194 / 432
194『平日やけどもペコちゃんに逢って』
しおりを挟む
せやさかい
194『平日やけどもペコちゃんに逢って』さくら
今日は平日やけども休み。
なんでか言うと卒業式やさかい。
在校生のうちらは、コ□ナの事とかあって式には出ません。
三年生には知り合いもいてへんしね。
せやさかいに、留美ちゃんと二人で買い物に出てる。
留美ちゃんの新生活も、ようやく落ち着いて来て、ホームセンターに細々とした日用品を買いに出たというワケ。ホームセンターのある通りは食べ物屋さんやらスイーツのお店がひしめいてんねんけど、シカとする。目的を果たす前に立ち寄ったら、育ち盛りのわたしらとしては道を踏み外しそうになるよって、買い物が終わったら一軒だけ寄ろうということになってる。
「あ、ペコちゃん」
赤信号で自転車を止めたら留美ちゃんが呟いた。
「え、あ、ほんま……」
別に留美ちゃんが不二家の誘惑に負けたわけやない。
我が担任のペコちゃんこと月島さやか先生が黒の式服のまま自転車に乗って交差点を曲がっていく。
「お仕事なんだろうねえ」
留美ちゃんはええ子やさかい、式服を着替える間もなく仕事に出てるペコちゃんに同情的。
やっぱり、お母さんの働いてる姿を見て育ってきたさかい「キャー先生!」とか手を振ったりはせえへん。
ちなみに『ペコちゃん』いうあだ名は昔から。
うちに家庭訪問しに来た時に、子どものころから『ペコちゃん』て言われてきた言うてはった。
先生になってまで『ペコちゃん』はないやろと、人には言わんように言われて、うちは守ってきたけど。
なんせ、笑顔になったらペコちゃんソックリ。
いつのまにかみんな言うようになって、本人も諦めてはる。
買い物は、事前にメモをとってたし、売り場もネットで確認してたのですぐに終わったんやけど、レジが一杯。
けっきょく三十分ほどかかってホームセンターを出ると、待ち合わせてたみたいにペコちゃんが信号の向こうで手ぇ振ってる。
「やあ、奇遇ねえ!」
「「あ、ども」」
このやり取りだけで、ペコちゃんがハンバーガーを奢ってくれることになる。
ラッキー!
アクリル板で囲まれたシートに三人で収まる。
「家庭訪問やったんですか?」
ぶしつけやと思たけど、突っ込んでみる。
濁されたら、あっさり引き下がるつもり。
家庭訪問いうのは個人情報が絡んでるやろし、うちらが聞いたらあかん内容やったりするからね。
せやけど、そんなに秘密の必要が無かったら、ペコちゃんは言う。
程よい情報の共有というのは、人間関係を円滑にしてくれるもんです。
「うん、瀬田くんちに行ってた」
「「あ、ああ」」
それだけで納得。
瀬田いうのんは一年から同じクラスの男子。元サッカー部で、田中いうのんとペアで掃除をサボったりつるんどった。
最初は田中の方が頼りない感じで、瀬田が振り回してるように見えてたんやけど、コ□ナ休校のころになにかあったみたいで、瀬田は休みがちになっとおる。
「二人とも、瀬田君とは同級生だったんだよね……」
そうやねんけども、ペコちゃんはうちらに情報を求めてるわけやない。うちも留美ちゃんもちゃんとやってるのに、男子の瀬田が不登校になってるのんがもどかしいんや。
「榊原さん、新しい生活には慣れた?」
留美ちゃんの事を心配してるんや。いきなり聞いたらあからさまやから、瀬田のことを枕にしたんやろなあ。
「はい、もう、家族同然にしていただいて、こないだはみんなで家族写真まで撮ってもらったんです(^▽^)/」
「そう、それは良かった。二人ともいい子だから、なんか後回しっぽくなって、ごめんなさいね」
「いえいえ、いよいよの時は月島先生にも頼りますから、よろしくお願いします」
「うん、四月からも受け持てるといいわね」
「うちらも先生のクラスになりたいです。ねえ」
「ハハ、まあ、それは開けてビックリ玉手箱ってことね」
それから、学校のアレコレで盛り上がってお店を出て、ペコちゃんが切り出した。
「榊原さん、ちょっといい」
留美ちゃんに折り入ってという感じなんで、うちは先に帰ろかと思った。
「さくらちゃんもいっしょに、家族なんだから」
「う、うん」
「そう……じゃあ……」
じゃあと言いながら、ペコちゃんは確かめるように、うちと留美ちゃんの顔を見てから切り出した。
「実は、留美ちゃんのお父さんがいらして……」
「「え!?」」
息が停まるかと思った……。
194『平日やけどもペコちゃんに逢って』さくら
今日は平日やけども休み。
なんでか言うと卒業式やさかい。
在校生のうちらは、コ□ナの事とかあって式には出ません。
三年生には知り合いもいてへんしね。
せやさかいに、留美ちゃんと二人で買い物に出てる。
留美ちゃんの新生活も、ようやく落ち着いて来て、ホームセンターに細々とした日用品を買いに出たというワケ。ホームセンターのある通りは食べ物屋さんやらスイーツのお店がひしめいてんねんけど、シカとする。目的を果たす前に立ち寄ったら、育ち盛りのわたしらとしては道を踏み外しそうになるよって、買い物が終わったら一軒だけ寄ろうということになってる。
「あ、ペコちゃん」
赤信号で自転車を止めたら留美ちゃんが呟いた。
「え、あ、ほんま……」
別に留美ちゃんが不二家の誘惑に負けたわけやない。
我が担任のペコちゃんこと月島さやか先生が黒の式服のまま自転車に乗って交差点を曲がっていく。
「お仕事なんだろうねえ」
留美ちゃんはええ子やさかい、式服を着替える間もなく仕事に出てるペコちゃんに同情的。
やっぱり、お母さんの働いてる姿を見て育ってきたさかい「キャー先生!」とか手を振ったりはせえへん。
ちなみに『ペコちゃん』いうあだ名は昔から。
うちに家庭訪問しに来た時に、子どものころから『ペコちゃん』て言われてきた言うてはった。
先生になってまで『ペコちゃん』はないやろと、人には言わんように言われて、うちは守ってきたけど。
なんせ、笑顔になったらペコちゃんソックリ。
いつのまにかみんな言うようになって、本人も諦めてはる。
買い物は、事前にメモをとってたし、売り場もネットで確認してたのですぐに終わったんやけど、レジが一杯。
けっきょく三十分ほどかかってホームセンターを出ると、待ち合わせてたみたいにペコちゃんが信号の向こうで手ぇ振ってる。
「やあ、奇遇ねえ!」
「「あ、ども」」
このやり取りだけで、ペコちゃんがハンバーガーを奢ってくれることになる。
ラッキー!
アクリル板で囲まれたシートに三人で収まる。
「家庭訪問やったんですか?」
ぶしつけやと思たけど、突っ込んでみる。
濁されたら、あっさり引き下がるつもり。
家庭訪問いうのは個人情報が絡んでるやろし、うちらが聞いたらあかん内容やったりするからね。
せやけど、そんなに秘密の必要が無かったら、ペコちゃんは言う。
程よい情報の共有というのは、人間関係を円滑にしてくれるもんです。
「うん、瀬田くんちに行ってた」
「「あ、ああ」」
それだけで納得。
瀬田いうのんは一年から同じクラスの男子。元サッカー部で、田中いうのんとペアで掃除をサボったりつるんどった。
最初は田中の方が頼りない感じで、瀬田が振り回してるように見えてたんやけど、コ□ナ休校のころになにかあったみたいで、瀬田は休みがちになっとおる。
「二人とも、瀬田君とは同級生だったんだよね……」
そうやねんけども、ペコちゃんはうちらに情報を求めてるわけやない。うちも留美ちゃんもちゃんとやってるのに、男子の瀬田が不登校になってるのんがもどかしいんや。
「榊原さん、新しい生活には慣れた?」
留美ちゃんの事を心配してるんや。いきなり聞いたらあからさまやから、瀬田のことを枕にしたんやろなあ。
「はい、もう、家族同然にしていただいて、こないだはみんなで家族写真まで撮ってもらったんです(^▽^)/」
「そう、それは良かった。二人ともいい子だから、なんか後回しっぽくなって、ごめんなさいね」
「いえいえ、いよいよの時は月島先生にも頼りますから、よろしくお願いします」
「うん、四月からも受け持てるといいわね」
「うちらも先生のクラスになりたいです。ねえ」
「ハハ、まあ、それは開けてビックリ玉手箱ってことね」
それから、学校のアレコレで盛り上がってお店を出て、ペコちゃんが切り出した。
「榊原さん、ちょっといい」
留美ちゃんに折り入ってという感じなんで、うちは先に帰ろかと思った。
「さくらちゃんもいっしょに、家族なんだから」
「う、うん」
「そう……じゃあ……」
じゃあと言いながら、ペコちゃんは確かめるように、うちと留美ちゃんの顔を見てから切り出した。
「実は、留美ちゃんのお父さんがいらして……」
「「え!?」」
息が停まるかと思った……。
0
お気に入りに追加
2
あなたにおすすめの小説
わけありのイケメン捜査官は英国名家の御曹司、潜入先のロンドンで絶縁していた家族が事件に
川喜多アンヌ
ミステリー
あのイケメンが捜査官? 話せば長~いわけありで。
もしあなたの同僚が、潜入捜査官だったら? こんな人がいるんです。
ホークは十四歳で家出した。名門の家も学校も捨てた。以来ずっと偽名で生きている。だから他人に化ける演技は超一流。証券会社に潜入するのは問題ない……のはずだったんだけど――。
なりきり過ぎる捜査官の、どっちが本業かわからない潜入捜査。怒涛のような業務と客に振り回されて、任務を遂行できるのか? そんな中、家族を巻き込む事件に遭遇し……。
リアルなオフィスのあるあるに笑ってください。
主人公は4話目から登場します。表紙は自作です。
主な登場人物
ホーク……米国歳入庁(IRS)特別捜査官である主人公の暗号名。今回潜入中の名前はアラン・キャンベル。恋人の前ではデイヴィッド・コリンズ。
トニー・リナルディ……米国歳入庁の主任特別捜査官。ホークの上司。
メイリード・コリンズ……ワシントンでホークが同棲する恋人。
カルロ・バルディーニ……米国歳入庁捜査局ロンドン支部のリーダー。ホークのロンドンでの上司。
アダム・グリーンバーグ……LB証券でのホークの同僚。欧州株式営業部。
イーサン、ライアン、ルパート、ジョルジオ……同。
パメラ……同。営業アシスタント。
レイチェル・ハリー……同。審査部次長。
エディ・ミケルソン……同。株式部COO。
ハル・タキガワ……同。人事部スタッフ。東京支店のリストラでロンドンに転勤中。
ジェイミー・トールマン……LB証券でのホークの上司。株式営業本部長。
トマシュ・レコフ……ロマネスク海運の社長。ホークの客。
アンドレ・ブルラク……ロマネスク海運の財務担当者。
マリー・ラクロワ……トマシュ・レコフの愛人。ホークの客。
マーク・スチュアート……資産運用会社『セブンオークス』の社長。ホークの叔父。
グレン・スチュアート……マークの息子。
俺が証人だ。
氷天玄兎
ライト文芸
自分が良い子であることや褒められることに不満と嫌悪感を抱いた少年、梶本慧は、自分のことを叱って欲しくてどんどんイタズラの度合いが過激になっていく。そんな時高校で出会った綾坂先生との交流で少しずつ慧は変わっていく。
真実の愛に目覚めたら男になりました!
かじはら くまこ
ライト文芸
結婚式の日に美月は新郎に男と逃げられた。
飲まなきゃやってらんないわ!
と行きつけの店で飲むところに声をかけてきたのはオカマの男だったが、、
最後はもちろんハッピーエンドです!
時々、中学生以下(含む)は読ませたくない内容ありです。
君が見ている私たち
創研 アイン
ライト文芸
作者:ゴッチ
オカルト研究部の木村藍と赤城時宗、そして後輩の神崎里奈の三人は、見たものの心を読んでしまう神様『みころし様』について調べることとなり、夏休みを利用して調査を行うこととなった。
前回の調査は残念な結果だったが、今回の調査はどうなるのだろうか。
はたして『みころし様』の正体はオカルト的なものなのだろうか。
これは、あなたが見ている物語……。
モデルファミリー <完結済み>
MARU助
ライト文芸
【完結済み】日本政府が制定したモデルファミリー制度によって、日本中から選ばれた理想の家族に7億円という賞金が付与されることとなった。
家庭内不和で離散寸前だった世良田一家は賞金のためになんとか偽装家族を演じ続けることに合意。
しかし、長女・美園(16才)の同級生、進藤つかさが一家に疑惑を持ち始め、揺さぶりをかけ始める。
世良田一家は世間を騙し続けられるのか?!
家族愛・恋・友情、ドタバタファミリー物語。
【家族メモ】
元樹(父)、栄子(母)、勇治(長男)、美園(長女)、誠(末っ子)、ケンジ・タキ(祖父母)、あんこ(犬)
BL世界に転生したけど主人公の弟で悪役だったのでほっといてください
わさび
BL
前世、妹から聞いていたBL世界に転生してしまった主人公。
まだ転生したのはいいとして、何故よりにもよって悪役である弟に転生してしまったのか…!?
悪役の弟が抱えていたであろう嫉妬に抗いつつ転生生活を過ごす物語。
男女差別を禁止したら国が滅びました。
ノ木瀬 優
ライト文芸
『性別による差別を禁止する』
新たに施行された法律により、人々の生活は大きく変化していき、最終的には…………。
※本作は、フィクションです。実在の人物・団体とは一切関係ありません。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる