上 下
225 / 432

225『寝過ごした!』

しおりを挟む
せやさかい

225『寝過ごした!』さくら      




 秋来ぬと 目にはさやかに 見えねども  風の音にぞ おどろかれぬる~


 テレビの女子アナが涼し気に言うたはります。

 秋が来たとはっきりとはわからへんけども、風が吹いて来て(あ、秋や!)とビックリすることであるよ(^▽^)/

 てな意味らしい。

 らしいと言うのは、食卓で、ボーーっとテレビ見てたら、テイ兄ちゃんが問わず語りに言うた呟きやから。


 今朝は寝過ごしてしもて、詩(ことは)ちゃんも留美ちゃんもおらへん。

 二人とも、とっくに朝顔の水やりも済ませて、自転車で散歩に出てしもてる。

『暦の上では、今日から秋です。 これを立秋といって……』

 生まれてこのかた笑顔以外の表情はしたことありません……という感じで続けはります。


 そうか、今日から秋なんや。


 今からでも遅ない、うちも散歩に行くぞ!

 サイクルコンピューターのボタンを押して数値が0になってるのを確認する。

 サイクルコンピューターは、毎回0にしとかんと、昨日の続きから加算していきよる。

 総走行距離はええねんけど、時間やら、その日の走行距離は加算されては、なんぼ走ったか分からんようになるとテイ兄ちゃんが教えてくれて、うちには珍しく三日たっても憶えてる。

 よし!

 指さし確認して出発!

 初日は、習慣的に学校の前まで行ってしもて、昨日は郵便ポストの前で原爆の投下時間になって手を合わせた。

 そこへ行くまでの道の八割がたはいっしょやさかいに、まあ、どこかで出会うやろ。

 立秋かと思うと、頬をなぶる風も、こころなしか涼しい。

 よし、ここを曲がったら詩ちゃんと留美ちゃんが居てる!

 勘は外れて、朝の道路に人影は無い。

 時間は……サイクルコンピューターを見ると8:10。

 え、なんで人も車もおらへんねやろ?

 夏休みやさかい、子どもが見えへん。せやろな。こんな朝から散歩にいこかいうやつはめったにおらへん。

 通勤の大人の人らは? 幼稚園の送迎バスて、この時間は、まだ早かった?

 とにかく人が居てへん。

 ひょっとして、異世界とかに入り込んでしもた(;゜Д゜)? レベル1の冒険者になって、どこぞのギルド探して冒険の旅に出ならあかんとか?

 夕べは、遅くまで詰まってたRPGをコンプするまでやってた。

 その祟りか?

 思てたら、子供会の廃品回収の山が見えてきた。

 あ、今日は土曜日か!?

 子供会の廃品回収は土曜日やさかいに思い出した。

 そうか、世間は休みや。

 そう思い出すと、ほとんどがら空きの道が嬉しなってくる。

 もう立秋やし、ちょっとぐらいスピード出してもええよね(^▽^)/

 グングン

 ペダルを踏み込むと速度表示が、あっという間に20キロを超える。

 おし!

 風を切って国道に出る。

 さすがに車走ってるし、ツーリングの自転車で走ってる人も居てる。

 自転車用レーンもあるし、グングンと堺東まで走ってしもた!

 なんちゅうても立秋や!



 四十分も走って家に帰る。

「さくらちゃん、すごい汗!」

 留美ちゃんが目を剥いて、詩ちゃんとテイ兄ちゃんが大笑い。

「せやかて、今日は立秋やさかい(;'∀')」

 アハハハハ

 リビングのみんなが笑います。

 ワア!

 なんの歓声かと思たら、テレビで女子マラソンの実況中継。

 そうか、今日は北海道で女子マラソンの日ぃやったんや。

「マラソン見るんやったら、シャワー浴びといでや」

 ソファーに座ろうとしたらテイ兄ちゃんに突っ込まれる。

 ちょうど廊下にブタネコのダミアがおったんで、いっしょにシャワーしよ思たら、迷惑そうな目ぇされて逃げられてしまいました。

 日本がんばれ!

 

 

 
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

【完結】愛を知らない伯爵令嬢は執着激重王太子の愛を一身に受ける。

扇 レンナ
恋愛
スパダリ系執着王太子×愛を知らない純情令嬢――婚約破棄から始まる、極上の恋 伯爵令嬢テレジアは小さな頃から両親に《次期公爵閣下の婚約者》という価値しか見出してもらえなかった。 それでもその利用価値に縋っていたテレジアだが、努力も虚しく婚約破棄を突きつけられる。 途方に暮れるテレジアを助けたのは、留学中だったはずの王太子ラインヴァルト。彼は何故かテレジアに「好きだ」と告げて、熱烈に愛してくれる。 その真意が、テレジアにはわからなくて……。 *hotランキング 最高68位ありがとうございます♡ ▼掲載先→ベリーズカフェ、エブリスタ、アルファポリス

勇者一行から追放された二刀流使い~仲間から捜索願いを出されるが、もう遅い!~新たな仲間と共に魔王を討伐ス

R666
ファンタジー
アマチュアニートの【二龍隆史】こと36歳のおっさんは、ある日を境に実の両親達の手によって包丁で腹部を何度も刺されて地獄のような痛みを味わい死亡。 そして彼の魂はそのまま天界へ向かう筈であったが女神を自称する危ない女に呼び止められると、ギフトと呼ばれる最強の特典を一つだけ選んで、異世界で勇者達が魔王を討伐できるように手助けをして欲しいと頼み込まれた。 最初こそ余り乗り気ではない隆史ではあったが第二の人生を始めるのも悪くないとして、ギフトを一つ選び女神に言われた通りに勇者一行の手助けをするべく異世界へと乗り込む。 そして異世界にて真面目に勇者達の手助けをしていたらチキン野郎の役立たずという烙印を押されてしまい隆史は勇者一行から追放されてしまう。 ※これは勇者一行から追放された最凶の二刀流使いの隆史が新たな仲間を自ら探して、自分達が新たな勇者一行となり魔王を討伐するまでの物語である※

あなたと恋に落ちるまで~御曹司は一途に私に恋をする~ after story

けいこ
恋愛
あなたと恋に落ちるまで~御曹司は一途に私に恋をする~ のafter storyになります😃 よろしければぜひ、本編を読んで頂いた後にご覧下さい🌸🌸

【完結】転生少女は異世界でお店を始めたい

梅丸
ファンタジー
せっかく40代目前にして夢だった喫茶店オープンに漕ぎ着けたと言うのに事故に遭い呆気なく命を落としてしまった私。女神様が管理する異世界に転生させてもらい夢を実現するために奮闘するのだが、この世界には無いものが多すぎる! 創造魔法と言う女神様から授かった恩寵と前世の料理レシピを駆使して色々作りながら頑張る私だった。

自己犠牲の救われた日

月見団子
ライト文芸
この前部屋の掃除をしてたら、懐かしい自作の小説が出てきました。 それがこの小説なんですけども…なんと、小学生の時に書いた小説で驚きました。 ということで、今回は、「自己犠牲の救われた日」という小説です。  …これが。 ……これが災害。 20××年、首都直下地震が東京を襲った。 いつもどおりの日常はその瞬間に壊され、ある者は瓦礫に埋もれ、ある者は驚愕の声をあげる。 そんな中、家族を失い、生きる希望を失った少年《日向》の前に現れた一人の少女《木綿季》。 ただ、その少女には何か大切な秘密があるようで……? …災害で家族を、大切な人を失った人は、誰に…何処に怒りを向ければ良いのでしょうか…?ぶつければいいのでしょうか…? ※災害関連の作品ですので、不快になる人は閲覧をご遠慮ください。 追記 1周年記念で作品を追加しました。 自己犠牲が妹にサヨナラを告げる日の そうして絶望の再開_エレジー_より、 エダマメシチューさんとの協力で作品を書きました。

彼女の願いはあまりに愚かで、切なくて

当麻月菜
ライト文芸
「杏沙、お願い。私が退院するまでこの人と付き合って」 末期がんに侵された友人の由紀はそう言って、自分の彼氏──永井和臣を差し出した。 「うん、いいよ」 それで由紀の病気が快方に向かうならという気持ちから、杏沙は願掛けのつもりで頷いた。 それから和臣との付き合いが始まった。 手も握らない。キスもしない。身体を重ね合わせることも、彼との未来を想像することさえしない偽りの交際は、罪悪感だけが積もる日々。 そんなある日、和臣は言った。 「由紀にとって、君は一番大事な友達……親友なんだ」 その言葉に杏沙は、ちくりと罪悪感を覚えた。 杏沙は由紀の親友では無い。親友になりたくても、なれない。そんな資格は無いのだ。 なぜなら昔、杏沙は由紀に対してひどい裏切りをしたことがあったから。 友人の回復を信じて偽装恋愛を始めるOLと、偽装恋愛をしてでも恋人の回復を願う大学生のいびつで切ない秋から冬までのお話。 ※以前投稿していましたが、加筆修正のためいったん非公開にして再投稿しています。 ※他のサイトにも重複投稿しています。

執事の喫茶店

ASOBIVA
ライト文芸
━━━執事が営む喫茶店。それは、必要とする人だけに現れるという━━━ イラストレーターとして働いている女性が自販機で飲み物を買っていると突然強い光が襲い、ぎゅっと目を瞑る。恐らく車か何かに引かれてしまったのだろうと冷静に考えたが、痛みがない。恐る恐る目を開けると、自販機の横になかったはずの扉があった。その扉から漂う良い香りが、私の心を落ち着かせる。その香りに誘われ扉を開けると、アンティーク風の喫茶店がそこにあった。 こちらの作品は仕事に対して行き詰った方・モチベーションが下がっている方へ贈る、仕事に前向きになれる・原動力になれるような小説を目指しております。 ※こちらの作品はオムニバス形式となっております。※誤字脱字がある場合がございます。

【キスの意味なんて、知らない】

悠里
BL
大学生 同居中。 一緒に居ると穏やかで、幸せ。 友達だけど、何故か触れるだけのキスを何度もする。

処理中です...