207 / 432
207『今年の梅雨は気が早い』
しおりを挟む
せやさかい
207『今年の梅雨は気が早い』さくら
今年は梅雨が早いなあ……。
ほんまやねえ……。
お爺ちゃんと孫の会話。
お爺ちゃんはうちのお祖父ちゃんで、孫はうち。
留美ちゃんは委員会の用事で、おっちゃんとテイ兄ちゃんは檀家周り。おばちゃんは町会の打合せ、詩(ことは)ちゃんは大学に行ってるんで、帰宅後のひと時をダミアをモフモフしながらリビングでボンヤリしてる。
それで、換気の為に開けた窓からそぼ降る雨を二人で見てるという次第。
「梅雨いうたら、六月のもんと決まっとったのになあ、今年の梅雨は気が早い」
お祖父ちゃんの感想には切迫感がない。
この四月から、お爺ちゃんは檀家周りを控えてる。なんせ歳やし、コ□ナのこともあるしね。
「お義父さん、血液型はなんでしたっけ?」
おばちゃんが聞いたのが先月。
「えと、AB型やけど」
「お義父さん、AB型はコ□ナの重症化率50%増しだそうですよ」
おばちゃんは、新聞をパサリと置いて、眉の間にしわを寄せながら宣告する。
「ほんまかいな!?」
「ほら、新聞に!」
「ええ……ほんまや(;'∀')」
ということで、お祖父ちゃんの檀家周りは、ほとんどゼロになってしもた。
うちの如来寺は檀家の多いお寺やねんけど、三人で回るほどやない。住職不在の専念寺さんのヘルプも、他のお寺さんが手伝うてくれはるようになって、負担やなくなってきたということもある。
「ほんなら、そうしよか」
と言うて、お爺ちゃんは実質的にリタイアの状態。
「お祖父ちゃん、ボケるんちゃうやろか」
「ちょっと心配だね」
詩ちゃんと夕飯の片づけやりながらコボしたことがある。
「口に出したらホンマになる言うで」
テイ兄ちゃんにおこられる。
「世の中には『言霊(ことだま)』いうのがあってな、口に出したらホンマになるて昔から言うんや」
うん、これは頷ける。
お寺やさかい『南無阿弥陀仏(ナマンダブ)』は日に百回くらいは聞く。本堂では、如来寺ができてから数億回の『南無阿弥陀仏』が唱えられてきて、柱や欄間の黒光りは、そのナマンダブが染みついた証。
「せや、テルテル坊主こさえよ!」
お祖父ちゃんが膝を叩いた。
「テルテル坊主?」
お祖父ちゃんの横におったもんやさかい、テルテル坊主は、一瞬禿げ頭の坊主を連想してしまう。
「白い布(きれ)やったらいっぱいあるしなあ……綿は古い座布団のん使たらええしな……」
お祖父ちゃんといっしょに二階の倉庫に行って材料を取ってきて、三十分後にはニつのテルテル坊主ができる。
留美ちゃんと詩ちゃんが帰ってきて、寄り合いの終わったおばちゃんも加わって、晩御飯までには三十個あまりのテルテル坊主ができた!
お寺のテルテル坊主なんで、前の方に『南無阿弥陀仏』のハンコが押してある。顔は定番の『へのへのもへじ』です。
晩ご飯終わってからは、面白がったテイ兄ちゃんとおっちゃんも加わって、全部で46個。期せずして『如来寺46』になりました!
テイ兄ちゃんのテルテル坊主はラノベのヒロインみたいな顔。だれかに似てるなあと思いながら本堂の軒やら山門の軒にぶら下げる。
『如来寺46(^▽^)/』
写真を付けて頼子先輩にも送ると『わたしもやる!』と返事が返って来て、うちの周囲は、ちょっとしたテルテル坊主ブームになりました。
207『今年の梅雨は気が早い』さくら
今年は梅雨が早いなあ……。
ほんまやねえ……。
お爺ちゃんと孫の会話。
お爺ちゃんはうちのお祖父ちゃんで、孫はうち。
留美ちゃんは委員会の用事で、おっちゃんとテイ兄ちゃんは檀家周り。おばちゃんは町会の打合せ、詩(ことは)ちゃんは大学に行ってるんで、帰宅後のひと時をダミアをモフモフしながらリビングでボンヤリしてる。
それで、換気の為に開けた窓からそぼ降る雨を二人で見てるという次第。
「梅雨いうたら、六月のもんと決まっとったのになあ、今年の梅雨は気が早い」
お祖父ちゃんの感想には切迫感がない。
この四月から、お爺ちゃんは檀家周りを控えてる。なんせ歳やし、コ□ナのこともあるしね。
「お義父さん、血液型はなんでしたっけ?」
おばちゃんが聞いたのが先月。
「えと、AB型やけど」
「お義父さん、AB型はコ□ナの重症化率50%増しだそうですよ」
おばちゃんは、新聞をパサリと置いて、眉の間にしわを寄せながら宣告する。
「ほんまかいな!?」
「ほら、新聞に!」
「ええ……ほんまや(;'∀')」
ということで、お祖父ちゃんの檀家周りは、ほとんどゼロになってしもた。
うちの如来寺は檀家の多いお寺やねんけど、三人で回るほどやない。住職不在の専念寺さんのヘルプも、他のお寺さんが手伝うてくれはるようになって、負担やなくなってきたということもある。
「ほんなら、そうしよか」
と言うて、お爺ちゃんは実質的にリタイアの状態。
「お祖父ちゃん、ボケるんちゃうやろか」
「ちょっと心配だね」
詩ちゃんと夕飯の片づけやりながらコボしたことがある。
「口に出したらホンマになる言うで」
テイ兄ちゃんにおこられる。
「世の中には『言霊(ことだま)』いうのがあってな、口に出したらホンマになるて昔から言うんや」
うん、これは頷ける。
お寺やさかい『南無阿弥陀仏(ナマンダブ)』は日に百回くらいは聞く。本堂では、如来寺ができてから数億回の『南無阿弥陀仏』が唱えられてきて、柱や欄間の黒光りは、そのナマンダブが染みついた証。
「せや、テルテル坊主こさえよ!」
お祖父ちゃんが膝を叩いた。
「テルテル坊主?」
お祖父ちゃんの横におったもんやさかい、テルテル坊主は、一瞬禿げ頭の坊主を連想してしまう。
「白い布(きれ)やったらいっぱいあるしなあ……綿は古い座布団のん使たらええしな……」
お祖父ちゃんといっしょに二階の倉庫に行って材料を取ってきて、三十分後にはニつのテルテル坊主ができる。
留美ちゃんと詩ちゃんが帰ってきて、寄り合いの終わったおばちゃんも加わって、晩御飯までには三十個あまりのテルテル坊主ができた!
お寺のテルテル坊主なんで、前の方に『南無阿弥陀仏』のハンコが押してある。顔は定番の『へのへのもへじ』です。
晩ご飯終わってからは、面白がったテイ兄ちゃんとおっちゃんも加わって、全部で46個。期せずして『如来寺46』になりました!
テイ兄ちゃんのテルテル坊主はラノベのヒロインみたいな顔。だれかに似てるなあと思いながら本堂の軒やら山門の軒にぶら下げる。
『如来寺46(^▽^)/』
写真を付けて頼子先輩にも送ると『わたしもやる!』と返事が返って来て、うちの周囲は、ちょっとしたテルテル坊主ブームになりました。
0
お気に入りに追加
2
あなたにおすすめの小説
【完結】元お義父様が謝りに来ました。 「婚約破棄にした息子を許して欲しい」って…。
BBやっこ
恋愛
婚約はお父様の親友同士の約束だった。
だから、生まれた時から婚約者だったし。成長を共にしたようなもの。仲もほどほどに良かった。そんな私達も学園に入学して、色んな人と交流する中。彼は変わったわ。
女学生と腕を組んでいたという、噂とか。婚約破棄、婚約者はにないと言っている。噂よね?
けど、噂が本当ではなくても、真にうけて行動する人もいる。やり方は選べた筈なのに。
「桜の樹の下で、笑えたら」✨奨励賞受賞✨
悠里
ライト文芸
高校生になる前の春休み。自分の16歳の誕生日に、幼馴染の悠斗に告白しようと決めていた心春。
会う約束の前に、悠斗が事故で亡くなって、叶わなかった告白。
(霊など、ファンタジー要素を含みます)
安達 心春 悠斗の事が出会った時から好き
相沢 悠斗 心春の幼馴染
上宮 伊織 神社の息子
テーマは、「切ない別れ」からの「未来」です。
最後までお読み頂けたら、嬉しいです(*'ω'*)
幕張地下街の縫子少女 ~白いチューリップと画面越しの世界~
海獺屋ぼの
ライト文芸
千葉県千葉市美浜区のとある地下街にある「コスチュームショップUG」でアルバイトする鹿島香澄には自身のファッションブランドを持つという夢があった。そして彼女はその夢を叶えるために日々努力していた。
そんなある日。香澄が通う花見川服飾専修学園(通称花見川高校)でいじめ問題が持ち上がった。そして香澄は図らずもそのいじめの真相に迫ることとなったーー。
前作「日給二万円の週末魔法少女」に登場した鹿島香澄を主役に服飾専門高校内のいじめ問題を描いた青春小説。
ポテチ ポリポリ ダイエット それでも痩せちゃった
ma-no
エッセイ・ノンフィクション
この話は、筆者が毎夜、寝る前にボテチを食べながらもダイエットを成功させた話である。
まだ目標体重には届いていませんが、予想より早く体重が減っていっているので調子に乗って、その方法を書き記しています。
お腹ぽっこり大賞……もとい!
「第2回ほっこり・じんわり大賞」にエントリーしています。
是非ともあなたの一票を、お願い致します。
D○ZNとY○UTUBEとウ○イレでしかサッカーを知らない俺が女子エルフ代表の監督に就任した訳だが
米俵猫太朗
ファンタジー
ただのサッカーマニアである青年ショーキチはひょんな事から異世界へ転移してしまう。
その世界では女性だけが行うサッカーに似た球技「サッカードウ」が普及しており、折りしもエルフ女子がミノタウロス女子に蹂躙されようとしているところであった。
更衣室に乱入してしまった縁からエルフ女子代表を率いる事になった青年は、秘策「Tバック」と「トップレス」戦術を授け戦いに挑む。
果たしてエルフチームはミノタウロスチームに打ち勝ち、敗者に課される謎の儀式「センシャ」を回避できるのか!?
この作品は「小説家になろう」「カクヨム」にも掲載しています。
亡くし屋の少女は死神を雇う。
散花
ライト文芸
「死ぬことは悪いことなんですか?」
──目覚めると、オレは死んでいた。
死因がわからず、訳も分からぬまま死神にされたオレは亡くし屋という仕事をしている少女と出逢ったのだった……。
死神になった青年と、亡くし屋の少女が、『死』とは何かを探す物語──
第6回ライト文芸大賞に応募しています!
何卒、投票などよろしくお願いします!!
5/3、他サイトの完結分まで転載終わりました。
そのため、完結作品とさせていただきます。
また続きを書いた際にはこちらにもあげさせていただきます。
ラノベ作家と有名声優が犯した一夜の過ち
折原さゆみ
ライト文芸
私、秋葉沙頼(あきばさより)はラノベ作家である。ペンネーム「浅羽季四李(あさばきより)」で初の書籍がアニメを果たす。
自分の作品がアニメ化を果たし、さらに大ファンである超人気声優の神永浩二(かみながこうじ)が作品に起用された。
まさにあの時は人生の絶頂期だった。
あの日の夜の過ちさえなければ、私はそのまま幸せな生活が続いたのだろうか。
これは、私とあの男の一夜の過ちが犯した結末を示した物語。彼との関係にけじめをつけるのに、15年もかかってしまった。
※他サイトからの転載となります。
霊感不動産・グッドバイの無特記物件怪奇レポート
竹原 穂
ホラー
◾️あらすじ
不動産会社「グッドバイ」の新人社員である朝前夕斗(あさまえ ゆうと)は、壊滅的な営業不振のために勤めだして半年も経たないうちに辺境の遺志留(いしどめ)支店に飛ばされてしまう。
所長・里見大数(さとみ ひろかず)と二人きりの遺志留支店は、特に事件事故が起きたわけではないのに何故か借り手のつかないワケあり物件(通称:『無特記物件』)ばかり取り扱う特殊霊能支社だった!
原因を調査するのが主な業務だと聞かされるが、所長の霊感はほとんどない上に朝前は取り憑かれるだけしか能がないポンコツっぷり。
凸凹コンビならぬ凹凹コンビが挑む、あなたのお部屋で起こるかもしれないホラー!
事件なき怪奇現象の謎を暴け!!
【第三回ホラー・ミステリー大賞】で特別賞をいただきました!
ありがとうございました。
■登場人物
朝前夕斗(あさまえ ゆうと)
不動産会社「グッドバイ」の新人社員。
壊滅的な営業成績不振のために里見のいる遺志留支店に飛ばされた。 無自覚にいろんなものを引きつけてしまうが、なにもできないぽんこつ霊感体質。
里見大数(さとみ ひろかず)
グッドバイ遺志留支社の所長。
霊能力があるが、力はかなり弱い。
煙草とお酒とAV鑑賞が好き。
番場怜子(ばんば れいこ)
大手不動産会社水和不動産の社員。
優れた霊感を持つ。
里見とは幼馴染。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる