにはいられない。
恋するオトメと武人のプライドの狭間で葛藤するちょっと天然の少女・禮と、モンスターと恐れられるほどの力を持つ強面との、たまにシリアスたまにコメディな学園生活。
名門お嬢様学校に通う少女が、彼氏を追いかけて最悪の不良校に入学。女子生徒数はわずか1%という特異な環境のなか、入学早々にクラスの不良に目をつけられたり暴走族にさらわれたり、学園生活は前途多難。
周囲に鬼や暴君やと恐れられる強面の彼氏は禮を溺愛して守ろうとするが、心配が絶えない。
一よさく華 -嵐の予兆-
八幡トカゲ
ライト文芸
暮れ六つ過ぎ。
十日ごとに遊郭に現れる青年がいる。
柚月一華(ゆづき いちげ)。
元人斬り。
今は、かつて敵であった宰相、雪原麟太郎(ゆきはら りんたろう)の小姓だ。
人々の好奇の目も気に留めず、柚月は「白玉屋」の花魁、白峯(しらみね)の元を訪れる。
遊ぶためではない。
主の雪原から申し渡された任務のためだ。
隣国「蘆(あし)」の謀反の気配。
それを探る報告書を受け取るのが、柚月の今回の任務だ。
そんな中、柚月にじわりじわりと迫ってくる、人斬りだったことへの罪の意識。
「自分を大事にしないのは、自分のことを大事にしてくれている人を、大事にしていない」
謎の言葉が、柚月の中に引っかかって離れない。
「自分を大事にって、どういうことですか?」
柚月の真直ぐな問いに、雪原は答える。
「考えなさい。その答えは、自分で見つけなさい」
そう言って、父のように優しく柚月の頭を撫でた。
一つよに咲く華となれ。
異世界でゆるゆる生活を満喫す
葉月ゆな
ファンタジー
辺境伯家の三男坊。数か月前の高熱で前世は日本人だったこと、社会人でブラック企業に勤めていたことを思い出す。どうして亡くなったのかは記憶にない。ただもう前世のように働いて働いて夢も希望もなかった日々は送らない。
もふもふと魔法の世界で楽しく生きる、この生活を絶対死守するのだと誓っている。
家族に助けられ、面倒ごとは優秀な他人に任せる主人公。でも頼られるといやとはいえない。
ざまぁや成り上がりはなく、思いつくままに好きに行動する日常生活ゆるゆるファンタジーライフのご都合主義です。
ホンモノの自分へ
真冬
ライト文芸
小学生の頃から酷いいじめを受け続けてきた天野樹。
そして、小学生の頃に唯一の味方で親友の死、その後悪化するいじめ。心の扉を固く閉ざした樹は人との関わりを拒絶し続けて生きていくと決めたが、高校2年になり出会った人たちは樹をそうさせててはくれなかった。
彼らと出会って少しずつ樹の心境も変わっていく。
そんな、樹たちの日常と成長を描いた青春ストーリー
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる