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126『お雛さん・2』
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126『お雛さん・2』
詩(ことは)ちゃんのお雛さんを本堂に、歌ちゃん(お母さん)のお雛さんを部室に飾ることにした。
なんでかと言うと、お母さんのお雛さんは一人欠けてるので、全員揃ってる方を檀家さん用に廻したから。
欠けてるのは三人官女。
お母さんの方は二人しか居てへん。
「三方(さんぽう)が居ないんだ」
留美ちゃんが指摘する。
「え、さんぽうって?」
「三人官女は、それぞれ持ち物が決まってるのよ。ええと……長柄と銚子と、もう一人が三方。ほら、こんなの」
詩(ことは)ちゃんの三人官女を示してくれる。
「ああ、切腹の時に刀載せたあるやつや!」
「もう、縁起でもないことを」
年末に観た『忠臣蔵』の一場面(内匠頭が切腹するとこ)を思い出して言うと、留美ちゃんに怒られる。
「ああ、それなあ……」
お祖父ちゃんがお下がりのお饅頭を持ってき話に加わる。
「なんか、訳あるのん?」
「いや、いつのまにか居らんようになったんや」
「アハハ、いつのまにか?」
「ああ、歌は大学行くようになってからでもお雛さ出しとったんや。さすがに段飾りは大変なんで、男雛と女雛だけにしとったんやけどな、結婚を控えた最後のひな祭りに段飾りしよ思たら、居らんようになっとたんや」
「ふうん」
まあ、一人ぐらい居らんでもええやろと、あたしは気のない返事をする。
「それって、一番年上の官女ですよ!」
留美ちゃんが、また発見する。
「ほう、榊原さんは分かるんやなあ」
お祖父ちゃんは嬉しそう。なんや、間接的に「さくらはアホや」と言われてるような気がせんでもないねんけど。
「はい、これは優月の有職雛人形なんで、きちんとしてるんです。ほら詩さんの官女を見てください。三方を持ってる官女は眉毛が無いでしょ」
「あ、ほんまや」
「それに、お歯黒してます」
「うん、目の付け所がええなあ、榊原さんは」
「え、なんで? 詩ちゃんのイタズラとか?」
「わたしは、そんなことしませんよ」
ひょいと饅頭を摘まんだかと思うと、後ろに帰宅したばっかりの詩ちゃん。
「でも、剃り眉のお歯黒だなんて気が付かなかった」
「この官女は、既婚者で、官女の中ではボスなんですよ。真ん中ですしね、上から二段目の真ん中ということは、お内裏様を除いては一番偉いんです。このお内裏様一家を切り盛りしている、女執事長というところです」
「留美ちゃん、すごい!」
「勉強になるう」
「あ、いやだ。単なる妄想ですよ(〃´∪`〃)ゞ」
「いや、それは想像力やで榊原さん。さすがは文芸部や!」
「いや、もう、からかわないでください(/ω\)」
恐縮する留美ちゃんはかわいらしい……うちも文芸部やねんけど。
この日は、お祖父ちゃんの勧めで留美ちゃんもいっしょに晩御飯。それで、夕飯後、みんなで話に花が咲いて、明日は祭日やし、結局は留美ちゃんはお泊り。むろん、お祖父ちゃんが留美ちゃんの家に電話して許可をもらったしね。
夜は、詩ちゃんも加わってパジャマパーティー。
頼子さんも一緒やったらええのにと思いながら三人で雑魚寝しました。
明日が誕生日の天皇陛下に感謝……しよと思たら寝てしまいました。
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