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273『出願』
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せやさかい
273『出願』さくら
ガタンゴトン ガタンゴトン ガタンゴトン ガタンゴトン
昨日までの寒さが、ちょびっとだけ緩んだ昼下がり、あたしは大和川を超えてるとこ。
いつやったか、言うたよね。
堺の中学生が大和川を超えるのは、ちょっとだけ特別なことやて。
ミナミに遊びに行くか(ミナミは堺からは北やねんけど、こういう場合でも『ミナミに行く』という)、親類の用事とか、部活の遠征とか。まあ、年に数回しかないやろという特別なことのため。
国語やったか社会やったかで習った『ハレの日のハレの行い』なんですわ。
で、今日は、一生に何回もないハレ中のハレ!
入学試験の願書を、留美ちゃんと二人、聖真理愛(せいまりあ)学院に持っていくとこデス!
「あ、それってソフィーの!?」
「あ、せやね。ソフィーが『デス』って付けるのんて、こんな感じやってんやろねえ(^▽^)」
「アハハ、頼子さんのガードって、気合い入れなきゃできないもんね」
「あ、頼子さんに会うたら、言うたろお」
「あ、いや、あくまでソフィーの受け止め方だから」
「アハハ、分かってるよ。とにかく、新鮮なドキドキ感やねえ」
「ドキドキはいいんだけども、子どもみたいに窓向いて座るのは……」
「ええやんか、お客さん少ないねんし!」
子どもっぽいことは分かってる。
せやけど、この、ハレの喜びをかみしめたいわけですよ。
「ねえ、真理愛受けるのん、うちらだけかなあ?」
「どうだろ……」
「せやかて、真理愛のセット(願書とか内申書とか)貰って、電車に乗ってるのん、うちらだけやし」
「噂だけど、当落線上にいる子は出願状況見て、ギリギリまで様子見するって言うよ」
「え、そうなん!?」
「あ、噂だから(^_^;)」
「いや、きっとそうやし。うん、そうや。せやさかい私学は出願期間が長いんや!」
うちは、もう余裕のよっちゃんいう気になってきた!
「あ、あたしたち専願だしぃ」
「あ、そうか、専願や! うちらは真理愛命デス!」
「こ、声大きいよ(;'∀')!」
「あ、ごめん(^_^;)」
さすがに駅に着いてからは大人しい……せやかて、他の学校から願書持ってきた子ぉらといっしょになってるさかいね。
「みんな賢そうに見えるねえ……」
「そりゃ、出願だもん。さくらだって、ブラウスの第一ボタンまで停まってるし」
「え、そら、出願……て、せやねえ」
あっさり出願は終わって、正門に向かってると、留美ちゃんが袖を引く。
「ちょ、あれ、頼子さんだよ」
「え?」
見上げると、三階の廊下で頼子さんが女生徒と話してる。頼子さんの後ろにはソフィーがポーカーフェイス。
なにやら真剣に話してるご様子で、あたしは、うっかり上げかけた手ぇを下ろした。
「あ、あの人……」
留美ちゃんは、頼子さんと喋っている女生徒に注目。
「どないかした?」
「あ、いや……」
すると、ソフィーが半身の姿勢のままうちらを見た。
見たんやけど――今は声を掛けないで――というオーラを感じた。
口に出さんでも、そういう意思が伝わるのは、付き合いが長いから?
「ソフィーのテレパシーだよ、いくよ」
「あ、ちょ、なんか面白そうやのにい」
留美ちゃんは、そんなうちの野次馬根性無視して、ズンズンと歩いて行った。
273『出願』さくら
ガタンゴトン ガタンゴトン ガタンゴトン ガタンゴトン
昨日までの寒さが、ちょびっとだけ緩んだ昼下がり、あたしは大和川を超えてるとこ。
いつやったか、言うたよね。
堺の中学生が大和川を超えるのは、ちょっとだけ特別なことやて。
ミナミに遊びに行くか(ミナミは堺からは北やねんけど、こういう場合でも『ミナミに行く』という)、親類の用事とか、部活の遠征とか。まあ、年に数回しかないやろという特別なことのため。
国語やったか社会やったかで習った『ハレの日のハレの行い』なんですわ。
で、今日は、一生に何回もないハレ中のハレ!
入学試験の願書を、留美ちゃんと二人、聖真理愛(せいまりあ)学院に持っていくとこデス!
「あ、それってソフィーの!?」
「あ、せやね。ソフィーが『デス』って付けるのんて、こんな感じやってんやろねえ(^▽^)」
「アハハ、頼子さんのガードって、気合い入れなきゃできないもんね」
「あ、頼子さんに会うたら、言うたろお」
「あ、いや、あくまでソフィーの受け止め方だから」
「アハハ、分かってるよ。とにかく、新鮮なドキドキ感やねえ」
「ドキドキはいいんだけども、子どもみたいに窓向いて座るのは……」
「ええやんか、お客さん少ないねんし!」
子どもっぽいことは分かってる。
せやけど、この、ハレの喜びをかみしめたいわけですよ。
「ねえ、真理愛受けるのん、うちらだけかなあ?」
「どうだろ……」
「せやかて、真理愛のセット(願書とか内申書とか)貰って、電車に乗ってるのん、うちらだけやし」
「噂だけど、当落線上にいる子は出願状況見て、ギリギリまで様子見するって言うよ」
「え、そうなん!?」
「あ、噂だから(^_^;)」
「いや、きっとそうやし。うん、そうや。せやさかい私学は出願期間が長いんや!」
うちは、もう余裕のよっちゃんいう気になってきた!
「あ、あたしたち専願だしぃ」
「あ、そうか、専願や! うちらは真理愛命デス!」
「こ、声大きいよ(;'∀')!」
「あ、ごめん(^_^;)」
さすがに駅に着いてからは大人しい……せやかて、他の学校から願書持ってきた子ぉらといっしょになってるさかいね。
「みんな賢そうに見えるねえ……」
「そりゃ、出願だもん。さくらだって、ブラウスの第一ボタンまで停まってるし」
「え、そら、出願……て、せやねえ」
あっさり出願は終わって、正門に向かってると、留美ちゃんが袖を引く。
「ちょ、あれ、頼子さんだよ」
「え?」
見上げると、三階の廊下で頼子さんが女生徒と話してる。頼子さんの後ろにはソフィーがポーカーフェイス。
なにやら真剣に話してるご様子で、あたしは、うっかり上げかけた手ぇを下ろした。
「あ、あの人……」
留美ちゃんは、頼子さんと喋っている女生徒に注目。
「どないかした?」
「あ、いや……」
すると、ソフィーが半身の姿勢のままうちらを見た。
見たんやけど――今は声を掛けないで――というオーラを感じた。
口に出さんでも、そういう意思が伝わるのは、付き合いが長いから?
「ソフィーのテレパシーだよ、いくよ」
「あ、ちょ、なんか面白そうやのにい」
留美ちゃんは、そんなうちの野次馬根性無視して、ズンズンと歩いて行った。
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