123 / 432
123『今日は頼子さんの入試!』
しおりを挟むせやさかい
123『今日は頼子さんの入試!』
お祖父ちゃんの青春は『コクリコ坂から』みたいやった。
学園紛争で大仙高校が荒れまくってた時に生徒会長やってて、大反連(大仙反帝反戦連盟)の書記長・野中民雄とやり合ってたらしい。
今のお祖父ちゃんと違って、髪の毛フサフサでシュッとしてる。そやけど、目元口元が今といっしょで直ぐに分かる。
寝る時までは『造反有理』といっしょに写真のお祖父ちゃんの姿がグルグルしてたんやけど、朝ごはんで私学の入試が始まったいうニュースで切り替わった。
せやかて、今日は頼子さんが真理愛女学院の入試を受ける日やさかいね!
頼子さんの合格は間違いないことやけど、試験は水物、やっぱり気になる。
今日の学校は三年生がほとんど居てへん。
みんな私学の入試やさかいね。
瀬田と田中が三年のフロアーに探検に行って先生に怒られよった。ほら、元サッカー部のイチビリ。
瀬田はすぐに戻ってきたけど、田中が帰ってきよらへん。それに、瀬田も表情が厳しい。
なんかあったんや。
ちょうど日直日誌を取りに行く用事があったんで、大回りして職員室に向かう。大回りすると生活指導の前を通るんや。
『これはなんやと聞いとるんや!』
春日先生の怒鳴り声。
様子を見てやろうと遠回りしたんやけど、足がすくんでしまう。
『ブツは始末したんやろけど、ポケットにタバコの粉が入ってたら丸わかりなんじゃ!』
田中のアホ、三年のフロアで喫煙しとったんや……。
『ボケ!』
心臓停まりそうになる。春日先生は学年主任で、うちのクラスの担任代行で、めったに荒い声も出さはれへん。春日先生の罵声を聞くのは初めてや。
なんやチビリそうになるんで、非常出口から校舎の裏に出てから、さらに大回りして職員室を目指す。
あ
植え込みの縁にマイルドセブン。
なんも考えんと拾て大後悔……いま、この瞬間を見られたら、わたしが喫煙に間違われる。
あ あ えと…………
「おう、酒井!」
ゲシュタルト崩壊してるとこに声かけられて、きのう打ち上げに成功したロケットみたいに飛び上がりそうになる(*_*)! 声は、たった今怒鳴ってた春日先生やしい!
「ちがいますちがいますちがいますちがいます」
「分かってる、いま本人が白状しよったから、取りに来たとこや」
「あ、あ、そーですか、どーぞどーぞ」
先生に渡すと一目散に現場を離れたのは言うまでもあらしません。
たっだいまーーー!
留美ちゃんと二人コタツに入りながら田中の件を(自分の事も含めて)ケラケラ笑ってたら、頼子さんの声!
ダミアがピクンと耳を立て「ニャーー」と一声あげながらお迎えに行く。
おばちゃんらとご挨拶しながら上がって来る。
「「お帰りなさーーい!」」
留美ちゃんと二人、部室の前までお迎え。
「はい、無事に入試終わりました!」
『みんな、お善哉作るから下りてらっしゃーい!』
おばちゃんは、頼子さんの帰還を予想してお善哉の用意をしてくれてた!
ちょうど、檀家周りから帰ってきたテイ兄ちゃんも加わって、なんちゅうか祝勝会!?
やっぱり嬉しいことはみんなでお祝いした方が何倍も嬉しいやおまへんか(^▽^)/
これで、正月から残ってたお餅も食べつくし!
めでたしめでたし。
0
お気に入りに追加
2
あなたにおすすめの小説

人生を共にしてほしい、そう言った最愛の人は不倫をしました。
松茸
恋愛
どうか僕と人生を共にしてほしい。
そう言われてのぼせ上った私は、侯爵令息の彼との結婚に踏み切る。
しかし結婚して一年、彼は私を愛さず、別の女性と不倫をした。

一歩の重さ
burazu
ライト文芸
最年少四段昇段を期待された長谷一輝は最年少四段昇段は果たせず16歳の秋に四段昇段を決めたものの、プロの壁は厚く、くすぶっていた。これはそんな彼がプロの頂点を目指していく物語である。
この作品は小説家になろうさん、エブリスタさん、ノベルアッププラスさん、カクヨムさんでも投稿しています。
世界一可愛い私、夫と娘に逃げられちゃった!
月見里ゆずる(やまなしゆずる)
ライト文芸
私、依田結花! 37歳! みんな、ゆいちゃんって呼んでね!
大学卒業してから1回も働いたことないの!
23で娘が生まれて、中学生の親にしてはかなり若い方よ。
夫は自営業。でも最近忙しくって、友達やお母さんと遊んで散財しているの。
娘は反抗期で仲が悪いし。
そんな中、夫が仕事中に倒れてしまった。
夫が働けなくなったら、ゆいちゃんどうしたらいいの?!
退院そいてもうちに戻ってこないし! そしたらしばらく距離置こうって!
娘もお母さんと一緒にいたくないって。
しかもあれもこれも、今までのことぜーんぶバレちゃった!
もしかして夫と娘に逃げられちゃうの?! 離婚されちゃう?!
世界一可愛いゆいちゃんが、働くのも離婚も別居なんてあり得ない!
結婚時の約束はどうなるの?! 不履行よ!
自分大好き!
周りからチヤホヤされるのが当たり前!
長年わがまま放題の(精神が)成長しない系ヒロインの末路。
フェンリルさんちの末っ子は人間でした ~神獣に転生した少年の雪原を駆ける狼スローライフ~
空色蜻蛉
ファンタジー
真白山脈に棲むフェンリル三兄弟、末っ子ゼフィリアは元人間である。
どうでもいいことで山が消し飛ぶ大喧嘩を始める兄二匹を「兄たん大好き!」幼児メロメロ作戦で仲裁したり、たまに襲撃してくる神獣ハンターは、人間時代につちかった得意の剣舞で撃退したり。
そう、最強は末っ子ゼフィなのであった。知らないのは本狼ばかりなり。
ブラコンの兄に溺愛され、自由気ままに雪原を駆ける日々を過ごす中、ゼフィは人間時代に負った心の傷を少しずつ癒していく。
スノードームを覗きこむような輝く氷雪の物語をお届けします。
※今回はバトル成分やシリアスは少なめ。ほのぼの明るい話で、主人公がひたすら可愛いです!
翔君とおさんぽ
桜桃-サクランボ-
ライト文芸
世間一般的に、ブラック企業と呼ばれる会社で、1ヶ月以上も休み無く働かされていた鈴夏静華《りんかしずか》は、パソコンに届いた一通のメールにより、田舎にある実家へと戻る。
そこには、三歳の日向翔《ひなたかける》と、幼なじみである詩想奏多《しそうかなた》がおり、静華は二人によりお散歩へと繰り出される。
その先で出会ったのは、翔くらいの身長である銀髪の少年、弥狐《やこ》。
昔、人間では無いモノ──あやかしを見る方法の一つとして"狐の窓"という噂があった。
静華はその話を思い出し、異様な空気を纏っている弥狐を狐の窓から覗き見ると、そこにはただの少年ではなく、狐のあやかしが映り込む──……
心疲れた人に送る、ほのぼのだけどちょっと不思議な物語。
王子の片思いに気付いたので、悪役令嬢になって婚約破棄に協力しようとしてるのに、なぜ執着するんですか?
いりん
恋愛
婚約者の王子が好きだったが、
たまたま付き人と、
「婚約者のことが好きなわけじゃないー
王族なんて恋愛して結婚なんてできないだろう」
と話ながら切なそうに聖女を見つめている王子を見て、王子の片思いに気付いた。
私が悪役令嬢になれば、聖女と王子は結婚できるはず!と婚約破棄を目指してたのに…、
「僕と婚約破棄して、あいつと結婚するつもり?許さないよ」
なんで執着するんてすか??
策略家王子×天然令嬢の両片思いストーリー
基本的に悪い人が出てこないほのぼのした話です。
幸せの椅子【完結】
竹比古
ライト文芸
泣き叫び、哀願し、媚び諂い……思いつくことは、何でもした。
それでも、男は、笑って、いた……。
一九八五年、華南経済圏繁栄の噂が広がり始めた中国、母親の死をきっかけに、四川省の農家から、二人の幼子が金持ちになることを夢見て、繁栄する華南経済圏の一省、福建省を目指す。二人の最終目的地は、自由の国、美国(アメリカ)であった。
一人は国龍(グオロン)、もう一人は水龍(シュイロン)、二人は、やっと八つになる幼子だ。
美国がどこにあるのか、福建省まで何千キロの道程があるのかも知らない二人は、途中に出会った男に無事、福建省まで連れて行ってもらうが、その馬車代と、体の弱い水龍の薬代に、莫大な借金を背負うことになり、福州の置屋に売られる。
だが、計算はおろか、数の数え方も知らない二人の借金が減るはずもなく、二人は客を取らされる日を前に、逃亡を決意する。
しかし、それは適うことなく潰え、二人の長い別れの日となった……。
※表紙はフリー画像を加工したものです。
【声劇台本】だから、お前はダメなんだ!
でんでろ3
ライト文芸
職員室で浮きまくってるE崎先生が、生徒たちのために、いろいろと奔走するコメディ声劇台本。
ちなみに、「だから、お前はダメなんだ」というのは、E崎先生がまわりの先生たちから言われている言葉であって、決して、生徒たちのことではありません。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる