上 下
240 / 432

240『ネットサーフィンと朝顔の種』

しおりを挟む
せやさかい

240『ネットサーフィンと朝顔の種』さくら     





 留美ちゃんも詩(ことは)ちゃんも居てへん日曜日。


 留美ちゃんは奨学金のことで親類の人に会いに行ってる。

 詩ちゃんは、大学の友だちに会いに行って、夕方まではうち一人や

 こういう時は、ダラダラしてしまう。

 机の前に座って、ボーっとネットばっかし。

 こういうのネットサーフィンていうのんかなあ?

 ユーチューブとかで動画ばっかし。

 最初はね、コ□ナ第五波がピークを過ぎたかどうか、見たかった。

 正直ね、コ□ナはウンザリです。

 二学期になって、それまで自粛やった部活が禁止になった。

 文芸部は、ほとんど本堂裏の部屋を使うから、闇でやれんこともないねんけど、やっぱり無理。

 お寺発のコ□ナは、普通の家よりも影響が大きいからね。

 
 この二日ほど感染者グラフが穏やか……というか、減り始めてる。

 まだまだ油断はでけへんやろけど、ちょっと希望が見えてきたかな……。

 中国の大連いうとこでビル火災。

 上層階やから、まあ、そこから上が燃えるんやろと思たら、なんと下の階に燃え移って、ほぼ全焼。

 小中高生の自殺が増えて、この分では史上最高になるらしい。

 うちも留美ちゃんも、その心配はない。

 うちは、お寺やいうこともあるのんか、家族は七人と一匹。

 時にはウザいと思うこともあるけど、無事に15歳の夏を過ごせてるのんは、うちを除く6人と一匹のお蔭。

 南無阿弥陀仏……ポリ。

 ポリいうのんは、おかきを齧る音。

 お寺は、お供えとかがあるさかい、お八つには事欠きません。


 アフガニスタンで自爆テロ。

 最初、死者の数は60人やったけど、いま見たら100人超になってる。

 怖いなあ……世界が平和であることを祈ります……ポリ。

 次の動画……え……クリックする手ぇが停まってしまう。


 お、お母さん!?


 チャドルを被ってるけど、この特徴のある、でも愛想のない目ぇは、もう一年近く帰ってこーへん、うちのお母さん?

 カブール空港の前、事件後の殺伐とした映像に写ってる。

 ほんの数秒やから、すぐに過ぎてしまう。

 プレイバック!

 え、なんで?

 今度は見つけられへん。

 微妙にアングルが違う。

 たった今、更新された?

 
 見間違い……かなあ?


 うちでは、お母さんの話は、ちょっとタブー。

 あたしが口にせんかぎり話題になることはあれへん……今のはなんかの見間違いや。

 
 人参とジャガイモの油少なめでできる天ぷら。

 レシピを書き写す。

 よし、これならうちでもできる。

 キッチンへ行こうと階段を下りると、お祖父ちゃんの声。

『さくら、朝顔の種とれるようになったでえ!』

「うん、いま行く!」


 元気に返事して境内に向かう。

 頭を切り替えられるんやったらなんでもええ。

 ガラガラ

 ガラス戸を開けると、きつい日差しに、いっしゅんホワイトアウト。

 それが戻ると、お祖父ちゃんの笑顔。

 仲良く種を回収して、夕食の話題ができました。

 
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

10秒で読めるちょっと怖い話。

絢郷水沙
ホラー
 ほんのりと不条理なギャグが香るホラーテイスト・ショートショートです。意味怖的要素も含んでおりますので、意味怖好きならぜひ読んでみてください。(毎日昼頃1話更新中!)

観察者たち

崎田毅駿
ライト文芸
 夏休みの半ば、中学一年生の女子・盛川真麻が行方不明となり、やがて遺体となって発見される。程なくして、彼女が直近に電話していた、幼馴染みで同じ学校の同級生男子・保志朝郎もまた行方が分からなくなっていることが判明。一体何が起こったのか?  ――事件からおよそ二年が経過し、探偵の流次郎のもとを一人の男性が訪ねる。盛川真麻の父親だった。彼の依頼は、子供に浴びせられた誹謗中傷をどうにかして晴らして欲しい、というものだった。

異世界でゆるゆる生活を満喫す 

葉月ゆな
ファンタジー
辺境伯家の三男坊。数か月前の高熱で前世は日本人だったこと、社会人でブラック企業に勤めていたことを思い出す。どうして亡くなったのかは記憶にない。ただもう前世のように働いて働いて夢も希望もなかった日々は送らない。 もふもふと魔法の世界で楽しく生きる、この生活を絶対死守するのだと誓っている。 家族に助けられ、面倒ごとは優秀な他人に任せる主人公。でも頼られるといやとはいえない。 ざまぁや成り上がりはなく、思いつくままに好きに行動する日常生活ゆるゆるファンタジーライフのご都合主義です。

名もなき朝の唄〈湖畔のフレンチレストランで〉

市來茉莉(茉莉恵)
ライト文芸
【本編完結】【後日談1,2 完結】 写真を生き甲斐にしていた恩師、給仕長が亡くなった。 吹雪の夜明け、毎日撮影ポイントにしていた場所で息絶えていた。 彼の作品は死してもなお世に出ることはない。 歌手の夢破れ、父のレストランを手伝う葉子は、亡くなった彼から『給仕・セルヴーズ』としての仕事を叩き込んでもらっていた。 そんな恩師の死が、葉子『ハコ』を突き動かす。 彼が死したそこで、ハコはカメラを置いて動画の配信を始める。 メートル・ドテル(給仕長)だった男が、一流と言われた仕事も友人も愛弟子も捨て、死しても撮影を貫いた『エゴ』を知るために。 名もなき写真を撮り続けたそこで、名もなき朝の唄を毎日届ける。 やがて世間がハコと彼の名もなき活動に気づき始めた――。 死んでもいいほどほしいもの、それはなんだろう。 北海道、函館近郊 七飯町 駒ヶ岳を臨む湖沼がある大沼国定公園 湖畔のフレンチレストランで働く男たちと彼女のお話 ★短編3作+中編1作の連作(本編:124,166文字) (1.ヒロイン・ハコ⇒2.他界する給仕長の北星秀視点⇒3.ヒロインを支える給仕長の後輩・篠田視点⇒4.最後にヒロイン視点に戻っていきます) ★後日談(続編)2編あり(完結)

三年で人ができること

桃青
ライト文芸
もし三年後に死ぬとしたら。占いで自分にもう三年しか生きられないと告げられた男は、死を感じながら、平凡な日常を行き尽くそうとする。壮大でもなく、特別でもなく、ささやかに生きることを、残された時間で模索する、ささやかな話です。

一よさく華 -嵐の予兆-

八幡トカゲ
ライト文芸
暮れ六つ過ぎ。 十日ごとに遊郭に現れる青年がいる。 柚月一華(ゆづき いちげ)。 元人斬り。 今は、かつて敵であった宰相、雪原麟太郎(ゆきはら りんたろう)の小姓だ。 人々の好奇の目も気に留めず、柚月は「白玉屋」の花魁、白峯(しらみね)の元を訪れる。 遊ぶためではない。 主の雪原から申し渡された任務のためだ。 隣国「蘆(あし)」の謀反の気配。 それを探る報告書を受け取るのが、柚月の今回の任務だ。 そんな中、柚月にじわりじわりと迫ってくる、人斬りだったことへの罪の意識。 「自分を大事にしないのは、自分のことを大事にしてくれている人を、大事にしていない」 謎の言葉が、柚月の中に引っかかって離れない。 「自分を大事にって、どういうことですか?」 柚月の真直ぐな問いに、雪原は答える。 「考えなさい。その答えは、自分で見つけなさい」 そう言って、父のように優しく柚月の頭を撫でた。 一つよに咲く華となれ。

紡ぐ言の葉

千里
ライト文芸
あるところにひとりぼっちの少女が二人いました。 一人の少女は幼い頃に親を悲惨な事故に遭い、搬送先の病院からの裏切り、引き取られた先での酷い扱い。様々なことがあって、彼女からは心因性のもので表情と感情が消えてしまった。しかし、一人のヒーローのような人に会ってから生きていく上で必要最低限必要な感情と、ほんの少しだけ、表情が戻った。それでも又、失うのが怖くてどこか心を閉ざしていた。 そんな中無理矢理にでも扉をこじ開けて心の中にすとんと入ってきた2人の人がいた。少女はそんな2人のことを好きになった。 一人は幼い頃からの産みの家族からの酷い扱い、そんな事情があって暖かく迎えてくれた、新しい家族の母親の早すぎる死。心が壊れるには十分すぎたのだった。人に固執せず、浅い付き合いでなるべく自分か消えても何も残らないように生きていようとしていた。 そんな中、何度も何度も手を伸ばして救い出してくれたのは一人の少年の存在で、死のうとしているといつも怒る一人の少女の姿があった。 これはそんな2人が紡いでいく一つの波乱万丈な人生のお話────。

回転木馬が止まるとき

関谷俊博
ライト文芸
ぼくは寂しかった。栞も寂しかった。だけど、寂しさを持ち寄ると、ほんの少しだけ心が温かくなるみたいだ。

処理中です...