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229『朝のお散歩 ソフィーといっしょ』
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せやさかい
229『朝のお散歩 ソフィーといっしょ』頼子
狙ったわけじゃないんだろうけど、朝顔の花言葉は結束だ。
いまは、高校と中学に分かれてしまったけど、文芸部の結束は永遠だ。
メールで知らせてやってもいいんだけど、気づくまで放っておく。
自分で気が付いた方が感動は大きいというものだしね。
わたしはlineは使わない。
小6で初めてスマホを持った時に、お祖母ちゃんから『使ってはいけないアプリ』の一覧がきて、その筆頭にあったのがlineだった。
だから、既読マークとかは付かないから、読んだかどうかは返事が来なければわからない。
一度は、スマホで花言葉のこと知らせてやろうと思って、思いとどまったのもlineではないからだ。
そんなわたしは、朝顔の水をやってから日課の散歩に出ている。
「お散歩は、徒歩で40分以内にして下さい」
ジョン・スミスから釘を刺されている。
ほんとうは、さくらや留美ちゃんのように自転車で回りたかったけど、自転車だと、ちょっと警備がたいへんなんだそうだ。
徒歩だと、ソフィー一人が付いてくるだけで身軽に出かけられる。
本当は30分だったんだけど、ソフィーが粘ってくれて、10分のおまけがついた。
でもね……
「お城でもないのにシャチホコが付いてます、あっちの家はお猿が載ってます、あ、あの家は淡路瓦を使ってますよ!」
日本文化に目覚めたソフィーは、あちこちに好奇心発揮しまくり。
領事館がある一帯は、戦災でも焼け残ったとこだそうで、古いものが結構残っている。
ソフィーは、それにいちいち感動したり記録に残したり。
まあ、わたしが学校で散策部なんて部活を作って、ソフィーも無理やり入れちゃったせいでもあるんだけどね。
本人の努力も大したもので、来日二年目には漢字もマスターして、その好奇心に羽根が付いた。
「殿下、この鳥居すごいです!」
今朝から道を変えると、さっそく神社の前で停まってしまった。
「え?」
「この鳥居、元禄十二年の寄進ですよ!」
元禄十二……えと、元禄というのは忠臣蔵の時代で、将軍綱吉が生類憐みの令とか出した時代?
「1699年です、忠臣蔵の二年前です!」
「あ、ああ、そうなのね(^_^;)」
「すごくないですか? 1699年は、まだ、わがヤマセンブルグ公国は成立していない時代ですよ! それが、重要文化財の指定も受けないで、そこらへんの電柱といっしょに立っているんです! 写真撮ります!」
パシャパシャ パシャパシャ
「明神鳥居ですね、大阪にはこの様式が多いようですが、扁額の形式は……」
という具合(^_^;)
「う~~~ん」
「どうかした?」
「鳥居の一番上を笠木というんですけどね、天辺の形がここからでは分かりません……」
「あ、登っちゃダメだからね」
「うう、残念」
ソフィーは魔法使いの家系で、身体能力は忍者並。
まあ、それをかわれて、わたしの専属ガードをやってるんだけどね。警察に通報されそうなことはさせられません。
「殿下、あれは、なんでしょう?」
ソフィーが見咎めたものは、鳥居の横のコンクリートの土台。
コンクリートだから、元禄ではないんだろうけど、苔むしていて、それなりの時代を感じさせる。
土台の上には墓石みたいに縦長の石が二本寄り添うように立てられていて、なんだか巨石記念物めいている(ヤマセンブルグには、ローマ時代のが残っている)んだけど……コンクリートだしね。
「ちょっと、社務所で聞いてみましょうか?」
「あ、時間超えそうだよ……」
「あ……ですね」
「あした、もっかい来よう」
「え、ほんとですか!?」
「うん」
「約束ですよ!」
「うんうん」
心残りっぽいけど、仕方がない。
「朝顔の花言葉、もう一つありました」
写真を撮るついでに検索していたようだ。
「え、なんなの?」
「あなたに絡みつく」
「え?」
「アハハハ」
わがガードも、なかなか言うようになってきました(-_-;)
229『朝のお散歩 ソフィーといっしょ』頼子
狙ったわけじゃないんだろうけど、朝顔の花言葉は結束だ。
いまは、高校と中学に分かれてしまったけど、文芸部の結束は永遠だ。
メールで知らせてやってもいいんだけど、気づくまで放っておく。
自分で気が付いた方が感動は大きいというものだしね。
わたしはlineは使わない。
小6で初めてスマホを持った時に、お祖母ちゃんから『使ってはいけないアプリ』の一覧がきて、その筆頭にあったのがlineだった。
だから、既読マークとかは付かないから、読んだかどうかは返事が来なければわからない。
一度は、スマホで花言葉のこと知らせてやろうと思って、思いとどまったのもlineではないからだ。
そんなわたしは、朝顔の水をやってから日課の散歩に出ている。
「お散歩は、徒歩で40分以内にして下さい」
ジョン・スミスから釘を刺されている。
ほんとうは、さくらや留美ちゃんのように自転車で回りたかったけど、自転車だと、ちょっと警備がたいへんなんだそうだ。
徒歩だと、ソフィー一人が付いてくるだけで身軽に出かけられる。
本当は30分だったんだけど、ソフィーが粘ってくれて、10分のおまけがついた。
でもね……
「お城でもないのにシャチホコが付いてます、あっちの家はお猿が載ってます、あ、あの家は淡路瓦を使ってますよ!」
日本文化に目覚めたソフィーは、あちこちに好奇心発揮しまくり。
領事館がある一帯は、戦災でも焼け残ったとこだそうで、古いものが結構残っている。
ソフィーは、それにいちいち感動したり記録に残したり。
まあ、わたしが学校で散策部なんて部活を作って、ソフィーも無理やり入れちゃったせいでもあるんだけどね。
本人の努力も大したもので、来日二年目には漢字もマスターして、その好奇心に羽根が付いた。
「殿下、この鳥居すごいです!」
今朝から道を変えると、さっそく神社の前で停まってしまった。
「え?」
「この鳥居、元禄十二年の寄進ですよ!」
元禄十二……えと、元禄というのは忠臣蔵の時代で、将軍綱吉が生類憐みの令とか出した時代?
「1699年です、忠臣蔵の二年前です!」
「あ、ああ、そうなのね(^_^;)」
「すごくないですか? 1699年は、まだ、わがヤマセンブルグ公国は成立していない時代ですよ! それが、重要文化財の指定も受けないで、そこらへんの電柱といっしょに立っているんです! 写真撮ります!」
パシャパシャ パシャパシャ
「明神鳥居ですね、大阪にはこの様式が多いようですが、扁額の形式は……」
という具合(^_^;)
「う~~~ん」
「どうかした?」
「鳥居の一番上を笠木というんですけどね、天辺の形がここからでは分かりません……」
「あ、登っちゃダメだからね」
「うう、残念」
ソフィーは魔法使いの家系で、身体能力は忍者並。
まあ、それをかわれて、わたしの専属ガードをやってるんだけどね。警察に通報されそうなことはさせられません。
「殿下、あれは、なんでしょう?」
ソフィーが見咎めたものは、鳥居の横のコンクリートの土台。
コンクリートだから、元禄ではないんだろうけど、苔むしていて、それなりの時代を感じさせる。
土台の上には墓石みたいに縦長の石が二本寄り添うように立てられていて、なんだか巨石記念物めいている(ヤマセンブルグには、ローマ時代のが残っている)んだけど……コンクリートだしね。
「ちょっと、社務所で聞いてみましょうか?」
「あ、時間超えそうだよ……」
「あ……ですね」
「あした、もっかい来よう」
「え、ほんとですか!?」
「うん」
「約束ですよ!」
「うんうん」
心残りっぽいけど、仕方がない。
「朝顔の花言葉、もう一つありました」
写真を撮るついでに検索していたようだ。
「え、なんなの?」
「あなたに絡みつく」
「え?」
「アハハハ」
わがガードも、なかなか言うようになってきました(-_-;)
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