上 下
293 / 432

293『大仙公園 I(アイ) のミステリー・2』

しおりを挟む
せやさかい

293『大仙公園 I(アイ) のミステリー・2』さくら   




 ここで撮ってくれたのねえ!

 大仙公園に着いて、頼子さんの第一声。

「え?」

 分からんで、いっしゅんアホ顔のあたし。

「あ、わたしたちも楽しかったです!」

 留美ちゃんがなにやらジェスチャーして笑顔で目配せ。

「あ、思い出した!」

 アホのあたしも、留美ちゃんの心配りに二年前の春を思い出す。

 コ□ナの第二波で、ヤマセンブルグから戻ってこれんようになった頼子先輩のために、留美ちゃんと二人で大仙公園中の桜を撮りまくったんや。

 頼子さんも、お祖母さんの女王陛下も喜んでくれはって、うちも留美ちゃんも中学時代のええ思い出になってる。

 スマホ、まだ持ってへんかったさかい、テイ兄ちゃんのビデオカメラを借りた。

 留美ちゃんは、ちゃんと、そのビデオカメラで撮影する仕草をしてくれてた。スマホの仕草やったら分からへんかったと思う。留美ちゃんは、ほんまに行き届いた子ぉや。

 セイ!

 後ろで掛け声、思わず振り返ると、ソフィーが空中二回転して着地するとこやった。

「なにしてんの?」

「はい、あまりの麗らかさに、ジャンプしたい衝動にかられました。でも、目標も発見出来ました」

 サッと指さした方向は、うちがあてずっぽうに歩いてる方向よりも20度ほどズレてる……っていうか、ハイ、うちの方がズレてました! ごめんなさい!

「ほんとうだ『I』が一個多いわよ!」

 アルファベットが並んでるだけやさかいに、裏から見ても『I』が一個多いのが分かる。

「よし、正体を確認!」

 頼子さんの掛け声で、全員でダッシュ!


 ああ、そういうわけか……。


 いっしゅんで全員が納得。

 D A I S E N I の最後の I には、PARKと彫り込んであります。

 つまり、DAISENPARK(ダイセンパーク)ということ。

「これデザインした人は、とてもバランス感覚がいいですね」

 ソフィーが腕組みして感心。

「そうだよね、I が一本くることでSが真ん中に来て、とってもバランスがいいよ」

「SはSAKURAのSやんか!」

 え?

 頼子さんとソフィーがポカンとして、留美ちゃんがクスクス笑う。

「あ、そうかさくらのイニシャルだ」

「自分もイニシャルはSです」

 そうか、ソフィーもイニシャルはSや(^_^;)

「わたしも、苗字は榊原だからSだよ」

「グヌヌヌ……」

「あ、でも、さくらは『酒井さくら』だから、ダブルSじゃない!」

「頼子さん、かっしこーい!」

「では、記念撮影しましょうか」

 いつのまにか、ジョン・スミスもやってきて、みんなでDAISENの前で並んだり、うしろから顔出したりして賑やかなひと時を過ごしました。

「ほんなら、ティータイム(^#▽#^)!」

 アホみたいに元気な声が聞こえたかと思うと、テイ兄ちゃん。

 月参りが二件あるのんで、今日は無理のハズやったんやけど、どこかで帳尻合わせてきたんやろね、嬉しそうにランチボックスぶら下げてやってきよった。

「テイ兄ちゃん、作ったんですか?」

 頼子さんが目を輝かせる。

 まさか……このクソ坊主は、料理はからっきしのハズやで?

「はい……と言いたいですけど、堺東でスナックやってる友だちが、自分らの花見のついでに作ってくれました」

「すごいですね、テイ兄ちゃんの人脈は!」

 さすが、ヤマセンブルグの王女さま。どう転んでも、褒めるツボは心得てはります。

「あ、この味は……」

 サンドイッチをつまんだとこで、留美ちゃんが思いついた。

「え、なに?」

「これ、カラオケスナック『ハンゼイ』でしょ!?」

「あ、ああ」

 あがり症の留美ちゃんの音楽のテストのために、お店借り切って練習したとこや。

 そう言えば、あの時も、サンドイッチが出てた。

 ジョン・スミスが、みんなにお茶を淹れてくれて……え、一人分多い。

「これは、ぼくの先輩の分。花見の好きな人だったんで……」

 そう言って、小さな写真たてを出した。

 チラ見すると、ジョン・スミスと同じユニフォームの男の人。

 あとで、頼子さんに聞くと、ジョージ・クロイツ中佐という人で、領事館の二代前の警備部長。先日ウクライナで亡くなったんやそうです。

 見上げると幸せ色の春霞、アホ言いながらお花見ができる幸せをかみしめました……。

 
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

ラノベ作家と有名声優が犯した一夜の過ち

折原さゆみ
ライト文芸
私、秋葉沙頼(あきばさより)はラノベ作家である。ペンネーム「浅羽季四李(あさばきより)」で初の書籍がアニメを果たす。 自分の作品がアニメ化を果たし、さらに大ファンである超人気声優の神永浩二(かみながこうじ)が作品に起用された。 まさにあの時は人生の絶頂期だった。 あの日の夜の過ちさえなければ、私はそのまま幸せな生活が続いたのだろうか。 これは、私とあの男の一夜の過ちが犯した結末を示した物語。彼との関係にけじめをつけるのに、15年もかかってしまった。 ※他サイトからの転載となります。

サンドアートナイトメア

shiori
ライト文芸
(最初に)  今を生きる人々に勇気を与えるような作品を作りたい。  もっと視野を広げて社会を見つめ直してほしい。  そんなことを思いながら、自分に書けるものを書こうと思って書いたのが、今回のサンドアートナイトメアです。  物語を通して、何か心に響くものがあればと思っています。 (あらすじ)  産まれて間もない頃からの全盲で、色のない世界で生きてきた少女、前田郁恵は病院生活の中で、年齢の近い少女、三由真美と出合う。  ある日、郁恵の元に届けられた父からの手紙とプレゼント。  看護師の佐々倉奈美と三由真美、二人に見守られながら開いたプレゼントの中身は額縁に入れられた砂絵だった。  砂絵に初めて触れた郁恵はなぜ目の見えない自分に父は砂絵を送ったのか、その意図を考え始める。  砂絵に描かれているという海と太陽と砂浜、その光景に思いを馳せる郁恵に真美は二人で病院を抜け出し、砂浜を目指すことを提案する。  不可能に思えた願望に向かって突き進んでいく二人、そして訪れた運命の日、まだ日の昇らない明朝に二人は手をつなぎ病院を抜け出して、砂絵に描かれていたような砂浜を目指して旅に出る。    諦めていた外の世界へと歩みだす郁恵、その傍に寄り添い支える真美。  見えない視界の中を勇気を振り絞り、歩みだす道のりは、遥か先の未来へと続く一歩へと変わり始めていた。

「桜の樹の下で、笑えたら」✨奨励賞受賞✨

悠里
ライト文芸
高校生になる前の春休み。自分の16歳の誕生日に、幼馴染の悠斗に告白しようと決めていた心春。 会う約束の前に、悠斗が事故で亡くなって、叶わなかった告白。 (霊など、ファンタジー要素を含みます) 安達 心春 悠斗の事が出会った時から好き 相沢 悠斗 心春の幼馴染 上宮 伊織 神社の息子  テーマは、「切ない別れ」からの「未来」です。 最後までお読み頂けたら、嬉しいです(*'ω'*) 

最遅で最強のレベルアップ~経験値1000分の1の大器晩成型探索者は勤続10年目10度目のレベルアップで覚醒しました!~

ある中管理職
ファンタジー
 勤続10年目10度目のレベルアップ。  人よりも貰える経験値が極端に少なく、年に1回程度しかレベルアップしない32歳の主人公宮下要は10年掛かりようやくレベル10に到達した。  すると、ハズレスキル【大器晩成】が覚醒。  なんと1回のレベルアップのステータス上昇が通常の1000倍に。  チートスキル【ステータス上昇1000】を得た宮下はこれをきっかけに、今まで出会う事すら想像してこなかったモンスターを討伐。  探索者としての知名度や地位を一気に上げ、勤めていた店は討伐したレアモンスターの肉と素材の販売で大繁盛。  万年Fランクの【永遠の新米おじさん】と言われた宮下の成り上がり劇が今幕を開ける。

星渦のエンコーダー

山森むむむ
ライト文芸
繭(コクーン)というコックピットのような機械に入ることにより、体に埋め込まれたチップで精神を電脳世界に移行させることができる時代。世界は平和の中、現実ベースの身体能力とアバターの固有能力、そして電脳世界のありえない物理法則を利用して戦うレースゲーム、「ネオトラバース」が人気となっている。プロデビューし連戦連勝の戦績を誇る少年・東雲柳は、周囲からは順風満帆の人生を送っているかのように見えた。その心の断片を知る幼馴染の桐崎クリスタル(クリス)は彼を想う恋心に振り回される日々。しかしある日、試合中の柳が突然、激痛とフラッシュバックに襲われ倒れる。搬送先の病院で受けた治療のセッションは、彼を意のままに操ろうとする陰謀に繋がっていた。柳が競技から離れてしまうことを危惧して、クリスは自身もネオトラバース選手の道を志願する。 二人は名門・未来ノ島学園付属高専ネオトラバース部に入部するが、その青春は部活動だけでは終わらなかった。サスペンスとバーチャルリアリティスポーツバトル、学校生活の裏で繰り広げられる戦い、そしてクリスの一途な恋心。柳の抱える過去と大きな傷跡。数々の事件と彼らの心の動きが交錯する中、未来ノ島の日々は一体どう変わるのか?

ロボ彼がしたい10のこと

猫屋ちゃき
ライト文芸
恋人の死に沈んでいる星奈のもとに、ある日、怪しげな二人組が現れる。 その二人組はある人工知能およびロボット制御の研究員を名乗り、星奈に人型ロボットのモニターになってくれないかと言い出す。 人間の様々な感情や経験のサンプルを採らせるのがモニターの仕事で、謝礼は弾むという。 高額の謝礼と、その精巧な人形に見える人型ロボットが亡くなった恋人にどことなく似ていることに心惹かれ、星奈はモニターを引き受けることに。 モニターの期間は三ヶ月から半年。 買い物に行ったり、映画を見たり、バイトをしたり…… 星奈とロボットの彼・エイジの、【したいことリスト】をひとつひとつ叶えていく日々が始まった。

冬迷宮

関谷俊博
ライト文芸
「私は冬空を抱きしめていたい」  そう言ったのは則子だった。 完結しました。

処理中です...