せやさかい

武者走走九郎or大橋むつお

文字の大きさ
上 下
291 / 432

291『今日から高校生!』

しおりを挟む
せやさかい

291『今日から高校生!』さくら     




 今日から高校生!


 企んだわけやないけど、早起きしてお風呂に入る。

 朝の色々で、面白いこともあったんやけど、ここからは入学式。

 
 入学式にはテイ兄ちゃんとおばちゃんが来てくれる。

 お祖父ちゃんとかも来たがってたんやけど、新入生一人につき一人の保護者しか認められへんので仕方がない。


 まずは、昇降口の入り口に貼ってあるクラス表を見る。

「「あった!」」

 留美ちゃんと声が重なる。

「同じクラスだ٩(๑^o^๑)۶!」

 一年に一回するかどうかの笑顔で喜ぶ留美ちゃん!

 中学の時と同じく、前と後ろ(うちの苗字が『酒井』で、留美ちゃんは『榊原』やから)の席。

「え、うそ……」

「え、どないしたん?」

「担任の先生……」

「え……あ!?」

 
 一年B組  担任 月島さやか


 物覚えのええ人は憶えてると思うねんけど、月島さやか先生は、二年の時から担任やってもろてる先生。

 新任で、うちらのクラス持ってくれはった笑顔の素敵な先生。

 その特徴的な笑顔から、生徒からはペコちゃん先生と呼ばれてる。

「同姓同名だよね?」

 先生言うてた――うちの近所は月島が多いの。昔から住んでるから辿っていけば親類なんだけどね――

 先生の家は神社やさかい、当然古い家系で、近所が親類だらけやっても不思議やない。

「先生の『さやか』は漢字やったかなあ……」

 教室で待つこと五分、むろん緊張のしまくり!

「「あ!?」」

 思わず声に出てしもて、教室の注目を浴びてしまう。

 せやかて、入ってきたピンクスーツの担任は、まごうかたなきペコちゃん先生!

「担任の月島です。自己紹介とかは後程にして、入学式についての注意をします」

 めっちゃポーカーフェイスというか、アナ雪のエルサが雪の女王になった時みたいな冷たい顔で、事務的に説明する。

 いよいよ時間になって、廊下に並んだ時も、うちのピースサインも無視して、みんなの服装チェック。ひょっとして、この人はパラレルワールドからやってきた中学の先生をやってないペコちゃん先生?


 やがて威風堂々のBGM……と思たら吹部の生演奏流れるうちに式場へ。


 やがて、全員が揃ったところで教頭先生のMCで入学式が始まる。

 国歌斉唱から始まるのは、小中学校といっしょやねんけど、校歌斉唱でぶったまげた!

 なんと、伴奏のメインがパイプオルガン!

 おお! なんという荘厳な響き!

 今にも、天使さんに先導されて、聖母マリアさんが天下ってきそうな。

 いっしゅん、阿弥陀来迎図を思い出してみたけど、阿弥陀さんには合いません。

 理事長、校長先生始め主だった先生がウィンプル被った修道女姿いうのんも感激!

 仏教界で、こういう場面に耐えられるのんは、去年、お亡くなりになった瀬戸内寂聴さんくらいかも。


 で、式は進んで担任紹介。


「B組担任、月島さやか。本日4月1日付で、堺市立安泰中学からの転職……」

 MCの教頭先生の解説で、ホンマモンのペコちゃん先生やということが判明!

 なんや、胸がサワサワしてきたとこで、生徒会長の挨拶。

「あ、百武真鈴!?」

 紹介は、生徒会長田中真央やったけど、頼子先輩から話を聞いてたうちと留美ちゃんは、田中真央が『恋するマネキン』の人気声優やということを知ってる。

「さくら、くち、くち!」

 留美ちゃんに注意される。ビックリしたうちは、口を半開きにしたままでした(^_^;)。

 さすがは百武真鈴。きれいな声と読み方やったけど、声優らしさは感じさせへんかった。

 生徒の中には気ぃついてる子ぉも居てると思うねんけど、うちみたいに口を半開きにしてるアホは居てませんでした。


「さくら! 留美! 入学おめでとう!」


 式が終わってピロティーに出ると、我が先輩、頼子さんがお日様みたいな笑顔で待ち構えていてくれてました。

 一歩下がったとこには、ガード兼ご学友のソフィーもニコニコの笑顔。

 ソフィーって、ご学友モードでは、こんなフレンドリーな表情するんや!

 いっぱい発見したりビックリしたり。

 ペコちゃん先生のことは、まだ謎やったけど、目くるめく驚きのうちに、酒井さくらの高校生活が始まった!


☆ なんとか、さくらの中学時代を終えて、高校時代に突入することができました。根気よく付き合ってくださった読者のみなさんのお蔭です、ありがとうございます。まだまだ未熟な物語ですが、これからも、読んでいただければ幸いです。

                  大橋 むつお 

 
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

"わたし"が死んで、"私"が生まれた日。

青花美来
ライト文芸
目が覚めたら、病院のベッドの上だった。 大怪我を負っていた私は、その時全ての記憶を失っていた。 私はどうしてこんな怪我をしているのだろう。 私は一体、どんな人生を歩んできたのだろう。 忘れたままなんて、怖いから。 それがどんなに辛い記憶だったとしても、全てを思い出したい。 第5回ライト文芸大賞にて奨励賞を受賞しました。ありがとうございました。

腕時計に従う僕と社会における男女の話

碧井夢夏
ライト文芸
新社会人1年目、会社にはまだ慣れない。 おはようございますを返してくれる憧れの先輩、宮垣さんに会えること以外、僕には楽しみが無い。 そんな毎日を過ごしていたある日、自分のために買ったスマートウォッチから指令が下る。 僕の守護霊を名乗る腕時計の住人は、どうやら死んだ祖父のようでーー? 面識のない自称祖父のいたずらで、女性との人間関係が変わっていった僕の毎日。 これは、社会人ラブコメの皮を被った単なるコメディかもしれないしヒューマンドラマかもしれないしそれともまた違うかもしれない。 コメディ要素強めです。

【完結】離婚の危機!?ある日、妻が実家に帰ってしまった!!

つくも茄子
ライト文芸
イギリス人のロイドには国際結婚をした日本人の妻がいる。仕事の家庭生活も順調だった。なのに、妻が実家(日本)に戻ってしまい離婚の危機に陥ってしまう。美貌、頭脳明晰、家柄良しの完璧エリートのロイドは実は生活能力ゼロ男。友人のエリックから試作段階の家政婦ロボットを使わないかと提案され、頷いたのが運のツキ。ロイドと家政婦ロボットとの攻防戦が始まった。

最後の思い出に、魅了魔法をかけました

ツルカ
恋愛
幼い時からの婚約者が、聖女と婚約を結びなおすことが内定してしまった。 愛も恋もなく政略的な結びつきしかない婚約だったけれど、婚約解消の手続きの前、ほんの短い時間に、クレアは拙い恋心を叶えたいと願ってしまう。 氷の王子と呼ばれる彼から、一度でいいから、燃えるような眼差しで見つめられてみたいと。 「魅了魔法をかけました」 「……は?」 「十分ほどで解けます」 「短すぎるだろう」

後宮の棘

香月みまり
キャラ文芸
蔑ろにされ婚期をのがした25歳皇女がついに輿入り!相手は敵国の禁軍将軍。冷めた姫vs堅物男のチグハグな夫婦は帝国内の騒乱に巻き込まれていく。 ☆完結しました☆ スピンオフ「孤児が皇后陛下と呼ばれるまで」の進捗と合わせて番外編を不定期に公開していきます。 第13回ファンタジー大賞特別賞受賞! ありがとうございました!!

すべてを奪われた英雄は、

さいはて旅行社
BL
アスア王国の英雄ザット・ノーレンは仲間たちにすべてを奪われた。 隣国の神聖国グルシアの魔物大量発生でダンジョンに潜りラスボスの魔物も討伐できたが、そこで仲間に裏切られ黒い短剣で刺されてしまう。 それでも生き延びてダンジョンから生還したザット・ノーレンは神聖国グルシアで、王子と呼ばれる少年とその世話役のヴィンセントに出会う。 すべてを奪われた英雄が、自分や仲間だった者、これから出会う人々に向き合っていく物語。

フェンリルさんちの末っ子は人間でした ~神獣に転生した少年の雪原を駆ける狼スローライフ~

空色蜻蛉
ファンタジー
真白山脈に棲むフェンリル三兄弟、末っ子ゼフィリアは元人間である。 どうでもいいことで山が消し飛ぶ大喧嘩を始める兄二匹を「兄たん大好き!」幼児メロメロ作戦で仲裁したり、たまに襲撃してくる神獣ハンターは、人間時代につちかった得意の剣舞で撃退したり。 そう、最強は末っ子ゼフィなのであった。知らないのは本狼ばかりなり。 ブラコンの兄に溺愛され、自由気ままに雪原を駆ける日々を過ごす中、ゼフィは人間時代に負った心の傷を少しずつ癒していく。 スノードームを覗きこむような輝く氷雪の物語をお届けします。 ※今回はバトル成分やシリアスは少なめ。ほのぼの明るい話で、主人公がひたすら可愛いです!

スライム10,000体討伐から始まるハーレム生活

昼寝部
ファンタジー
 この世界は12歳になったら神からスキルを授かることができ、俺も12歳になった時にスキルを授かった。  しかし、俺のスキルは【@&¥#%】と正しく表記されず、役に立たないスキルということが判明した。  そんな中、両親を亡くした俺は妹に不自由のない生活を送ってもらうため、冒険者として活動を始める。  しかし、【@&¥#%】というスキルでは強いモンスターを討伐することができず、3年間冒険者をしてもスライムしか倒せなかった。  そんなある日、俺がスライムを10,000体討伐した瞬間、スキル【@&¥#%】がチートスキルへと変化して……。  これは、ある日突然、最強の冒険者となった主人公が、今まで『スライムしか倒せないゴミ』とバカにしてきた奴らに“ざまぁ”し、美少女たちと幸せな日々を過ごす物語。

処理中です...